リリカルとマジカルの全力全壊 無印編 第十六話 主人公退場? |
アースラとは、時空管理局が保有している戦艦の一隻らしい。
次元世界を移動する能力を有し、次元の狭間で管理局員の前線基地となり、戦艦と言うだけあって武装も搭載している。
あと、食堂のミルククッキーが絶品との事、最後に妙なお勧め込みで転送ポットの前を通りかかった一般職員に懇切丁寧に説明された。
最後のクッキーはともかく、これが全て魔法理論で動いているというのだから純粋に驚きだ。
外の不思議な宇宙空間もどきを見た時には感動すら覚えた。
進化した科学は魔法と見分けがつかないというが、この船などはその逆、進化した魔法は科学と見分けがつかないという例だろう。
そんな事を考えつつおのぼりさんと化したなのは達が挙動不審にきょろきょろしていたら職員の人に苦笑されてしまい、恥ずかしさで真っ赤になったりしたが、なんとか艦長室、つまりリンディの部屋に到着した。
「うわ」
「これは・・・」
『流石リンディさん、趣味がエキセントリックですね〜』
今回ばかりは、なのはもユーノもルビーの言葉に同意だ。
盆栽がある。
茶室がある。
そして極め付けに室内なのにししおどしがある。
艦長室という所から、リンディの趣味なんだろうと思うが・・・フロアリングとのミスマッチが凄まじい。
っというか、茶道はともかく、あのリンディが植木バサミ片手に盆栽の手入れをしている図というのがイメージ出来ない。
「「おまたせ〜」」
部屋の主達が帰還したのはそれから一時間後だった。
複数形なのは、リンディの他にエイミィとクロノも一緒にいるからだ。
「・・・・・・」
ちなみにクロノの現状は、捕獲されたエイリアンよろしく、リンディとエイミィに両脇を抱えられている。
「クロノ君・・・微笑み忘れた顔になっているの」
「愛を取り戻せるといいね、主に家族愛」
支えられているのは、たぶん一人ではたっていられないからだろう。
リンディとエイミィがやったこととはいえ、眠っていた物に点火してしまったのは間違いなくルビーなのでバリバリに申し訳ない。
ところで、嬲るという文字は二人の男の間に女が一人と書くのだが、そのまま今のクロノ達の姿である。
本当の性別が逆だが。
「どうかしらなのはちゃん?家の子は?」
思いっきりリンディが自慢してきた。
「うう、負けたかもなの」
なのはがうめく。
さっきぶりに再会したクロノはすごい事になっていた。
化粧だけじゃない。
髪の短さをカバーするために、どこから持ってきたのか長髪のウィッグを付けている。
しかもポニーテールで上げられた髪の下にあるうなじが色っぽい。
ゴスロリの雰囲気を壊すことなく、むしろ相乗効果を発揮していた。
背が低いのもポイントが高い、似合い過ぎていて怖いくらいだ。
8歳とはいえ女の子のなのはの心境は複雑で、「悔しい、でも可愛い!!お持ち帰りー!!」とか思っている。
・・・そっちの趣味はなかったはずなんだが?
『リンディさんにエイミィさん・・・いい仕事してますね〜』
ルビーの言葉に、リンディとエイミィがサムズアップしてくる。
ルビーに手があれば同じ様に返していただろう。
クロノに関してはご愁傷様、男としてのプライドはボロボロだろうが・・・生まれてくる性別を間違えたんじゃなかろうか?
「エイミィ・・・君はまだやるべきことがあるだろう?」
ふらふらと、いい感じに生ける屍になったクロノが言った。
「うん、そうだねクロノ君!!これからクロノ君ファンクラブを立ち上げないと!!」
「仕事しろって言ってんだよ!!」
クロノとの接点は少ないが、明らかに壊れて言っているのがわかる。
「艦長!!なんとか言ってください!!」
「会員番号の一番は私ね」
「勿論!!」
「オウ・マイ・ゴッドォォォォ!!」
クロノの神は死んだ。
「大丈夫、アースラの記録を本局の広報にインストールさせればコアなファンがザックザックだって!!」
「アンインストール!アンインストール!!恐れを知らない戦士のようにーーーー!!」
「くっろくろにしーてやんよ〜♪」
「するなー!!そんな(主にクロノにとって)暗黒の世界を作ろうとするんじゃない!!」
部屋を出て行こうとするエイミィの腰に、クロノが縋りついて止めようとしている。
セクハラで訴えられかねないと思うが、今の両者を見比べてエイミィを被害者と思う人間はいないだろう。
しかも、鼻息荒く目が行っちゃって・・・もとい、逝っちゃっているエイミィはそんな事じゃ止まらない。
クロノをぶら下げたまま部屋を出て行った。
復活のクロノ・ハラオウン・・・再び退場!!
クロノがボカロデビューする事があれば、ぜひ自分のパソコンに降臨いただこう。
クロノタンとか言ったりして・・・。
「大丈夫よなのはさん?」
「え?」
「あの子も執務官なんだから、この程度は自力で乗り越えてもらわないとね〜」
「は、はあ・・・」
『執務官というのは想像以上に厳しい役職のようですね〜』
それは間違った知識だ。
「さて、落ち着いたところで事情説明をお願いできるかしら?」
そしてこの人はかなりの大人物だなーとも思う。
さっきまでの事を全部丸っと無視ですか?
どうやら、やるべきことは忘れていなかったらしいが、それが仕事に対する責任感なのか、それともクロノ弄りに満足したからなのかは判断に困るところだ。
ちなみに、必死の形相で女性の腰に縋りつくゴスロリ少女というアースラ七不思議の怪談が誕生するまであと3分。
「処で、このままでは話しづらいからバリアジャケットを解除していただける?」
「え?あ、はい」
忘れていたが、ずっとバリアジャケットのままだった。
バリアジャケットをまとっているという事はすなわち、武装しているという事で、OHANASIじゃないお話をするのには向かないだろう。
なのはは素直に解除して普段着に戻る。
「貴方も、元の姿に戻ったらどうかしら?」
「え?」
リンディの言葉の意味を理解できなかったなのはが、首をかしげる。
彼女の視線は、自分ではなくユーノを見ている?
「あ、そうですね。ずっとこのままの姿だったので忘れてました」
しかし、ユーノはリンディの言いたい事が理解できたらしい。
頷くと、何やら魔法を発動させた。
足もとに魔法陣が展開され、ユーノの体が突然光りだした。
「ふぅ、なのはにはこの姿を見せるのは久しぶりかな?」
現われたのはクリーム色の髪に、どこかの民族衣装のような服を着た少年だった。
しかも半ズボン・・・一部の人間にはここ重要かもしれない。
「え?」
しかし、仮面ライダーを凌ぐ変身ぶりに、なのはは呆けたままだ。
理解が現実に追いついていない?
「だ、誰なのこの人!?」
「ぼ、僕だよユーノだよ!!最初に会った時の姿だよ!!」
「し、知らないよ!?ユーノ君は最初からフェレット君だったよ!!」
「あ、あれ?そうだったっけ?」
『ひょっとして、あのB級夢SFの事ですか?』
「そ、その通り!何だ。ちゃんと見てくれていたんじゃ・・・」
『あれだったら安眠の妨害だったのでジャミングさせてもらいましたから、なのはちゃんは見ていませんよ?』
「人のSOS念をブッチするなんて何考えてんだお前ぇぇぇ!!この人でなし!!」
『ルビーちゃん杖ですもの、何をいまさら』
・・・このメンツの、話の脱線率はとんでもなく高い。
そんでもって・・・あらあら・・・おやおや・・・それからどんどこしょ・・・説明終了
「そう、貴方があのジュエルシードを発掘したの」
説明を聞きながら、リンディが自ら茶をたててふるまってくれた。
どうやら茶室は飾りではなく現役らしい。
リンディは日本通であるようだと・・・そんな風に思っていた時もあった。
リンディが角砂糖を三つ緑茶にぶち込むという茶葉農園の人達にフライング土下座を見るまでの短い時間だったが。
「ル、ルビーちゃんは知っていたの!?ユーノ君が男の子だって!?」
『ええ、まあ・・・だから温泉でも拘束していたでしょう?』
「で、でもでも・・・私ユーノ君の前で普通に着替えたり、お姉ちゃんやお母さんと一緒にお風呂に入ったりしちゃったんだよ!?」
『っちい!!このけだもの!!ルビーちゃんの見ていない所ですでになのはちゃんだけでなく美由希さんや桃子さんまで毒牙に!?』
「冤罪だ!!ってなのは落ち着いてー!!レイジングハートを構えないでーー!!」
「立派だわ・・・って皆さん?お話を聞いてほしいんだけど?・・・なのはさん、それはダメ!!」
リンディの話なんか誰も聞いていなかった。
特になのはのパニクリ方がひどく、砲撃モードのレイジングハートをユーノに向けていた。
流石にこんな所でぶっぱなされては逃げ道がないので、リンディも焦る。
『なのはちゃん、やっちゃえやっちゃえ〜ですよ〜』
しかもルビーは煽っているし・・・。
「リ、リンディ艦長!!助けてください!!」
本格的に命の危険を感じたらしいユーノが、リンディに縋りついてきた。
割とかわいい系の男の子が膝にすがり付いてくるシチュって萌えね?
リンディは鼻血が出そうなのを我慢してまずユーノを見て、そして真っ赤になっているなのはを見る。
「・・・ユーノ君?」
「は、はい?」
「エッチなのはいけないと思います」
その一言に、ユーノがマホラさんいや〜!!と女の子っぽく絶望する。
自分の艦を壊されるのは勘弁だが、リンディも女だ。
ユーノには悪いが、なのはの気持ちの方がよくわかる。
「・・・思えば恥の多い人生を送ってきました」
ユーノが人間失格的な辞世の句を読み始めた。
確かに、覗きで殺される人生の終焉など恥以外の何物でもなかろう。
そんないい感じに生ける屍になっていたユーノの肩にポンと手が置かれた。
「苦労しているな、ユーノ君?」
「あ、クロノ執務官」
いつの間にか戻ってきていたクロノだった。
とっても優しい笑みを浮かべている。
「わ、わざとじゃなかったんです。見ないように逃げようとしてもフェレットじゃ抵抗しきれなくて・・・」
「そうか・・・大丈夫、情状は酌量されるだろう。君は正直に話してくれればいいんだ」
「う、うう・・・あ、ありがとうございます」
・・・何かいい雰囲気だ。
しかも、クロノはいまだにゴスロリ姿・・・二人の周囲の空気が妖しい。
なのはとリンディは別の意味で赤くなって、見つめあっている二人を見ている。
・・・今さらだが、二人とも男だ。
ルビーが何も言わないのは、放っておいた方が面白そうだからか?
「クロノ執務官?」
「何だい?」
「実は僕、ルビー被害者の会というものに入っているんですが」
「それはいいな、僕も入会させてもらっていいかい?」
「勿論」
クロノが被害者の会に入会した。
友情度と親密度が上がって、更に妖しくなった。
「しかし、それはそれとしても君の行動は無謀だ」
「すいません」
少し落ち着いてから、クロノのお小言が始まった。
根がまじめすぎの委員長的キャラらしい。
「話を聞けば、ジュエルシードのモンスターの中には、危険な物もいたらしい。その被害を抑える事が出来たという点で完全な間違いとはいえないが、やはり結果的に上手く行ったというしかないな、もう少し自分の身の安全も考慮すべきだった」
「はい・・・」
言っている事は一々尤もだ。
以前ルビーにも指摘されたが、かなり運が良かったと言わざるを得ない。
「そのくらいでいいでしょうクロノ?本題に戻します。まだおそらくの段階ですが、ジュエルシードは彼の話とこちらの記録から、次元干渉型のエネルギー結晶体と推測されます。幾つか集めて特定の方法で起動させれば、空間内に次元震を引き起こし、最悪の場合次元断層さえ巻き起こす危険物です」
「次元震?」
「簡単に言えば次元世界間で起きる地震だね。規模にもよるけど、起きれば発生源の周辺世界はただではすまない」
聞いたことのない固有名詞に首をかしげるなのはにユーノが説明してくれた。
なんでも、アースラがこの世界に来たのは、前回のジュエルシードの暴走によって起こった小規模次元震を観測したかららしい。
つまりあの時、下手をしたらこの世界にとんでもない災害が起こっていたかもしれなかったと聞かされたなのはがぞっとする。
「っというかそれを力技で破壊したネコアルクとは何者だ?」
クロノの疑問に、なのはとユーノが顔を見合わせて真剣に唸る。
ここまで説明が難しい存在も珍しい。
「ルビーちゃんのペンフレンドでね、猫・・・よ、ようせ・・・」
『ネコ妖精ですよなのはちゃん?』
「形容しがたいけど猫に似ていなくもないナマモノです!」
いまだに妖精の形容詞にためらっているなのはにルビーがずばりと言ったが、ユーノが大声でもみ消した。
「そ、そうか・・・」
三者三様の反応に、クロノはそう言うしかなかった。
突っ込んじゃいけない気がしたのだ。
「しかし、次元震は厄介なんだ。実際に旧暦の462年、次元断層が起こった時、とてつもない被害がでた」
「ああ、あれはひどかった」
そんな知らない歴史を紐解いてしみじみ語られても困る。
他の皆はともかく、話についていけない。
『・・・・・・』
「ルビーちゃん?」
何所かに仲間はいないかと周りを見回したなのはは、珍しく黙って話を聞いているルビーに気がついた。
クロノやユーノにはわかるまいが、長い付き合いのなのはにはルビーが何かを考え込んでいるという事に気づく。
「・・・ルビ」
「素人のなのはさん達にこれ以上の負担をかけるわけにはいきません」
「「え?」」
再度声をかけようとしたなのはだが、リンディの言葉に遮られた。
クロノが視界の隅で当然という風に頷いている。
「これよりロストロギア、ジュエルシードの回収は管理局が全権を持ちます」
「君達は今回の件は忘れて、それぞれの世界で元通り平穏に暮らすといい」
一方的に、反論の隙なくまくし立てられたなのはとユーノが面食らう。
考えてもいなかった申し出だ。
「いきなりそんな事を言われても・・・」
「次元干渉にかかわる事件だ。民間人が介入するレベルの話ではない」
・・・まあ、言っていることは間違いではない。
こっちは魔法を覚えたばかりの素人、相手は専門家だ。
それなりの自信もあって言っているのだろう。
玄人は、素人が下手に介入してひっかきまわすのを嫌うものだ。
「まぁ、いきなり言われても気持ちの整理が付かないでしょう・・・」
「あ、ちょっと待ってください」
「え?」
何か言いかけたリンディの言葉に、なのはが待ったをかけた。
「作戦たーーいむ!」
バローム的に腕をクロスさせたなのはの号令で、ルビー・ユーノ・レイジングハートが円陣をくむ。
「ここからは時空管理局がって言われちゃったけど、どうしたらいいなの?」
「なのは、餅は餅屋と言うし・・・ロストロギアの扱いに関しては彼等の方が習熟しているのは確かだよ?」
なのはの疑問にユーノが答える。
何と言っても、なのは達は個人レベルの集団だ。
ノウハウも足りていない。
回収した後も、より厳重に保管できるというのなら任せるのも手だろう。
「で、でも・・・いいのかな?このままお任せしちゃって?」
『なのはちゃん?レイジングハートもルビーちゃんも、私達はなのはちゃんの礼装でデバイスです』
『なのは様のご意志のままに』
ルビーとレイジングハートがなのはの思いを聞く。
「私は・・・私はやっぱりフェイトちゃんと話がしたい。このままうやむやのままお別れなんて・・・」
『ではそうしましょう』
「え?」
ルビーがあっさり答えを言った。
さもそれが当然と言うかのように。
「で、でも・・・この件は時空管理局がって・・・」
『問題ありません、時空管理局はジュエルシードを追っているんです。ここ重要、そして私たちはフェイトちゃんとお話がしたい。両者の目的は対立していないんですよ?』
つまり、共闘が可能だという事だ。
『あんなことを言っていますけど、本心はなのはちゃんの助けが欲しいに決まっています。だって執務官って役職持ちなのに、クロノ君ってばなのはちゃん達に一発KOされちゃったんですから』
「ふぐお!!」
何か、言葉の刃が刺さったような苦悶が後ろから聞こえてが気にしない。
『現状、最も問題なのは、このままジュエルシード回収が進んでいく上で、フェイトちゃんが犯罪者認定された場合、なのはちゃんとフェイトちゃんがお話する機会なく永遠のお別れエンドを迎える可能性がある事です』
「それは嫌だよ」
『でしょう?連中と一緒にいれば弁護も出来るかもしれませんし、何かあったら時空管理局ポイ捨てしちゃえばいいんですよう』
「ポ、ポイ捨て?」
後ろから唖然とした声が聞こえるが、これも無視。
「うん、わかった」
いいのか?
そこに解ったと答えていいのか?
『そう言う事でリンディさん?私たちジュエルシードの回収をお手伝いしますから恩に着てください』
「い、いやまあ、協力してくれるのは正直ありがたいんですけど・・・」
リンディの顔は盛大にひきつっていた。
「ま、魔力の大きさが戦力の決定的な差じゃないやい」
クロノなんか、部屋の隅で地面にのの字を書いている。
後で知ったことだが、クロノは14歳らしい。
背が低いのは成長期に入る前だからだとか・・・クロノは6歳も年下の女の子達にノされたわけで、しかも女装までさせられたと・・・涙が出ちゃっても、今のクロノは外見女の子なので問題無し。
――――――――――――
「相談くらいはしてほしかったな」
時空管理局に協力する事情を説明するため、なのは達に先じて帰宅したルビーの説明を聞いた士郎が渋い顔になる。
『すいません士郎さん、なにぶんにも急だったんですよ〜』
「信用していいのかい?その時空管理局は?」
ジュエルシードを回収する為に学校を休まなければならないというのもあるが、組織というものにあまり良い思い出がないからだろう。
同じ理由で恭也と美由希もあまり面白くない顔だ。
高町家にとって、組織とは集団で襲いかかってくる連中という認識が強い。
『リンディさんとクロノ君は割と信用がおけますけど、基本的にはギブ・アンド・テイクですよ〜。ジュエルシードをさっさと回収してくれるっているのなら望むところですからね〜』
ルビーは最初から、ジュエルシードを処理することを優先していた。
それが時空管理局であろうと、フェイトの母親だろうとそんな事は問題ではない。
時空管理局に協力するのは、単純に数が多いからだ。
数は力だよ兄貴である。
そして人手があればなのはの負担も少なくなる。
「本当に、ルビーちゃんはとぼけたようでいろいろ考えているんだな?」
『それ程でも〜』
苦笑するしかないが、なんだかんだでルビーはなのはを守るだろう。
基本的にルビーの思考は高町家を、それもなのはを中心に展開されるのだから。
「となると、俺達は身を引いたほうがいいのか?」
「親父!?」
士郎の言葉に、恭也と美由希が驚く。
「いや、時空管理局と一緒に動くというのなら、俺達が下手に手を出すわけにはいかないだろう」
護衛ならともかく、共に闘うというのならかなり高いハードルが存在する。
なのはは魔法に出会って間もないとはいえ魔導師だ。
やってやれない事はないかもしれない。
しかし士郎達は、本物の魔導師と一緒になって戦う経験がないし、時空管理局の人間も御剣剣士との連携の経験などあるはずがない。
個々に強力でも、十分な連携が取れなければ互いに足を引っ張って役に立たない事もある。
今回の場合、事が魔法がらみなので、その時空管理局主体で行くべきだ。
士郎達が外れるというのは道理が通っている。
不満がないわけではないが、なのはの安全を考えればそちらの方がいいだろう。
ルビーの話では、場合によっては世界の命運が掛ってくる。
わずかなミスが世界崩壊につながるというのも信じがたいが、すでに魔法や魔術などにかかわっているので完全否定も出来ない。
「ところでルビーちゃん?」
『何ですか?』
「そのクロノ君というのは、どう言う子なんだい?」
場の空気が別物に変化する。
『クロノ君ですか?一言で言うと』
「言うと?」
『どこか別の世界で、魔力を無くしたなのはちゃんと恋人になっている感じの男の子です』
「そうか・・・それは一つ、見極めなきゃならんよなぁ〜?」
おもむろに、小太刀の手入れを始めた士郎に、恭也は云々と頷き、美由希は彼氏の第一条件は強さだと理解し、桃子はそんな家族をにこにこ笑って見ていた。
同時刻、クロノがいきなりくしゃみをしたかどうかは不明だ。
「あと・・・小動物になって娘の部屋に入り込んでいた不埒者ともOHANASIしないとな・・・」
同時刻、ユーノが正体不明の寒気を感じたかどうかは定かではない。
友情とか儚いものである。
二人の明日は・・・・・・・・・・・・どっちだ(デッド・オア・アライブ)?
「ただいまー」
「今帰りましたー」
とりあえずなのはとユーノが帰宅した。
――――――――――――――
「母さん・・・ジュエルシードを回収してきました」
フェイトの持つバルディッシュから、ジュエルシードが吐き出される。
その数は五つ、青い光が薄暗い室内を照らしだす。
時空の狭間、時の庭園の深部にあるホールだ。
そしてフェイトの正面・・・玉座にはいつものようにプレシアが座っている。
「・・・たった五つ?」
「ご、ごめんなさい」
いつもはクールで表情もあまり変わらないフェイトがしゅんとなる。
怒られると思ったのだろう。
しかし、それを見たプレシアがフェイトに聞こえないくらいの小さな声でうっと呻いた。
「ま、まあいいわ!じ、順調に集まっているようだし・・・」
「か、母さん?」
褒められた事で、フェイトの顔がぱっと花咲く。
さっきまでの無表情とのギャップに、またプレシアが萌えそうになった。
「で、でもまだまだよ!!私の娘ならこのくらい!!そ、それにあの杖もまだ奪えていないじゃない!!」
思いっきりきょどっているというか、大声でいろいろなものを誤魔化そうとしているのが丸分かりだが、それを見抜けるほどの人生経験のないフェイトの目が潤む。
・・・ざ、罪悪感が!!罪悪感が胸に刺さる!!
プレシアさんも、内心でいろいろ大変そうだ。
「と、っとにかく今日は休みなさい!!こんなんじゃ全然足りないわ!!ちゃんと栄養のあるものを食べて英気を養いなさい!!」
「はい・・・」
とぼとぼとホールを出て行くフェイトの後姿を見送ったプレシアが深いため息をつく。
「な、なんであの子あんなに感情表現が豊かになったのかしら?」
ずっと人形として扱ってきたのに、笑っている顔とか泣いているかを見ていると、嫌が応もなく“あの子”を思い出してしまう。
・・・やっぱりあのルビーという杖のせいか?
「それ以外に何があるっているんだい?」
「そうよね・・・ってなあ!?」
てっきりひとりっきりだと思っていたところに声をかけられ、プレシアが見事にうろたえる。
見れば何時の間にかアルフが傍にいた。
いや・・・思えば最初からいたのだ。
フェイトがホールに入ってきたのを見ていたのだから、単純にどうでもいい相手と意識にも止めていなかっただけの事で、てっきりフェイトと一緒に出て行ったと思ったのだが、部屋にそのまま残っていたらしい。
その彼女が目を丸くして自分を見ている。
「な、何よ?」
「いや、あんたもちゃんとリアクションとれるんだなって」
「ぐっつ!!」
思いっきり見られた。
ずっといたのだから当然だ。
「それにあんたってツンデレだったんだな?」
「がは!!」
思いっきり吹いた・・・血を・・・。
「お、おい大丈夫かい?」
「だ、大丈夫!!」
「でもあんた血を吐いたぞ?」
「リアクションよリアクション!!」
苦しい・・・誤魔化し方が苦しいプレシアさん。
吐き出した血を拭いながら、なんとか冷静さを取り戻したプレシアがアルフを睨む。
「それで、駄犬が何のようなの?」
「駄犬言うな・・・なあ、もうこの辺りで辞めさせてくれないかい?」
アルフの申し出に、プレシアが眉をひそめた。
「もう無理だよ。時空管理局が本格的に動き出しているんだ。何とか先手を取って集める事が出来たけど、これ以上は無理だよ」
その意見は正しい。
今回フェイトが持ってきた五個は、時空管理局が本格的に動き出す前に回収できたものだ。
現に、あと二つ、フェイト達はジュエルシードの位置を掴んでいたが、先を越されてしまった。
設備、人員ともに向こうの方がはるかに上なのだ。
たった二人で対抗できる道理は存在しない。
「ダメよ」
プレシアが短く、あざけりの笑みを込めて、有無を言わせない返答をする。
それを見て聞いたアルフの血が一気に沸騰する。
「何でだよ!?何でジュエルシードなんて集めないといけないんだ!?」
「命令だからよ」
「理由を言えって言ってるんだ!!」
「貴女ごときが知る必要なんてないわ」
悔しそうに、牙をむくアルフに対して、プレシアは自分の杖を向けた。
「駄犬が、主に噛みつこうっていうのかしら?」
「ふざけるな、アンタだってフェイトがどれだけ頑張っているのか見ているはずだろう?」
「・・・・・・」
胸にチクリときた何かを、プレシアは無理やり押し込む。
今、そんな感傷に意味はない。
「それに、ジュエルシードはともかく、あの杖はいまだに私の前に持ってこれないでいるじゃない?」
「う、だ、だからアイツは・・・」
「言い訳なんて聞きたくないわ」
もはや話す事はないと、プレシアはアルフに背を向ける。
これ以上煩くされては敵わない。
「どうしてだよ・・・あんた、フェイトの母親なんだろ?」
「・・・・・・」
声に答える気にはなれなかった。
答えてしまうと、さっきから胸にチクリチクリとくる何かに向き合わなくてはならないから・・・その代り・・・。
「そうね、アルフ?別にフェイトじゃなく、貴女でもいいのよ?」
「え?」
――――――――――――――――
「ジュエルシード、見つからないね」
「うん」
アースラの食堂で、お勧めのミルククッキーをポリポリ齧りながら、なのはとユーノが対面に座っている。
アースラに協力してすでに10日、最初の方でフェイト達に先行を許してしまい。
おそらくは五つ程のジュエルシードを先に回収されてしまった。
何とかなのは達が回収できたのが二個だ。
それ以来ぱったりと、ジュエルシードの反応もフェイト達の反応も観測されていない。
アースラのセンサーは、なのは達の感覚より鋭敏らしいので、本当に動いていないようだ。
「これだけ探してないとなると・・・地上にはもうないかもしれない」
「海の中って事?」
海鳴は海に近い町だ。
ジュエルシードが海に落ちた可能性は否定できない。
なのはとユーノの予想は、数分後に響いた警戒のアラームにもとに現実となる。
「艦長、こちらから地球の海にジュエルシード反応が、六個です。ジュエルシード反応が一気に六個!!」
「エイミィ、その場所を検索して画面にだして」
「はい・・・出ます、これは・・・」
なのは達が駆け付けたブリッジは騒然としていた。
「フェイトちゃん!?」
正面、巨大モニターに映っているのはフェイトだ。
彼女がいるのはどうやら海上らしい。
しかもただ海の上を飛んでいるのではなく、六本の竜巻に周囲を取り囲まれていた。
同じ場所に、同時にこれだけの竜巻が発生するのは明らかに変だ。
自然現象の竜巻ではない。
「エイミィさん、何があったんです!?」
「それが・・・」
エイミィがコンピューターを操作しながら説明してくれた。
どうやら、あの竜巻はジュエルシードによるものらしい。
なのは達と同じく、海の中に残りのジュエルシードが落ちたと、フェイトも判断したのだろう。
なので、以前にもやったように強制発動させてからジュエルシードを封印、回収するつもりだったようだ。
「なんとも呆れた無茶をする子だわ!」
「無謀ですね、明らかに個人の成せる魔力量の限界を超えている」
リンディとクロノの言うとおりだ。
いくら何でも一人でできる事では・・・一人?
「あれ?・・・アルフさんは?」
モニターをどれだけよく見ても、フェイトに付き従っていたあの魔狼の女性の姿がない。
主であるフェイトがピンチなのに、傍を離れているのか?
『きゃ!!』
「っつ!!」
スピーカーから聞こえてきたフェイトの悲鳴に、疑問が棚上げされた。
モニターの中のフェイトは、風に舞う木の葉のように翻弄されている。
ただでさえ6個のジュエルシードを発動させるために魔力を放出したのだろう。
今のフェイトに魔力はどれだけ残っているのだろうか?
「あの!!私達も急いで現場に・・・」
「その必要はない。放っておけば、あの子は勝手に自滅する」
「え?」
クロノの言葉に、なのはの頭が真っ白になる。
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「仮に、自滅しなかったとしても、力を使い果たした所を叩けばいい」
「でも!!」
「今のうちに、捕縛の準備を!!」
「了解」
なのはの訴えを無視して、クロノが指示を出す。
クルーがそれに従って動き出した。
「残酷に見えるかも知れないけど、私達は常に最善の選択をしないといけないの」
この艦の最高意思決定者であるリンディもクロノの意見を認めてしまった。
これでは部外者のなのはには何も言う事が出来ない。
『お話は終わりですか?』
重い空気をぶち壊したのはルビーだ。
いつもどおりの調子で、何も変わらずなのはのそばに寄り添っている。
『では、フェイトちゃんを助けに行きましょうか、なのはちゃん?』
「え?」
「な!?」
ルビーの言葉に、なのはが聞き返し、驚きの声を上げたのはクロノだ。
「き、君は僕達の話を聞いていなかったのか!?」
『ええ、聞いていましたよ?それが何か?』
「それが何かって・・・」
あまりにもあっさり返されて、クロノは二の句が告げられなかった。
それはクロノだけではなく、ブリッジにいる全員が同じ思いだ。
『何故そんな不思議な顔をしているんです?元々、私達は互いの利害込みでの民間協力者でしょう?それが一致しなくなったのならハイサヨナラヨ〜です。当然じゃないですかぁ〜?そちらは存分に最善の選択をしてください。私達も私達の最善を目指しますので〜』
こんな皮肉っぽいルビーを見るのは、長い付き合いのなのはも初めてだ。
「ルビーちゃん?何か怒っているの?」
『あはぁ〜愉快痛快ルビーちゃんはカレイドランドのプリンセス。怒っちゃったら火山が噴火しちゃってますよ?』
・・・やはり何かおかしい。
しかし今は・・・。
「・・・行っていいの?」
『なのはちゃんの力は時空管理局の為にあるわけじゃないでしょう?誰かの涙を止める為の力です。今泣いているのは誰ですか?』
「そ、それは」
なのはの視線が、モニターに浮かぶフェイトをとらえる。
六つの竜巻に囲まれて、木の葉のように頼りなく揺れているフェイトの顔には苦悶の表情が浮かんでいた。
「私・・・フェイトちゃんを助けたいよ」
『GOOD』
「は、話を勝手に進めるな!!」
クロノが怒鳴るが、ルビーは意に介さない。
『手を伸ばせば救える人がいて、誰かを救いたいという思いがあれば行動する理由として十分です』
「そんなのはエゴだ」
『|エゴイスト(それ)が魔術師ですから』
クロノの言葉はルビーに届かない。
『クロノ君、小利口にまとまり過ぎですよ?誰の遺志を継いだつもりか知りませんが、“借り物の正義”じゃルビーちゃんの説得は無理ですよ〜何時か本当の信念にしてから出直してきて下さい』
「な!?」
『じゃなけりゃ理想に溺れて溺死しますよ〜あはぁ〜これ一回言ってみたかったんですよね〜』
いつものルビーに戻った?
クロノに反論する暇さえ与えない。
『さ〜あ、行きますよなのはちゃん!ちなみに、ユーノ君はお留守番です』
「何で!?」
いきなりの仲間外れ発言が来た。
やーってやるぜ!!という顔をしていたユーノが涙目になる。
『なのはちゃんにも見せたことない、ルビーちゃんのちょっと良い所、本邦初公開!!巻き込まれたら素で死にます』
「・・・マジ?」
『大マジです』
ここまで断定するルビーも珍しい。
なのはが覚悟を決めてルビーの柄を左手で掴み、身の内の魔術回路を起動させる。
なのはからの魔力を受け取ったルビーからいきなり目のくらむ閃光が放たれ、納まったそこにはルビーとなのは達の姿はなかった。
「転移したのか?」
正面モニターの中に、フェイトに向かって落下するなのはの姿が映った。
――――――――――――――――――
「フェイトちゃん!!」
周囲のすべてを竜巻に囲まれ、強制発動したジュエルシードを何とか封印しようとしていたフェイトは、背後にその声を聞いた。
「な、なのは!?」
聞き間違えようがない位、何度も彼女の声を聞いた。
そして、多分ここに来るだろうと確信さえしていた彼女は・・・予想を裏切らなかった。
嵐の海の上、白いバリアジャケットを風にはためかせた彼女がいる。
右手にレイジングハートを握り・・・。
『今回のルビーちゃんはとってもやる気ですからねー、やってやりますよ〜』
左手にはルビーを握っている。
いつもながらの口調で、本気でやる気があふれているのかは疑問だ。
「やれるの、ルビーちゃん!?」
『なのはちゃん、フェイトちゃんをゲットしてください!!』
「わかった!!」
なのはが、ルビーの言ったとおりフェイトを抱き寄せる。
躊躇なく従ったのは、長い付き合いからルビーの本気を感じたからだろう。
「な、何を!?」
「おとなしくしてフェイトちゃん!!」
右手でフェイトを確保すると、左手のルビーから間欠泉のような魔力が噴き出した。
『座標設定〜、ルビーちゃんを中心に半径200メートル〜ぅ』
「ル、ルビーちゃん?なんだか怖い位の魔力が集まってくるのを感じるよ!?」
右手に抱いたフェイトなんか、その魔力を見ただけで金縛りになっている。
それほどに強大な魔力量だ。
これがルビーの言う所の本気?
こんなふざけた魔力を何に使うつもりだ?
『気にしない気にしなーい。っと準備オッケーですよ〜なぎ払っちゃってくださーい』
「わ、わかった」
ルビーにとりあえず振れと言われ、とりあえずブンと水平に振り抜いてみる。
『第二魔法奥義!だーいざーんげーき!!』
「「え?」」
なのはとフェイトが異口同音の声を漏らした。
驚きによるものではない。
理解不能な事は、驚きではなく思考停止を誘発する。
要するに、なのは達はあっけにとられた。
彼女達が見た物は、たとえ誰であろうとあっけにとられるに足るものだったのだ。
「世界が、ずれた?」
茫然と・・・その超常現象を成す手伝いをしたはずのなのはがつぶやく。
一瞬ではあったが、視界がルビーが振られた線をなぞる様に、上下がずれたのだ。
瞬きよりも早く、ずれは元通りになったが、決して見間違いではない。
そして夢でもない。
その証拠に、天を突くほどに荒れ狂っていた六本竜巻・・・そのすべてが断ち切られていた。
魔力ごとである。
『さあなのはちゃん、フェイトちゃん?封印ですよ〜』
「う、うん」
「はい」
ルビーの言葉で、なのはとフェイトははっとして、自分のやることを思い出した。
あわててなのはがフェイトを開放すると、自分の魔力でフェイトが空中にとどまる。
二人は揃ってレイジングハートとバルディッシュを構えた。
「行くよフェイトちゃん」
「う、うん」
二人の封印魔法が放たれる。
先ほどまで、あれほどの猛威を奮っていた六個のジュエルシードは、驚くほどあっさり封印された。
なのはとフェイトの中間に、六個のジュエルシードが浮かんでいる。
「ル、ルビーちゃん?今の何?」
封印を確認して、ため息をついたなのはがルビーに説明を求めた。
ジュエルシードより、今はルビーが何をしたのかの方が気になる。
『第二魔法の応用で、ちょっとだけ空間をずらしました〜』
第二魔法は並行世界の運営、つまり空間に影響を与える魔法である。
これの応用で任意の空間を設定、ちょっとだけずらしてやっただけだ。
空間そのものは、世界の修正力が瞬時に復元してしまうが、そこにあった物は世界のずれに分かたれたまま残る。
いわば空間のギロチン、世界その物を武器とするのがルビーが発動した力の正体・・・確かに、これは巻き込まれれば死ぬしかない。
ジュエルシードの竜巻を一閃した所から、魔力すらもその運命から逃れられないだろう。
プロテクションすら無意味という事は、防御不可能という事だ。
以前、ルビーは自分が本気を出せば海鳴が真っ二つになるといった。
なるほど確かに、この能力は切れないもののない究極の剣・・・。
『なのはちゃん?』
「は、はい?」
ルビーの力の一端を目にして呆けていたなのはが呼びかけられて現実に戻ってきた。
『ルビーちゃんの事が怖くなりましたか?』
「うん・・・少し・・・」
それは偽りないなのはの本心だった。
ルビーはともかく、あの力は怖い。
『それでいいんです。それでこそなのはちゃんです』
「な、なんでそんなに嬉しそうなの?」
『怖い物を態々使う人なんていないでしょう?さあ、前座はこのくらいにして、まずはフェイトちゃんとの決着ですよ』
「うん、わかった」
なのはは頷いてレイジングハートを、フェイトはバルディッシュを構える。
「・・・いいの?」
「え?」
「あの子を使わなくて?」
フェイトがちらりとルビーを見る。
ルビーの使った魔法・・・あんなでたらめな魔法を使えば、勝ちは揺るがないだろう。
だが、なのはが手に持っているのはレイジングハートだ。
「うん、でも・・・それだとルビーちゃんの能力でなのはの力じゃないから・・・」
「・・・・・・」
「フェイトちゃんには、なのはが向かい合いたいの」
「そう・・・」
言葉が尽きた。
元々、言葉だけで済まないと互いが理解している。
決着をつけずに、二人の関係は前に進む事が出来ない。
「「え?」」
それに気がついたのは二人同時だった。
頭上にいきなり現われた強大な魔力、空から光の槍が降ってくる。
一直線になのはとフェイトに向かって・・・それはあまりにも巨大で強力な砲撃・・・しかし、それに気がついたところで、すでに避けるには遅すぎた。
「母さん?」
フェイトのつぶやきを飲み込んで、光る黄金色の魔力が弾けた。
『だ〜れですか〜?なのはちゃんとフェイトちゃんにおいたする悪い子は〜?』
しかし、砲撃が二人を焼くことはない。
なのはには、彼女の危機を黙って見ていない守人が常に傍にいる。
ルビーがなのはとフェイトに迫ってきていた砲撃を、魔術の結界を展開して受け止めていた。
強力な砲撃を、同等以上の強大な魔力が受け止めている。
「ルビーちゃん」
『なのはちゃん・・・ってえ?』
「え?」
なのはの見ている前で、砲撃を受け止めきったルビーが光る輪に捕らわれた。
・・・バインドだ。
「アルフ?」
「っつ!?」
フェイトの茫然とした声になのはが反応する。
彼女の視線をなぞっていくと、ルビーに手を向けているアルフの姿が見えた。
姿を現さなかったというのに、ここにきて不意打ちを仕掛けてきたのか?
「悪いね、あんたに恨みは・・・結構あるが、これもフェイトの為なんだよ!!」
バインドだけじゃない。
アルフは並行して、別の魔術を発動させようとしている。
「転移魔法だ!」
「クロノ君!?」
何時の間にか、クロノが姿を現していた。
介入のタイミングを計っていたようだが、緊急事態でアースラから出張ってきたらしい。
「そいつはルビーを何処かに飛ばそうとしている!!」
「っつ!!ルビーちゃん!!」
クロノの言いたい事を理解したとたん、なのははルビー目がけて飛んだ。
すでに、ルビーの下には魔法陣が発生している。
あれが転移の魔法だろう。
「ルビーちゃん!!」
『なのはちゃん!?』
バインドで拘束されたルビーは動けない。
なのはは必死で手を伸ばす。
その伸ばした手の先で・・・なのはの瞳に映るルビーの姿がかき消えた・・・なのはの手は、何もつかめずに空を切った。
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リリカルなのはに、Fateのある者、物?がやってきます。 自重?ははは、何を言ってるんだい?あいつの辞書にそんなものあるわけないだろう?だって奴は・・・。 ネタ多し、むしろネタばかり、基本ギャグ | ||
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