真恋姫†夢想 弓史に一生 第一章 第八話 それぞれの想い |
〜勇side〜
皆さんどうも勇でさぁ。
「誰??」って顔してますねぇ、分かりまさぁ。
俺っちだってぇ誰だかわかりゃあしねぇ…。
この前のお頭との調練の後、俺っちだけ呼ばれて行ってみると、
「お前はこれから、この警備隊の隊長となれ。」
「えっ!?」
「そして、名は、姓は近、名は藤、字は昌宜、真名は勇な!!」
「えっ!!!」
「以上!! 下がって良いよ。」
「ちょっ…えっ?? ちょっと…。」
そのままお頭は、笑いながら去って行ってしまった。
何がなんだか全然わかんねぇ…。
ただ言えるのは、俺が警備隊の隊長となったこと、そして俺の名前が勝手に変わったということだ…。
何故勝手に名前を変えられたのか、検討がつかねぇ…。
第一、俺にもちゃんとした名前があるって言うのに…。
「俺の名前は?」って?? 俺h…。
「お〜い!!勇。」
「うぉ!! びっくりしたぜぇ。どうしたお頭??」
「実は、お前に言い忘れたことがあってな。」
「あん?? なんだよ?? 名前変える以外にまだなにかあるのか??」
「なんだよ。嫌なのか??」
「そりゃ俺にはちゃんt…。」
「俺たちの警備隊の隊長になったんだ、この名前は俺からの餞別だ。 この名前は俺の知る中で一番主に忠誠を誓い、その身を持ってして最後まで戦った猛者の名だ。俺はお前にその名を授けた。その意味が…分かるな。」
「…なんだよそれ…。俺っちには荷が重すぎねぇか?」
「お前がそう思うなら、この名前は返してくれ。」
「…一度もらったものを俺っちは返す気はねぇな。その名前ありがたく受け取ってやるぜぇ。 そして、俺っちは今この時を以って、お頭に一生付いていくと誓うぜぇ!! お頭が俺っちにこれだけ期待してくれたんだぁ、それに答えなきゃ男が廃るってもんだぜぇ。」
「いい返事だ。お前は男であって漢だよ…。そんなお前に言っておくことがある。 この警備隊はこれから新撰組と言う名とする。そして、『悪・即・斬』をその旨とし、一人一人が壬生狼であることを忘れるな。」
「新撰組…壬生狼…分かったぁ。その名に相応しい隊に俺っちが仕立て上げるぜぇ。」
「まぁ、そこらへんは頼んだ。お前が今思ったこと、深く心に刻み、それを信念としろ。」
「任せときなぁ。」
「じゃあ頼んだぜ。」
なんだか良く分からねぇうちに、俺は大きなものを背負って立ったようだ。
でも、お頭の期待には答えたい。
唯の農民だった俺を抜擢して、しかも信用してくれてる気持ちを裏切る気はない。
俺は新撰組として、壬生狼として、お頭を…この村の皆を守っていく!!
その為にも…この名前に慣れねぇとなぁ…。
〜聖side〜
「何故俺たちが殺されなきゃならない!!」
「お前は自身の弓の腕を驕っていたんだ!!」
「お前はただの人殺しだ!!」
「人殺し!!人殺し!!人殺し!!」
「やめろ…やめてくれ!! …俺は…俺は…。」
とある日の朝、いつもなら起こされる俺だが、今日は目が覚めていた。
と言うのも、この間の奏達とのことを夢としてみたのだ。
「俺は…あの時に人を殺したんだよな…。しかも、無実の人々を…。」
俺はそれを考えると辛かった…。
『悪・即・斬』
これは俺の信念。
でも…俺は今回無実の人を…誠を持った人を…それこそ、『悪・即・斬』の精神を持った人達を殺してしまった…。
この手で…未来ある人達の命を奪ってしまった…。
俺は自身の両手を見やる。手は振るえ止まりそうに無い。
トントンッ!!
「おはようございます聖…様…。 なっ!!!! ひっ…聖様が…起きてらっしゃる!! きっ…今日は雪でも降るのでしょうか…。」
「そっ…そんなに吃驚しなくても…。 …今日は嫌な夢を見てね…。」
「…それは、この前の戦闘のことですか??」
「…。(コクンッ)」
「あれは、仕方の無いことですよ〜。あぁしないといけない状況だったんですから。」
「いやっ、確かに村よりも大分遠くの方で野営を取っていたし、あのままでも村に被害は無かったのかもしれない…。もっとしっかりと観察してれば、あの人達も死ななくて良かったのかもしれない。」
「そんな後悔しても現実は変わりませんよ〜。」
「分かってるよ!! そんなことは分かってるんだよ!! …でも、俺は…夢で見るたびに言われるんだ…。『俺たちの死は…?』って…。ははっ…芽衣は…強いな…。」
「…何故そう思うんですか?」
「だって、もう割り切ってるんだろ!?」
「それを本気で言ってるとしたら、私はあなたを許しません!!」
「…。」
「私だって…私だって悲しいです。悔しいです。辛いです。 聖様と同じで、殺めた人たちが夢に出てくるんです。その人達に毎回、『助けてくれ…。』って頼まれるんです…。 正直…病みそうです。 あの時に少しでも観察眼を活かして、分析出来なかったのか…何か無血で終わらせる策は無かったのか…今でも悩みます…。」
「芽衣…。」
コンコンッ!!
すると、再び扉をたたく音が聞こえる。
「なにやってんだよ芽衣!! お頭を呼んでくるんじゃなかったのか??」
「「奏…。」」
「ん?? どうしたんだよ二人して…。」
「奏…。俺たちはお前の村の人たち、罪の無い人達を殺めてしまった…。」
「あぁ、確かにそうだな。」
さらっと答える奏に対して、二人とも重苦しい雰囲気を感じていた。
「俺たちは、言葉では平和だの何だのと言っているが、無実の人を殺したとなれば、それは黄巾賊とやっていることは変わらない!! それじゃあ俺たちはただの賊だ!!」
「…お頭は…犠牲なしで何でも出来ると思ってるのかい??」
「見限ったなら、俺たちを見捨てて自分のやりたいようにやってくれ。」
「…なぁ?」
「…どうかしたか…。」
「後悔が先行してどうするんだ?」
「…??」
「今お頭たちは、過去のことを思って、未来にまでそれを当てはめちまってる。未来って言うのはまったく分からないものだろう?? だから希望があるんじゃないか。そして過去の贖罪をする場となるんじゃないか?? 勿論、犠牲があっていいわけじゃないけど、それはそいつらが…志半ばで死んでいった奴らが、あたいらにその意思を託したって言う証じゃないのか?」
「…。」
「あいつら…死んで言った仲間のやつらの思いは無視されるっていうのか?? お頭はそんなことするのか!? あたいは…戦闘で死んでいった者がいたら、そいつの分まで生きようと誓う。そして、そいつがやろうとしていたことを全力で、そいつの変わりに成し遂げる!! そうじゃなきゃ…報われないじゃないか…。」
奏の言葉に、はっ!!と気付かされる。
「…そう…だよな…。生きているものは志半ばで死んでいったものの意思を継がなきゃいけないよな…。それが贖罪になるというなら尚更。」
少しだけだが、心に燻っていた闇が晴れた気がした…。
「ありがとう、奏!! おかげで少し楽になったよ…。今度何か礼をさせてくれ。」
「良いって事よ!! それより朝飯にしようぜ!! あたいは腹が減ったよ…。」
「はっはっは…。じゃあご飯にしようか…。芽衣、奏、行こう!!」
そう言って俺は自分の部屋から出ていくのだった。
〜芽衣side〜
最近は内政が落ち着いてきた。
それこそ初めは大変だった。
前の県令は、なぁなぁ主義だったらしく、何でもかんでも適当にやっていて、農耕や工業、商業などの統治を行っていなかった。
まずはそれを整えて、その後治水やら開拓、移住民のための住むところの建設やらそういったことも整備し終わり、今に至っては上がってくる案件も少なく、午前中だけで片付くようになった。
そんなある日、部屋の扉をたたく音が聞こえた。
ちなみに最初は、「野津苦??」のことが分からなかったが、天の国ではそれが基本らしく、私もそれに習うことにした。
「芽衣。そっちはどうだ?」
「あっ♪聖様!! 私の方はもう少しで終わりますよ〜。」
「そうか。じゃあ、お昼一緒に食べに行かないか?」
「良いんですか〜!!」
「あぁ、芽衣と一緒に食べたいんだ。」
「…。( ///)」
「どうした、芽衣。 顔が赤いぞ?? 熱でもあるのか??」
「いっ…いえ〜。じゃあ少し待っててもらってもいいですか〜?」
「あぁ。じゃあ門のところで待ってるよ。」
「すぐに参りますね♪」
そう言うと、聖様はにこっと笑って部屋を出ていかれた。
…唐突過ぎてしばらく呆けていたが、聖様からのお誘いに顔がにやけていた…。
しかし、直ぐに現実に戻って考え始める。
「はっ!! 聖様と出かけるのにこの服だとマズいかな!?」
そう思い、服を取り出しては鏡に映して体に当ててみて、あれこれと思案し始めた。
聖様を門で待たせていることを忘れて…。
「本当に申し訳ありませんですぅ〜…。」
「良いって。 それにしても、こんな服持っていたんだね・・・。芽衣に似合っていて可愛いよ!!」
「…あっ…ありがとうございます…。( ///)」
「んっ?? 顔が赤いけど大丈夫か?? もしあれなら今日は止めておこうか?」
「大丈夫です〜!! きっと最近、中での仕事ばかりで、日に当たって無かったんで、それで暑くなったんじゃないですかね〜…。」
「ふ〜ん…まぁ大丈夫なら良いけど…。もし辛かったら言ってな!!」
「はい〜。」
手で仰いで上気した顔の熱を冷ます。とりあえず話を変えないと熱でおかしくなりそうだ…。
「そういえば聖様!! 今日はどこに食べに行くんですか??」
「実は、この前新しく移住してきたおっちゃんの屋台が、この辺に出来たんだって!! だから行ってみたいと思ってたんだよね…。芽衣はそれで良いかな??」
「あぁ〜あの人ですね〜。私はそれで全然良いですよ!!」
「じゃあそうしようか。」
屋台に行って、見た顔の店主としばし談笑しながら、私たちは昼ごはんを食べた。
その後、聖様はお暇だということで、適当に二人で町を歩くことになった。
聖様と二人だけ…これって所謂…逢引!? どうしよう…今、凄い脈が速くなってる…。
お願い…気付かれたくない…。この鼓動が聖様に見つかっては…嫌だ…。
…一体何時から、自分はこんなにも聖様を好きになったんだろう…。
確かに初めから尊敬はしていた。でもそれは、武や知など、自分に無いものを持つものとして尊敬していただけである。
きっと、この前の戦闘の時から…人を殺めるという恐怖に、負けそうになっていた時の聖様の言葉…あれが胸に響いた。
そして、奏の存在…。
仲間が増えた一方で、聖様に近い女が増えたことでもある。
私は、少なからず奏に嫉妬の念を持っていた…。そしてその分だけ、聖様を好いているということが明白となった…。
たわいも無い会話しながら、町をぶらぶら見て歩く。
たまに露天のものを買って食べたり、椅子に腰掛けて喋ったりしているだけで楽しかった。
でも、無常にも時間は過ぎていくもので…その楽しい時間にもそろそろ終止符が打たれようとしていた…。
せめて最後に、手だけでも繋ぎたいな…。
「日が傾いてきたね…。そろそろ城に帰ろうか。」
「はい…。」
「どうした?? 元気ないな。」
出来るならこの場で、『手を繋いでください』って言いたかった。
でも、それが出来ない…。
もし、そう言って聖様に拒否されたら、立ち直れそうに無いから…。
そんなこんなで、モジモシしながら聖様の後ろを俯きがちで歩いていた。
「ん〜??? ん〜ん……。 ……はっ!!」
「えっ!! ちょっ・・・ええっ!?」
すると聖様は手を差し出してきた。
「ほら芽衣、手を出して。せっかくだし帰り道くらい手をつないで歩こうよ。」
「よろしいのですか??」
「よろしいも何も俺がしようって言ってるんだから…。」
「ぐすっ…ひぐっ…。」
「え!! ちょっと!? どうした芽衣??」
「何でも…無いです…。ただ、心が通った気がして嬉しかっただけです。(ボソッ)」
「えっ?? 最後なんて言った??」
「なんでもないで〜す♪ さぁ聖様!! さっさと帰りましょう!!」
私は、溢れてきた涙をすぐに拭い去り、すぐに気持ちを切り替えた。
そして、何事も無かったかのように明るく振舞い、楽しい帰路についたのだった。
私はやはり…この人のことが好きだ…。大好きだ!!
この人以外にありえない…。この人の傍に居たい!!
もし、この人が悩んでるのであれば道を示したい!! 困ってるのであれば助けたい!! 壁を乗り越えられそうに無ければ一緒に登りたい!!
私は改めて、聖様に対する思いを確認したのだった。
説明 | ||
どうも、作者のkikkomanです。 う〜ん…。県令ってこんなに簡単になれるものなんですかね…。まぁ無理でしょうね…。そこは、ご都合主義ってことで…。 今話は拠点のお話です。物語に大きな進行はありません。 |
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