リリカルとマジカルの全力全壊 無印編 第十九話 魔法使い |
圧倒的な光景・・・なのはが使ったのはおそらくディバインバスターであって違うものだった。
まず、なのはのディバインバスターは呪文一つに付き一回の砲撃が発射される。
しかし、【魔法術式の一、|殺戮の祭り(ジェノサイド・カーニバル)】と呼ばれたそれは、言うなればディバインバスターのつるべ打ち、数十本のディバインバスターが宙に浮いていた武器達を文字通り殲滅してゆく。
その威力はあたり一面を更地にするほど、あまりにも一方的だった。
「にゃーーー!!」
それに一番ビビったのは、他でもないなのは(大)だった。
見た目が大人になっても、猫のような悲鳴を上げている。
「何これ、何これーー!?」
『落ち着いて下さいなのはちゃん』
「は、ルビーちゃん?」
やっとその存在に気付いたというか、はっとしたなのはが涙目でルビーとレイジングハートが融合した杖に話しかける。
見た目と中身と行動のギャップが凄かった。
「ああ!なんでなのは、大人になっちゃってるの!?」
『うおお!!方向を変えての天丼!?』
「胸が大きい!!はやてちゃんに鷲掴みされちゃうよ!!」
『しかもガールズ的なトーク?今日のなのはちゃんは突っ込みどころ満載です!!』
エンドレスになりかけている。
「なのはだ」
「なのはね」
「なのは以外の何物でもないな」
「なのは・・・」
「皆さん、あのやり取りで高町と判断するのは少し可哀そうでは?」
士郎、美由希、恭也、ユーノ、クロノの順番だ。
さっきまでの、死を覚悟した決意は何だったのだろうか?
スーパーシリアスタイムは終了か?
なのはとルビーのやり取りはあまりにも何時も通りだった。
「なのは?」
「あ、お父さん」
呼ばれて気がついたなのはが近づいてくる。
家族以外の男性陣はそろってあらぬ方向を見た。
外套のデザインは着物のように、胸の部分の合わせ目が開いているので、胸の揺れ具合がよく分かるのだ。
どうも、ブラに類するものがついていないらしい。
まあ・・・8歳児には必要ない代物ではある。
「ん?どうしたの皆?」
「今は放っておきなさい。それよりも本当になのはなのか?」
「うん」
にっこりと・・・外見年齢とはギャップがある天真爛漫な笑いになのはの面影があった。
「お父さん、無事でよかった」
「う、ん」
そして抱きつかれた。
なのはにしてみれば、大事な家族の無事をその身で確かめたかっただけなのだろう。
しかし、いきなり途中経過を省いて大人になってしまった娘は、妻によく似た初対面の女性でもある。
娘相手に不埒な思いを抱いたりはしないが、それでもドキドキするくらいは見逃してほしいところだ・・・っと、そんな風に考えていた時期が高町さん家の士郎さんにもありました。
「ぐお!!」
もうね・・・悲鳴というか断末魔というか、声の主である士郎にも分からないものが口から洩れた。
なのはが思いっきり抱きついているその両手が、士郎の体を締めあげている・・・サバ折り?
『なのはちゃん、なのはちゃん?』
「え?」
『士郎さんを放してあげないと、ちょっと危なくなってますよ?』
「にゃーーー!!」
やっと自分が父親の百面相の原因だと気がついたなのはが、士郎を解放するとどさりと言う感じに地面に崩れ落ちた。
「だ、大丈夫か親父?」
「ほ、骨は逝っていない」
何とか大丈夫だったらしい。
内臓的なものを吐き出さずに済んだようだ。
「な、何でいきなりこんな事に?」
『今のなのはちゃんが魔法使いだからです』
答えは、なのはが握っている杖から来た。
ルビーの声だ。
「ま、魔法使い?なのはが?」
この場合の魔法使いの意味を、なのはは知っている。
それがどれだけ途方もない事かすら、おぼろげながらに理解している。
『はい、限定的ではありますけど、間違いなく第二魔法の魔法使いです。8歳児ボディでは反動を受け止めきれないので、肉体ごと上書きしました。今のなのはちゃんには無尽蔵とも言える並行世界の魔力が流入していますから、素で肉体強化がMAXです。気をつけないと指先一つでダウンですよ』
アベシとかそういう意味でだろうか?
アベシな具合に弾けるのか?
士郎の顔が真っ青だ。
魔法使いであることの意味は、魔術師でなければ理解しがたい。
ここにいる面子の中で、その意味を知る事が出来たのは高町家一同だけだ。
『そして、同時に魔導師でもあります』
レイジングハートが補足説明を入れてくる。
「え?え?魔法使いで、魔導師?何でいきなりなのはが魔法使いになっちゃうの?」
『それは、ルビーちゃんが元々、魔法使いを探すための礼装だからですよ』
「え?魔法使いを探すための礼装?」
『正確には、“魔法使いになれる可能性”を持つ人を探すための礼装なんですけどね〜そんな事は全部丸っと置いときましょう』
ルビーがこの話はここまでと流れをぶった切った。
確かに、先にやらなければならない事がある。
『いいですかなのはちゃん?今のなのはちゃんは間違いなく魔法使いの一人です。人間が持てる力のほぼ限界点にいると言っていいでしょう。しかし、それでもシロウさん・・・あの守護者の人には勝てません』
『姉さん!!』
レイジングハートの警告に、複数の事が同時に起こった。
まず、十数本の武器が降ってきて、なのはを中心に円状に突き立つ・・・同時に爆破、なのはの視界は巻きあがった地面の色に塗りつぶされる。
『右です!!』
「っつ!?」
土煙を切り裂き、シロウが迫って来た。
左右に持った白と黒の中華剣を振りかぶっている。
なのはは右からくる黒の剣を杖で、左の白い剣を手甲で受けるが、体重の差によって跳ね飛ばされる。
「このっくらい!」
『アクセルフィン』
後ろに飛ばされながら、なのはは飛行魔法を発動した。
地面に叩きつけられることなく、そのまま空に駆け上がる。
「っきゃあ!!」
それを追って、ロケットのような速度で武器達が追ってきた。
自分に向かってくる刃の群れを反転し、わずかに体をずらし、急制動を織り交ぜて避けるが、逃げる空間をつぶすように武器は迫る。
「くっ」
『ジェノサイド・カーニバルですよ。なのはちゃん!!』
「その名前いやーーーー!!」
いやでも何でも、魔法は発動した。
再び、複数のディバインバスターが同時に放たれ、なのはに迫る武器を消し飛ばしてゆく。
「こ、これ何?」
『あはぁ〜、その言葉を待っていました〜これこそ第二魔法の真骨頂!!|多重次元屈折現象(キシュア・ゼルレッチ)!!並行世界のディバインバスターをちょっと拝借してきてなのはちゃんは完全無敵の魔砲要塞となるんです!!』
「何か、字が違う気がする」
意味はよく分からないが、目に見えるものは一大スペクタクルだった。
イメージ的には、巨大生物に向かってゆく連合軍の戦闘機達?
噛ませ犬な彼等は当然、怪獣に傷すらつける事が出来ずに退場してゆくわけだが、殲滅される剣達はまさにそんな感じである。
殺戮の祭りというネーミングも、そんなに的外れではない。
怪獣の立場に立てるというのは、かなりレアな体験だというのは分かるが、それを楽しんだり喜こんだりするのは色々と難だろうとなのはは思う。
『なのはさま、大きいのが来ます』
「レイジングハート!?」
空を飛ぶなのはの死角、真下からシロウが狙っている。
黒弓に番えたのは捻じれた剣、宿った魔力が紫電となってほとばしっている。
「|偽・螺旋剣(カラドボルグ)」
「ディバイン・バスター!!!」
打ち出されたカラドボルグに対し、なのはは周囲をなぎ払っていたディバインバスターの光芒を一点に集中した。
十数本の桃色の砲撃と、空間すら抉り取る螺旋の魔弾が激突し、大爆発を巻き起こす。
――――――――――――――――
「なんだ・・・これは・・・」
唖然と空を見上げるクロノが呟いた。
全員が空を見上げ、二人の戦いを見守るしかない。
こんなものは人間の介入できるものではない。
例えるならば、世界を作り出した創造神と、すべてを打ち抜く破壊神の戦いだ。
神話に語られるような神々の戦いを前にしては、人間はただ見上げ恐れるしかない。
『何をしているんですか!?』
「「「「っつ!!」」」」
完全に心を奪われていたところにきた、念話による怒声は聞こえた者達の心臓を握りつぶすかと思うほどの威力があった。
「これは・・・ルビー?」
高町家のメンバーは魔導師ではないので、念話の主に気がついたのはユーノが一番早かった。
『そうですよ〜呆けないでください!!』
「わ、悪かった。しかし僕達に何か出来るとは思えないぞ?」
クロノが申し訳なさそうに答える。
助けるどころか、近づく事さえ危険だ。
あの戦いには非殺傷指定などない、巻き込まれただけで命にかかわるだろう。
『そんな事は分かっていますよ。助けなんて期待していません』
思いっきりストレートに返されて、クロノ達アースラ組が軽くへこむ。
見た目は大人とはいえ、中身は8歳の子供への手助けなど期待されていなかったらしい。
どん底までへこむ。
『さっきも言いましたが、なのはちゃんは限定的な魔法使いでしかありません。今は拮抗状態を作れていますが、時間が経てば負けます。だから・・・』
「なのはがこっちにくるよ?」
「何?」
美由希が指さす方向を見れば、数多の武器に追われながらも空を逃げているなのはの軌道がこっちを向いている。
「あ、あれ!!」
そのまま、頭上を通り過ぎたなのはが何かを落とした。
きらきら光る青い石だ。
「ジュエルシード?」
ひょっとしたら必要になるかもしれないと、リンディからレイジングハートに返されていた残りの5個だ。
クロノ、ユーノ、士郎、恭也、美由希があわてて受け止める。
『急いで残りのジュエルシードを封印してください』
「どう言う事だ!?」
『世界崩壊の危機を招いているのは突き詰めて考えればジュエルシードです。なので、ジュエルシードを封印し、差し出せばプレシアさんは彼の目標から外れるかもしれない。ほかに方法はありません!!』
残り15個、プレシアが発動させたジュエルシードは、あっちこっちに散らばっていた。
未だに力を放出しているその一部は、どう見ても戦場の真っただ中に在る。
「あれを、封印してまわれって言うのか?」
戦いに巻き込まれかねないのは勿論、普通に発動状態のジュエルシードは危険な代物だ。
『時間がないんです!!』
「・・・分かった」
クロノは武装魔導師達を振り返る。
「聞いた通りだ。決死隊を募る。拒否しても恨まない」
・・・全員が手を上げた。
「ここまで来て何をいまさら」
「世界が消えるかどうかって時です。やってみる価値はありますよ」
脱落者はいなかった。
「しかし、高町さん?貴方達は・・・」
「私達もいくぞ、封印している時の護衛くらいにはなるだろう」
「僕も、防御魔法くらいは使える」
「高町さん、ユーノ・・・すいません」
本来、こんな命がけの状況に一般人を連れて行くわけにはいかないが、今は少しでも成功の可能性を上げたい。
彼等が素人では無い事が素直にありがたかった。
「・・・本当にバカばっかりね?」
蒼い顔に不敵な笑みを乗せて、憎まれ口をたたいたのはプレシア・・・。
「本当に時空管理局の連中は使えないわ」
「母さん!!」
「プレシア、アンタ・・・誰の為に皆頑張ってると思ってんだい!?」
フェイトに縋りつかれ、アルフに睨まれてもプレシアは動じない。
「仕方ないわ、フェイト?貴女も協力してやりなさい」
「え?」
「億劫だから聞き返さないでほしいわね、この連中に協力しろって言ってるの」
この場においてさえ、あくまで上から目線の物言いだった。
「やってくれるんでしょう?母さんのお願いよ」
「で、でも・・・母さんが一人に・・・」
「人形に心配されるいわれはないわ」
人形という言葉に、フェイトがビクリと反応する。
プレシアはそんなフェイトから目をそらした。
「ちっ、行こうフェイト。こんな奴巻き込まれてしまえばいいんだ」
「で、でも・・・」
「それでいいのよ。さっさと行きなさい。目障りだから」
まだ迷っている風のフェイトの手を掴み、アルフが連れて行く。
後に残ったのは、プレシアとアリシアを入れたポットだけだ。
「・・・ごめんね、アリシア・・・貴女を生き返らせてあげる事は・・・できないかもしれない」
―――――――――――――――――――――――――――
急旋回、急滑降、そこから更に上昇してループを描きながら左右に体を振って的を絞らせない。
「はあ・・・はあ・・・」
まさに無限とも思える剣を掻い潜りながら、なのはは自分の限界を意識し始めていた。
限定的にとはいえ、魔法使いになったなのはだが、その中身は変わらず8歳の女の子のままだ。
こんなドッグファイトまがいの事をしながら、斬られるかもしれない恐怖と闘う経験など無い。
プレッシャーに今にも気を失ってしまいそうになる。
『なのはさま、来ます』
「っつ!!」
レイジングハートの言葉に反応して旋回すると、目の前を赤い剣が通り過ぎて行った。
偽・螺旋剣ほど問答無用な威力はない。
しかし今度の剣は、避けたなのはに対して軌道をねじ曲げて再びかかってくる。
『|赤原猟犬(フルンディング)です。解き放たれたら最期、敵の血を吸うまで追いかけまわすという伝説の魔剣です』
「なにそれ、こわいよ」
『全くです』
再度避けるが、これまた方向転換してなのはを追いかけ続ける。
「そっれなら!!」
『ディバインシューター』
桃色の魔力スフィアが4つ飛んだ。
|赤原猟犬(フルンディング)と短い攻防の後に相打ちとなる。
『後ろです!!』
「っつ!!」
|赤原猟犬(フルンディング)に気を取られている間に、シロウの接近を許してしまっていた。
初見で、地面から数十メートルジャンプして襲いかかってくるのを予想しておけというのも無茶な話だが、左右から襲いかかってくる白と黒の刃は待ったなしだ。
『プロテクション』
魔法陣が盾となる。
防御は一瞬・・・一瞬で砕かれた。
「きゃああ!!」
プロテクションが破られた反動を、なのはがまともに食らった。
直に刃を受けるよりはましだが、飛行魔法を維持できなくなったなのはが墜落する。
――――――――――――――――――
「「なのは!!」」
空からたたき落とされ、地面に落ちたなのはに士郎と恭也が叫び声を上げる。
「大丈夫です。あの程度ならバリアジャケットの防御力で」
「まだ封印は出来ないのかユーノ!?」
みんな必死にやっている。
それは分かっているが言わずにはいられなかった。
「それが・・・」
見れば、ジュエルシードは個々が干渉しあっているのか、魔導師達の封印魔法がなかなか効いていない。
一つ一つ封印してゆくしかないのかもしれないが、それではあまりに時間がかかりすぎる。
「フェイト!?」
「はやく、しないと・・・」
アースラで観測したフェイトの魔力値はクロノよりも高かった。
そんな彼女を加えても、封印作業は遅々として進まない。
そうこうしている間にも、剣がなのはの落下した場所に殺到してゆく。
「なのは!!」
次の瞬間、桃色の竜巻が吹きあがった。
―――――――――――――――――――――
「はああああ!!」
キシュア・ゼルレッチを使い、数を増やした桃色のスフィアが、なのはを中心に嵐のように周囲を回転して剣を撃墜している。
いくらなのはが常識はずれの才能の持ち主だとしても、これほどの数のスフィアを制御する事は出来ない。
せいぜい単純な軌道モーメントを設定してそれに沿って動くようにするくらいが関の山だが、今はそれで十分だった。
迫りくる剣と、スフィアが相打ちになって行く・・・しかし所詮は苦肉の策だ。
『なのはちゃん、これ以上はなのはちゃんが持ちません!!なので、スフィアを解除すると同時に最後の賭けに出ましょう』
「わ、わかったよ・・・」
なのはも、己の限界は感じているらしい。
よくて後一撃・・・それに全てを込めるしかない。
『レイジングハート?』
『はい』
ルビーとレイジングハートの杖が組み換わって行く。
一度分離し、新たなパーツの下で再構築されたそれは、杖ではなかった。
銃と弓を組み合わせたような武器、大人のなのはの身長ほどもありそうな巨大な武器だ。
『カレイド・ステッキ砲撃バージョンですよ〜』
なのはは、完成したそれを左手で持ち、右手で弦を引く。
たったそれだけの事で、周囲の魔力が武器に集まり出した。
収束系の砲撃魔法、並行する世界から魔力を集める事が出来る第二魔法のルビーならば造作もない事だろう。
しかもここには、世界をバックアップにしたシロウの魔力と互角の戦いをしたなのはの魔力が飽和状態になっている。
この場でそんな物を使ったら、たとえ非殺傷指定でも間違いなく相手を殺してしまうが、それくらいの事をしなければ、シロウの足止めは出来ないのだ。
『なのはさま、もうすぐスフィアの防御が消えます。敵は正面』
「わ、わかったよ」
弓銃を構えるなのはは、緊張で滑りそうになる右手の指を意識して強く弦を握った。
自分の中に渦巻いている魔力が怖くなる。
ディバインバスターなど問題にならない、本来はフェイト用に開発したなのはの奥の手だ。
やがて、スフィアと剣による総力戦はほぼ互角のまま終わった。
幕になっていた桃色のスフィアが消え、シロウの姿が見える。
「え?」
『あーあれは!?』
シロウは逃げも隠れもしていなかった。
堂々と正面で剣を構えている。
黄金の輝きを放つ星の剣だ。
『|約束された勝利の剣(エクスカリバー)の真名解放!?まずい、なのはちゃん!!先に撃ってください!!』
「ス、スターライト・・・」
「|約束された(エクス)・・・」
なのはが弦を離すのと、シロウが剣を振り下ろすのは同時だった。
「ブレイカー!!!」
「|勝利の剣(カリバー)」
純白の光が、砲口から放たれた。
地面を刻みながら、文字通り星すらも砕かんと駆ける。
迎え撃つのは、星から作られたという|最強の幻想( ラストファンタズム)、贋作とはいえ、世界という存在のバックアップを得たそれは、本物に勝るとも劣らない輝きを放っていた。
両者の激突は一瞬・・・一瞬で、世界が砕けた。
――――――――――――――――――
「うっつ!!」
破壊の余波に投げ出されたなのはは、地面に体を打ちつけてうめき声を上げる。
気がつけば、半壊したホールに戻ってきていた。
スターライトブレイカーと|約束された勝利の剣(エクスカリバー)のぶつかり合いは、|無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)の世界すらも破壊したのだ。
『な、なのはちゃん』
なのはが元の、彼女本来の8歳の姿に戻っていた。
元々限定された力・・・ルビーも時間がないと言っていたその限界が訪れたのだろう。
「・・・・・・」
半ば気を失っているなのはに、シロウが近づいて行く。
あのぶつかり合いですら、シロウを打倒するには至らなかったようだ。
世界という存在の加護を得た守護者の力・・・その手には一本の剣が握られていた。
「なのは!!」
士郎の呼びかけにも、なのはは答えない。
魔術の基本は等価交換、身に余る力の行使に、反動が来ているのだ。
言葉は現実の状況に対して、あまりにも無力だ。
「待ちなさい」
しかし、シロウの歩みはその一言で止まった。
「貴方の目的は・・・私でしょう?」
プレシアだ。
青ざめた顔のまま、血の気のない笑みを浮かべて立っている。
「母さん!!」
プレシアの行動に気がついたフェイトが叫ぶ。
「そんな小娘を気にしている暇があるのかしら?貴方は私を殺しに来たんでしょう?私はここにいるわよ?」
挑発している。
元々シロウは、プレシアを殺すためにこの場に現界したのだ。
優先順位はやはりプレシアの方が高い。
「プレ・・・シア・・・さん?」
「貴女はそこで寝ていなさい、お嬢ちゃん」
起き上がろうとしたなのはを、プレシアが睨む。
既に、シロウは目標をプレシアに切り替えていた。
『ダメですプレシアさん!!』
「母さん、逃げて!!」
ルビーの声にも、フェイトの声にもプレシアは答えない。
ただ、その笑みが深くなったような気がする。
「・・・・・・」
しかし、そんな事はシロウには関係ない。
手の中に作り出した長剣を振りかぶり、プレシアに斬りかかった。
それを受けるプレシアは避けない・・・いや、もしかしたらすでに避ける余力すら残っていないのか?
「母さん!!」
|娘(フェイト)の声を聞いたプレシアは、覚悟を決めたのか目を閉じた。
その頭上に、銀の刃が振り下ろされ・・・。
「ふむ、何やら面白・・・いやいや、物騒な事になっているようじゃの?」
「え?」
・・・振り下ろされなかった。
初めて聞く声に、閉じていた目を上げれば、伝説の一瞬を切り取ったような光景が目の前にある。
大上段から剣を振り下ろすシロウ・・・そしてその刃を、七色に輝く宝石の剣で受け止め、白髪を獅子のようになびかせる老人。
「だ、だれ?」
「うん?ワシか?言っても理解できんとは思うが・・・ワシは・・・」
『何美少年でもないくせに、颯爽登場しているんですかこの爺?あんたの青春はとっくの昔に謳歌し終わっているでしょう?』
名前は、悪意を飽和状態にまで含んだ声に遮られた。
声の主はルビーだ。
どうやら、この老人の事を知っているらしい。
「ルビー・・・お主、相変わらず口が悪いのう?」
そして、老人もルビーの事を知っているようだ。
毒を含んだ言葉に、老人はニヤリと笑って返す。
二人の関係の深さが見えた気がした。
「ルビーちゃん、誰なの?」
『このくっそ爺はですね〜』
「初めましてお嬢さん?」
ルビーの説明を遮って、老人がなのはに話しかける。
好々爺の笑みだ。
「ワシはキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグと申す」
それは現在存在していると言われる4人の一人にして、「魔道元帥ゼルレッチ」「宝石翁」「万華鏡(カレイドスコープ)」「宝石のゼルレッチ」などの二つ名を持つ第二魔法の魔法使いの名であり、並行世界を放浪中で消息不明のはずの本人だった。
説明 | ||
リリカルなのはに、Fateのある者、物?がやってきます。 自重?ははは、何を言ってるんだい?あいつの辞書にそんなものあるわけないだろう?だって奴は・・・。 ネタ多し、むしろネタばかり、基本ギャグ | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
15166 | 14441 | 3 |
タグ | ||
リリカルなのは | ||
クラウン・クラウンさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |