IS『に』転生ってふざけんな! 第5話 |
待機中で使える機能と、使えない機能がある事が徐々にではあるがわかってきた。
まず、外部との接触が全くと言っていいほどできない。音も聞こえなければ周囲を見る事もできない。
あと、この甲冑を強引に引き剥がそうとしたらものすっごい痛かった。やっぱコレ俺の一部だった。痛覚だけある。
それで、中身が多分だけど無い事が分かった。わかりやすく言うならばアルフォンスのような状態だ。
あと、急にここに来たのってなにか理由があるんじゃないかとヒマだったので考えた結果、俺の意識が完全に福音の意識? を蝕んだという結論に達した。
これもし福音(の意識)が蘇ったりしちゃったら、どうなっちゃうんだろうね。まさかその為の甲冑とか? どうせなら剣も付けてくれよ。
(それにしてもヒマだな。なにか起こんねえかな・・・・・)
ボーっと真っ暗な、あるのかどうかも分からない天井を見上げてた時だった。
一瞬にして視界が変わり、目の前には虎模様(タイガー・ストライプ)のISが浮いている。
(・・・・どういう状況?)
私は、変な夢を見た。
ベッドで寝たと思ったら、銀色の甲冑を着た男が騒いでいたので起こされ、起きた場所はどこだか知らない大きな教会で、その甲冑の男の話によると自分は銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)で、その教会は自分の深層意識がどうのこうのと言いふらす、常識で考えたらいろいろとおかしな夢。
そして目が覚める直前に、あの甲冑の男は「あんたと会えて嬉しかった」と言っていた・・・・。
―――――という話を、同僚のイーリに相談したら・・・・・
「なにそれ気持ち悪っ!!」
即答だった。
「ちょ・・・ナタル、それきっとストーカーだぞ」
「なんで夢の中にストーカーが現れるのよ・・・・・」
「アレだよ、アレ。寝てるナタルの耳元で、そのストーカーがそっと呟くんだよ。で、ナタルは夢でその言葉を」
「それ以上は言わないで! 蕁麻疹が出る・・・っ」
私は背筋に寒気がしたが、反射的に耳元を手で隠すようにしていた。
軍の宿舎で寝泊まりしているからと言って、油断はできない。その警備がやってくるかもしれないという、自分でもわかるくらい自意識過剰な疑心暗鬼に陥ってしまった。この目の前のイーリ(バカ)のせいで。
でも・・・あれは、ただの夢じゃなかった気もしないでもない。そんなあやふやでもやもやした気持ちが、私の心の奥底で燻っている。
「(なにか・・・・大事な事を忘れているような・・・・・)」
あと・・・・まるで、誰かが私のすぐ近くにずっといるような気が・・・・・。
「(――――やっぱり、ストーカーかしら・・・?)」
本格的にそっちの線が濃くなってきたので、私はストーカー撃退用の罠を設置しようと考えた時だった。
「おい、ナタル。そいつの実戦テスト、そろそろ始めるんじゃないのか?」
「そういえばそうね。もう行かなくちゃ」
今日は福音(この子)の実戦でのデータを収拾するためのテストがあるのを、あの夢のせいですっかり忘れていた。
そして数十分後。
私とこの子(福音)は、昨日一緒に闘ったバトルフィールドに来ている。
「ファイルスさん、準備を始めて下さい」
「了解しました」
研究員の指示に従い、私は銀の福音を身に纏う。
そして私と対峙しているのは・・・・・さっきまで私と話していた、イーリ。
彼女のIS、『ファング・クエイク』は安定性と稼働効率を重点的に昇華させたバランス型のIS。
「(つまりそれは、長期戦に持ち込まれたら不利ということ)」
さらに今回は、ファング・クエイクのデータも取るために全力で勝負しろと上からお達しが来ている。できればこの子に勝たせてあげたいのと、イーリに負けたくないという私情も入ってくる。
でも・・・・前回の起動テストみたいに動けなかったら、イーリ相手ではまず勝ち目が無い。
「(ちゃんと、動いてくれるよね・・・・?)」
――――――もし昨日の夢が、夢じゃなかったのだとしたら・・・・・
この子はきっと、動いてくれるはず・・・・・!
目の前に駆る虎模様のISを、俺は見た事が無かった。
(でも、あの虎模様になにか引っ掛かるんだよな〜)
詳しいデータが欲しいと俺が思ったとき、視界に詳細な情報がぽこぽこと浮かび上がってきた。
(なになに・・・・・名称、『ファング・クエイク』。操縦者は『イーリス・コーリング』か)
あ、たしか6巻で出てきたナターシャさんの親友だったっけ?
ISの方も第3世代で、エネルギー効率重視型か〜。
(まだ実戦と言える経験をほとんど積んでいない俺に、米の代表さんの相手が務まるのか? 答はもちろんノーだ)
だけどこっちにもナターシャさんがいる。正直俺のヤル気さえあれば、この人が何とかしてくれるよきっと!
・・・・・よし、まずは《銀の鐘(シルバー・ベル)》で一気にシールドエネルギーを削ってアドバンテージを稼ぐか。
『戦闘を開始して下さい』
ビィィィィとアラームが鳴り響き、俺は銀の鐘を発動させようとする。
(あとはナターシャさんが起動させるだけ・・・・)
俺がモーションをイメージした瞬間だった。
ガキィィンッ!!
――――――突然、車に撥ねられたような衝撃が俺の身体に伝わった。
説明 | ||
これは、米国の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』に憑依転生してしまった少年と、その操縦者であるナターシャ・ファイルスの噺である。 | ||
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