魔法幽霊ソウルフル田中 〜魔法少年? 初めから死んでます。〜 転生は、内容、条件をしっかりと決めましょうな2話 |
5年前、俺の住んでいる世界はかつてない大規模な地震に襲われた。
俺が最後に見た光景は、上から崩れ落ちていく我が家の天井だ。
こりゃ死んだわと思っていたら気が付いたら辺りは真っ白な部屋、目の前には金髪碧眼の天使様(美女)。
テンプレお疲れ様、と言わざるを得ない。
ただ……、周りの様子だけは何かおかしい。
「74994番の霧咲さーん! 転生の用意が出来ましたー!」
「93277411番の北川さん、チート能力はこちらで……、へ? 間違ってる? す、すみません!」
「ちょっ、 398642番のヨシュアさんまだ赤ん坊なんだけど!」
「両親のどっちかとまとめて転生させときなさい!」
「9622456番の……、ああもう! 何人いるのよー!」
騒がしい、めっちゃ騒がしい。
白い部屋には俺の目の前にいる天使様以外に何人もおんなじような天使様がいて、それをめちゃくちゃ上回る数の人間もこの部屋にいるのだった。
番号付は多分数なんだろうが……、何人死んだんだ?
天使様たちすっごい働いているし、中には叫んでる天使様もいるし大丈夫か天国。
「すみません、立て込んでますのでいきなりですがあなたは死んでいます! 以前の世界とほぼ同じ世界で生まれなおすか、ほかの世界へ転生するか、天国で暮らすか選んでください!」
と俺の目の前の天使様が早口で話しかけてきた。
突然「死んでいる」なんて言われたら普通は理解できないだろうに。
まあ、俺は理解できるけどさ。
「あの……俺が死んでるのは分かってるんですけど、なんでこんなに大勢の人間が転生かどうか選んでるんですか?」
ただ、この状況はおかしい。
確かにあの地震は凄まじい規模だったからこの人数は納得しているのだが、世界は地震がなくとも多くの人々が死んでいるのである。
そんな数の人間を毎日捌くのは天使といえどノイローゼになるだろう、実際目の前の天使様も目の下にクマができてるし。
そんな疑問に、天使様は説明を忘れてたらしくあわてて話し出す。
「ああっ、そうでした! まずあなたが死んだ原因の地震なんですけどあれのせいで地球が滅んでしまったんです」
「マジですか」
「しかもその地震は神様が世界の運命を間違って操作したから起こったもので、責任は完全に天国側にあるから全生命の権利が尊重されて、皆さんの意見を一人一人聞かないとけないんです」
「マジですか、全生命というともしかして」
「89735065番のダルメシアンのジョンさん、普通の世界で土佐犬に転生でー!」
「102764番のヨナグニサンさん、長生きする動物にランダム転生ですね」
「987番のネッシーさん、記憶保持で人間の女の子に転生……ってマジで!?」
俺のとなりを、犬や巨大な蛾やネス湖の未確認生物が天使様たちに連れられ通過していく。
どうでもいいけど恐竜の記憶持ってる女の子って誰か得をするんだろうか。
「って、そうじゃなくて! ええ!? マジでいたのネッシー!?」
「はい……、氷河期を乗り越えた彼でも今回の地震はダメだったみたいで」
「いや、そういうことじゃないから!」
なんかずれた返事をする天使様、どうやら天然さんらしい。
話がずれていきそうなので、俺は話を戻す。
「ええと、とにかくなんでこんなことになってるかは分かったんで、転生について聞きたいんですけど」
「あ、そうでした。転生ですか? 異世界と、ほぼ同じ世界のどちらですか?」
「もちろん、異世界で」
というか、これしかないね普通。
現実がつまらんと感じる16歳だし、特別な世界にあこがれたっていいじゃないか。
「異世界ですか……、チートとか容姿の変化とかいろいろ手続きがありますが」
「ああ、べつにいいよ。俺はこのままの姿で、チートはいらないし能力とか適当にその世界にあわせてくれれば」
やっぱり、まだこの顔できちんと人生をやり直したいし、不細工でも何でもない平凡な顔だし損はしないだろう。
天使様も時間が惜しかったのか、ほっとした表情をうかべる。
「そうしてもらえるとこちらも楽なので助かります。で、どんな世界に転生ですか?」
「えっと、魔法少女リリカルなのはって知ってますよね? あそこでお願いします」
そう魔法である、一度でいいから使ってみたかったのだ。
少女趣味といわれてもしかたないがそういう人は一度アニメを見てほしい、あの世界の魔法はドラゴンボールのかめはめ波に匹敵するから。
「リリカルなのはの世界ですね、すでに何人か転生している方がいますが大丈夫ですか?」
「べつにいいですよ。魔法さえ使えればいいんで」
「では、こちらへどうぞ」
天使様が指した方向には人ひとり分が入れる大きさの鏡が横一列に並んでいた。
次々といろんな人間が入っているのでワープゲート的な何かだろう。
俺が鏡の前に立つと、天使様は確かめるように聞いてきた。
「えっと、10948番の田中さん、そのままでリリカルなのはの世界へ転生、補正は魔法が使えるようにでいいですよね?」
「はい、お願いします」
そして俺は鏡の中へ入った。
入った瞬間、意識がとぎれ目の前が真っ暗になった。
俺が目を覚ました場所は夕焼けに染まる公園だった、どうやら無事に転生したらしい。
なのはの世界で公園と言えば臨海公園なんだろうなと見当をつけ辺りを見渡すと、公園のブランコに小さな影を発見した。
「ありゃ、なのはちゃんか?」
茶髪にツインテール、われらが主人公高町なのはちゃんを発見した。
が、なんか無印編より幼いような……?
それにブランコに乗っているものの、俯いているだけで遊ぶ様子もないし周りに家族も友達もいない。
見るからに一人寂しく落ち込んでいるようだった。
「ああ、なるほど。士郎さんの入院か」
少し考えてみると思い出した、なのはちゃんの父親の士郎さんが事故で入院してる時があったっけ。
原作ブレイクとかは興味ないのだが、こんな時間に一人でいる女の子を放っておくのも気が引ける。
一声かけて家まで送ってあげるか、16歳の男が幼女を連れまわすのは大問題だが何もしなけりゃ無問題だろう。
「おーい、こんな時間まで一人でいると危ないぞー」
「……」
無視された。よほど落ち込んでいるのか顔を上げようとさえしない。
もしかすると聞こえてないのかもしれん、そう考え俺はなのはちゃんの正面に近づく。
「聞こえてる? 家族の人が心配してるよ、早く帰ったほうがいいんじゃないかな」
「…………」
更に無視。俺の方が落ち込みそうである。
だがここは海鳴とはいえもうすぐ夜になるのだ、話を聞いてほしいのでなのはちゃんの肩に手を置こうとして――――
――――するり、と俺の手がなのはちゃんの肩から胸を貫通した。
「ウエィッ!? なな、なん、なんじゃこれれ!?」
びっくりしすぎて変な声を出してしまった! じゃなくて、別に俺はなのはちゃんに手刀を繰り出したわけでもないしそもそもそんなこと出来ない!
この状況もおかしい。
こんな状態になってもなのはちゃんはノーリアクション、見てみると血の一滴も出ていない。
確かに俺の手は体にめり込んでいるのだが、俺の手に感触が無い。
肩を触った感触すらなく、空を切るようにめり込んでしまったのだ。
「ま……まさか」
嫌な予感がして自分の体を見る、はっきりと見えているが重さがなくなったかのように軽く感じた。
「いや、たしかに言ったけどさ、言ったんだけどさ……」
自分の頭に手をやると、そこには三角の白い頭巾。
「『このまま』って! 魂のまんまかよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
――――以上が、俺が転死した事の顛末である。
説明 | ||
第2話です。 初めは短編として、この話を書いていました。 うーむ、私に絵心があれば挿絵とか入れるんですけどね。 無い物ねだりしても仕方ない……、精進します。 |
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