真恋姫†夢想 弓史に一生 第一章 第十話 発狂、絶叫、そして説教!? |
〜聖side〜
ある日の夜、俺は夢を見た。
夢の中で、俺は草原に佇んでいた。
遥か彼方まで続く草原、木や山、湖など何も無い…。
あるのは、ただただ生い茂る草花と、青々とした空のみ。
不意に通り過ぎる突風が、その草花を巻き上げ、ひらひら舞ったかと思えば、また緑の大地へと沈んでいく。
その光景は、違和感はあるものの、どこか落ち着くような…まるで初夏の休日でも感じるような、そんな気分のいい光景だった。
「気に入りました?? この世界を。」
「っ!!?」
突然声が聞こえて、驚く俺。
声の主は…。
「何で足元に居るんですか…。」
「何ででしょうかね…まさか…私を踏み台にした…!?」
「ふっ…知っている、僕はあなたを知っている。」
「この私にプレッシャーをかける者とは一体何者なんだ。」
「認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを。」
「「ジークジオン!!」」
がしっ!!
二人はしっかりと握手した。
お互いに波長が合うのを嬉しく思った。
「さて、茶番はこの辺にして、一体あなたは何者!?」
「ふふふっ…名を聞くときは、まず自分からって言いませんか??」
「…それもそうだな。俺は姓は徳種、名は聖。」
「私は天帝。この世の神です!!」
「…なんとも信じがたいな…。」
「え〜信じてくださいよ〜。」
そう言いながら、涙目になる女の子。
流石に信じるに信じれない。
天帝はそれこそ神様。故に実体など無く、人々の信仰の果てにあるものなのだから…それこそヤハウェのような…。
天帝で、最も良く知られているのは、その娘の織姫の存在であろう。
そして、織姫と言えば彦星と、7月7日の七夕が有名である。
このお話しは、天帝が神様であることを伝えるための逸話となっている。
そんなことを考えていると、女の子はムッとした顔で俺の手に抱きついてきた。
「ちょっと!! 私をほったらかしにして…まさか、放置プレイ!? そういうのがご趣味なの!? あぁ〜でもそういうのもまた…。」
「なにやら、変な誤解が生まれているのが気になるが…その前に、俺の腕から離れてくれ〜!!」
「えぇ〜なんでぇ〜?? この方が良くない??」
「良くない!!」
その…ふにふにっと柔らかいものが、ひじ辺りに当たるわけで…なんというか…俺の愚息が…。
「あっ!?」
「へっ!?」
「「…。」」
「…ばっ…ばか!! なんてもの見せ付けるのよ!! この変態!!」
「痛ててっ!! ちょ…ちょっとタンマ…。 これは…仕方ないわけで…その…男なら…。」
「言い訳無用!!」
そう言いながら、天帝(?)らしき人は、俺をポカポカと殴った…。
ただ、全然痛くなくて、むしろその姿が可愛らしくて、自然に笑みが出ていた。
「ちょっと!! なに笑ってるのよ!!」
「えっ!! あの…その…いや〜…。そうやって、ムキになってポコポコ殴ってくるのって、なんか可愛らしいな〜と…。」
「…ボンッ!! シュ〜〜…。( ///)」
「あれっ!? え〜っと…大丈夫??」
「…。(コクン)( ///)」
ついつい漏らしてしまった一言に、怒られるかと思っていたのだが…その心配がなくなって、少しホッとした。
「…で、天帝様は何で俺の夢に??」
「う〜ん、天帝様じゃなくて、雅って呼んで!!」
「えっ!? それって真名か!?」
「うん♪ さっきの波長の交わりのときに、この人なら良いかなって思ったんだよね〜。」
「…天帝の真名なんて、もらっていいのか分からんが…まぁ、良いか…。俺の方は適当に読んでくれ。」
「そう!? じゃあひーちゃんって呼ぶね!!」
「却下!!」
「え〜!! なんでも良いって言ったじゃん。」
「うっ…!? 確かにそうは言ったけど…。」
「じゃあ、ひーちゃんで決定!!」
「はぁ〜…まぁ、良いや…。 とりあえず、雅。」
「どうしたの?? ひーちゃん♪」
「…。」
「や〜ん。また放置プレイ!? でもそこに痺れる、憧れるぅ!!」
…なんだろう。
そうか!!きっとこの子は痛い子なんだ!!
そうじゃなきゃただのドMなんだ!!
「ちょっとぉ〜…。流石の私でも、ここまで放置されると悲しいんですけどぉ〜…。」
「あぁ、悪い。ちょっと考え事しててな…。で…だ、雅は何で俺の夢に出てきたんだ?」
「ん?? 特に意味は無いかな〜。まぁ顔合わせって所だね♪」
「顔合わせ??」
「うん♪ あなたはこれからこの外史を治めていくんでしょ?? 私はそのお手伝いをするためにあなたの傍に居ることにしたの!!」
「えっ!? でも、天帝って実態は無いんじゃ…。」
「そうね。確かに実態は無いけど、お手伝いくらいなら簡単に出来るもん♪ それに、後々にはあなたの前に現れる予定だし!!」
成程、やりたい放題ですか…。まぁ力持ってますもんね…。
「でも、まだあなたの前に現れるわけにはいかないの…。だから、その間はこうして、夢に出てきて、あなたをサポートするってわけ!!」
「…なんとも…いきなりそんなことを言われても…って気がするが…でも、俺はこの世を、皆が手に手を取って笑って過ごせる…そんな世界にすることを誓ったんだ。その為に力を貸してくれるのか?」
「勿論、その為に来たんだからね!! …ひーちゃんがこういう人でよかったよ。 もし、力をよこせとか言うような人だったら私、幻滅してたもん。」
「そんなこと言わないよ。俺は、自分ひとりじゃどうしようもない人だって分かってるからね。皆に支えられて、俺は俺と言う人間でいられるんだ。」
「ふふふっ…。」
「はははっ!!」
どちらからというわけでもなく、二人して笑いあった。
なんとも心地のいい時間。
この時間が続いて欲しいと、今は思い始めていた。
「でも、もうこの時間は終わりだよ…。」
「なに!!! …雅は心まで読めるのか…。」
「さぁね♪ さて、今日はこの辺で…。 最後に…きっと必要になるから、“この能力”は目覚めさせてあげるね。」
そう言って、雅は俺の隣に立ち、そっと頬にキスをするのだった。
「っ!!! 雅!!一体何を!!」
「えへっ。ひーちゃん頑張ってね!!」
雅は、金色のハンマーを持ち出した。
そして徐に、その鈍器を振り上げた。
「おいっ!!ちょっと待てって!! それは一体…。」
「じゃあバイバイ!!またね。」
「ちょっ!! ぐぎゃぁああああ〜。」
はっ!!!
そこは俺の寝台。
俺は汗をびっしょり掻いていた。
体を見るが、特に何も変化は無い…。
「良かった…肉片になってなかった…。」
俺は思いっきり安堵した。
あの時、雅は俺の能力を目覚めさせるといったが…果たして…。
「とにかく…顔を洗ってくるか…。」
外はちょうど日が昇り始めたころ。
朝靄のかかった城内を抜け、井戸のところまでやってくる。
冷たい井戸水で顔を洗おうとして、水に映る顔を見れば、頬に紅の跡のある男が映っていた…。
誰だこいつは?? と思って辺りを見回すが、自分以外にその場に人はいない。
「…まさ…か…。」
そこでようやく、状況を飲み込む。
まさか…天帝ってのは何でもありなのか…。
そうじゃないと願いたいが、それ以外に該当するものが無いので仕方ない…。
とにかく、早く顔を洗わないと!! と思い、井戸に桶を落としたところで…。
「あれっ?? 聖様早いですね〜。 どうしたん…ですか!?」
「芽衣!! 実はその…これは雅…もとい天帝が夢に出てきてだな…。とにかく困ったもんだよな。はははっ…。」
「…これは…詳しいお話を、後で奏を交えてお伺いしますね…。」
「いやっ、それは…その…誤解だから…。それにさっきのも事実だから!!」
「く・わ・し・い・お話は、後でお聞きしますから!!」
「…はいっ…。」
その後、奏を交えて誰の跡なのかの話し合いをしていたが、一考に下手人(芽衣がこう言っていた)は見つからなかったそうな…。
そして、何故か俺は、その間縄で雁字搦めに縛られて、二人の前で正座をさせられていた…。俺なんも悪くないのに…。
その一方で、
「あっるぁ〜ん、天帝ちゃん。お久しぶり!!」
「ちょっ!!! 出たな筋肉ダルマ〜!!! 私にその気持ち悪いものを見せないで頂戴!!」
「どぅうわぁれが、泥沼に住み着く悪霊ですって〜!!」
「そんなこと言ってないでしょ!!」
「それにしても、どうしたのよ天帝ちゃん…。 自ら進んで“あの人”に関わるだなんて!?」
「う〜ん…。この外史の管理者として、見守ってあげたいって思うのが半分、後は思いつき半分かな♪」
「まぁ〜ったく…。 まぁ、この外史の主人公は彼なのだから、守ってあげたいのは私も同じだけどね〜…。」
「主人公…か…。」
「今までのご主人様も主人公ではあったのだけどね〜…。まったく…可哀想だったわ〜ん。」
「そうね…。この外史は悲しい結末しか生まなかったから…。」
「もう何度、あの顔を見たのかしらねぇ…。」
「さぁ…。10を越えたあたりから、数えるのを止めちゃったから…。」
「彼なら…やってくれるのかしらぁん…。」
「分からないわ…。でも、やってもらわなきゃ困るのよ…。もう…あの子達のあんな顔を見るのは…勘弁だわ…。 彼を呼んだのだって、その為なんだから…。」
「…そうね…。」
「それに…。」
「それに??」
「彼は私のお気に入りなの!! 絶対に死なせないわ!!」
「あらあら…ご主人様の時は、そうでもなかったのに…彼にぞっこんなのね。」
「なっ!! ちょっと貂蝉!! そんなこと…ない…わけじゃない…。」
「ふふふっ、あなたも漢女なのね…。」
「“乙女”です!!」
「あらあら、恥ずかしがらなくてもいいのよ〜ん。」
「…いやっ、そこは全力で否定させてもらうわ…。」
「まぁ、今後の彼に期待ね…。ぐふふっ、楽しみだわ…。」
「えぇ、彼の才能の一つは開いてあげた。その才能を使って一勢力となってね…。」
そう言って、天帝は空を眺めるのだった。
時は黄巾の乱が起こる前…。七月七日の事だったそうな…。
説明 | ||
どうも、作者のkikkomanです。 第九話はどうでしたかね?? いや〜書き終わって思うことは、完全なる奏回でしたね(笑) 作者的には面白く書けたように思いますが…。 追いつくためとは言え、一日に五話もあげるのは、中々にしんどいものですね…。まぁ、頑張りますよ!! |
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