IS ラウラが夫!俺が嫁!? 〜第四話 また、買い物? 準備だよ。〜 |
『もう夏だね。』
そんなセリフが似合う天気。
「きょーもいー天気ー」
某栄螺アニメのフレーズを呟きながら、爽やかな風を浴びる。
現在位置は学園の屋上。初夏の風が吹き抜けていた。
「いー天気ー。まじでいい天気。昼飯なに食べよーかな〜。」
因みに、ここには俺一人しかいません。要は独り言。
ここに人がいないのはかなり珍しい事だ。ちょっと嬉しい。
「一人は楽しいなぁ。」
「おーい、竜也」
「む」
背後から声をかけられる。当然、その主は。
「よ。やっぱりここだったのか」
IS学園唯一の男子、織斑一夏(失礼、俺を入れたら唯二)。
この初夏に似合うさわやかさを漂わせやがって。
「楽しい一人の時間を…。」
「気にすんなよ。」
「気にしろよ。」
言いながら、俺に向けて缶を投げる一夏。
それを受け取り、品名を確認して苦い顔を見せる。
「おぉい、缶コーヒーはブラックにしやがれ」
「あぁ、すまん。」
「まぁ買ってきてくれただけでも嬉しいからいいけどさ。」
つぶやいて缶を開け、仰いだ。
「で、何か用か?」
「あ、そうそう。」
何気ない質問、空いた一拍。
その次の言葉に、俺は戦慄し、コーヒーを吹くこととなる。
「付き合ってくれ。」
「………ごめん、むり。」
巡回バスの窓から外の景色を眺めながら、大きく溜め息をつく、俺。
窓に映る顔は朝と違って、かなり疲れていた。
「言い方ってもんがあるだろうよ」
「そうか?伝わったじゃん」
「ダメだぁ。シャルル、こいつはダメだ」
「はは…」
『付き合ってくれ』は、買い物に付き合ってくれという意味だったらしい。
あぶねえあぶねえ、この小説にもう一つタグを追加しなきゃいけないところだったz(ry
「何かまずかったか?」
「だーいもーんだーい☆」
いきなりそんなことを言われて、ホイホイ着いて行く奴はそういないよ。
難しいなぁ。こいつの言葉は俺には難しい。
シャルル…いや、シャルロットも苦労するはずだ。
「で、俺も呼んだわけ?」
「あぁ。一人で水着を買うのは気が引けてよ。お前が来てくれれば楽かな、と」
「ふーん。」
シャルルの誘いにわざわざ俺まで呼んでくれるとはね。嬉しい限りじゃないの。
…なんて言うか、
「…やっぱりダメだよ、シャルル。」
「だよね…。」
「?」
俺たちが顔を合わせてうなずいている間、阿呆は疑問符を浮かべている。
今度はシャルルが聞いて来た。
「そう言えば。竜也は?」
「何がよ。俺はここにいるぞ」
「そうじゃなくて!ラウラは?」
「…あ」
最近、部屋にも潜り込んで来なかったから忘れていた。
殺されるな、これは。
「……ふぅ、竜也も人のこと言えないね」
「確かにな。やーべー、どうしよう…。」
埋め合わせの日にちと、土下座の用意と、火葬場の確認をした時。ふと思い出した。
「シャルル、そういえばと言えばそういえば。」
「なに?」
「お前、確かラウラと相部屋だったよな」
「え」
だったら、シャルルからラウラに言えばよかったはず(責任転嫁だが)。
シャルルは申し訳なさそうに。
「えと…今日のことで一杯々々で…。」
「あー、はいはい。悪かったよ」
恋は盲目だなぁ。
それでも隣で、シャルルに向かって『何もじもじしてんだ?トイレか?』って聞く一夏は放置。
目的地、毎度おなじみのレゾナンスに着いたところで、バスから降りた。
「さて、どこから回るか?」
「そうさなぁ。」
「………」
シャルルさんがこちらを見て来るよ。若干怖いよ。
でも、ここで空気を読んでも、俺ひとりぼっちになっちゃうしなぁ。
……お。
「ちょっとトイレ行って来るから、お二人は先に行っててくれ」
「ん、そっか。じゃあ行くか、シャル」
「う、うん!」
アイコンタクト。
『ありがとー、竜也!』
『感謝しやがれよ?頑張ってな』
終了。
二人の姿が人混みに飲まれるのを見て、歩を逆方向に向けた。
「さーて、と」
柱に寄りかかり、軽く呟く。
「どうかしましたかね、Frulein(お嬢さん)?」
「!」
柱の影から、ラウラが登場する。
「尾行かい? 趣味が悪いなぁ」
「……ふん」
あ、やべ、怒らせたか。
えーと、こういう時は…。
「ラウラ」
「…なんだ」
シャルルに教わった通りに、行動に移す。
右手を差し出し、口を開く。
「一緒に、買い物に付き合ってくれませんか? 可愛いラウラ」
「なっ・・・」
真っ赤に頬を染め、俺の手に小さな手が重ねられた。
「し、仕方ない……付き合ってやる……。」
「ありがとう。」
手を繋いで、歩き出す。
が、ふと一つ気づいた。今日はそんなことが多いな。
「ラウラ、この前の服は?」
「ん、汚してはいけないからな、部屋にしまってある」
ラウラはいつも通りの制服姿だった。
『うーん、悪くはないんだけど。』
「やっぱり、着てくれると嬉しいんだけどな」
「か、考えておこう…」
買うものは少ないから、特に見ることがない。
水着売り場に、真っ直ぐ向かった。
「よし、ここだな」
レゾナンス2階、水着売り場。
店内に足を踏み入れた時に、ラウラがモジモジと声をかけて来た。
「…ゃは……」
「んー?」
「り、竜也は…わ、私の水着姿は…見たい、のか?」
なんか…あれだ。
行動が、一々可愛い。ヤバイ。
「当然。楽しみだよ」
「そ、そうかーー。そうか、そうか」
何度も、自分に言い聞かせるように頷くラウラ。
そうこうしている間に、シャルル&一夏ペアを発見。
「お、竜也。遅かったな…あれ」
「よ。ラウラと "偶然" 出会っちゃってね。」
「へー、"偶然" ねえ…。」
「う…。」
ラウラは、シャルルとこそこそ話を始めた。
その後、シャルルがこっちにやって来る。
「少し、別行動にしようか。」
提案系だったが、目は『別行動にするからね』と言っている。なんかシャル怖い。
そんな感じで、現在一夏と二人。
「何にする?」
「かぶらない方がいいだろ?」
それはそれで、女子人気が増えそうだが。
「んじゃ、俺はこれー」
適当に、トランクスタイプの水着をとる。
色は黒、ところどころに白いラインが入っているが。
「それじゃ、俺はこれにするか。」
一夏も決まったようだ。
と、そこで女子二人が帰って来る。
「おー、決まった?」
「うん、大体は。それで、二人にも見てもらおうと思ってさ」
「俺らに?」
まぁ、見たいけども、なんかなぁ。
何か言おうか迷っていると、一夏は連れて行かれた。
ラウラと俺だけ、取り残される。
「…………」
「…………」
くっ、俺はどうすればいいんだ!?
仕方ない、かくなる上は…Yah○o知恵袋(伏せきれてねえ)に助けを…
「その…」
「……私の水着は、決まっているのだ」
「あ、そうなんだ」
「だが、シャルロットに言われてな」
「…………ラウラ」
わしゃわしゃと、ラウラの頭を撫でる。
「ひゃっ!?な、なにを」
「嬉しいんだけど、やっぱり…海で見たいな」
「……」
そう言うと、ラウラは表情を少しだけ曇らせたが、
「…分かった」
と言って微笑った。俺の頬も少し緩んだ。
「じゃ、レジ行くか」
「ああ」
レジまでゆっくり歩いていると、不意に客と思わしき女に声をかけられた。
「ちょっと、そこのあなた」
「?」
周りを見回す。女の視線の先には、竜也一人。
「俺?」
「そう、あなた。そこの水着、片付けておいて」
……またか。
なんか、説明するのも面倒だが…ISが生まれてから、女尊男卑がガンガンに進んでいる。
おかげで、ISをもっていない、こういうのまで調子に乗って…。
適当に、おどけて誤魔化すか。
「ごめーん、俺バカだからやり方わかんなーい☆」
「…バカにしてるの?」
「バカになってるの(笑)」
ぷち、と、女の青筋が切れる音がした。
「…ふん、まぁ仕方ないわね。男なんてそんなものよ」
すげえ、俺全世界の男代表だよ。
「アホで、礼儀知らずなのが男のあり方よね」
「……おい」
「ん?」
あ、やばい。これはまずい展開だ。
ラウラが女を睨みつけていた。
「私の嫁の悪口を言うのはやめてもらおうか。」
「よ、嫁?」
「ラウラ、外でそれ言うのやめよう。みんな見てるし」
「む…しかし、お前はバカではないし、礼儀だって知っている。料理だって上手い」
「おいおい」
女は俺たちの姿を眺めて、鼻で嗤った。
「なんだ、あなたの連れ?全く、男が男なら飼い主も…」
「…何だよ」
「っ!?」
女のそこから先の言葉は読めていた。ちょーーっとキレたよ?
俺を馬鹿にするならまだいいさ、ただラウラを馬鹿にするのは許せないな。
「調子に乗ってていいのか?」
「な、何よ!?文句あるの!?」
「んー?俺はバカだから別にないが……ま、夫の悪口言われそうになったら…ねえ?出ないワケには行かないでしょう」
睨み、言いながら頭を掻く。
女はたじろいで、
「な、なにかするつもり!?警備員を呼ぶわよ!!」
「…あのさぁ、お嬢さん」
「何よ!」
「あんまりバカと話してると…」
目への力を抜き、微笑む。
「バカになるよ」
「なに言って………うっ!?」
女は急にふらつき、口から泡を吹いて気絶した。
「ほら、バカになった」
「…竜也」
「あ、ごめんラウラ。待たせたね。…あんなに褒められるとは思わなかったけど」
「あ」
今頃赤くなっても遅いよなぁ。可愛い。
「そ、そんなことはいい!」
「えー、もっと褒められたーい」
「こ、これはどうするんだ?」
「む、うん。警備員さーん」
近くにいた警備員を呼び、女を運ばせる。
その運ばれて行く様を眺めて、少し心の中で微笑った。
「さて、一夏達と合流しようか」
「あぁ、そうだな」
「私が案内してやろう」
「あ、お願いしま………はっ!?」
振り向いたが、時すでに遅し。
顔面で、出席簿を食らう羽目になった。
「ぐぼわあぁああいうえおーーーー」
「こんな所で何をしている、馬鹿どもが」
「きょ、教官!どうしてここに!」
そう、織斑千冬。彼女だけで無く、副担任の山田先生まで一緒にいた。
「…もしかして…」
「あぁ、最初から最後まで見ていた」
「ナ、ナンダッテーーー!」
「全く…一般人にあれをやるとは」
ガシ、と音がする。…ガシ?
「お前もこっちに来い。ラウラはその辺りでも見ていろ」
「ぎにゃーー!助けてラウラーー!!」
「……すまないっ……」
千冬に連れて行かれた先には、シャルロットと一夏が正座をして待機していた。
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第四話。次話は随時アップしていきます。 | ||
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