境界線上のクロニクル3 |
「ハイ、それではこれから臨時の生徒会兼総長連合会議を行います」
武蔵中央後艦、奥多摩にアリアダスト教導院の正面橋架、正門側に降りていく階段の上に、制服姿の影が幾つかある。
トーリを中心とした仲間達、喜美や点蔵、シロジロにハイディという面々だ。
先ほどの声を発した少年、ネシンバラは、宙に表示した鳥居型の鍵盤を叩きながら、
「本日の議題は、葵君の告白を成功させるゾ会議ということで、書記である僕ネシンバラの提供でお
送りいたします。
ーー皆、適当に弄ちゃっていいよ?では葵君、どうぞ」
という本気でどうにかしようとする気がないような始まり方であった。
それから話が進んだり点蔵を弄っていると、
「ーーーーオッパイは、揉んでみないと、解らない」
トーリのオッパイに対する熱意が込められた句ができた。
「無差別に上の句読むなよ!!」
本日三回目のツッコミにトーリは眉をひそめた。とその時、
「その句じゃ季語がないぞ、トーリ」
落ち着いた声で冷静にツッコミをした人物が教導院から出てきた。
「おう小狼、確かにその通りだな。んー、どうしよ?」
「別にいいんじゃないか、お前の胸に対する思いがはっきりとでていて良いと思うな俺は」
「いやあの小狼君、今の場面でその台詞は間違っているような気がするんですが」
子供のころからトーリ達と関わっていく内に小狼は並大抵のことでは動揺しなくなっているので、
このくらいのボケなら生来の真面目スキルで普通にツッコミを入れることが
出来るようになったいた。
とそうしている内に話が進み、校舎の方からネイトと酒井学長がやってきた。
「−−って話で、トーリが明日、コクるんだってね。で、正純くんはどうすんの?さっき言った
通り、トーリ達は教導院で騒ぐみたいだけど、一緒になって消火器煙幕でもする?」
「私は副会長ですっ。そんなことをしていると聖連に知れたらーーー」
「大丈夫。連中と同類だって見られるだけだよ。」
「じゃあ駄目じゃないですか。−−ーーお前はどうするんだ小狼?」
「さてどうしようかな、三河から帰ってきて余裕があったら参加しようと思うけど」
そして小狼は、不意に横目で正純を見ると、口を開く。辺りを見回しつつ、
「何か変だな。正純は気づいたか?」
「変?というと・・・」
問い返した正純は辺りを見回した。
だが、ややあってから、解らない、というように正純は首を傾げる
と小狼は関所を指さす。待機場に並ぶ受け取り待ちの貨車の郡を見て、
「学長、何か知ってますか?」
「シロジロから聞いたんだけど、三河からの買い付け発注が少ないんだってさ。
確かに、いつもはもっとこっちからの荷もあったんだけどなあ。今回は妙に無いな」
眉をひそめる酒井に、一歩を先に進んだ正純が振り返りつつ言う。
「・・・三河が人払いを進めたのか、怪異の人口減少で物資があまり要らなくなったということでし
ょうか。それでいて自分からは物資を武蔵に送るのはまるでーー」
正純は言った。
「三河が、死ぬ前に形見分けをして、自らを世間から隔絶しようとしてるみたいですね」
「おいおい、おっかいこと言うなよ、ただでさえ三河は鎖国状態なんだからな。だがまあ・・」
よく解らんねえ、と酒井が頷いたときだ。
不意に、上から影が来た。頭上。雲のような、大きな影が空を渡っていく。
「あれはーーー、船か」
見上げた船影は一つではない。ほぼ直線に数艦が来ている。そして西側、山並の上に、重低音を響かせ
て行く一際巨大な白い艦は、
「KPAItalia所属、教皇総長インノケンティウスが所有するヨムンガルド級ガレー{栄光丸}。
護衛はトレス・エスパニアの警護隊か。たしか新型の大罪武装の開発要求と聞いていたが」
と小狼は空を見上げながら言った。
「そうだ。世界のパワーバランスを担う、世に八つしかない都市破壊級個人武装。七大罪の原版とされ
る人間の八想念をモチーフとした武装で、使用者は八大竜王と呼ばれている」
「で今回教皇総長がわざわざ来るのは、七大罪の一つで{嫉妬}だったか」
「そうだ。ただまあ噂だがな」
「ところで小狼と正純君はさ、・・・・大罪武装につきものの噂って、知ってる?」
「つきものの噂・・・・ですか?」
「−−−−−−−−大罪武装は、人間を部品としているんだって、そんな噂だよ」
「さて、正純君、とりあえず俺を送った書証を得たら、後は戻って遊んでていいから」
「あ、はい。あと酒井学長、松平四天王だったら知っているかと思いますが、もし忠勝公の息女にあ
ったらよろしく言っておいてください。私、昔に同級生だったことありますから」
「ああ、いたなあ。・・・今日来るかな?まあ、会ったら行っておくよ」
「有難うございます。こっちはちょっと調べようと思うものがあるので、それに専念します。」
「何を調べるんだ?」
「{後悔通り}だ。それを調べると皆のことがわかるからって言われて」
すると眼前で、酒井が笑い、小狼が笑んだ
いきなりの表情の変化に正純が言葉を失っていると。
「すまない正純、−トーリの告白というイベントを控えて、
あいつらもその祝いやらなんやらだろうし、夜には教導院でお祭り騒ぎだし、
そして東宮だった東はその身分と力を捨て武蔵での生活を再開し始める。
三河では元信公の指示で今夜は花火や祭で賑やかになるし、
全部バラバラのようでいて、・・・・・・・新しい動きと祝いの動きだ」
一息の後に、小狼が続けた。
「{後悔通り}を知ることで正純の新しい動きになると思うよ」
さらに一息入れ、
「俺にもまだまだ解らないことは沢山あるけど、それでも正純が俺や、トーリ達の側に来ることを、
俺は祈ってるよ」
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前書いた「境界線上の剣士」と少しかぶっているところがあります | ||
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