魔法少女リリカルと恋姫な物語 〜少年の数奇な運命〜 第6話 謎の人物と今後の方針 |
―――その日の夜―――
「ふー、お待たせ」
「あ、全然待ってないよ。もっとゆっくり入ってきてもよかったのに」
「いつも通り入ったつもりなんだけど・・・。やっぱり男の子と女の子じゃ、お風呂に入る時間の感覚は違うんだね」
「そんなもんかねぇ・・・」
あれからご飯を食べて、男性組と女性組で順番に入った。またもフェイトたちは遠慮していたが、母さんに笑顔でお風呂に連れ去られた。アルフさんもしぶしぶながらそれについていって一緒に入った。ちなみにアルフさんは母さんの予備のパジャマ、フェイトは僕の予備のパジャマを使っている。少し恥ずかしくはあるが、さすがに今から自分の家にパジャマを取りに行かせるほど僕らは鬼じゃない。
「それじゃ、今後について話そうか」
「ご両親はいいのかい?」
「手伝うのは僕だからね。それに父さんも、「これもいい経験になるだろう」なんて言ってたから問題ないよ」
<<ああ、すいません。その前に少しよろしいですか?>>
これからのことについて話し合おうとした時、ヴェルジュがなにか報告があるみたいだ。なんだろう?
「どうしたのヴェルジュ?あ、これは僕のデバイスであり、相棒のヴェルフィニカス・ジューカス」
<<どうぞこれからよろしくお願いします。ヴェルジュとお呼びください、フェイト様、アルフ様>>
「こっちこそよろしく。それと様付けじゃなくてさん付けにしてくれないかい?なんかそんな風に呼ばれると背中がむずむずするよ」
「あ、こちらこそよろしくね。後、私もさん付けにしてくれるとうれしいかな?」
<<わかりました、フェイトさん、アルフさん>>
お互い軽く自己紹介が終わったところで、僕は再びヴェルジュに声をかけた。
「それでどうしたの?」
<<ああ、そうでした。実は今日三人が戦っていたとき、結界内にもう一人、人間が紛れ込んでいました>>
「うぇぇ!?何で今まで黙っていたのさ!」
「・・・ねえ、それって一般人?」
<<スイマセン、なかなか言い出せる雰囲気ではなかったので・・・。それから、その人物は一般人ではありません>>
何でそんな大事なこと黙ってたのさ!?僕があせっているのとは対照的に、フェイトは冷静に聞き返していた。戦ってるときも思ったけど、フェイトって結構冷静だよね・・・。
「なんでそう言い切れるんだい?」
<<結界を張るときに、結界内に入れるのは魔力を持つ人間だけにしていました。加えて言うなれば、その人物はこちらを観察しているようでしたよ?>>
「・・・神那?」
「誓って知らないと言わせてもらう。僕はこの町で魔法を使える人を、フェイトたちに会うまで僕ら家族以外知らない」
<<先ほどのことについて補足を。私自身、結界を張るまで周囲に人がいること、そしてその人物が魔力を持つということを知りえませんでした>>
結界内に人がいたのはそういうことか。でもそれって僕とフェイトどっちを見ていたんだろう?そしてそれはなぜ?
「何で見ていたかは置いといて、その人物は僕とフェイトどっちを見ていたの?」
「そうだね、どっちを見ていたかによって今回の協力は断らせてもらうよ。こちらからの申し出とはいえね」
<<それについては分かりかねます。その人物はこちらに気づかれないよう気配および、自身の魔力を隠していたようですから。それに、おそらくサーチャーを飛ばしていたようです>>
「おそらく?」
<<はい。こちらも戦闘をしていたので詳しくは分からないのです>>
なるほど、もし遠くからサーチャーで見ていたのならどっちかなんて分からないか・・・。でも遠くから観察なんてできるのかな?
「・・・遠くからサーチャーでこっちを見ることなんてできるの?」
<<索敵に優れているデバイスなら可能でしょう。私の場合ドラグフォームでしたら広範囲は可能ですが、それ以外のフォームは平均的ですね>>
「なるほど、適正ってやつだね。ドラグフォームってのはなんだい?」
「遠距離戦に特化したフォームだね。フェイトと協力するときはこのフォームで行こうと思ってる」
なるほどね、と納得した顔で黙ったアルフさん。・・・こっちを見極めてるのかな?信用できるかどうか。ま、今日あったばかりだしそれは仕方ないよね。
「話を戻すけどいい?」
「あ、ゴメンね。どうぞ」
「それじゃ、その人物のことは分からないわけだよね?」
<<はい、申し訳ありません>>
「あ、そんな謝らなくていいよ!ただ確認したかっただけだから」
やさしいねぇフェイトは。でもその人物のことは分からないのか・・・正直良い気分じゃないよね、一方的に知られるのって。
「それじゃ、ヴェルジュの話したかったことはそれだけかい?」
<<はい、申し訳ありません。では改めて、今後の予定についてどうぞお話ください>>
「わかった。あと、別に謝らなくてもいいよ。それから、ヴェルジュも参加するんだよ。あんたも協力するんだから」
<<はい、わかりました>>
そう言って今後についての話し合いを始めた。
「じゃあ、まず僕から。僕は昼間、学校があるからそっちを優先させてもらうよ?」
「うん、それは問題ないよ。私たちも昼間は街中を散策してるから」
「だね。とりあえずジュエルシードがありそうなところを、((虱|しらみ))潰しに探してみるよ」
「了解。こっちも学校が終わって、家に帰ったらすぐ念話で連絡を入れるよ」
「分かった、でも急がなくてもいいよ。学校にも友達いるんでしょ?私たちで対処できそうなのは対処するから」
ありがたいことを言ってくれるねぇ。でも僕の友達には君も入ってるんだよ?フェイト。
「ありがとうフェイト。でもさっきご飯食べる前に言ったじゃない。僕と友達になってくれるって。だからさ、僕にとっては学校の友達も君も両方大事なんだ。確かに、学校の友達と約束があったらそっちを優先するかもしれない。けど、フェイトがピンチだと思ったらすぐに念話で連絡して。僕はすぐに駆けつけるよ」
「・・・ありがとう神那」
僕の言葉がうれしかったのか、フェイトは少し涙ぐんだ。でもすぐにそれを拭って話を戻した。
「それとこれは私の推測になるんだけどさ、たぶん私たち以外にもジュエルシードを集めてるやつがいると思うんだ」
<<それについては私も同感です。おそらくジュエルシードは何者かが、故意にもしくは事故によって地球に降り注いだものと思われます。現に神那が拾ったときは空から落ちてきましたから>>
「私たちもたまたま近くにいたから感知できた」
「いきなりだったからねぇ、魔力が感知できたのは」
なんと、フェイトたちもたまたまあの近くにいたってことか。それに突然感知したってことは、最初から地球にあったってことじゃないな。
「ふむ・・・てことはもしかしたら競争になるわけか」
「そうなるね。でもいいのかい?どっちかっていうなら、あんた達としてはそっちを手伝ったほうがいいんじゃないかい?」
「気を使ってくれてありがとうアルフさん。でも僕はその人のことを知らない。それに今はまだいるかどうかも分からないんだ。そんでもって、いたとしても僕は友達を選ぶ」
<<加えて言うなれば、自分で決めたことです。最後まで協力しますよ>>
アルフさんも意外と遠慮がちというか、こっちの心配をしてくれる。でも僕達はもう決めたんだ。友達を手伝うと。
「・・・本当にありがとう神那。今日会ったばかりの、しかも敵として戦った相手なのに・・・」
「敵かどうかは関係ない。問題は自分がどうしたいかだって僕は思う」
「・・・あんた、本当に9歳かい?どうにも大人びて見えるけど・・・」
「失礼な、正真正銘の9歳だよ!それに大人びて見えるのは、父さんにいろいろ教えてもらったから!」
むぅ・・・そんな風に見られてるのか。他人の評価って意外と大切だね。自分じゃ客観的に見ることができないからなおさらだ。
「とりあえず、今後の方針はそれでいいかな?」
「あ、うん。それで行こう」
<<問題ありません>>
「大丈夫だよ」
フェイトの質問にそれぞれ返事をした後、フェイトが自分のデバイスを紹介してくれると言う。そういやまだ聞いてなかったな・・・。
「それじゃ挨拶して」
<<はい。お二方、はじめまして。私はバルディッシュと言います。以後お見知りおきを>>
「よろしく、バルディッシュ」
<<こちらこそよろしくお願いします、バルディッシュ>>
聞くところによれば、バルディッシュは今は亡き、リニスさんがフェイトのために作ってくれたものだと言う。つまり、特注品ってことか。まあ、僕のも母さんが作ってくれた特注品だけどね!
「さてバルディッシュも紹介したことだし、子供はもう寝る時間だよ」
「おっと、もうこんな時間か」
「そうだね、さすがにそろそろ寝ないと、明日の朝起きるのがつらいね」
アルフさんにそう言われて時計を見てみると、もうすぐ10時になろうとしていた。意外と話してたなぁ。さすがに夜更かしして朝寝坊しました〜なんてことになったら、父さんに何言われるかわからない・・・。
「さあ、電気消すよ」
『は〜い』
「それじゃ、お休み。フェイト、神那」
「おやすみ、フェイト、アルフさん、ヴェルジュ、バルディッシュ」
「おやすみ、神那、アルフ、ヴェルジュ、バルディッシュ」
『おやすみなさい、良い夢を見れます様に・・・』
僕達はそれぞれの布団に入り、就寝の挨拶と共に眠りに付いた。最初は初めて友達と一緒に寝るっていうのと、同年代の女の子が隣で寝ているという状況にドキドキしていたが、布団のぬくもりが気持ちよくてそのまま眠った。ヴェルジュとバルディッシュの言うとおり、今日は良い夢が見れるといいな・・・。
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はい、と言うわけで第6話です。ここで一日が終了となります。では本編どうぞ〜♪ | ||
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