超次元ゲイムネプテューヌmk2 Reborn 第二十話 開幕
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現在プラネテューヌ

 

ネプテューヌ「う――……ん、はぁわわわ…。」

 

口に手を当ててあくびをしながら、ネプテューヌはベッドから上体を起こした。

両腕を天井に向けて伸ばし、ベッドから降りると、ネプテューヌは真っ先に窓のカーテンに向かって歩き出した。

カーテンに手を掛け、太陽の光を部屋に入れようと思い切り横に引っ張った。

 

ネプテューヌ「!!!!……なに……これ…。」

 

カーテンを開けて目にした光景を見て、ネプテューヌは呆然と呟いた。

カーテンに手を掛けていた右手は無意識にズルリと落下し、棒立ち状態のままネプテューヌは外の景色を放心状態のまま見つめていた。

 

ネプギア「……ん…ううん……あれ? お姉ちゃん? どうしたの?」

 

少し間を空けて、ネプギアがベッドから上体を起こしたままネプテューヌにとぼけた声で尋ねた。

だがネプテューヌは依然として外を見つめたままで、ネプギアの言葉に少しも反応を見せなかった。

疑問に思いながら、ネプギアは目をこすりながらベッドから起き上がり、ネプテューヌの隣で日の光を浴びようと傍に歩み寄った。

 

ネプギア「………!!!!!」

 

同じく外の景色を見つめたネプギアの顔にも驚愕の色が見えた。

原因は外の空にあった。

本来であれば白い日の光が映える青々とした大空が広がる――――

 

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

今、2人の目の前に広がるはずの青い大空は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

不気味な血色に塗りつくされていた。

 

 

 

ネプギア「これが……。」

ネプテューヌ「カタストロフィ……。」

 

空を見上げたまま2人は無意識に呟いた。

 

だがそれはプラネテューヌだけで起こっている現象ではなかった。

 

 

 

ノワール「嘘でしょ……。」

ユニ「何なのよ…これ……。」

ノワール(ネプテューヌが言ってたことって……これ!?)

 

 

 

ブラン「これは……。」

ロム「怖い……。(ブルブル)」

ラム「大丈夫だよ。ロムちゃん。」

 

 

 

ベール「空が…赤く? これはまるで……ギョウカイ墓場の…。」

 

 

ゲイムギョウ界全土でその異常現象は起こっていた。

それも寸分狂わずに同時に、である。

 

 

2人が呆然と空を見上げる中、突如として二人の後ろの扉が勢いよく開かれた。

 

イストワール「お2人とも、大変です!!」

 

血相を変えて部屋に飛び込んできたイストワールは、小さな体からは想像もつかないほどの大声を張り上げた。

その声に驚きながらも、2人はすぐさまイストワールの方に振り返った。

肩で息をしているイストワールに目を合わせる前に、イストワールが声を上げた。

 

イストワール「街に…凄まじい数のモンスターが……住民を襲っています!!!」

ネプテューヌ・ネプギア「!!!!」

 

青ざめた顔で話すイストワールから放たれた言葉は、2人の顔色をも同じ色に変えて見せた。

何が起こっているのか把握できないまま、2人に告げられた現実はあまりにも重々しかった。

だがその瞬間、2人のすべきことは明確になった。

 

ネプギア「お姉ちゃん。」

ネプテューヌ「うん。ネプギア、行こう!」

 

互いに顔を見合わせ、それだけを口にすると、2人はすぐさま部屋から駆け出した。

 

イストワール「……。」

 

イストワールはすぐに見送りの言葉を言おうとした。

だがなぜかイストワールはその一言を言えなかった。

2人の背中を見ながら、イストワールは悟った。

このまま送り出したら、もう二度と2人の背中を見れなくなるのではないか、と。

 

イストワール「ネプテューヌさん、ネプギアさん!」

 

言葉を口にした時、もう既に2人の姿は無かった。

静寂に包まれた部屋の中に、イストワールはただ1人、寂しげに静止していた。

 

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

 

現在ギョウカイ墓場跡地

 

GANTZのレーザの照射音が響き渡る中、4人の人影がギョウカイ墓場の地に現れた。

もはや言うまでも無く、その人影は4人のダンピールであった。

そのうちの3人が、転送が終わるとほぼ同時に空を見上げ、口を開き始めた。

 

エスター「すげーや。空が真っ赤ですぜ。」

ライ「やばくねえか? これ。」

レオン「俺と氷室の予想は外れたかもな。」

 

各々が口を開いて緊張感無く感想を述べる中、ただ1人真正面を鋭い目つきで凝視している者がいた。氷室である。

氷室の目線の先、20mほどには4つの影が映っていた。

そのうち3つは、氷室たちの倍近くはあるのではないかと思えるほどの巨大な影であり、もう1つは至って通常のサイズであった。

 

氷室「俺達以外にも先客が居たらしい。」

 

氷室の言葉に反応して他の3人も前に目を向けた。

3人が前の影を認識すると同時に、4つの影はそれぞれ口を開き始めた。

 

???「どういう状況だぁ? こいつぁ?」

 

1つは黒をべースとした機械じみた体に巨大な斧を右手にぶら下げた異型の生物。

 

???「分からぬ。トリック、お前が何かしたのか?」

 

もう1つはカラフルな体をした一見ガン○ム風なロボットの形をした生物。

 

???「アッククク、残念ながら何も知らぬ。マジックよ。おぬしの仕業か?」

 

そしてもう1つは黄色のヌイグルミのような体つきをした生物。

 

???「いや、まあいい。どの道蘇ったからには犯罪神様復活のため、この身を捧ぐのみ。……その前に、あそこに居る4人を生贄にでもしてくれよう。」

 

最後の1つは巨大な羽根のような機械を身にまとい、大鎌を右手に持つ赤髪のツインテールの女性だった。

 

マジェコンヌ四天王、ジャッジ、ブレイブ、トリック、マジックは、会話が済むなり視線を4人の方へと向けた。

4人は目線が合うなり、全員が四天王の方へ向かって歩みを進めながら、口を開いた。

 

ライ「ええっと、つかの事お尋ねしますけど、あんたら誰?」

マジック「我々はマジェコンヌ四天王。私はその1人、マジック・ザ・ハード。」

 

ライの質問にマジックが淡々と答えた。

マジックの言葉に反応を示したのは、ライではなくエスターだった。

 

エスター「あぁ、そう言えばそんなの聞いた。一度は女神に勝ったけど、その後に結局潰されたって奴ね。」

マジック「口の利き方に気をつけろ。女神なんぞ我々の敵ではない。奴らが群れた上での偶然の勝利だ。」

 

エスターの言葉にマジックは顔をしかめながら返した。

直後、レオンは顎に手を当てながら考え込み、口を開いた。

 

レオン「死人が生き返ったって事は……。」

エスター「オイGANTZ〜、お前が何かしたんだろ。」

 

言いながらエスターは足の裏で何度もGANTZの表面を蹴飛ばした。

だがGANTZは黙秘を続けるばかりだった。

エスターは舌打ちをして前に目を移すと、ジャッジの斧を持つ手が僅かに震えていた。

 

ジャッジ「思い出したら腹が立って来やがったああぁぁぁあああ!! お前達を殺して憂さ晴らしさせてもらうぜええぇぇぇぇえええええええええええええ!!!!」

 

ジャッジの怒号は音の無いギョウカイ墓場跡地にこれでもかと言うぐらい響き渡った。

声のうるささに若干顔をしかめながらも4人は好都合、とでも言いたそうな表情で四天王を見回した。

一呼吸置いて氷室が一歩前に出ると同時に口を開いた。

 

氷室「俺がやる。俺1人で十分だろ。」

レオン「まあ待てよ。ここはほら、ちょうど4体居るんだし、あれの調子も……だろ?」

 

もう一歩前に出ようとした氷室の肩をレオンが掴んだ。

氷室は軽く舌打ちをすると4人と顔を見合わせ、右手で作った拳に左手を重ねた。

よく見ると4人ともが同じ動作をしており、次の瞬間、4人の口が同時に開いた。

 

『じゃんけんぽん! あいこでしょ! あいこでしょ!』

 

あろう事か、4人は敵の目の前でいきなりジャンケンをし始めた。

これには四天王も呆れた表情で眺めていた。

もはや呆れすぎて言葉も出ない四天王を尻目に、4人のジャンケンは決着がついたようだ。

 

ライ「よっしゃー!! 俺1番!」

レオン「2番か。」

エスター「3番でさァ。」

氷室「チッ、最後かよ。」

 

ジャンケンで1番を獲得したライは4人よりも一歩前へ前進し、他の3人は後ろに下がった。

対するマジック達もジャッジのみを残して後ろに下がり、最初の対決が決まった。

 

ライ「お前が俺の相手か。んじゃ、準備しないとな。」

 

言うなりライは両手で拳を作り、胸の前辺りで重ね合わせた。

するとライの両手の拳から手首を岩が包み込み、その岩はそのまま金属へと形を変え、2つのガントレットとなってライの両腕に取り付けられた。

 

ジャッジ「ほう、おもしれえ手品だなあ。だがそんな小細工が俺に通用すると思ってんのかあああぁぁぁぁああああああああああ!!!!!」

 

ジャッジは手に持っているライの数倍はあろうかと言う巨大な斧をライ目掛けて振り下ろした。

 

 

ズガアアァァアアン!!

 

 

凄まじい轟音と共にライの居た場所に砂煙が上がった。

だが次の瞬間、ジャッジは自分自身の目を疑わざるを得なかった。

ジャッジの斧は、ライの左手の甲で軽く受け止められたまま静止していた。

 

ジャッジ「何だとおおぉぉぉおおおおお!!!」

 

驚きの表情を浮かべながらジャッジは咆哮を上げた。

刹那、ライの体はジャッジの斧の下から消えていた。

ジャッジがライを見失い、捜そうと周りを見回そうとしたその時―――

 

ライ「ふんっ!!」

 

 

バギャッ!!

 

 

ジャッジの左肩辺りに跳躍したライが、ガントレットに包まれた腕を鋭く横に振り払った。

ライはこの一撃を牽制のための一撃として放ったが、それは牽制ではなく決定打となっていた。

鈍い音と共にライの放った右拳は、ジャッジのこめかみ辺りを打ち抜いた。

打ち抜かれたこめかみからは気味の悪い液体が滝のように流れ出した。

そのままライが手を引き抜いて地面に着地すると同時に、ジャッジは声も上げず、地響きを立てながら前に崩れ落ちた。

 

ライ「弱っ!」

 

ライの率直な感想が思わず口に出て表れた。

つまらなさそうにライは右手に着いた気味の悪い液体を振り払うと両手からガントレットを消し、前に出てくるレオンとハイタッチしながら後ろに下がった。

 

レオン「何だぁ? 四天王って奴は全部こいつみたいな奴ばっかりか?」

 

地面に横たわるジャッジの死体を足で踏みつけながらレオンは挑発的に言い放った。

レオンの言葉にマジック達は鼻で笑いながら口を開いた。

 

マジック「フン、四天王最弱の男に勝ったぐらいで調子に乗るな。」

トリック「アクククク、我々をあんな男と同等に見られるとはな。」

ライ(ジャンケン、負けときゃ良かった……。)

 

マジック達の答えにライは心底がっかりした表情でうな垂れた。

逆に他の3人は『ざまぁ』とでも言いたそうなドヤ顔でにやけながらライに目線を送った。

そんな中、ジャッジを倒されたマジック達は顔色1つ変えずに前に出て行くブレイブに視線を合わせた。

前に出たブレイブとレオンは石ころを見下すような目つきで互いを睨みつけた。

 

ブレイブ「お前が俺の相手か。」

レオン「……随分とカラフルな奴だな。まぁ、どうでもいいか。」

 

言うなりレオンはポケットに納められていた左手を出し、5本の指を軽く開いた。

その瞬間、まるで手の平からそれが生えたかのように水が手の平の両端から勢いよく伸び、一本の棒状の物質を形成すると同時にレオンの手の平の中でその水は実体化した。

レオンの手にはレオンの身長の3分の2ほどの長さの鉄製の弓が銀光を放ちながらしっかりと握られていた。

手に弓の重さを感じると同時にレオンはそのままブレイブの方へ弓を地面に垂直に向け、そこに右手を添えると今度は4本の矢がちょうど手に収まる位置で水から実体化した。

それをレオンは4本一気に引きしぼり、同時に放った。

まるで無造作なその動きと凄まじい予備動作のスピードから言って、ろくに狙いを定めているとは思えない盲射ちだ。

だがレオンの放った4本の矢は、空中でそれぞれ四散し、正確無比なミサイルと化してブレイブの両手両足目掛けて迫っていった。

 

ブレイブ「効かん!!」

 

ブレイブが威勢よく声を張り上げるとブレイブの両手に握られている大剣が足元から頭上にかけて振るわれ、それと同時にブレイブの前に厚い風の層が形成された。

ブレイブを射抜くはずだった4本の矢は、失速すると同時に上へ舞い上がった。

矢が宙に浮いている間に、ブレイブは一気に地面を蹴ってレオンとの距離を詰めた。

 

ブレイブ「うおおぉぉぉおおおお!!!」

 

 

ブンッ!!

 

 

渾身を込めたブレイブの大剣での一閃は、ただ虚しく空気を切り裂いた。

剣が振るわれる動きと同時に、レオンは空中で一回転しながら大剣での一閃を避け、ブレイブの背後を取っていた。

空中に体が在る内に、レオンは左手に持っていた弓を両手で左右に引っ張った。

すると何の抵抗も無く弓は真ん中で2つに割れ、弓に張ってあった水から生成された弦は弓が割れると同時に消え去り、レオンの手には2つのブーメラン状の刃物が握られていた。

これこそが剣と弓との両方の性能を兼ねそろえたレオンの武器、『飛鳥剣』である。

 

 

ビュッ!!

 

 

レオンは空中で身をひねり、そのまま2本の飛鳥剣をブレイブ目掛けて放った。

美しい銀弧を描きながら、2本の飛鳥剣はブレイブへと迫った。

 

ブレイブ「この程度!……なっ!!!(動けん!!!)」

 

後ろを振り返り、大剣で攻撃を防ごうとしたブレイブはなぜか微動だにできなかった。

その原因が先ほどブレイブが弾き飛ばし、今は地面に突き刺さっている4本の矢にあることをブレイブは知る由も無かった。

 

 

ザンッ!! ズンッ!!

 

 

シュルシュルと回転しながらブレイブに迫った2本の飛鳥剣は僅かな位置のずれも許さず、1本目が首を撥ね、もう一本がうなじの下辺りを激しく斬りつけた。

ただ命を奪うだけならどちらか1つでも十分に効果はあったであろうに、わざわざ2つを向かわせたことにその残虐性が窺われた。

首を失ったブレイブは、その場で膝を折り曲げ、地面に膝を突いたままの状態で完全に沈黙した。

 

レオン「雑魚が。」

 

ブーメランの様にレオンの手に戻ってきた飛鳥剣を両手に取ると、ブレイブの死体を見ながらレオンはつまらなそうにそう言い捨てた。

 

 

パチパチパチ

 

 

突如マジック達の方から拍手の音が鳴り響いた。

レオンがそれに反応して目を向けると、手を叩いているマジックの姿があった。

 

マジック「ブレイブをこうもあっさりか、見事な腕だ。」

レオン「にしては、やけに涼しい面だな。いずれお前もこうなるんだぜ?」

マジック「ほざいておけ。今のうちにな。」

 

レオンの言葉にマジックは凛とした態度で答えた。

右手に大鎌を持ったまま、自信に満ち溢れた表情でマジックは4人を見つめていた。

レオンは軽く舌打ちをしながら武器を消して反転し、正面から近づくエスターとすれ違った。

エスターは無言のまま前に進み、目線の先のトリックを睨みつけた。

 

トリック「まったく、幼女以外の相手は専門外なのだがな。」

 

愚痴をこぼしながらトリックはその場から3mほど前に出た直後―――

 

 

ビュッ ビシャシャッ ビュオオオォォォォォッ!!!!

 

 

ザクッ ズバッ ザシュウウゥゥゥゥッ!!!!

 

 

『―――――!!!!!!』

 

 

3つの音が聞こえた。

1つは豪風が吹き荒れる音。

もう1つは肉が切断される音。

最後は言葉にならない、否言葉に出来ない断末魔。

 

そしてその全てを包み込む悪魔の微笑み

 

エスターの放った"風"は一瞬にしてトリックの手足とだらしなく垂れていた舌を一気に切断した。

斬られた手足の付け根と口からは不気味なドロドロした液体の濁流が広がり、辺りの地面に染み込んでいった。

普通の生物ならばここまでの重傷を負えば即死するはずである。

それでもトリックは死ななかった。

それは全てエスターの技量の高さを示していた。

相手を殺さず、且つ最大限の苦痛を味わわせるために絶妙の位置と角度で傷を負わせたのだ。

少しでもその切り口がずれれば、出血多量でショック死することは、今吹き出ている液体の量から見ても容易に分かることだった。

舌が切れて声が出せないまま悶絶するトリックを、エスターは離れた位置から見下していた。

 

エスター「戦争やってんだぜ? ヨーイドンで始めると思ってたのか? まぁ、一応警戒はしてたみたいだけど無駄になったなぁ?」

 

不気味な笑みを崩さぬまま、視線の先のトリックをあざ笑う様にエスターは言い放った。

実はトリックもブレイブがやられた時点で警戒を強めており、自分の周りにあらかじめ無数の障壁を張っていたのだ。

だがエスターの前ではその障壁は何の存在価値も持たなかった。

エスターの放った"風"はトリックを障壁ごとぶち破り、切り捨てたのだ。

しばらくトリックの悶絶する様を見届けた後、エスターは右掌を軽く開き、そこに意識を集中した。

するとその掌の周りに風が集まり、風はそのまま実体化してエスターの身の丈ほどもある大鎌へと姿を変えた。

 

トリック「――――――!!!!!!」

エスター「いい声で泣くわけでもないし、もういい。飽きやした。」

 

その声が響いた直後、エスターの体はトリックの視界から消えていた。

次の瞬間、エスターの体はトリックの目の前に鎌を振りかぶって現れた。

そのまま鎌はエスターの体のしなりと腕力を受け、綺麗な放物線を描いた。

 

 

ズブシャアァァアア!!!

 

 

エスター「はい、おーしまい。」

 

振り下ろされた鎌はトリックの脳天を直撃した。

鎌が突き刺さると同時に、脳天からは何とも取れぬ液体が間欠泉のごとく噴出した。

不気味な液体は辺りに飛び散り、地面のいたるところに飛沫を残した。

その様子を見届けながらエスターは心底つまらなさそうに声を上げ、手の中から大鎌を消した。

ふと見ると、先ほどまで余裕の笑みを浮かべていたマジックの顔が鋭い目つきに変わっていた。

 

レオン「とうとうお前だけだな。命乞いでもするか?」

マジック「馬鹿を言え。余計な仕事を増やしてくれたな。貴様らはここでこの鎌の錆にしてやる!!」

 

言うなりマジックは凄まじい殺気を放ちながら地面から足を少し浮かせて浮遊した状態で前へ出た。

それに答えるようにエスターは反転して後ろに下がり、後ろから前に歩みを進める氷室とすれ違った。

 

エスター「ノルマは全体通して1分でさァ。手間取ったら置いてきますぜ?」

氷室「……。」

 

エスターの囁きに氷室は無言で返した。

氷室は前へ出るなり掌を地面に向けて開き、そこから黒い炎を放出させて日本刀を実体化させた。

柄を握り締め、その重みを右腕で感じた氷室はそのまま前傾姿勢を取り、体を少し左へ捻り、左腰辺りに刀を構えて柄に手を添えた。

それはまさしく居合いの構えだった。

その様子を見たマジックも静かに鎌を左側に構え、静止した。

両者はそのまま微動だにしなかった。

両者共に今にも斬りかかりそうな殺気を全身から放ちながら、姿勢を保ったままでの殺気の放ち合いだった。

少し間を空けて風が氷室の金髪とマジックの赤髪を撫で、辺りに砂埃を巻き上げた。

その瞬間、沈黙は破られた。

先に動いたのは氷室の方だった。

氷室は地面を蹴って前方へ跳び、マジックへ一太刀を浴びせようと柄を握る右手に力を込めた。

それに呼応してマジックも氷室の動きに合わせ、構えていた鎌を鋭く振るった。

 

 

ブォン!!!

 

 

聞こえた音は刀身と鎌先が風を切る音だった。

一度は姿が重なり合った両者は互いに相手に背を向けたまま姿勢を崩さなかった。

だがこの時、もう既に決着はついていた。

マジックの口からは一筋の血潮が垂れていた。

刹那、マジックの体は先ほどまで氷室を切り裂こうとしていた大鎌ごと真っ二つに切り裂かれた。

崩れ落ちた体からは血と臓物が溢れ、辺りに悲惨な光景を見せ付けた。

 

氷室「……。」

 

無言のまま氷室は日本刀を目の前に近づけ、刀身を凝視した。

マジックを鎌ごと切り裂いたその刃は刃こぼれ1つ起きてはいなかった。

それもマジックの一閃を刀身に浴びても、だ。

氷室の手に握られている日本刀は何処にでもあるような一般的な代物だった。

刃の入射角、力の入れ方、振るうタイミング……どれか1つでも狂えば、真っ二つになっていたのは氷室の方だったかもしれない。

その神秘の剣技を氷室はなんの躊躇も無く当然のごとくこなしたのだ。

それも、全身から凄絶な殺気を放ちながら。

マジックを斬る一瞬に見せた殺気は、始めの殺気の放ち合いの物とはまるで比べ物にならないほどだった。

いったいどれ程の潜在能力が氷室には秘められているのか、想像するに恐ろしいばかりだった。

しばらく刀を見つめた氷室はそのまま刀を一振りして刀身に付着した血を飛ばし、その手の中から消した。

氷室は反転してネクタイを右手で緩めながら3人の方へと歩みを進めた。

 

レオン「どうやら氷室のも正常に作動してるみてえだな。」

氷室「らしいな。」

 

レオンの言葉に氷室は素っ気無く返した。

氷室はネクタイを緩めていた右手をそのままスーツの胸ポケットにすべり込ませ、中から小さな水晶玉のようなものを取り出した。

その水晶玉の中には青白い炎が灯っており、スーツから出されると同時に濃密な夜の香りが辺りに充満し始めた。

 

ライ「携帯用時だましの香か、マグナスも奮発したんだな。」

レオン「全員分、ちゃんと作動してるな。そうと分かればこんなとこいるだけ無駄だ。さっさと行こうぜ。」

 

レオンが氷室に目配せをすると、氷室は軽く頷いて右手を開いて前に突き出した。

するとそこから黒い炎があふれ出し、4人は順番に自らその炎の中に足を踏み入れ、姿を消した。

静寂の戻ったギョウカイ墓場には、マジェコンヌ四天王の死体が、朝日の光を浴びて無残な姿をさらしていた。

 

 

説明
カタストロフィ編が始まりましたー!!

それに伴い、氷室たちの明らかにされていなかった実力が明かされます!

それでは続きをどうぞ!

P.S.飛鳥剣の仕様がDの原作と多少(大分?)変わっています。
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コメント
藾弑さん>エスター「いいですぜ。その辺のメス豚とっ捕まえてピ―――してピ――――でさァ。」 氷室「一通り終わったら寄こしな。俺が首切り落として殺してやる。」 ライ「2人とも……それじゃやってることただの強姦殺人鬼と同じだよ……。」 レオン「お前らの脳はんな事しか考えらんねえのか!!」 (クリケット)
クァム・ミラージュ「エスターお前俺と気が合いそうだな…今度一緒にいい女でも使って遊ぼうぜ…」 クァム・ユネィ「なにいってんだ裏人格!女の子を「うるせぇ雑魚」んだとぉ!?」(駆蘭)
Zさん>ここだけの話マジックではなく、ある意外な人物が味方になる可能性が!? 氷室「誰が味方につこうと結局俺達が殺すんだけどな。」 エスター「そいつがいい声で泣くならピ―――の刑確定でさァ。」 レオン「体中掻っ捌いてバラバラ死体にしてやるぜ!」 ……安全性考えて出すのやめようかな?(クリケット)
クロさん>エスター「良い声で泣いてくれさえしたらもっと絶望のどん底に叩き落してから殺すけどあれじゃそんな気起きなかった。」 レオン「つーか四天王って一人除いて外見まともな奴いなかったよな。」 エスター「弱い上にあれじゃあ救いようが無いでさァ。」 お前らの性格も救いようが無いわ!!(クリケット)
黒鍵さん>氷室「誰かを踏み台にしてこそ歴史か…。なら俺達が踏み台にするのは女神だな。」 エスター「こっちでも強化版にしてくれりゃいいものを。あれじゃ雑魚同然でさァ。」 おーおー毒吐くねぇ〜。 氷室「強化したところで元があれじゃ……なぁ?」 エスター「どの道瞬殺でさァ。」 こいつら本当に赤い血流れてるのか!? (クリケット)
風音ツバキさん>氷室「こっちに闘技場は無いからな……あるのはGANTZだけだ。」 エスター「あの四天王って奴は多分GANTZの採点で言ったら10点にも満たない雑魚でさァ。」 復活早々に踏んだり蹴ったり、四天王っていったい…。 レオン「赤い空ねぇ…。まぁ良い予感はしねえな。」 ライ「不吉だよな…。」(クリケット)
リアルではおぜうタイプさん>氷室「女神全滅に決まってる。」 分からないよ? もしかしたら悪魔返り討ちかもよ(笑) 氷室「俺たちが居る以上あり得ないな。女神なんざ雑魚同然だ。」 大口叩けば叩くほど負けたときは惨めってもんだよ(爆) エスター「女神全滅の前にとりあえずそこの作者殺った方が得策でさァ。」 氷室「同感。」(クリケット)
byZ ・・・この世界でマジックが生き返ってネプテューヌ達の味方になる妄想をしてたけどこれではっきりとした。・・・・死んだ!!あっさりと!!( Z ハデス)
ゼロ「四天王がこんなにあっさりと・・・」クロ「あぁ、異常だな・・・」ゼロ「鬼だ・・・もう少し役あたえてもよかったんじゃないか?」クロ「彼らに遊んでいる暇はないんだな」ゼロ「でも面白くないな。一瞬で殺るなんて・・・。もっと敵に絶望をあじわさせなきゃ・・・」クロ「歪んでるな、お前」(クロ)
黒鍵「素晴らしい!!彼らは歴史を正しく歩んでいる!!」統夜「何を言ってるんだ!?」黒鍵「彼らは四天王を踏み台にした!!そう・・・それこそが歴史の正しき姿!!」ノワール「何処が正しのよ!?」黒鍵「誰かを踏み台にしてこそ歴史なのだよ!!後藤君!!」ノワール「何処の二代目バースよ!!」黒鍵「話は置いといてマジックはこっちでは強化する予定です。基礎的能力とかね」ノワール「無視した上にとんでもない事を言ったよ!!?」(黒鍵)
ヴァイス「…赤い空…嫌な事を思い出す…」 フウ「闘技場のに比べたらオリジナルなんて雑魚同然じゃん」 アリス「いやあれは闘技場の強化版がおかしいだけですよ」 フウ「それに復活早々やられてるし、もうよわよわの雑魚敵じゃない?」 アリス「まずあなた倒すレベルまで進んでないじゃないですか…小説的に」(風音ツバキ)
フロム「噛ませ乙」がすと「やられ役乙ですの」アクワイア「女神の天敵のマジックも悪魔相手じゃこうなるよねぇ。」フロム「さて、最終的に女神全滅か、それとも悪魔返り討ちか。どっちでも私は得をする。」がすと「ま さ に 愉 悦」アクワイア「おーまいゆえつー」(リアルではおぜうタイプ@復帰)
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