■1話 出会い■ 真・恋姫†無双〜旅の始まり〜
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■1話 出会い

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目が覚めると青空一杯夢一杯………

 

 

 

 

 

一瞬馬鹿な事を考えていたせいで気づくのが遅れたけれど、どうやら体が動きません……どうしてでしょう?

 

(お答えしますなのです!)

 

おお!? 天からロリ声が……これが天啓(ロリバージョン)か!

 

(ふざけてないで、今の状況をちゃちゃっと説明しますのです)

 

ちょっとぐらい構ってくれたり、困ってくれたり、もじもじしてくれたりしてもいいんじゃないだろうか……、最初はあんなに可愛かったのに……。

 

(っ……う、うるさいのです! いいから今は黙って聞けです。

貴方の今の状況は生まれたての幼い赤ん坊。そして願い事の成長値MAXですけど人体の細胞の成長速度以外はほぼ全部MAX状態なのです)

 

いや、今更ながらに言いますけどそれ俺の願い事じゃないよ? そして赤ん坊ってどういうことですか?!

 

(そしてこの世界は貴方の部屋にあったエロゲなるものから勝手に厳選させていただきましたのです)

 

このコスプレロリっ子スルー技術をいつの間にか習得していらっしゃる。って人のエロゲ漁ってるんじゃねぇええええええええええ!

ま、いいか。今は漁られたことよりも状況確認が最優先事項だから……ということでエロゲの題名教えてくれよ。

 

「ぉ・・・ぉおおぉぉぉおおおううう」

 

うぉ!? 目の前に今すぐにでも死んでしまいそうなお爺さんが突然現れたんだがどうすれば? どうすれば? どうすれば?

 

(説明も終わったことですし私はもう行きますねー、この世界で頑張ってください)

 

ちょっとまてぇぇええええいいい! いやまじでお願いします。心の中で土下座しますから、もうおちょくったりしませんから本当にお願いします。

 

(………)

 

え? まさかでしょ………もういないの?

うぉおぉおぉおおおおーーーーーーーーいいい!

 

「ウッヒャイ! これぞ天啓じゃぁあ!」

 

いやいや、お爺さん何が天啓なんだ? そしてテンションおかしいぞ? おい、俺に手を伸ばすな、てかプルプルすな! 落ちそうで怖いよ!?

 

「お前の名はこれから紀霊! 真名を時雨!」

 

このおじいさん名前をどうやって? というか紀霊とか意味がわからんのですが? ここは何処の何時代ですか、お爺さんは何故俺の名前を知っておられるのですか?

 

(ああ、おじいちゃんにあんたの名前教えといたですから)

 

ああ、どうりで天啓ね………ってまてぇえええい! いるなら返事して下さい! 心の底からお願いします。

 

(とりあえず貴方にはちょっと悪いことしたちゃったし、親ぐらいサービスぐらいしといてあげるから後はがんばりなさいなのです)

 

いやいやいや、サービスでも何でもいいからこの世界が何処か教えてください。マジで何処ですか……、そもそも何が何だか、本当頼みますから話聞いてください……。

 

(そんなのここで生活しているうちにわかるはずなのです。それでばいばーーーいです)

 

待ってくれーーーーーーーーーーーーー!!

 

こうして俺は爺さんの家に強制的に連れて行かれ、そこで今にも死にそうなおばあさんに会うのだった………。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

そんなこんなで俺は爺さんと婆さんに育てられた。

 

例え神様命令だったとしてもきちんと育ててくれる2人に感謝の念が湧かないはずはなく、俺は立派になって恩返ししようと努力することにした。

 

育ててもらって分かったのだが、なんでも昔はこんなじじばばでも偉かったららい。見た目じゃ絶対お金持ちって分からない格好をしているので私塾に通わされるまで全くわからなかった。

 

私塾に通わされて俺は神様の言っていた成長値MAXがどんな意味を持つのか色々試してみることにした。

 

時には道端の猫を撫で、時には毒キノコをちょこっと食べて死に掛かり、またある時には道端の犬を撫で、またまたあるときは色んな武器を使い武を磨いていく。

 

どうやら成長値MAXってのは伊達じゃないらしく、自分から見ても嬉しいぐらいの成長があった。例えば最初は毒キノコを食べたら泡吹いて倒れたが、今ではもう普通に食べても平気だ。

 

でもまあ、与えられた恩恵を把握するにあたってそんなことを続けていたわけだから、結果周りの人間からは避けられ、無駄に動物が群がるようになり、人からは狂気の天才(素材はいいのに残念な奴)と言われるようになった。

 

おかげでこの世界でも人間の友達が少なかった……というか一人しか出来なかった。

けれどそこは別に気にしてはいない、前の世界なんて不運のおかげで一人もいなかったのだから1人だけでも十分嬉しいのだ。

 

「おーーい、時雨ーーーー!」

 

「お、荀正か」

 

その唯一の友 荀正は幼い頃に会った時あまりにも生意気(年相応です)なので倒してしまった。

それからというもの俺にべったりくっついて回るようになり、仲良くなったのだが……誤算が一つ、幼くてわからなかったのだが荀正は女の子だったのだ。

 

「もうっ! 荀正じゃなくて綾って呼んでって言ってるでしょ!」

 

「そうはいってもな真名で呼ぶなんてなんか恥ずかしくてな…」

 

まさか人生初の友達が女の子だったなんて……本当に困ってしまう。いくらボッチではなくなったとはいえハードルが高い。おかげで女と分かってからだいぶ経つ今でも全く慣れない。

 

「か、顔を赤くしないでよ! 真名預けてるんだからちゃんと呼んでくれなきゃ私に失礼だと思わないの?」

 

顔を赤くしないでというなら綾も顔を赤くしてほしくないものである。今思えばあのロリッ子神様見習いは現実味がしなくて付き合うのが楽だった。

 

「わかったから、綾……これでいいだろ?」

 

「………うん」

 

先ほどよりも赤く頬を染めながら返事をする姿は、生活の中での凛々しい一面と大きく違い、ギャップでとても萌えます。ええ、ギャップで大変萌えます。

 

萌えますよ!

 

「ってそうじゃなくてなんでも近くで賊が出たらしくて義勇兵を募ってるらしいの」

 

俺が重要な事を3回脳内で復唱しているうちにどうやら話したかったことを思い出したらしい。って義勇兵って穏やかじゃないな。

 

「ふーん、そうなんだ」

 

といってもその話を聞いたからといって俺に関係ないのだから何ら感想も出ないのだけれど、こんな話ならまだギャップを楽しんでいたい気もする。

 

「なに呑気な声だしてるの! 時雨の武を世界に見せ付ける絶好の機会じゃない!」

「そうは言ってもなー、俺にはじじばばがいるし……家を空けられないよ」

 

とは言ってもあの爺さんと婆さんいつも死にそうなのにいつまでも経っても死なないという不思議で恐ろしい輩のだが、もしかしたらロリっ子神様見習いがなにかしたのかもしれない。してなくても十分に納得できる不気味さを持っているのは確かだが

 

「時雨んとこの不死身のじじばばはあんたを行かせるみたいだったけど? なんでも太刀? とかいって細長い武器を打ってこれを渡すんじゃーとかなんとか」

 

実際にその場面を思い描いていく。ここに渡ってきた頃から変わらない姿で俺を育ててくれている爺さんと婆さんが武器を打ちながら、この武器を時雨に渡すんじゃーと発言してるその場面を……。

 

「なんで武器が打てるんだ。あのじじばばは本当に何者か本気で気になるな……」

「そんなことよりさっさと支度してきなよ! 私はもう大丈夫だから!」

 

元気に声をあげると綾は自分の家へと走り去ってしまった。

 

「へ? お前もついてくるのか? まぁいいや」

 

基本的にこの世界に来てからというもの不運な出来事が減った為か、かなり能天気になった俺はとりあえず家でじじばばに真相を聞いてみることにしたのだが……。

 

「ぉお! 時雨帰ってきたか……そうじゃ、見てくれこの自慢の一品。ワシと婆さんが打ったんじゃよ? すごいじゃろ?」

 

そんな呑気な態度もこのじじばばを相手にすればあっさり崩壊する。

だってじじばばが打ったって言ってもそんないいもんじゃないだろと思ってるのに立派過ぎるほどの太刀と小刀が置いてあるのだから………あんたら何者ですか、いやまじで。

 

「そこはほれ、爺さんんとわたしじゃから」

 

パチリと婆さんがウインクしながら心の声にこたえてくる。歳を考えてほしい、というかこいつらは本格的に化けものだと生まれた頃から思ってはいたが……改めて化けものだと思う。

 

「でもまたなんで急に? 俺はここでじじばばと暮らせればそれで幸せなんだが」

「なにを言うておるのじゃ! 可愛い子には旅をさせなきゃいけないキリマンジェロというじゃろ」

「いや意味がわからないから!」

 

すかさず爺さんに突っ込みを入れる俺……この奇怪な老夫婦にちゃんと教育されてるなーとしみじみ思う。

 

「まあ、お前の心配は分からんでもないが、ワシと婆さんは不死身じゃから別にお前さんがいなくても大丈夫じゃよ」

 

と軽く言う爺さん、なんなんだろうこの説得力………半端じゃねぇ!

 

「いや、べつに俺は家をでて………」

「だまらっしゃい、もう帰ってこんでええ!」

 

怒鳴る爺さん、無言でグイグイと荷物を押し付けてくる婆さん……、この連携なんなんでしょ、いやはやさすがです。

 

「わかったから、怒るなって寿命が縮むだろ」

「キエェェェエエエエエーーーーーーー!」

 

奇声を発するのはこの老夫婦のデフォなので今更気にならないがうるさい事この上ない。

 

「ああ、んじゃ!行ってくるからそんなに騒ぐなって!」

「パイのみ・・・・元気でな」

「それだれだよ」

「キエェェェエエエエエーーーーーーー!」

 

じじばばがいつものように壊れ始めたので家を急ぎ出る事にする。言う事聞かない限りあの奇声を発し続けるので急ぐという選択肢しかないのが辛い、ちゃんと別れの挨拶がしたいのにあの状態になってるからそれすら叶わない。

しかし……あれはやっぱり人間じゃないよね。

奇声を出し続けるじじばばに見送られ村の出口まで来ると綾が既に待っていた。

 

「遅いよー、まったく集合時間に遅れたらどうするんだか!」

「俺道知らないけど綾はわかってるのか?」

「もっちろん!」

 

胸を張る綾、成長してたわわに実った胸が揺れる

 

………ゴクリ

 

「ちょっと何処見てるの! さっさといくよー」

 

こいつは確信犯なのか、偶然なのかわからないがもう少し女の恥じらいというやつを持ってほしいと思う。

 

「もうちょっと気にしてくれよな………」

 

ちょっとした願いを口にしながら、ほんの少し耳が赤くなっている綾をとぼとぼ追いかけて行きながら、これまでの出来事を思い出していく。

いい仕事にありつくために寂れた故郷を出るのは仕方ないのかもしれないが(ああ……、これからどうなるんだろ………)と不安しか覚えないのはなぜなのだろうか

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

故郷を発ち、しばらく森に沿って歩いていると馬の群れが見えてきた。

 

「ねぇ、時雨馬欲しくない?」

 

唐突にそんなことを言ってのける綾に俺は親切に教えてあげることにした。

 

「いいか綾、野生の馬はな凶暴でとてものりこなせやしない………っておおい!」

 

いつもながらに俺の言うことなどお構いなしの綾、馬の群れへと見事に突っ込んでいく。

ああ……蹴られてるね、綾……お前の死は無駄にはしない! と冗談を心の中でいいつつも助けるためにあえて馬の群れへと突っ込んでいく。

綾がいる方向へ馬を避けながらひたすら走っていく。

 

「っ破!」

 

威嚇の意味合いを込めて腹の奥底から声を張り上げ、馬が怯む一瞬を突いてスピードを上げていく。

そんな中威嚇にも屈せず、豪快に嘶き前足を振り上げこちらにも猛然と突っ込んでくる馬が一頭、正直怪我させたくないから来てほしくはなかったのだが仕方がない。

 

怯んでいる馬をある程度避けて体制を整え、突っ込んできた馬を良く観察する。

燃えるような濃い赤い毛を靡かせて、その群れの長たる威圧感を放っている姿は堂々としていて、とても只の馬とは思えない。きっとあれが名馬って呼ばれるやつなんだ。

 

もちろん俺はそんな姿に目を奪われてしまった訳だ。

 

「ん????っ……カッコイイ!、是非友達になって欲しい」

 

なんて思わず呟いている間に真紅の馬の嘶きに答えるように怯みから回復し、迫ってくる馬! 馬! 馬!

 

「他の動物みたいに撫でれば大人しくなるかな? まぁ…ものは試しといいますし、俺の実力見せてあげますお馬さん!」

 

いまこそ日頃動物を撫でまくり、可愛がり続けることによって鍛えた手腕を見せる時!

 

互いに迫り、交差する影と影と影……

 

シュッ ササッ

 

周りに群れていた馬たちとの決着は一瞬で終わりを告げた。

 

ブルルッ

 

周りの馬が傅く(単に座っているだけ)光景はさながら王様っぽいなと思ったり。

 

と思いつつ最後に残った馬を見る。そこにはやはりと言うべきか、真紅の馬が悠然と立っており、鋭い視線を俺に向けていた。

 

ゴクリと思わず唾を飲んでしまうほどの重圧が伸し掛かる……やっぱり欲しいな、この馬。

 

この出会いに感謝しつつ、敬意を込めてちょっとばかり本気を出すことにする。

息を殺し、気配を回りに溶け込ませ、相手から認識できなくなるほど存在を希薄にする。前の世界で修得済みの不運家伝承の暗殺歩法である。

 

なんでこんな歩法があるのかと問われれば、主に自分の存在を薄くして迫りくる不運という存在に対応するためのものですなんて恥ずかしい回答をしなければならなくなる。

 

風に吹かれ木の葉が水面を進むようにゆっくり、ゆっくりと真紅の馬に近づき、その頭めがけて……撫でる、撫でる、愛でる!!

 

ヒヒーンッと嘶く真紅の馬。どうやら効果抜群のようだ……。

 

俺に向けて頭を下げ、つぶらな瞳で見詰めて撫でを要求してくる馬。さすがのこいつも俺の本気にはかなわなかったか……。

それにしてもやっぱ動物はかわいいなー。ついついなでなでしてしまう。

撫でている時に何か忘れている気がしたものの、とりあえず今は撫でることに集中することにする事にした。

 

「ブルルッ」

 

満足そうにする馬を見ながら俺は撫でながら考えていたことを自信満々に言い放つ。

 

「よし!今日からお前の名は飛影、俺の馬だ!」

 

その言葉に反応する様に小さく嘶き、しっぽを若干揺らすのを見て嬉しくなり、再度撫で始める。

そんな風に和んでいると近くから悲鳴が聞こえてきた。

 

「時雨ーーー助けてーーーー」

 

忘れていたことを棚に上げ、まったく無茶なんてしなければいいのにとぐちぐち言いながら助け向かう俺は果たしてお人好しなんだろうか? それとも……

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

綾を助けている間に飛影はどうやら他の馬と別れをすませたらしく、俺達に付いてくる事に決めたようだ……。

連れて行くつもりではあったけど仲間との別れが悲しいのか何度も振り返り、黒い瞳がうるうるしているのが可愛くて哀しくて辛かった。

そんな気持ちを無駄にしないために可愛がってやろうと心に決めた俺だった。

 

「ねーねー、時雨前に乗せてよー」

「飛影が嫌がるからダメだ! 綾はたてがみ引っ張るだろ?」

「ぶーぶー」

 

綾が前に乗ると何度も飛影のたてがみを引っ張って振り落とされるのだ。だというのに懲りずにジト目で文句をたれてくる綾。飛影が悪いんだよとか言い訳をするのであえて無視しながら道を急ぐ、馬と戯れていたおかげで義勇兵の招集時間に遅れてしまいそうなのだ。

 

だというのに丁度幽州啄群の五大山付近にさしかかったところでことは起こってしまった。

道の直線状に光が落ちてきたのだ。

 

「おー、時雨あれなんだろうね? 見にいこ見にいこ!」

 

まったくもって好奇心旺盛である。そして無駄にトラブルメーカー……俺も人の事は言えないが。

 

「わかった、でもうかつに近づくなよ?」

「わかってるって」

 

そういいつつ興味の色を隠せない綾はニヤニヤしていてとてもダメなやつだった。

近づいてみると見慣れない服を着た男と黄色い布を頭に巻いた3人組、相当の使い手と思われる武将1人と女の子が2人いた。

 

どうやら口論になっているようだ……、交渉に失敗でもしたのか武将っぽい人が声を張り上げているのがわかる。

 

「たった一人の庶人相手に、三人掛かりで襲い掛かるなど……その所行、言語道断!」

 

あれ? この声どこかで聞いたことあるような……? ん〜〜、誰だっけ。

 

「そんな外道の貴様らに名乗る名前など、ない!」

 

言うが早いか武将っぽい女の人が三人組をばったばったと、ばったばったと、ばったったと……ちょ、ちょっとやりすぎな気がするぐらいばったばったと倒していた。

 

顔をある程度目視出来る所まで近づいて気づいたのだけれど、あの男……恋姫の一刀さんではありませんか?

それに近くにいる武将っぽい女の格好にあの武器……あれはまさかの趙雲だったりするのかな?

 

え? じゃあかなり今更な感じは否めないけれど……この世界は恋姫無双か!

 

ああ……だから真名! と本当に今更だが思いだした。

 

あれ? でも確か一刀と会うのって蜀の関羽と張飛じゃ? てかほかの女の子は誰かわかんないな……。

うーむ、謎だ。

そんなことを考えてうちに三人組が逃げ出し、それを趙雲が追って行ってしまった。

 

まぁ、いいや

 

「綾、飛影に乗ってあの逃げてる三人組を追ってきて、俺は残ってる人に話を聞いてくるから」

「わかったー」

 

そういうと綾は飛影に乗って三人組を追って行こうとする。

 

「だからたてがみ掴んだらダメだって!」

 

まったく反省の色が見られない綾をちょっと叱ってから後に残った三人に向かって歩き出す。そしてもうすぐたどり着くという所で何か話している三人の下に追うのをやめたのか、趙雲さんが戻ってきた。

その時一刀が誰かの名前を喋ってから周りの空気ががらりと変わったのがわかる。というより明らかに周りが殺気立っていらっしゃる。

 

これはちょっとまずいんじゃ? 趙雲さん槍構えてるんですが? 主人公ここで死ぬの? てか見殺し良くないよね!

 

そう決意すると俺は縮地と呼ばれる特殊な歩法で急いで距離を詰め、割り込むように身をいれながらすかさず小刀を鞘から抜き、趙雲の一撃を受け止めることに何とか成功した。

正直斬撃が重くて止められたのが奇跡の様な気もするが、鍛錬のたまものだと思いたい。

 

なんだか綾の声が聞こえた気がするが今はとりあえず構えないので無視しておこう。

 

「邪魔だ! 貴様!」

「おいおい……あんた、こいつが何をしたって言うんだよ」

「こやつ、どこの世間知らずかはしらぬが真名を呼んだ! 一体どうゆう了見だ!」

 

あちゃー……まじですか。

 

「あんた、訂正したほうがいい」

 

とりあえず助かるための提案をしてみる。この提案をのまなければ死ぬのは明らかだが、果たしてどうなるだろうか……。日本人っぽいし大丈夫だとは思うけど。

 

「へ?」

 

と思っていたのだが、現状の把握が全くできていなのだろう、間抜け顏をさらす一刀。

 

なにも知らないのだからこんな反応も仕方ないのかもしれないが……これはさすがにまずい、いきなりBADEND確定したようなものだ。

そして今は耐えられているからいいものの、さすがに趙雲の一撃を凌ぐのにも今の俺では限界がある。

 

「名前を呼んだことを訂正して詫びろ! そうすりゃ収まる!」

 

もうどうでもいいから訂正してくれと願いを込めて怒鳴りつける。その声に他の女の子が同意するように訂正を求めてくる。

 

「わ、わかった! すまん。訂正する、するから! その槍、引いてくれ……!」

 

あわてて一刀が言うと趙雲が槍を下ろした。重すぎる、今の俺じゃ勝てないな、絶対。

 

「結構」

 

女の子が安堵したのがわかる。これで安心だが、とりあえず説明はしておいた方がいいだろう。

 

「えっとだな、真名は心を許した、もしくは認めた相手ぐらいしか呼んじゃいけない名前なんだよ。重要なことだから覚えといて」

「ま、真名……ねぇ。じゃ、なんて呼べばいいの?」

 

まぁ、そうなるよね。真名なんて一刀が知ってるはずないし、ここは俺から名乗っておいた方がいいだろうな。

 

「俺は紀霊という」

「はい、風は程立と呼んでくださいー」

「今は戯志才と名乗っています」

 

程立と戯志才は初めて見るキャラだな…この世界って恋姫だけど恋姫じゃないのかな? うろ覚えだがこんなストーリーはなかったはずだし、どうなってるんだろうか。

 

「ええっと、三人の名前からして、ここは中国?」

「ちゅうごく?」

 

疑問を押し込めてとりあえず話を聞いていたのだが、どちらの事情も知っている俺から見てとてつもなく可笑しな会話が目の前で飛び交っている。

仲裁を取るのもいいが俺の素性を疑われるのもなんだし、ここは流れに身を任せるのが吉かな。

なんて考えているうちにどうやら一刀をどうするか決まったみたいだ。

 

「ここは陳留の刺史殿にまかせるとしようか」

「ん? ここの刺史というと」

「ほら、あそこに小さくだけど曹の旗が見えるでしょ?」

 

ブハッ、よりにもよって曹操って危なくないかなー。ツンデレっ子でかなり可愛いやつではあったけど、凶暴だしな………。

そして今更だが俺達が目指してた場所ってもしかして曹操さんのところだったんじゃ?

 

「我等と貴族がともにいれば疑われるのは必須。そうなっては困るからな」

 

そういうと決着はついたとばかりに趙雲は一刀との話を切り上げ、俺の傍まで来て話しかけてきた。

 

「確か紀霊殿でしたか? さっきは突然とはいえとんだご無礼を」

「いえ、無礼なんて! こちらから勝手に間にわって入ったわけですし、どちらかといえばこちらが無礼を働いてしまい申し訳なく思います」

「そんなことはありませぬ、つい怒りに任せて槍を振るってしまった未熟な私を止めてくださったのですから、感謝の気持ちはあれど起こったりなどできませぬよ」

「そうですか。それならば俺もありがとうと言えばいいのかな?」

「はっはっは! そうですな! しかしさっきの太刀筋はなかなか見事なものでしたな」

「まだまだですよ。趙雲殿の一撃を止めるだけで精一杯でしたし」

「ん? 私は名前はなのっていないはずですが……そういえばなにやら見慣れぬ武器であったし……」

 

キョトンとした顔で趙雲がこちらを見やる、これはまずい。

 

「あはは!いやなに、風の噂で聞いていたのですよ! それにこの武器は俺の故郷では結構出回っているものでして……」

 

あー、冷や汗が止まりません。言い訳が苦しいです。誰か助けて

 

「ふむ、そうですかな? もう私の名もそこまで伝わっているとは」

「趙雲殿の武勇は有名ですからなー、はははー」

 

獲物を見つけたようにニヤリと微笑む趙雲。綺麗なだけに怖いです。

 

「まあ、詮索も野暮というもの。今はそういうことにしておきましょう」

「星さん、そろそろ」

 

いつのまにか戯志才と程立がよってきていた

 

「うむ、そうですな。紀霊殿さえよろしければ一緒にきませぬか? 手合わせの一つでもしたいところだが」

「オウ! あんちゃんが一緒なら心強いぜ!」

 

何故だろう、いきなり話に混ざってきた人形に和んでしまう、ってこの程立って女の子可愛いな……。

 

「はは、可愛いお人形さんと趙雲さんには悪いけど、今回は遠慮させていただきます、用事もありますし」

 

そういって人形を乗せた程立の頭を軽く撫る。俺にしては気の利いたセリフではないだろうか、綾との付き合いで学んだ困った時のコミュ力を見よ!

 

「……オウオウあんちゃん女ったらしだねー」

 

テレレッテレー 紀霊は女ったらしの称号を手に入れたー 撫で力が2上がった! って綾と同じようにしたら女たらしって……なかなか難しいな。

 

「ははっ、ついついなでちゃってごめんね。というか今まで女の子に好かれた試しがないからね……それはないと思うよー」

 

自分で言ってて哀しくなるな………。だがここで否定しないと好感度が

 

「ふふ、紀霊殿は大物ですな。今度会った時はちゃんと手合わせ願いたいものです」

「そうですね、今度会った時はよろしくお願いします」

「お兄さんまたです」

 

各々挨拶を告げて趙雲たちと別れると曹の旗がすぐそこまで来ていることに気づいた。

 

「あの……紀霊さんでしたっけ?」

「あれー? なんで北郷殿はまだここに?」

「いや、行くあてもないので……」

 

あー、そうだった。今近づいてきてるのがよりにもよってあの怪しい輩なら切り捨ててしまいそうな曹操なんだった。

俺はどうして趙雲たちについていかなかったんだろ、そりゃ賊討伐に加わるつもりだったからなんだけどさ……。

 

んー、やっぱ主人公助けた方がいいかな? ってすこし思わなかったわけでもないし。というか主人公死んだらこの世界終わってしまうんだろうか……THE END? 赤ちゃんから頑張ってきたのにココで死ぬとかやってられんのだが……。

 

なんだろう、この逃れられそうで逃れられない運命みたいなの、もし終わらないとしても見捨てるのも忍びないし。

 

はぁ…本当に俺の呪いは解けてるんだろうか……。

 

 

 

―――――――――――――――――――

■後書き■

改行して1行空けると、編集画面で見るよりもプレビュー画面の行の方がずっと大きいのにちょっと戸惑ってたりします。

 

どれぐらい行空けるかとかなかなかね。

これもそのうち慣れるでしょうか………。

 

それにしても小説編集画面で時間がたってから[次のステップへ]押すとエラーが出ます。

コピーしてなかったら泣いてましたorz

説明
編集して再投稿している為以前と内容が違う場合がありますのでご了承お願いします。
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