リリカルとマジカルの全力全壊 無印編 第二話 海鳴の都市伝説 |
日本の地方都市の一つ、海鳴市…海に近い町の中に、地元民に大人気の【喫茶 翠屋】がある。
家族経営の喫茶店は、甘味で有名で、特にケーキとシュークリームが絶品だ。
店主一家の名は高町…なのはは高町家の三人目の子供として生を受けた。
優しい両親…責任感の強い兄…優しい姉…数年前に父の大怪我という災難を経験したが、一家はそれを乗り越えた。
なのはは普通の両親の元、普通に学校に行き、普通にすくすく育った八歳の女の子…しかし、一つだけ…。
『なのはちゃんにはとーっても大事な秘密があったのでーす。何と何とぉ〜彼女は魔術師なのでしたぁ〜【リリカルとマジカルの全力全壊】、始まりまぁ〜す♪』
「ルビーちゃん、いきなり何を言っているの?」
『いえいえ〜ちょっと電波を受信しちゃっただけですよ〜』
「あ、やっぱりそうなんだ」
『…なのはちゃんそれは素ですか?だとするとルビーちゃんはなのはちゃんの純真さがまぶしくて痛いですよぉ?』
「にゃ?ルビーちゃん、その電波は長くなるのかな?朝御飯、先に食べてきて良いかな?」
『イャー!!私のなのはちゃんが放置プレイに目覚めちゃいましたー!!』
「ニャー!!ルビーちゃん、人聞きの悪い事言わないでなのー!!」
そして始まる追いかけっこ…こんな二人だが、なんだかんだで二人はとっても仲良しだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
高町家の食卓は、基本的に食べる場所が決まっている。
長方形のテーブルの長い一辺に父・士郎と母・桃子が並んで座り、対面に長男の恭也と長女の美由希が座る。
なのはは短い一辺に一人だ。
高町家の食卓は、誰かが言い出したわけでもなく、自然とこの形に収まった…ここまでならば、普通に何処にでもありそうな家族の食卓だろう。
『あった〜あ〜らーしいあっさがきた〜きぼーのぉあーさーだぁ〜』…With 杖が一本。
その名はマジカル・ルビー…本人曰く、ルビーちゃんだ。
『はい、士郎さんに桃子さん』
「あ、ありがとうルビーちゃん」
「すまないね」
しかもめちゃくちゃなじんでいた。
自在に空中を飛び回り、羽の部分をとんでもなく器用に使って高町家の皆にご飯をよそっている。
ただそこにいるだけで、日常を非日常にしているカレイドステッキ…しかし、高町家の五人は誰一人として驚いてはいない。
これが初めてではない証拠だ。
「「「「「いただきます」」」」」
全員そろって合掌、もちろんルビーも羽を使って手?を合わせる。
「あ、ルビーちゃん?醤油を取ってくれるかな?」
『はいはぁ〜い。どうぞー』
「ありがとう」
『どういたしましてぇ〜』
食事が始まっても、ルビーは高町家の一員だった。
最初のうちはいきなり士郎の怪我が全快していたり、いきなり飛んでしゃべる杖の登場にいろいろビックリさせてしまった。
「この物の怪!」とか言ってつっかかってきた恭也を返り討ちしたはいいものの、勢いが付きすぎて半殺しにしてしまい、あわてて怪我を治したのも今ではいい思い出…なのか?
何はともあれ、なのはとルビーが契約を交わしてから五年、いかに尋常ではない存在とはいえ、五年も一緒にいれば慣れるというもの、今では高町家はこの世界の理から外れた力、魔術という理論の存在を知り、その結晶であるルビーを家族として受け入れている。
「おっと、やば!!」
食事中、恭也の手が滑ってコップが落ちる。
とっさに掴もうとした指をすり抜けて、地面に叩きつけられたガラスは粉々に砕けた。
中身を飲み干していたのが不幸中の幸いか?
「…すまん失敗した」
「未熟だぞ恭也」
「あ、お兄ちゃんは下がってて、なのはがやるの!」
得意満面に、なのはが椅子から降りて近づいてくる。
なのは位の子供には、割れたガラスなど危ないはずだが、破片に近づくなのはを誰も止めない。
むしろ何かの手品を見るかのように注目してじっと見ている。
そんな家族の見ている前で、なのはは割れたコップに両手を向けると、目を閉じて内面世界にもぐりこむ
イメージするのは大砲、それも大きくて威力のある奴だ。
それにエネルギーが収束していくイメージを重ねると、なのはの体内にある魔力回路が起動する。
「…リリカル…マジカル」
なのはが起動キーを唱えると、散らばっていたガラスが逆再生のように一箇所に集まり、形を取り戻してゆく。
なのはが目を開けたときには、床に置かれたガラスのコップが元の形で存在していた。
「はい、できたよぉ〜」
コップを持ったなのはに皆が拍手する。
驚くよりも感心の色が強いのは、これもルビーと同じく初めて見るわけではないからだ。
「本当に便利だよね〜魔術って」
美由希がなのはからコップを受け取り、しげしげと見るが、割れたどころかヒビ一つ見つけられない。
完全に元通りになっている。
なのはが使ったのは初歩の初歩とはいえ魔術、教えたのはもちろんルビー。
なのはの才能は出会った時点でルビーが見抜いていた。
そしてそれを本人に伝えたところ、「魔術教えてなの〜」と来るのはある意味当然だったのだろう。
別にルビーを使えば、すぐにでも大規模儀式魔術くらいのことは簡単にやってのけられるのだが、それで納得しないのがなのはらしい。
最終的にはルビーが折れ、士郎達も怪我を治してくれたルビーならと許可してくれた。
魔術回路の製作など、危険なことが無いわけではないがルビーがそんなものを許すはずも無く、ルビーの指導の元でなのはは魔術回路を構築し、魔術師デビューとなった。
まだ見習いレベルとはいえ、何の下地も無く5年で魔術の基礎を物にしたのはすごいの一言だ。
当然、魔術刻印などはないが、なのはの才能はそんな物を問題としない。
改めて詳しく調べたルビーが『連邦のモビルスーツは化け物か…』と口調も忘れて言った程である。
『ふむ、見事ですよ弟子よ!!』
「はい、ありがとうございますししょー!!」
ルビーが師匠でなのはが弟子…杖と幼女の奇妙な師弟関係…とはいえ、初級とはいえ魔術は魔術である。
神秘は秘匿しなければならない。
それを家族とはいえ複数の一般人の目の前で使ってしまった。
本来なら記憶操作その他の必要があるが、どうやらこの世界に魔術の概念は無かったらしい。
あったとしても、あのルビーが自重したとは到底思えないが…ともかく、この世界では他に魔術師らしい人間がいないので無問題…まあ、あまり派手にやるとそれはそれで別の意味で面倒な事になるが。
「いいな〜なのは」
「えへへ〜」
「私も魔術を使えたら便利そう」
『うーん、残念ですが〜』
ルビーが調べた所、どうも高町家で魔力資質を持つのはなのはだけらしい。
恭也と美由希は養子だから仕方が無いとしても、直接血が繋がっている士郎と桃子にもなかった。
なのはだけが、他の家族の魔力を一身に集めたかのようにとんでもない資質を潜在的に持っていたのだ。
突然変異か、あるいは隔世遺伝のように先祖返りでもしたか…とはいえ、魔術を使えることは公にはできないし、高町家の面々は魔力が無くても困ったことは無い。
多少羨ましいと思う程度だ。
『でも、それらしくすることはできますよ?』
「え?」
『こんな風に』
いきなり、ルビーからビームが出た。
不意を衝かれた美由希は避ける事も出来ずにまともに喰らい。
閃光弾のような光が発生し、世界が真っ白になる。
徐々に光にくらんだ視力が戻ってくると、美由希は家族の視線が自分に集まっていることに気が付く。
「い、いきなり何するのルビーちゃん!?って何でみんな私を見て…キャー!!」
美由希の姿が一変していた。
彼女は自分の通っている高校の制服を着ていたのだが、それがまったく別物になっている。
ブレザーだったのがセーラー服に…一昔前の「月に代わってお仕置きしちゃうぞ〜♪」で自称で美少女とのたまう星の名前の|女戦士(アマゾネス)そのまんまである。
確かにぎりぎりで魔女っ子カテゴリーに入るかもしれないが、ここまで再現率が高いとコスプレである。
「何って事すんにょよ!!」
『アヴァローーーン!!!!』
顔を真っ赤にした美由希が噛みながらもルビーを掴んで壁に叩きつける。
頑丈そうな壁だったのだが、一撃でヒビが入り、ルビーが亀裂に刺さった。
乙女の羞恥心、恐るべし。
「イッヤー!!」
美由希が泣きながら自分の部屋に向かって走ってゆく。
追いかけない、声を掛けないのがこの場での家族愛、男性陣は美由希の名誉のために視線を逸らしたままだ。
「ルビーちゃん?」
ぼこりと言う音と共に、聖剣のごとくルビーを壁から引き抜いたのはなのはだった。
『な、なのはちゃん?』
「お姉ちゃんをいじめちゃメーなの!!」
『はい、調子に乗ってすいませんでしたーー!!』
涙を目に一杯溜めた幼女に勝てるわけが無い。
しかも、なのははいじめっ子に対してびんたをかましてから|お説教(おはなし)をするという8歳児の猛者だ。
自分が悪い自覚があるからなおの事、幼女にマジな怒りを向けられると、罪悪感で死にたくなる。
『美由希さんには誠心誠意謝りますから許してください、なのはちゃん!!』
「やれやれ、ルビーもなのはには形無しだな、大体何処からあんな物を…」
やっと前を見ることが出来た男性陣の内、恭也が聞いてくる。
士郎は唯苦笑していた。
『ああ、それなら桃子さんに教えてもらったんですよぉ〜』
「何?」
全員の目が、今度は桃子に集中する。
それを受けた桃子は唯いつものように笑っていた。
『そういえば、指定されたスリーサイズは美由希さんのじゃ無かったんですね?桃子さん、あれは一体誰の…うひぃー!!』
ルビーが悲鳴を上げた理由は明白だ。
笑顔のままの桃子から、とんでもないプレッシャーが発散されていた…ルビーちゃん?それ以上言ったらメーよ?である。
聞こえてきた幻聴に、ルビーがガクガクと震えて了解する。
この人だけはまともだと思っていたのに…時々怖くなるなぁ〜しかも謎だし〜アイリスフィールや葵と同じように母性の塊なのだが、どうもそれに+αがある気がする。
「…さて店を開けるか」
一家の大黒柱は、これ以上追及しないでスルーすることを選んだ。
「あ、俺も学校に…」
「わ、私も…」
『ルビーちゃんもなのはちゃんに付いて行きますよぉ〜』
全員、士郎に倣うことにしたようだ。
触らぬ|母(かみ)に祟りなし。
「美由希はあとで私がO★HA★NA★SHIして学校に行かせるから気にしないで。皆、行ってらっしゃい」
さすがはなのはのお母さん。
士郎は店を開けるために、桃子は食事の後片付けに、子供達はそれぞれの学校へそして今日も高町家の朝は始まる。
「あ、なのは?」
「はい?」
「あんまり無茶しないでね、ルビーちゃんもなのはを宜しく」
『もちろんですよぉ〜』
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
…さて、唐突ではあるが海鳴市には魔女っ娘がいる。
なんだそりゃ?っと思うだろう。
それが普通の反応で、漫画やアニメの中だけにしか存在しない架空の人物が実在すると聞いて、そのまま受け入れるような人間はその時点で何かがおかしいとはずだ…しかし、海鳴市だけにはその常識は当てはまらない。
多くの目撃者がその存在を語っているのだから…間違いなくいる。
西の図書館で車椅子の女の子が困っていたら、颯爽と現れて本をとってあげ…東にお金目的で誘拐されようとしているツンデレ娘がいれば悪者を容赦なくつぶして助け出す。
しかも自称でなくかわいいらしい。
……そしてこれまた唐突に人気の無い路地裏。
「ぶ、ぶぶでぶ」
「い、いや…」
解りやすく変態豚が高校生くらいの少女ににじり寄っているという、いつか見たようなシチュだった。
「ブヒー、怖がらなくてもちょっと協力して欲しいだけデブよ」
「こ、こないで…」
男の首から提げているカメラのレンズが、光を反射して怖い。
一体何を撮るつもりだ?
「そこまでなのー!!」
聞こえてきた声に、二人がはっとして振り返る。
そこにいたのは女の子だった。
小学生くらいだろう。
玩具みたいな杖を自分達に向けているその姿は…。
「ま、まさか噂の魔女っ娘?」
何処の誰だか知らないけれど、誰もが皆知っているそれは海鳴の都市伝説、困ったときに何処からともなく現れて助けてくれる杖を持った魔法使いの女の子。
「キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!」
「「は!?」」
いきなり上がった奇声に、今度は二人の少女の声が重なった。
とっさに反応して見れば、変態男が目にも止まらぬ速度で下げていたカメラを構え、魔女っ娘を激写している。
既に襲い掛かろうとしていた少女には目もくれない。
「し、しかも猫耳バージョンブヒー!!レア写真ゲットデブ!!」
「にゃー!!」
男が怖かったのか、魔女っ娘が文字通り猫のような悲鳴を上げた。
海鳴の魔女っ娘の噂の一、魔女っ娘の衣装は毎回変わっている。
男の言うとおり、今回の魔女っ娘の衣装は猫耳猫尻尾仕様のかわいらしい猫のデザインだった。
猫好きが見ればうっとりと見入るだろう程にかわいらしい……でざいんてっど・ばーい・桃子。
「あ、あの〜?」
「おお、協力感謝デブ!おかげで生魔女っ娘に会えたブヒー!!」
「え?…え?」
「でもごめんブヒー、僕は14歳以上の女に興味はないデブ、あ、魔女っ娘さーん?こっち目線下さいデブー、あとニャンニャンニャーって言ってポーズとって欲しいブヒー!!」
…少女の中で何かが切れた。
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魔女っ娘の正体は、当然のことながらなのはとルビーだ。
今のなのはにはルビーが微妙な認識阻害の魔術を使っている。
見ることが出来るし、会ったことを覚えているのだが、肝心なその正体やどういう声だったとか、印象などをぼやけさせてしまうというものだ。
故に、顔をさらしていながらも魔女っ娘の正体は不明のまま、ルビーはそれが魔女っ娘のロマンと言ってはばからない。
そのため、二人の事は大きな騒ぎにならず、都市伝説にとどまっている。
『帰りましょうかなのはちゃん?』
「え?いいの?助けなくて?」
『助けるって…誰を?』
「ええ〜っと」
ルビーの言葉になのはが戸惑う。
なのはの視線の先では、“豚男”が“少女”にぼこぼこにされていた。
「あんたが!!泣くまで!!殴るのを!!やめない!!」
泣くまでというか…既に滝のように泣いているし、鼻血やらなにやらだらだら流しているし、少女の握った拳が猟奇的に真っ赤になっている。
『ところであの男の人…もとい豚「言い直したほうがひどいよ!!」どこかで見たような気もするんですけど…「スルー!?これがスルーなの!?なのはさみしいよ!!」う〜ん思い出せませんね…まあ良いか、心配しなくても大丈夫ですよなのはちゃん「はにゃ?」あの男をよっく見てくださいな』
言われて、なのはが男をじっと見る。
カメラは壊され、血だらけの男だが…。
「…何か喜んでいる?」
なんかめっちゃ嬉しそうに笑っていた。
そのキモさになのはが本能的に後ずさる。
『そのとーり、あの男の人は楽しんでいるんですから、邪魔されたら怒られちゃいますよぉ?』
「た、楽しんでるの?」
『世の中にはいろんな人がいるのです。ああ、なのはちゃんはそんなアウトローな話は知らなくて良いんですよぉ〜』
「そ、そうなんだ」
大人の事はまだ良くわからないのーとなのは思う。
ちなみに、豚男のようになのはに会うこと目当ての連中もいるので、ルビーが事前に魔術を使ってやらせかどうかを確認している。
「オラオラオラオラオラ!!」
「ブヒーーーーーーーー!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」
「デブーーーーーーーー!!」
だから、それをすり抜けたということは豚男のほうはともかく、少女の方は本当に危険と恐怖を感じていたはずだ。
あのラッシュの嵐は間違いなくその反動だろう。
「豚かデブか統一しなさいよ!!」
『ごもっともぉ〜キャラ立が甘いです』
ルビーが合いの手を入れる。
ちょっと終わりそうにない展開だ。
「あの〜、私もう帰りますね」
ルビーの言うとおり、これは手出し無用だなと感じたなのは、それにそろそろ子供にとっての門限が近い。
「あ、そうなの?ありがとうね、お姉さん助かっちゃった〜♪」
にこやかに微笑む少女の影になっているが、片手に握られているのは赤いぼろ雑巾…しかも殴っている少女の顔にも返り血が飛んでいて壮絶だ。
「じ、じゃあさようなら〜」
なのははあえて背後を見ないようにして去った。
「ありがとう魔女っ娘さ〜ん」
背後で再びBGMのように響く打撃音など聞こえない聞こえない。
その後、男はずたぼろの半殺し状態で警察に引き渡されたが、過剰防衛は成立しなかったらしい…男女平等なんて飾りですよ。
偉い人にはそれがわからんのです。
【変態には容赦なしの魔女っ娘】
【魔女っ娘様が見ている】
【白い悪魔からは逃げられない】
以上が今年の防犯標語…おかげで海鳴市での猥褻事件が激減したとかどうとか?
「最後の悪魔って何!?」
『ああ、それってルビーちゃんが投稿したやつですよぉ、採用されたんですねぇ〜』
「ルビーちゃ−ん!!なのは、悪魔じゃないよ!!」
『こういう事を積み重ねてなのはちゃんも大人になっていくんでしょうね〜、きっと世の中はこんなはずじゃなかったことばかりなんですよ』
「ミトメタクナーイ!!」
膨れたなのはが不貞寝した夜、海鳴市とその近辺に21個の流れ星が降った。
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リリカルなのはに、Fateのある者、物?がやってきます。 自重?ははは、何を言ってるんだい? あいつの辞書にそんなものあるわけないだろう? だって奴は・・・。 ネタ多し、むしろネタばかり、基本ギャグ | ||
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