IS『に』転生ってふざけんな! 第6話
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(なんだ・・・! 何が起こったッ!?)

 

突然の衝撃に、俺は《銀の鐘(シルバー・ベル)》の発動をキャンセルさせてしまった。

 

 

 

あの攻撃は、エネルギーを溜める一瞬の時間と、それを全方位に放出するための僅かに上昇しながら回転する行動が必須となる。

 

後者をしないで発動させた場合、最悪撃った直後に暴発してその爆風に飲み込まれる恐れがある。

 

 

 

これは全て、先日の試験稼働で一度だけ使った銀の鐘を、ISの計算力とかを手に入れた俺が独自に観察、研究して立てた仮説だ。

 

 

 

 

 

そして、さっきの車か電車に撥ねられたような衝撃の正体も、すぐに理解する事ができた。

 

 

 

 

その正体とは―――――相手の打撃。それも、超高速の拳によるものだ。

 

 

 

俺の頭の中では、どうやってそこまでの加速を一瞬にして可能にさせたのかという思考に入っていた。そして、その答は一つしかない。

 

 

 

(間違いねェ・・・・・瞬時加速(イグニッション・ブースト)だ・・・・!)

 

 

あの機体・・・・『ファング・クエイク』はスラスターが4基あって、その4基を個別に瞬時加速させる『個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)』を使えたはずだ。

 

 

この距離でそのスラスターの2基を使ってそれを行ったとしたら、銀の鐘の攻撃直前の隙をつくまでもなく、人の視覚による反射神経を遥かに凌駕するスピードで接近できるだろう。そこに掛かるGは、ISが相殺してくれるからな。

 

 

 

 

多分、イーリスさんは戦闘開始直前までブースターにエネルギーを溜め続け、エネルギー充電を半ば無効にした形で強襲してきたのだろう。

 

 

 

(にしても・・・どこが『安定性と稼働効率を重視した機体』だよ! どっからどう見ても超高機動型だろうがッ!)

 

 

 

いや・・・愚痴ってる余裕は全く無いぞ。こちとらまだまともに戦った事が1回も無いんだからな。

 

 

 

(クソッ・・・考えろッ! どうやって戦えばあの機動力を封殺できる!?)

 

 

 

 

・・・・―――――いや、違う。

 

 

 

機動力を抑えるとか、重要なのはそんな事じゃねェ。

 

 

 

 

 

(―――――本当に重要なのは、どうやって『勝つか』だろうがッ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っく・・・・・まさか、出だしから切札を使ってくるとは思わなかったわ」

 

『ナタル相手だと、こっちも手加減とかできないんでな』

イーリの声がオープン・チャンネルから私の耳に入る。

 

 

でも、私の頭の中ではイーリとの会話とは別に、さっき突然銀の鐘の発動アイコンが出てきたのかをずっと考えていた。

 

「(やっぱり・・・・私の意志だけじゃない、もう一つの何かも福音に影響を及ぼしている気がする・・・・・。

そう考えるのならば、昨日見た夢は本当だったことに・・・・ううん、まだよ。まだ結論を出すには早すぎるわ)」

 

 

 

 

まだ私には・・・・銀の福音(この子)の事が、何一つわかっていないのだから・・・・。

 

 

 

 

 

 

『ほらほら! ボーっとしてるんだったらこっちから行かせてもらうぜェ!?』

 

イーリの声に、私は今彼女と戦っているのだと再認識させられた。

 

 

「(そう・・・今はデータ収集目的と言っても、ISによる戦闘中・・・・。余計な事を考えてるヒマは、操縦者の私には一瞬たりとも在りはしない)」

 

 

 

 

 

イーリの駆るファング・クエイクが、今度もまた一瞬で私を間合いに捉えた。

でも今回はただの瞬時加速だったみたいで、さっきほどの速さは無かった。

 

 

「(このタイミングなら間に合う!)」

 

私は福音の多方向推進装置(マルチスラスター)の砲門を前方に向け、エネルギー弾を発射する事でファング・クエイクを迎撃する。

 

でもそれはイーリも承知の上だったらしく、主武装(メインウェポン)のその拳でエネルギー弾を弾きながら殴ってくる。

 

「相変わらず・・・・ムチャクチャね、あなた」

 

『日本には【無茶が通れが道理も引っ込む】って諺があるんだぜ、ナタル!』

イーリはいつエネルギーを溜めたのか、またも個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)で追討ちを仕掛けてくる。

 

 

私は回避を試みるけど、思うように福音が動いてくれないから防戦一方だった。

それでも昨日の試験稼働よりは数段動きやすくなっていたのは、私にとってせめてもの救いだった。

 

 

シールドエネルギーの残量は、残り186・・・・。

 

 

「(ここで反撃をしないと、勝ち目は完全に無くなってしまう――――!)」

 

 

『んおっ!?』

 

私はイーリの拳を両腕で掴み、まるで羽を広げるクジャクのように、福音の翼を大きく開き、エネルギー弾を撃ち放った。

 

そしてさっきのお返しと言わんばかりの蹴りを、イーリの腹に浴びせて距離を取る。

 

 

『やっぱりやるなあ、ナタルは』

 

それでも、その直撃を受けたはずのファング・クエイクはダメージは受けているようではあったが悠然と宙に浮いていた。

 

 

 

「(もしかして出力が低下してるの・・・!? でもそんな警告は出てないし・・・・)」

 

 

 

やっぱり、この子は他のISとは、決定的な何かが違う。でも、そんな事より・・・・

 

 

 

「(イーリに・・・・負けたくないッ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あ〜、くそったれが! 人の事ボコスカ殴りやがって! 攻撃当たると痛ェんだぞこっちは!)

 

さっきの連続攻撃だって、ナターシャさんがどうにかしてくれなかったら腕が折れてたかもしれなかったぞ! 責任とれるのか!?

 

 

 

 

それと、防御力高すぎるだろ。なんでエネルギー弾をモロに受けて、さらには蹴りも食らってそんな何事もなかったかのように佇んでるんだよ。心折れるだろ。

 

 

(つーかこれ、俺がナターシャさんの足を引っ張ってるからじゃないのか?)

俺が弱音を吐き始めたのと同時に

 

 

『今度もこっちから行かせてもらうぜッ!!?』

イーリスさんは身体をかがめ、瞬時加速の構えを取る。

 

 

―――――マズいッ! 今度またあの連撃を食らったら、残りのシールド・エネルギーじゃ持ち堪えられないッ!!

 

 

 

畜生・・・これじゃあ、俺のせいで負けちまうじゃねえか!

 

 

 

 

(・・――――負けたく、ねェ――――ッ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

イーリスさんは個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)で俺に向かって突進んでくるのがわかる。

 

だが、これは俺がISのハイパーセンサーで直接確認できている映像だ。ナターシャさんはここからさらに、目から脳に、そして筋肉へと情報を伝達させなければならない。

 

つまり―――――人間の反応速度では、間に合うはずが・・・無い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・―――――ハズだった。

 

 

 

 

 

ガキィィィン!!!

 

 

 

金属音がバトルフィールド中に響き渡った。

 

 

だがその硬質で無機質な音は、福音からではない。

 

 

 

 

『そんな・・・・有り得ない・・・私の攻撃に、反応できるだなんて・・・!』

 

 

 

イーリスさんの乗るIS、ファング・クエイクが、福音・・・・つまり、俺に殴れれた事による音だった。

 

 

 

 

(いや、驚いてるヒマは無い。すぐに追撃して少しでもダメージを与えないと・・!)

 

 

 

ズダダダダダ!!

 

 

 

羽ばたくようにエネルギー弾を浴びせ、俺は一度後ろに下がる。

 

 

 

(今までと感覚が違う・・・!? 次に何をすべきかが一瞬で解るような――――)

 

 

 

 

 

―――――その時、俺は気付いた。

 

気付いたのに理由なんてない。理論もない。だがそれでも、理解した。この決定的で絶対的な変化に。

 

 

 

 

(わかる・・・・ナターシャさんが何をしたいかが、全て―――――――!!)

説明
これは、米国の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』に憑依転生してしまった少年と、その操縦者であるナターシャ・ファイルスの噺である。
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IS インフィニット・ストラトス 

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