使い魔のおしゃべり1 − アルヴィーズ食堂の惨劇 − |
「君の軽率な行いで二人のレディの名誉に傷が付いてしまった。
この責任をどう取る積もりかね」
僕は醜態を取り繕って寝言を言う男の言葉を無視して近づくと
その両肩を掴み彼の目を直視し真剣な声で語りかける。
「ギーシュと言ったな?
いいからすぐにあのモンモランシーという女の子に謝れ。
今の僕にしてやれることは何もない。いそげ今ならまだ間に合う」
僕は目の前の男の命を救うために必死の説得を試みる。
「何を言っているんだね君は?
僕は君の貴族に対する非礼を咎めているんだ。
その汚い手を離して即刻謝罪したまえ」
しかし、返ってきた返事は現状を弁えないものだった。
そして時間を浪費するうちに『ソレ』は現れた。
もはや手遅れだ。
「ゲコ」
それはカエルの鳴き声だった。
ごく小さなアマガエル。
それが食堂に飛び込んできて鳴いた。
そしてそれだけでその場の温度が氷点に達した。
「い、一体何が…」
突然の重圧に慄きの声を上げるギーシュ。
そんなギーシュを僕はブルブル震えながら見つめている。
「お、お前殺されちまう……」
「はぁ?」
「『翁』を本気で怒らせたら……」
僕は恐怖に負け走ってその場から逃げ出してしまった。
「ゲコ(モンモラシの君を傷つけた愚か者はお主か)」
僕だけに聞こえるそんな声を背にして食堂から飛び出す。
「何だこのカエルは。確かモンモランシーの使い魔の……
……アアアアアァァァァァーーーーーッッッッッ!!!!!」
そしてギーシュのものと思しき絶叫が学院に響き渡った。
その日アルヴィーズの食堂で一人の生徒が瀕死の重傷を負った。
それは、一匹の使い魔によるものだったというが定かではない。
公式記録には「一生徒の素行不良が原因による事故」とだけある。
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二股バレを取り繕うギーシュが直面したのは本命の彼女の使い魔 | ||
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