真恋姫†夢想 弓史に一生 第一章 第一話 流星と共に…。 |
「ここは…一体…??」
呆然と立ち尽くすその男は、時代に似合わぬ格好をしていた。
〜((徳種|とくたね)) ((聖|ひじり))
それが俺の名…。
年は21歳、理系の大学に通う普通の大学生…だと思う。
特に筋肉質だとか長身とか言うわけでもなく、イケメンというわけでもなく、頭もいいとは思わない。普通の青年男性。この言葉が一番当てはまると思う。
唯一違うと言うなら、家が道場であることぐらいだろうか…。
俺は爺ちゃんの教えで弓道、小笠原流を小さい頃から学んでいたし、その爺ちゃんの影響でテコンドーもやっていた。
まぁ、どちらも段は持っているので、それなりには出来る方だと思う。
ついさっきまで、俺は県内の某理系大学にいた……はずだ……。
この大学に昔から入りたいと思っていたため、必死に勉強したのもいい思い出だ。
そして今、大学生になって思うのは、あのときの勉強の6割がたは意味の無いものだってこと。
自分の進むべく道に必要ないものは今さらやってもしょうがないってこともあり、大学では授業をとらないのだから、必然文系科目なんかは抜けていく。
その分、専門的な分野は深く深くやっていくものだから頭もこっちにシフトしてしまうのはしょうがないと言えるだろう。
覚えている限りではあの時は確か………授業が終わり、友達と談笑していたはずだ。
友達は俺のことを「太子」とか「トクダネ」とか呼ぶ。
まぁこんな名前だから仕方ないのかもしれないけどな………。
「太子」って俺は一気に十人弱の人の話は聞けないぜ!!
「トクダネ」って…俺は八時からか?? あっざいま〜す!!とか言いながら番組が始まるのか?? 小○さんが出てくるのか?? アマ○ツ呼ばなきゃいかんのか??
まぁ気にしたらおしまいかな…。渾名だしねぇ。
そんなこんな、話をしていた時に教授に呼ばれ……そうそう、確か研究室に向かったはずだ。
どうやら、急ぎの用事だったらしく早く来るように言われたな……。
その時は、『教授に呼ばれるって……何かしたっけかな……。』と考えたんだが……。
『先週、教授の部屋の花瓶があまりに開運な○でも探偵団に出てきたのに似ているので黙って偽者と摩り替えたことがばれたのだろうか…。 それとも、中庭の木々に「肥料だよ」って言いながらVW(ビタミンウォーター)をぶっ掛けたことだろうか…。 それとも、教授の三時のおやつの隠し場所を知っていたがために、隠れてちょこちょこ食べていたことがばれたのか…それとも…。』
と、思い当たる節が多すぎて考えるのをやめたんだよな…。
しょうがなく友達に別れを告げたあとで、研究室に向かって…。
その教授の研究室は別館にあるから、白を基調とした階段を一気に下り、玄関をくぐって……。
外にでると、さわやかな春先の日差しと少し肌寒いくらいの風がシャツの隙間から全身をめぐって…都会の喧騒はあるが、それさえ気にしなければとても居心地のいい世界だなと感じたんだ…。
青い空には白線が二本、雲無い快晴とはこういう日を言うんだろうな…と感傷に浸っていると何か見なれない異物をその空に見つけて…。
「あれは…何だぁ?? 光っていて…動いてる?? 衛星か何かかな……??」
そんなことを考えてるとその物体が眩く輝いて……。
「うわっ!!まぶしい!!」
そう思った刹那意識を失ったんだ………。
起き上がるとそこには見たことの無い世界。
左を見れば果てなき台地が広がり、右を見ても果て無き大地…。
こうして、初めの状態に至る…。
〜回想終了〜
〜聖side〜
「ここは、何処だ…。」
まず初めに思うことはこれだろう。
見たことの無い景色。俺が今まで居た世界とは明らかに違う様子。見た感じでは、なんとなく中国っぽいかな…。
「とりあえず、現状の整理からしないと…。えっと…持ち物は あ〜…大体かばんの中だよ…。ポケットには…」
その時になってやっと、自分の格好がおかしなことに気付く。
「あれっ!? これは俺が道場で使ってる弓道衣だ!! 右手にも?(ゆがけ)が…、傍には…これは…家の家宝の弓『蛇弓』だ…。それに矢も…。 …何が一体どうなってんだ??」
空を見れば日はまだ高く輝いている。
「とりあえず、情報が欲しいから動いてみるか…。近くに町とかないかな…。」
そう思い、とりあえず行き当たりばったり。風のふくまま寅さんの如く、歩き始めたのだった。
この先に待つ、幸と不幸が俺の人生を変えることを、まだこの時の俺は知ることは無かった…。
って、何処のドラマだよ!!
とりあえず当ても無くただ歩いてみる。
季節は春のはずなのにやたらと暑い…。
荒廃した土地であるので影になるものが存在せず、そこらじゅうが日向であるので当然か…。
「それにしても、こんな地域日本にあったかな?? 」
ここまで建物が建ってない地域など日本で見たことが無い……というか、日本は山国である、山の一つぐらい見えてもいいと思うのだが…。
もしかして、ここは日本ではないのか…。でも、だとしたら一体…。
「ちょっっと待ぁちな!!」
この世界について思案している時、急にかけられた声に驚き、振り返る。
そこには三人の男が立っていた。
左の男はデブ、右の男はちび、真ん中の男がヒゲのおっさんで、それぞれ頭には黄色の布を巻いている。
黄色い布…?? 俺が知ってるのは黄巾賊ぐらいなんだが…。
そのコスプレでもしてるのか?? それとも、時代がついに黄巾を巻くような時代になっちゃったのか?? 黄色いハンカチを家に掲げるようになったのか?? ………それは関係ないか…。
「兄ちゃん珍しい格好してんな!! さぞ金目のもの持ってんだろうよ。」
「金目のものすべておいてきな!!」
「んだな〜。」
なんともまぁ、容姿に似合った言葉遣いというかなんというか……くっくっくっ!!
「お前なに笑ってんだ?? 頭のネジがいかれちまったか?」
「兄貴こいつやっちゃいましょうぜ!!」
「んだな〜。」
そう言って、男たちは刀を抜く。
……おいおいマジかよ…随分と物騒じゃないか……まぁいいけどさ…。
「お前ら…剣を抜いたんなら命をかけろよ。」
「あっ!? なに言ってんだ!?」
「そいつは脅しの道具じゃねぇって言ったんだ。」
太った男を殴りつける。
「ほげっ!!」
「おいっ!!大丈夫か!? ってんめぇ、やりやがったな。」
「何て卑怯なやつなんだ。」
「卑怯?? なに甘めぇ事言ってんだ。お前らは聖者でも相手にしてんのか? お前の前にいるのは海賊だぜ!!」
…良いねぇ。一度で良いから言ってみたかったんだよね。
あっ…俺、赤髪じゃねぇや…まぁ良いわ。わが人生に一片の悔い無し!!
「おめぇ海賊なのか!?」
「いやっ!! 言ってみたかっただけだ。」
「なめてんのか、てめぇ!!」
痩せ目のおっさんが、左から袈裟に切りかかってくる。
それを身を翻しながらかわして、その動作のまま胴回し回転蹴りをお見舞いする。
「ぐふっ!!」
「兄貴〜!!」
一瞬のうちに2人の男をやっつける。
その姿を見て、残ったチビの男は恐怖から逃亡を始めた。
「ひっひぃ〜〜。助けて〜!!」
「………俺が逃がすとでも思ってるのかね…。」
走り去る男の背中に向かって弓を構える。
矢を番えて引き絞り、狙いをつけて……射る!!
矢は、男のすぐ脇を通ってその服を絡め、そのまま地面に刺さる。
「なっ!! 畜生!! 動けねぇ…。」
「よしっ!!狙い通り!!!」
狙い通りにいったのが嬉しく、俺は意気揚々と気絶した二人を引きずってチビの男の所まで行くのだった。
その後、男たちを一箇所に集めた俺は、丁度いいので話を聞くことにする。
「…なぁ、あんちゃん……どうか俺らに慈悲の心を…。」
「それは、てめぇらの態度次第だな……。」
「………何をすれば…?」
「まずは、てめぇらが持ってるもの全部おいてきな。」
「そっ!! それは…!?」
「命あってのことだと俺は思うんだが??」
「……命だけは助けてください。」
「んだな〜。」
そう言うと、男たちは懐からゴソゴソと持っているものを出していく。
「これで全部か??」
「これで、全部です…。」
汚れた手ぬぐいと乾物、ボロボロの徳利とお猪口。
今の状況を理解するのに役立ちそうなもんは何もないか……。
「…ふ〜ん。じゃあ次に、これからお前らにいくつか質問するが良いか??」
「「「………。」」」
「どうなんだ!?」
弓を構えて再びたずねる。
「ひっ!!! 答えれる範囲でなら!!!」
「それでいい。まず、ここはどこだ…。」
「へぇ。ここは徐州、下?国と広陵郡の境だったはずですが。」
「徐州?? 下?国?? 広陵郡??」
「へぇ。」
「………お前ら嘘ついてんじゃねぇぞ!!」
「ひぃっ!!! 嘘じゃありませんって!! だからお願いですから射たないでくだせぇ!!」
男たちの態度を見ればどうやら嘘ではないらしい。
とりあえず、構えた弓を下ろす。
すると、男たちの強張った体が少しほぐれた様に見えた。
……徐州…って言えば、確か三国志時代にあった所だよな…。確か中国のはず。
「……次だ、お前らは何故俺を襲った?? お前たちは何者だ??」
「…そっ…それは…。」
カチャリ…。
「っ!!! みっ…見たことも無い服を着ていたから、きっと金を持っているだろうと思って襲いました!!」
「じゃあ、てめぇらは盗賊ってことで良いのか??」
「…へぇ…。」
「…次だ。今は何年だ??」
「え〜と…確か熹平5年ほどだったかと…。」
…熹平5年?? それって多分、年号だよな…。確か、170年後半の中国だったはず…。
じゃあ俺は、中国の三国志時代にタイムスリップしちまったってのか?? んなふざけた話しが…。でも、こいつらの格好とか見るとそうも思える…。
「まぁ大体分かった…。お前らもう悪さすんなよ。」
そう言って賊の男共を解放する。
「へぇ。それじゃあ俺たちはこの辺で……。」
「さっさと帰るんだな…。 でないと…カチャリ…。」
「ちょっ!!! おいっ!! さっさといくぞ!!」
「待ってくださいよ、兄貴!!」
「んだな〜!!」
最後にその言葉を残して男共は去っていってしまった。
さて、どうやら俺は大変な世界に来ちまったみたいだな…。
戦乱の真ん中に一人ぽつんと立っていて、そこはタイムスリップした歴史の中の一節だった!! …とかどこの中二設定満載の小説だよ…。
まぁ、考えても埒が明かん。
まずは…………あ〜!!!
「おい!!!てめえら!!」
時すでに遅く、その声は誰も居ない虚空の中にさまよっていく。
はぁ〜…また1から町を探さないといけないのか…。
いっそ、あいつらに近くの村まで送ってもらえばよかった…と思っても、もう後の祭り…。
とりあえず街を探しに歩を進めることにするか……。
日は既に傾きかけている。
今日は…野宿かな…。
説明 | ||
先日あげた一話を編集しました。 分かりづらくてすいませんでした。 |
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コメント | ||
<黄金拍車さん コメントありがとうございます。 こんなミスしてるとは……訂正しときますね。 (kikkoman) 「…お前ら嘘ついてんじゃなぇぞ!!」⇒ねぇぞ だからお願いですから打たないでくだせぇ!!」⇒射たないで 弓なので打撃にあたる打つではないかと。同じ理由で今回は撃つも外しました(黄金拍車) |
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