『ただいま』『おかえりなさい』 |
【月読島】
あの((最終戦争|ラグナロク))の勝者となり、彼女と、この((闘争|イクサ))の犠牲となったみんなの願いを叶えた約束の大樹。
何時だって俺の傍にいてくれたアイツが旅立ち、帰って来るべき場所。
……この島に咲く、大きな桜の樹の下に、最終戦争の勝者【芳乃零二】の姿があった。
彼は桜に手を当てる。
世界で唯一、ただ一人の二心同体の彼女。
へっぽこで、料理は殺人的で、能天気な無邪気な姿、陽だまりのような笑顔。
我がままばかり言って、俺を、みんなを困らせて、最期は――――
“……わかった。今度こそ、最後の……そして本当の戦いだ。”
あの日。――確かに約束した。
“数多の哀しみと理不尽に満ちてさえ、なお輝く……”
アイツが求め、俺が求め、この戦の犠牲になった全てのものが求めた――
“最高の結末”
アイツが言う“優しい世界”
俺は創れたのだろうか。
……いや。俺が創ったんじゃなかったな。((俺たち|・・・))が創ったんだ。
ありふれた幸せを奪われたみんなと共に、誰もが願いし幸福な((平和|にちじょう))を――
俺は桜を見上げて告げた。二心同体の最愛のパートナーに向けて。
「待たせちまったな。あとはお前だけだよ、サクラ。お前が帰って来てようやく大円団だ」
彼女の分身である、桜の樹に語りかける。
一陣の風が吹く。風に乗った懐かしい香と、あたたかさが肌を撫でた――――
――――おかえり、サクラ
あの日と変わらない。
あの日と変わらない無邪気な姿。
あの日と変わらない陽だまりの笑顔がそこにある。
――――ただいま、レイジ
俺たちは再会を果たす。永い永い旅路の末、辿り着いた終着点へ。
永い永い、旅路が終わりを迎えた。そして、新しい((旅路|にちじょう))が幕を上げる。
………
……
…
俺はサクラと共に相良家への帰路に着く。
究極魔法を使ったあの日から何があったかを話しながら。
サクラはずっと俺の話を聞きながら頷いたり、相槌を打つものの口を挟むことはなかった。
そして、全てを話し終えるとサクラの足が止まる。
俺もつられて足を止めた。サクラは意を決したように告げる。
「……マスター。本当にお疲れ様なんだよ」
「は? な、なんだよ、改まって。これは俺たちで決めたことでお疲れ様も何もないだろ」
「んんん。違うよ。マスターは私の願いとみんなの願いを叶えるために、永い永い旅路を紡いできた。本当は私も一緒に。けど、私は((何も|・・))出来なかった。私たちの明日も過去もレイジがみんな掴んでくれた。そして、私にも新しい世界をくれた。それに……」
サクラはそう言って泣いていた。
自分が願い、共に戦うことを誓ったのに何も出来なかったことに。
けれど、それは――――
俺は何も言わずにサクラを抱きしめる。
サクラの背筋が震えた。涙を目尻に浮かべながら俺を見据える。
「ま、……んっ!」
サクラが次の言葉を紡ぐ前に唇を塞いだ。
サクラの瞳が細くなり、驚きに身を震わすがお構いなしである。
その時は刹那にも思え、数分に及ぶ深い((接吻|くちづけ))だった。
お互いの唇が離れると銀の糸が伸びる。
離れたことによりサクラに自由が利くことになったが、今の((接吻|くちづけ))で脳の容量がオーバーを起こしたのか湯気上がったタコのように真っ赤になっていた。
「マスター!? きゅ、急に何をするんだよっ!?」
「キスだけど何か可笑しいか?」
「き、で、でもでも今はシリアスな場面だったんだよ!? そんな時に、き、キスだなんて」
“横暴なんだよ!?”と、パニックに陥りオドオドし始める。
その姿を見て改めて物思いの耽る。これでこそサクラだ。と。
って、このままじゃ収集が着かなくなるな。
「とりあえず落ち着け。ただのキスだろ」
「落ち着ける分け、って、ただのキスって……ええええええええっ!?」
「だから落ち着けって。お前が急にシリアスなことを言うから仕方なくやったんだ。……それに、まだ目覚めてないじゃないかと思ったからであって特に疚しい事ではなくてだな――」
「うううううう」
なにやら葛藤と闘っている様だがこれでは帰宅もままならない。
仕方ない。ここではっきり言うべきだな――
「サクラ。お前は俺と二心同体何だろ?」
「え、ふえ?」
俺の言葉が届いたのか小首を傾げる。
その仕草にグッと来たものもあったがここはその気持ちを抑える。
「俺たちは二心同体のパートナーなんだ。どこに居ても繋がっている。……あの((最終戦争|ラグナロク))の終わりの日、そう言ったよな。それに俺はお前が居たから此処まで旅を続けて来れた。お前が居てくれたからこうして皆が幸福な((平和|にちじょう))を掴むことができた。――――それに対して、何も出来なかったと言うのは可笑しいんじゃないか?」
そう。それが本心だ。
サクラが願わなければこの((平和|にちじょう))はなかった。
サクラが願ってくれたからこうして((平和|にちじょう))を歩んで行ける。
「お前の願いが、みんなの願いが、この((平和|せかい))を創ったんだ。お前は俺と共に駆けぬけることができなかったけれど、俺と共にこの世界を掴んだ。たくさんの幸福をこの((平和|にちじょう))に創りあげた。そうだろう、サクラ? 違うと言わさないぞ」
サクラは俺の言葉に俯く。
涙を流しながら彼女は問い続ける。
「……そうかな。そうなのかな? 私は役に立ったのかな?」
「役に立った、役に立ったないじゃない。お前が、俺が、みんなが掴んだのがこの世界だ。そじゃあ不満なのか?」
「ううん。……違う。違うんだよ!!」
「ならもう、これ以上そんな言葉を吐くなよ。お前は立派にやり遂げたんだだからな」
「うん。うん!!」
サクラはもう一度泣いた。
その涙に曇り気はなく、希望に満ちた明るい瞳をしていた。
今度こそ。俺のもうひとりも家族が此処に帰ってきた――
――さあ、帰るぞ。俺たちの家に
――うん。帰ろう。レイジ!!
俺たちは何時の間にか着いた相良家の門を通る。
潜った先に広がるのは最((終戦争|ラグナロク))に参加した((全員|フルメンバー))。
霧崎剣悟、有塚陣、轟木鋼。
梶浦海美、高嶺陽菜子、真田卿介。
里村紅葉、黒羽紗雪、雨宮綾音。
皇樹龍一、鈴白なぎさ。
芳乃創世、芳乃さくら、相楽苺。
俺とサクラは顔を見合わせてともに告げる。
“ただいま”
そして、
“おかえりなさい”
俺たちの旅路は此処に本当の終わりを迎えた。
“これから宴会だ。楽しもうなサクラ。” “そうだね。レイジ!”
“それと。――――大好きだよ、レイジ”
〜Fin〜
あとがき
最後は駆け足になりましたがこれで私が執筆するアフターストーリーは終了となります。
ですが、この後【大円団】。上記に書いているように【宴会】が入ることになります。なのですが、これ以上時間が割けず此処でひとまず終了となることをお許しください。
【宴会】は芳乃夫婦を軸にメインの零二&サクラを描こうと思っていますが何時書けるかわかりません。気長にお待ち頂ければ幸いです。
また、TINAMIでは初執筆のためルビの振り方・改行などにミスが見られるかもしれません。その際は、報告を頂ければ修正いたしますのでご連絡ください。では、ここまで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。それではまた【宴会】で――
説明 | ||
サクラルート、Ein Reencouterに加筆したアフターストーリーとして描いているため、ネタバレを多く含んでおります。ご注意ください。また、汚い文章ですが楽しんでいただければ幸いです。 | ||
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