万華鏡と魔法少女、第十四話、悪の忍 |
時の庭園の城内にある玉座の間
そこは、先程の嵐の様な戦闘、それと絶叫が木霊したのがまるで嘘の様に静寂した空気が漂っていた
万華鏡写輪眼、『月読』の幻術の世界にへとプレシアを誘ったイタチは眼が虚ろなまま両手を苦無で抑えられ血を流している彼女の側からそっと立ち上がる
彼の衣服には、先程まで拷問に近い痛みつけ方をしたプレシアの返り血が所々見当たる
ひとまず、プレシアとの戦闘を終えたイタチは静かに開眼していた写輪眼を閉じ、元の瞳にへと戻した
ひとまず一通り事は済んだ…後は、
イタチは虚ろな瞳で苦無により壁に磔になっているプレシアの懐を漁り何かを探し出す
そして、彼はその彼女の懐の中から何か物を触った様な手応えを感じるとそれをそっと取り出した
彼女の懐から取り出したそれを確認する様に自身の視界へと移すイタチ
「…やはり、持っていたか」
彼はプレシアの懐から取り出した物質を見て予想通りといった感じに呟いた
妖しくイタチの掌の上で光るその物質、その名をジュエルシードという
クロノ曰く、あらゆる問題を引き起こす原因と成りかねない危険性があるロストギアらしい
プレシアがフェイトに集めさせていた願いが叶うという品
とりあえず、イタチは彼女の懐から取り出したジュエルシードを自身の袖の中にーーーー
「何…してるんだ…アンタ…」
仕舞おうとした途端、
その声を聞いてピタッとジュエルシードを持っていたイタチの腕が止まった
彼はゆっくりと唐突に声が聞こえてきた自身の背後にへと身を翻して振り返る
そこにいたのは、
驚愕の表情を浮かべて眼を見開いているアルフの姿だった
しかし、イタチは至って冷静でそんなアルフに向かい無表情のまま淡々と答える
「…何って…見て分からないか? 彼女からジュエルシードを頂いているんだ」
「…そういう事じゃない! 何でアンタがプレシアをそんな風にしてるんだ!」
彼女は虚ろな瞳のまま壁に磔にされたプレシアを指差し、声を荒げる
プレシアはフェイトの実の母親と知っておきながら、
この現状はあまりに酷く、アルフには目に余るものがあった
しかしながら、それに対してイタチは平然とした様子で淡々と語り出した
そして、次の瞬間
彼の口から紡がれたその言葉にアルフの中に同時に戦慄が走った
「…興味が無いな…、俺の目的はただジュエルシードの回収だ」
「…なん…だって…?」
イタチが口走るその一言にアルフは喉から言葉が出てこない
それは、彼女の中で同時にイタチにへと抱いていた信用が砕け散った瞬間だった
彼の持つ人としての人間性
それは、自分と同じで形はどうあれ、決してフェイトは傷つけず大切にし彼女の笑顔を護る為に行動するとばかり思っていた
しかし、アルフが玉座の間に入って来た時に彼女の視界の中に入って来た光景
それは…ジュエルシードを回収して、
平然とフェイトの実の母親をこの様に容赦なくボロボロにしているイタチの姿だった
一歩間違えれば、プレシアの身体は取り返しのつかない後遺症が残るかもしれない程の重傷を負っているのが遠目でもアルフにはわかった
そんな事になれば、悲しむのは間違いなくプレシアの姿を見たフェイトである
イタチはそこまで浅はかな考えを持って、プレシアをこんな風にしているとは彼女は考えられない
そのイタチの真意を確認する為に投げかけた疑問
だが、それはアルフの抱いていた物を崩壊させる物となって返って来たのだった
アルフは怒りを込めた罵声をイタチにへと投げかける
「ふざけるなァ! フェイトの気持ちを全て踏みにじる気かあんたは!」
城内に木霊するその怒りが込もるアルフが発するその罵声
だが、イタチは相変わらず冷静な表情を浮かべたまま彼女を見下す様にこう言い放った
まるで怒りを露わにしてしているアルフを煽るかの様に
「…知らないなそんな事、興味も無ければ関心も無い…」
アルフの怒りに対してイタチの感情も何も込もっていない無機質な言葉
彼女はこの時、確かになにかが自分の中で切れるものを感じた
アルフは感情のままに眼の前のイタチにへと飛びかかってゆく
「…イタチィィぃぃ!」
響き渡る彼女の怒号、大声
だが、イタチは飛びかかって来た彼女をヒラリと身をズラして軽く華麗に避ける
そして、攻撃目標を失った彼女の横腹にイタチは容赦無く
「…グハァ!」
自身の持つ左膝を突き上げて彼女の身体に打ち込んだ
アルフの身体は宙に浮いて、彼女は口から赤い鮮血を吐き出す
だが、そこでイタチの追撃は終わらない…
次に彼は両手を組んで宙に浮いている彼女の首の後ろに狙いを定めてそれを振り下ろす
組まれ振り下ろされた両手はアルフの後頭部にある首元にヒット
彼女は身体を地面に叩きつけられて意識を失う
その様子が見えたイタチはアルフを思いっきり自身から遠ざける為、右脚で彼女の身体を蹴り上げた
…玉座から大きく吹き飛ぶアルフ
彼女の身体は地面に叩きつけられるとそこから二転三転と何も反応を示さないまま転がってゆく
そして…ある程度、転がった所で彼女の身体は失速し力無く地面にへと伏した
それを、玉座の上からまるで見下す様に黙ったまま見るイタチ
地面に倒れ伏した彼女は咳き込みながら、血反吐をぶち撒ける
「…ハァ…ハァ…イタチ…あんたは一体…」
「…言った筈だ、俺はジュエルシードを回収するしか興味は無い…と…」
上体を上げて横腹を抑え苦しみながら訪ねてくるアルフに冷たい視線を向けながら答えるイタチ
そして、この時彼女は全てを悟った
それを把握した彼女はなんとも言えない憎しみ、怒り、悔しさを胸に秘めポツリ、ポツリと語り出す
「…そうかい、今全部わかった」
自分にプレシアの所に案内させた事、自分達に近づいた事
そして、管理局の関係者であるクロノとの繋がり、利用していた事
彼女の中で全てのピースが当てはまり繋がった
「…あんた鼻っから…」
全ての事がわかったアルフは怒りで身を震わせながら、イタチにボロボロにされた身体を無理矢理地面から起こす
そして、自身が導き出した真実、彼の思惑を暴露し始める
「…私達と管理局員であるクロノを利用して、ジュエルシードを全て回収し己の願いを叶える算段だったんだね!」
苦しみながらアルフは声を上げて、そのイタチが抱いていた野望を語る
そう、考えると全てがだいたい辻褄が合う
まず、フェイトと自分に何気なく接触し行動を共にしたこと
管理局員であるクロノの信頼を集めていた事
よくよく考えてみるとおかしな事だらけである、そしてその事から考えられるものは一つ…
自分達が集めていたジュエルシードを全て横取りし、
ーーーーイタチ自身の願望を叶える事
彼女はようやく悟ったのだ、この偽善者ぶった人物が腹黒く自分達を騙していた事に
声を荒げながら導き出した真実について語る彼女にイタチは変わらず平然とした態度で話し出す
「…愚かだな」
彼女をまるで馬鹿にするかのように見下しながらそう言い放つイタチ
すると、彼は自身の懐に手を突っ込み何かを取り出し始めた
そして、片手で取り出したそれをアルフの前に堂々と提示する
その瞬間、アルフの顔が驚愕の表情にへと変わった
「…そ、それは!」
唖然としながらイタチが提示したモノに驚愕の色が隠せないアルフ
イタチは変わらずの無表情のまま取り出したそれについて語り始める
「…本当に随分と簡単に拝借出来た…儲けモノだなこれは」
そう…イタチが取りだしたのはそれぞれの色の光を放つジュエルシード
それは確か、全てフェイトが封印し持っていたモノだ
つまり、イタチがフェイトから盗み取ったという事である
無表情でそれを提示するイタチにアルフの表情が一気に怒りで満たされていった
「…イタチィィィィィィ!!」
「…ほう、まだ吠えるだけの力は残っていたか、その精神力は高く評価してやろう」
イタチは怒りを露わに吠えるアルフに冷たい視線を投げつけながらそう呟くとゆっくりと倒れている彼女にへと近づいてゆく
当然ながら、自分に近づいてくるイタチに警戒を強めるアルフ
そして、彼は独り言の様にアルフにへと話し出した
「…人は誰もが己の知識や認識に頼りに縛られ生きている…
それを、現実という名で呼んでな…」
イタチは変わらず冷たく重たい口調で言葉を区切り、紡ぐ様に続ける
アルフは沈黙したまままるでイタチのその話しに吸い込まれる様に、
彼が紡ぐ言葉に息を呑み沈黙し痛む身体を横たわらせながら静かに耳を傾けた
「…しかし、知識や認識とは曖昧な物だ、その現実は幻かもしれない…人は皆、思い込みの中で生きている…そうとは考えられないか?」
「…何…言ってやがる」
イタチの問いかけに意味が分からないと言わんばかりに表情を曇らせて言葉を発するアルフ
彼女に近づきながら語っていたイタチは暫くしてその足を止め
倒れているアルフを冷たく突き刺さるような視線を向け、見下す様な形で静かに口を開いた
「…お前にはとりあえず静かにしていて貰うとしよう…真実はどうせ見えてきやしないのだから…」
「あんた一体なにをッ…」
アルフが自分を見下しているそうイタチに訪ねたその瞬間、
彼の眼、三つ巴の視線がアルフの視界の中に入ってくると同時に、腹部にとてつもない重い衝撃と激痛が同時に襲いかかった
思わず苦痛に歪む表情で顔を曇らせるアルフ
彼女の身体は暫く宙に舞い、落下すると共に激しく地面に叩きつけられて軽く弾ける
そして、咳き込みながら口から赤い血を吐いた
イタチはそれを見て、再び彼女にへと近づくと身体を無理やり立たせて腹部に向けて、自分が構えていた拳をめり込ませる
アルフの意識はイタチが自分の腹部に拳を加えた所で真っ白になり、完全に途絶えてしまった
イタチはゆっくりと彼女にめり込ませた拳を引く
そうして、イタチから拳を引かれ支えを失ったアルフの身体は、まるで崩れる様に地面にへと音を立てて倒れ伏す
それを横眼に確認した彼は開いていた三つ巴の眼をゆっくりと閉じる
…これで、役者は揃った後は主役を待つだけ…
イタチは倒れ伏したアルフから踵を返して、ある場所にへと静まり返った玉座の間に足音を立てながら歩いてゆく
…先程の戦闘やアルフの叫び声が嘘の様に沈黙した空気が辺りを包み込んでいた
そうして、踵を返して歩いていた彼は進めていたその足をピタッと止める
ーーーーー玉座の前、
静まり返った玉座の間の中で唯一、部屋を一望出来る中央に位置する玉座
その玉座にイタチは静かに腰掛けると足を組んだまま静かにその眼を閉じる
…玉座に座る彼の傍には苦難により、出血しボロボロのまま壁に貼り付けになったプレシアテスタロッサの姿
そして、その部屋の片隅には傷だらけのまま横たわるアルフが力無く倒れ伏している
この部屋を支配しているのはイタチだけ…
沈黙だけがこの部屋を支配し…
赤い雲の忍は足を組んだまま静かにその時を待つ
彼女達が自分の前に現れるその時を…
彼女達と過ごした楽しかった日々はこうしてイタチの中で完全に幕を降ろす
どうなった道筋をこれから彼が歩んでゆくのか
それは最早、誰にも分からない…
説明 | ||
沢山の血を流し、同じ一族を手に掛けた一人の男 彼は唯一の弟と対峙して命を散らせた。 愛する人も友も家族でさえ手に掛け、たった一人の愛する弟の為に命を賭した そして、死んだ筈だった彼は自分自身が居た世界では無く、 気がつけば違う世界の中に存在していた そんな彼の前に現れた一人の金髪の魔法少女 彼女と出会った彼はどの様な結末を迎えるのだろうか… NARUTO、うちはイタチとリリカルなのはのクロスオーバー作品です未熟者ですが、宜しくお願いしします |
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