真恋姫†夢想 弓史に一生 第一章 第九話 三角関係はバミューダ海域よりも怖ろしく…。
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〜奏side〜

 

黄巾賊襲撃未遂事件(?)的なものが終わった後、あたい達はこの村に厄介になっている。

 

迷惑をかけてしまった後ろめたさと、大人数で移り住んでしまった申し訳なさは今でも持っているが、村長さんは、「新しい家族が増えた見たいでうれしい限りですじゃ」と言ってくれたので良かった。

 

その言葉に恥じる結果とならぬように、みんなと協力してこの村の為に働いている。

 

とは言え、お頭に会ってなかったらあたい達は路頭に迷っているか、それとも必死で戦場にいたかのどちらかだろう…。

 

どちらにしろ、死と隣り合わせであったのは間違いない。

 

今、こんな風に平和な日常が送れているのは、お頭のおかげだ。

 

本当に感謝しても足りないくらいだ…。

 

 

でも、この平和に見える日常は決して現実全てではない…。

 

この世界は戦乱の世にある。今、この時点を以ってしても、どこかの村は賊に襲われ、多くの人が死に、家や家財などが燃えている。

 

何時になれば、この世は戦乱の無い平和な世となるのだろうか…。

 

お頭が天下統一を成し遂げれば、この世は平和となるだろうが、それも何年先になることだろう…。

 

ふと、そんな不安が胸をよぎるのだった。

 

 

そんなある日、芽衣がお頭を呼んでくると言って様子を見に行ったきり、帰ってこない。

 

こっちとら、お腹減ってるって言うのに…お頭〜…。

 

とまぁ、待っていても埒が明きそうにないので、お頭の部屋に行ってみる。

 

 

お頭の部屋の前に行ってみると、芽衣と二人で話しているようだった。

 

「私だって…私だって悲しいです。悔しいです。辛いです。 聖様と同じで、殺めた人たちが夢に出てくるんです。 その人達に毎回、『助けてくれ…。』って頼まれるんです…。 正直…病みそうです。 あの時に少しでも観察眼を活かして、分析出来なかったのか…何か無血で終わらせる策は無かったのか…今でも悩みます…。」

 

「芽衣…。」

 

何の話をしてるのかは、いまいち良く分からなかったが、重苦しい雰囲気は感じ取れた。

 

とりあえず、立ち聞きしてたって言われるのも嫌だったので、教えてもらった「野津苦??」というのをして、部屋に入る。

 

 

「なにやってんだよ芽衣。お頭を呼んでくるんじゃなかったのか??」

 

「「奏…。」」

 

 

なにやら、二人から凄まじい負の氣を感じる…。なんとも空気が重い…。

 

「ん?? どうしたんだよ二人して…。」

 

すると、お頭はあたいに、この前の戦いで多くの人を殺してしまったことに対する恐怖、不安、後悔を話した。

 

あたいは、そのことに関しては正直割り切っていた。

 

だから、お頭にあたいなりの考え方を説明した。

 

根本的な解決には至っていないそうだが、それでも少しは気持ちの整理が出来たらしい。

 

お頭は天の国の人で、この世界に来てまだ日が浅いらしい。

 

だから、この世界の常識を常識として認識出来ないのだという。

 

この世界の常識…。『殺らなきゃ殺られる…。』

 

この世に平和など無い。

 

どこかで盗賊が暴れていたり、暴政に苦しむ人々が一揆したり、飢餓で苦しむ人がいたり…。

 

この世は…どこもかしこも無情だよ…。

 

 

お頭たちとのそんな出来事があった後日。

 

お頭からご飯を食べに行かないかと誘われた。しかも、お頭が奢ってくれるという。

 

流石に悪い気がしたので断ろうと思ったが、「この前のお礼だ、受け取ってくれ。」と言われ、断るに断れなく、承諾したのだった。

 

ただ、午前はお互いに仕事があったため、一度準備をしてからということになった。

 

調練が終わり、部屋に戻る道すがら芽衣と会った。

 

 

「奏〜。調練の帰りですか〜??」

 

「あぁ、芽衣。そうだよ。 ちょっと今からお昼に行ってくるな。」

 

「お昼ですか〜?? じゃあ、私も行って良いですか〜??」

「芽衣も行くのか?? じゃあお頭に言っとかないとな!!」

 

「…奏、私は用事があるのを思い出したので、やっぱり行けそうに無いです〜。」

 

「なんだそうなのか…。まぁしょうがないな。」

 

「えぇ〜…因みに…どっちから誘ったんですか〜?」

 

「お頭にこの前のお礼だと言われて…。」

 

「…そうですか〜…。私だけじゃないんですね…。これは後で…ふふふっ。(ボソッ)」

 

「ん?? 何か言ったかい??」

 

「いいえ〜♪ 気のせいじゃないですか?? それよりも、早くしないと聖様を待たせちゃいますよ。」

 

「確かにそうだな…。じゃあ芽衣、またな。」

 

「はい〜。 …そうだ、奏!!」

 

「うん?」

 

「聖様に、『奏に手を出さないように!!』って伝えておいてください〜♪」

 

「ばっ…馬鹿か!? お頭があたいなんかに、何かするわけ無いだろ!!」

 

「えぇ〜でも聖様、奏と初めて会ったときに可愛いって言ってたし〜。」

 

「そっ…そんなの…だっ…だれにでも言ってんじゃないか!?」

 

「あぁ〜、まぁ聖様なら無くはないですね〜。」

 

「もういいだろ…。 あたいは行くぞ。」

 

「は〜い。 あっ、最後に一言。」

 

「まだあるのかい??」

 

「良いですか。 聖様ともし、そういうことになったら、報告よろしくお願いしますね♪」

 

「あqzうぇrt☆■○▼ぬjみ!!!!」

 

「ではでは〜。」

 

そう言うなり、芽衣は行ってしまった。

 

まったく、そんなことがあるはずないだろう。

 

…確かに、お頭のことは尊敬してるし、命を助けて、生きる道を指し示してくれた恩人だ。

 

だから、他の男に比べれば信用もしてるし、好意もあるだろう…。

 

でも…そんなこと、今まで気にしたこと無かった。

 

 

…服どうしよう…。

 

 

あれこれ悩んでいたら、予想以上に時間を消費してしまい、あまり長く待たせては悪いと思って、普段から着慣れてる服にした。

 

そして、急いで門に向かった。

 

 

門のところでは、お頭が村の様子を見ながら待っていた。

 

その顔は嬉しそうに見えるが、その瞳の奥にはどこか悲哀に似た色が見えた。

 

 

「悪いねお頭。待たせちまったか??」

 

「おっ…来たか、奏。全然。今来たばっかりだよ。」

 

「そっ…そっか、良かった…。」

 

「それにしても、奏はその服を着ているのを良く見かけるな。」

 

「あぁ、この服は着慣れちまってるからな。」

 

「確かに似合っているもんな。可愛いよ、奏。」

 

「…。( ///)」

 

「どうした、奏? 俯いちゃって。」

 

「べっ…べつになんでも無いよ…。さっ…さっさと行こうぜ!! お腹減っちゃってよ…。」

 

「そうだな!! 俺もペコペコだ。」

 

 

そう言って、お頭は子供のような笑顔を向ける。

 

その笑顔を見ていると胸の奥がずきっとした。

 

さっきまでのどこか哀愁に満ちた大人な表情から、今のような子供のような表情…。

 

その差に驚き、惹かれてしまう人が多い。

 

これがこの人の「人徳」。

 

この人の「上に立つものの器」なのだろう。

 

…勿論あたいもその一人なわけで…。

 

「…か…で…?…か…なで?…奏??」

 

「ひっ!! どうした?? 何かあったか?」

 

「いやっ、何かボーっとしてたから、何かあったのかなって思って。」

 

「大丈夫、なんでも無いよ…。心配してくれてありがとな。」

 

「良いんだよ。それより、何か食べたいものはある?」

 

「いやっ、特には…。お頭は?」

 

「おいおい…この前のお礼としてご飯に来てるんだから、俺の食べたいのなんて気にしなくて良いんだよ。」

 

「そうか?? ご飯は食べたいのを食べるべきだろ?? あたいに食べたいものが無いなら、お頭のにするしかないじゃないか。」

 

「…まぁ、そこまで言うならそうするか?? って言ってもな…俺もそこまで食べたい物とかないんだよな〜…。」

 

「じゃあ、ぶらぶら屋台通りでも歩くかい?」

 

「そうしようか。じゃあ行こう!!」

 

そう言って、二人して屋台通りに行った。

 

屋台通りは時間も時間なわけで、人でごった返していた…。

 

「こりゃあ大変だな…。逸れない様に気をつけなきゃな。」

 

そう言って、手を出してくるお頭。

 

なんだ??人が多いから武器を外せって事か??

 

そう思って、お頭に槍を渡す。

 

「ん?? なんだ預かった方が良いのか??」

 

そう言って、お頭は槍を受け取って、その後また手を出してきた。

 

ん〜??? 

 

何が欲しいんだ??? 

 

金か??

 

あたいもそんなに持ってるわけじゃないんだよな…。ってか奢ってくれるんじゃなかったのか…??

 

「ん??? 俺が預かっておけば良いのか???」

 

そう言って、金の入った巾着袋を受け取って、懐にしまった。

 

そして、またもや手を出してきた。

 

「もう!! これ以上あたいに何を出せって言うんだ!?」

 

「別に何も出せとは…言わないわけじゃないけど…。」

 

「なんだい? 歯切れが悪いね。」

 

「あぁ〜もう。分かれよな…。」

 

そう言って、お頭はあたいの手を握ってきた。

 

大きく暖かい手。

 

触れているだけで、なんだか安心するようなそんな手。

 

お頭は恥ずかしいのか、ちょっと顔を赤らめながら頬をかいていた。

 

それに対してあたいは…顔から火が出てるんじゃないかと思うくらい上気した顔をしていた。

 

「…ほら…これなら逸れないだろ。」

 

「…あぁ…確かにな…。」

 

「…行こうか…。」

 

「…あぁ…。」

 

お互いに会話が無くなり、手をつないだまま町をぶらぶらしていた。

 

屋台で肉まんを買い、お互いにお腹も満たされたので、そろそろ帰ろうかと話していた時。

 

お頭が服屋に行くと言った。

 

 

「これなんか、奏に似合うんじゃないか??」

 

「こんな…こんな可愛いの、あたいには似合わないよ…。」

 

 

そりゃあ着てみたい気持ちはあるけど…。ああいう服は芽衣みたいな可愛い子の方が似合うだろう。

 

あたいみたいなやつには、どう転んでも無理だよ…。

 

「そうかな?? 俺はそうは思わないんだけどな…。奏は可愛いし、スタイル良いし、この服も絶対に似合うはずなんだけど…。」

 

「…また…お頭は、あたいを可愛いって言うが、そんな取ってつけたような言葉は、言わなくて良いからな!!」

 

「そんなこと思ってないよ。俺はそのまま思ったことを口にしただけだ。大丈夫、奏は可愛いよ!!」

 

「…馬鹿…。」

 

「ん?? なんか言った?」

 

「何でも無いよ!!」

 

「そっ…そうか…。」

 

「さぁ、もう帰ろうぜ!!」

 

「分かった…。じゃあ先に出ていてくれ。」

 

「じゃあ、出てるよ。」

 

先に店を出る。

 

通りに出ると風が気持ちいい…。火照った顔を冷やすのにはちょうどいい。

 

お頭は…真剣な目だった…。どうやら嘘はついてないらしい…。

 

でも、あたいが可愛いなんて…そんなことありえない。

 

そんなことを考えていたら、お頭が包みを持って出てきた。

 

 

「なんだ。何か服を買ったのか?」

 

「あぁ。さっきのやつをね。」

 

「えっ!! …まさか…お頭…そんな趣m」

 

「違うから!! 俺は着ないから…。 これは奏への贈り物。受け取ってくれるかな??」

 

「…あたいがこんなの持ってても、意味ないと思うけどな〜…。」

 

「いつか着て、俺に見せてよ。」

 

「…分かったよ…。何時か…な…。」

 

「あぁ、期待してるよ。」

 

 

その後は二人して帰った。

 

 

お頭からの贈り物。

 

女っていうのは贈り物に弱い…。

 

なんと言っても、自分だけのものというのが嬉しい…。

 

やっぱり、お頭の事…。とりあえず、芽衣に相談しようかな…。

 

 

城に戻って、芽衣に今日のことを話したら、「ふふふっ、遅かれ早かれこうなるとは思ってたけど〜…。これが聖様の人徳。人を惹きつける力ですかね〜。」と笑いながら言っていた。

 

しかし、その笑顔の裏に、何か暗いものがあるように見えたのは、あたいの勘違いではないだろう。

 

 

説明
どうも、作者のkikomanです。

オリキャラの勇ですが、正体はいずれ明かしますよ…。それまではお楽しみに…。

後は、今までが戦闘パートが主だったので、しばらく拠点パートですかね…。

さて、九話のタイトルを見てなんじゃそりゃ!?って思った人も多いんじゃないでしょうか。

実は作者もタイトルを付けながら『なんじゃこりゃ…。』って思ってました(笑)

楽しんで読んでくれたら嬉しいです。



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