リリカルとマジカルの全力全壊 A,s編 第七話 Dream oーchi |
ヴォルケンリッターの一角、鉄槌の騎士ヴィータは昔の事を思い出すのが嫌いだ。
彼女を含め四人のヴォルケンリッターは闇の書を完成させるため、主の補佐をするために作られたプログラム、魔法生物…生まれた瞬間の事を覚えていないように、気がつけば自分に与えられた役目を遂行していた。
生みの親と呼べる人物がいたはずだが、記憶と言うか記録に残っていない。
あるいは思い出せる主の中にいるのかもしれないが、それを確かめるすべはないし、必要性もないだろう。
…知ってどうなるものでも、何かが変わるわけでもない。
重要なのは現在の主、そして闇の書の完成という自分達に与えられた目的、|存在意義(レーゾンデートル)の遂行、ただそれだけで事足りてしまう。
他の三人も似たような考えだろう…それを確かめた事はないし、あるいは別の考えを持っていたとしても、自分達の存在理由をブレさせない限りにおいて問題はないはずだ。
…何故ならば自分達は人間では無いのだから。
人間の姿をしているのも、言葉を話せるのも、疑似的な心があるのだって、ないよりもあった方が便利だからだ。
人の中に紛れ込んでいる高ランク魔導師に近づくためには、やはり人間の外見の方が都合がいい。
ゴーレムのように機械的な方が、戦闘には都合がよかったかもしれないが、それではあまりに目立ち過ぎて、警戒されてしまうだろう。
そう言った都合と便利性でヴォルケンリッターの身は出来ている。
…ヴォルケンリッターは、闇の書を完成させるための“駒”であり“道具”である。
事実、歴代の主達は自分達をそのように扱った。
力を得るための道具として…無骨な鎧型のバリアジャケットのみを与えられ、人目につかないよう、石の地下牢に隔離されたこともあったが…彼等の自分達に対する接し方は正しい。
ヴォルケンリッター達を目的のための手段として扱ってきたのだから…所詮、道具は道具、自分の持ち物に愛着を持つ人間はいても、好意や愛情を抱く者はいないだろう。
それと同じであり、自分達も主達のそういった対応に疑問を感じる事もなく従い、当たり前の事として受け入れて来た。
闇の書の完成の為に、特に問題は無かったから…。
…しかし…もう無理だろう。
ヴィータだけでなく、他の皆も…表面上はどうあれ、昔には戻れない。
…全ては今代の主…八神はやてのせいだ。
彼女は自分達に教えてしまった。
戦わない平和を…暖かく穏やかな生き方を…家族と言う絆を…誰かの為に、命じられたわけでもなく何かをしたいという思いを…………こんなのは…道具には無用だ。
闇の書の完成に不必要な感情だ。
存在意義を揺らがせるバグだ。
…だが、もう遅い。
手に入れた物があまりにも美しく、あたたかいから…ずっと手放したくないと思ってしまうのを止められない。
自分達だけの“願い“が、身の内に芽生えている。
…はやての笑顔が見たいから、自分達は命令されたわけでもないのに動いた。
プログラムされた命令や目的に何の関係もない行動をとった。
それもまた、この世界に来るまでは一度もなかった事だ。
…きっと八神はやてと言う少女は、歴代の闇の書の主の中でも、群を抜いて酷い主なのだろう。
自分達を道具から人間してしまったのだから。
知れば願い、求めてしまう。
知らずにいれば、こんな不安や恐怖を抱く事はなかったはずなのに…はたして、この夢の時間が終わったとき…八神はやての死を今までと同じように受け入れ、次代の主に仕える事が出来るだろうか?
それはきっと、ヴォルケンリッターの誰もが口に出さないけれど抱いている不安で…思えば、長い時を共に過ごして来たのに、彼等に対して同胞以上…家族なんて思った事はなかった。
そう言う目でシグナム、シャマル、ザフィーラを見る事が出来るようになったのも、この世界に来てからだ。
…本当に…八神はやては酷い主で…大好きな姉だ。
ヴィータは昔の事を思い出すのが嫌いである。
闇の書に“選ばれてしまった” 歴代の主…闇の書の■■■達
力を求■て他人■■牲にした主…好■心を満た■ために蒐■■た主…闇の書の存■を忌避して怖れ■抱いた主……■等は皆■■だのだから…。
…あれ?
■人の例外なく、闇の書が完成した瞬間、彼等は■■だのだ。
多くの魔導師のリ■■ーコアを蒐集し、あるいは自■達を最後の■■として蒐■した結果、完成した■■書は■走を始め…。
……あれ、何だこれ?こんなの覚えがないぞ?
そして、■の書を完成させる事のなかった主も、闇■■に取り込まれて■■だ。
きっとはやても…■■でしまう。
…待て!ちょっと待て、何だそれは!?ノイズが邪魔で聞こえない!!ちゃんと分かるように!!
「……ヴィータ…?」
…え?
ふと、名前を呼ぶ声が聞こえた。
大好きな姉が自分を呼んでいる。
それだけで奇妙な焦燥が薄れていく…今、自分は何を焦っていたのだったか?
…思い出せない…さっきまで何に恐怖して不安だった?…何で…こんなすぐに忘れてしまった?
「…ヴィータ…?」
…まあいい、姉が呼んでいるのだ。
それに優先されるものなど無い。
姉が自分を呼ぶならば、|妹(ヴィータ)は応えなければならないのだから…何時ものように朝の挨拶をして笑いあうために目を開けよう。
主で家族で友人で…そして姉であるはやての姿を見ればきっと、訳の分からない不安も淡雪のように消え去るはず。
瞳をゆっくり開けば、世界が光に満たされた。
「おはよう姉ちゃん」
くらむ視界の中に、自分を笑みと共に見降ろして来る人影があった。
「おはよう…ヴィータ…」
にじむ輪郭が明確になる。
藍色の瞳に…栗色の………………ツインテール?
「ちゃん?」
「ぬぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
女の子として色々とまずい叫び声とともに、ヴィータは飛び起きた。
そこは何時ものベッドの上では無く…。
「何で宇宙!?星が見えるじゃねえか!!」
そして星の海のど真ん中に、光をさえぎる“奴”がいる。
「にやはは〜どうかなヴィータちゃん、この装備?」
「すっっっごくでかすぎますね!!」
白と黒と青に塗り分けられたボディ、パーツ同士をつなぐ関節部は金色、背中には最大の特徴であるEQFU-3X スーパードラグーン 機動兵装ウイングと、額にトレードマークアンテナをつけたなのはの笑顔…そこにいたのは、ZGMF-X20AストライクフリーダムNANOHAだった。
『西の空に〜明けの明星が輝く頃〜一つの光が〜宇宙へ飛んで行く〜それが〜ボクなんだよ〜BYモロボシダン〜♪WowWow〜♪』
「ミーティアまで持ち出してきやがった!!」
ヴィータの言葉はすでに悲鳴だ。
M.E.T.E.O.R (Mobilesuit Embedded Tactical EnfORcer=モビルスーツ埋め込み式戦術強襲機)…宇宙を駆ける超巨大兵器の上に、見覚えのあるおもちゃのようなステッキが刺さっている。
同時に、なんで宇宙だったのかも合点がいった。
重力のある所ではミーティアもスーパードラグーンも使えないからだ。
…シリアスぅ〜?いい加減その幻想をぶち壊すところから始めろよ|兄弟(ブラザー)。
「西の空に明けの明星が輝いてたまるか!!」
あれ、突っ込むところそこか?
「にゃははは〜ルビーちゃん、合体だよ〜」
『あはぁ〜なのはちゃんとの合体なんて心がトキメキますね〜』
上昇したなのはに合わせて、ミーティアルビーの一部が変形し、ドッキングする。
大鑑巨砲主義の権化のような代物が現れた。
「畜生、悔しいけど恰好いいじゃねえか!!」
ヴィータのテンパリ方もMAXだ。
おそらく自分でも何を言っているのか分かっちゃいまい。
即座に二十以上ある火器が全て展開されたのを見たヴィータの血の気が引く。
「な、なんであたしにそんな物騒な物を向けてるんだよ?」
全ての砲口はローマ…じゃない、ヴィータに至る。
マルチロックシステムの意味が全然なくね?
「受けて見て!ディバインバスターのバリエーション!!」
「絶対に嫌じゃァーーーーー!!」
一機でザフトのモビルスーツ群を相手に出来る火力の一斉射撃…誰が好き好んで受けたいとほざくのか?
少なくともヴィータは、そんな究極のM趣味は持ち合わせていない。
「これが私の全力全開、|大虐殺祭(ジェノサイド・ブレイカー)!!」
ヴィータの抗議もむなしく、オーバーキルをさらに上回る砲撃の光が放たれる。
「どう考えても、ミサイルはディバインバスターじゃないだろーーーが!!」
最後の言葉がそれってどうよ?
――――――――――――――――――――――――――
「オーバーキルは嫌だーーーー!!」
「ゴフ!!」
思わず突き出した拳に、肉を殴打する感触を感じてヴィータはハッとする。
何かをぶん殴った感触だと理解し、聞こえてきた悲鳴に上を見れば、人間が宙を舞っていた。
「チャンス!!」
戦士の本能が訴える。
ここが勝負どころだと。
「まだまだーーー!!」
空中の影を追って、ヴィータが飛んだ。
そろそろ落下を始めた人物の背後を取り、バインドで自分ごと拘束すると、そのままギュルギュルと音を立てて高速回転を始める。
「おーもーてーれーんーげーーー!!」
「ぎゃわーーーーー!!」
悲鳴が聞こえたがやめる気はまるでない。
ここで決められなければ、反撃で自分が終わるのだから必死である。
そのまま二人は頭から地面に落下してゆく。
「バラバラ大脱出!!」
まさか本当にバラバラになったりはしない。
バインドを解除したヴィータが、寸前で離脱する…バラバラとか言ったのは、気分以上の理由はあるまい。
ヴィータはそんな風にして脱出したものの、拘束されていた人物はそれに反応できず、頭を下にした状態で“砂”に突っ込んででっかい砂塵を上げ、らせん状の溝を地面に描きつつ、地面に突き刺さった犬神家状態になってやっと止まる。
■□■□
あの時、本当にダメだと思ったよ。
でも、奴の隙を見た途端、あたしの体は自分の意思を無視して、フィニッシュホールドを決めていた。
思えばありゃあ、毎週購読していた成果って奴かな?
コミックの積み重ねだよ、姉ちゃん達にはちゃんとかたずけろよ〜ってお小言ばかりだったけど、それが実を結んだんだと思う。
今じゃあもう手放せねえな、勿論これからもずっと読み続けていくつもりさ!!
U市在住の愛読者、Vさんからのお便り
■□■□
「読んでてよかった少年ジャンプ!!」
何気に語呂がいいな?
「何をやっているんだヴィータ?」
「お、シグナム!!」
いつの間にか、傍に目を丸くしたシグナムがいた。
彼女がこんなびっくりした顔をするのは本当に珍しい。
「お互い無事みたいで何より!!それより見てたか?一対一で、ヴォルケンリッターの可愛い赤い野獣に敵はいねえ!!」
「赤いタイツを着てから言え、何やら宣伝っぽい事を口走っていたが、おかげで余計に理解が困難になった」
「何言ってんだ。あの大魔王……を?」
気がつけば、自分達は砂漠のど真ん中にいた。
確か海鳴の街の中にいたはずだが…大魔王の容赦ない攻撃で砂漠になった…と言うのも何か変だ。
しかも……。
「なあ、あいつだれ?」
未だに砂で犬神家をやっている誰かさんは…どう見ても男だった。
大魔王様は女である。
「詳しく話を聞くのはまだだったが…」
「なんだよ?」
「私達の恩人らしい」
「……」
本当にヤバイ時、人は無口になる。
――――――――――――――――――――――――――
「……」
ヴィータでーす。
気がつけば別の次元世界にいたとです。
ヴィータでーす。
なんか魔王様の砲撃が当たる直前に、黒ひげ危機一髪で助けられたらしかとです。
ヴィータでーす。
そんな命の恩人を寝ぼけてぶち殺そうとしてしまったとです。
気まずいことこの上なかとです。
ヴィータでーす。
その相手が、正座している自分の目の前にたっとるとです。
何とか窒息する前に恩人(仮)を掘り出して見れば、変な仮面をかぶった男だったとです。
とりあえず死んでなかったんでほっとしたとですが、仮面なのに額に怒りマークを浮かべるなんて、特殊な才能をお持ちの人のごたっです。
マジで怒っているとです。
ヴィータでーす。…ヴィータでーす。……ヴィータでーす。
「…何か言いたい事は?」
見渡す限り砂の海のど真ん中…地球とは違う世界の砂の上で、ヴィータは暑さとは別の冷たい汗をだらだらと流していた。
そして、そんなヴィータに対して、仮面越しに怒りの視線をぶつけている男は、ヴィータがイズナ落しを決めた相手でもある。
その頭にはでっかいたんこぶが出来ていた。
こんなにでかいのはギャグ漫画かアニメでしか見た事がない。
「えっと、よく首折れなかったな?」
「おかげさまで防御魔法が間に合ったからね!!間に合わなかったら頚椎骨折か頭がい骨陥没かそれとも最悪のセットメニューかってとこだったわよ!!三途の河の半ばからバタフライで戻って来たんだから!!」
やけに具体的な事を言う…ひょっとしてこれは、本当に臨死体験をして帰って来た口か?
何故か妙な女言葉をしゃべる男だが、昨今は色々人権の問題とかも絡んでくるのでスルーした。
これ以上地雷を踏むのは嫌でござる。
「仮面がなかったら即死だったわよ!!」
言葉通り、仮面には見事にひびが入っている上に、そこから血が流れ出していた。
なんとか割れずにはすんでいるようだが、何時パカッと逝っても不思議では無い。
突っ込み?そんなもんを入れられる空気だと思うか?
「ほんっと悪かった。ごめんなさい!!許してつかーさい!!」
ヴィータ涙目…恩人を寝ぼけて殺しかけたというのは、いくらギャグ補正がかかりそうな世界とはいえ、しゃれでは済まないし、済ませていい事では無い。
人間性が問われる。
ヴィータ自身、逆の立場だったら問答無用でグラーフアイゼンを振るっていただろうと思うので、仲間の白い視線と照りつける太陽、そして地味にきつい正座による足の痺れくらいは甘んじて受けるべきだろうとすら思う。
「聞いているのかしら!?」
「は、はひぃ!!」
「あ〜そろそろいいだろうか?」
いい加減見かねたというか、見飽きたという感じのシグナムが男に話しかける。
思わず、ヴィータがホッと息を吐いたら、男から視線だけでとんでもなく睨まれたので、再びびしっと姿勢をただす。
「助けてくれたのはありがたい。本当に感謝している。…しかし、何故我等を助けたのだ?」
「……」
質問に対しての答えは無言だった。
男の方でも、やっと本題を思い出したのかもしれない。
シグナムだけでなく、ヴィータもシャマルも、ザフィーラだって目の前の男が通りすがりの文字通り仮面ライダーだとは思ってはいない。
仮面は付けていても、バイクが見当たらない…のはどうでもいいが、あの状況での介入…4人の状況を知らなければ、介入しようなどとは思うはずがない。
そしてそれでもなお自分達を逃がしたという事は、目的があるという事だ。
「…蒐集を再開しろ」
「「「「っつ!!」」」」
その一言で全員が緊張した。
ヴィータも正座をやめ、グラーフアイゼンを構えている。
「貴様…何者だ?」
シグナムがレヴァンティンを男に向けて問いかける。
仮面の為に、刃を向けられた男の感情は読めないが、戦闘の気配は纏っていない。
「…お前たちの主は、闇の書にリンカーコアを食われ始めている」
「え?」
何か引っかかるものを感じたヴィータが疑問の声を上げるが、全員が集中している為に聞き流された。
「何…だと?」
「気づいていなかったのか?彼女が自分の体調の不良を黙っていた事を?」
シグナムだけでなく、全員が言葉を詰まらせる。
男に向けたレヴァンティンの刃先が震えていた。
確かにはやてなら、体調が悪化していても自分達に気づかれないように強がってしまう可能性は高いが…まさか…。
「…話は終わりだ」
言いたい事は言い終わったとばかりに、男が背を向ける。
その足元に、転移用の魔法陣が展開される。
術式はミッド式…男の正体は、少なくともミッド式の魔導師のようだ。
「ちょっと待て…」
「ずぁぁぁぁ!!」
いきなり男の足に何かがからみつき、引きずり倒し、地面を擦りながら魔法陣の外まで移動させる。
つけててよかった変な仮面、もしなかったら顔面がひどい事になっていたところだ。
今にも壊れそうだが、よくぞ保ちこたえてくれた。
「な、何!?」
見れば、シグナムのレヴァンティンが変形し、連結刃状態になっている。
それが男の足を文字通りの意味で引っ張った物の正体だった。
「常識がないのか!?転移魔法の途中で何って危ない事をするんだお前ぇぇぇぇぇ!?」
発動前に完全に外に出ていたから良かったものの、もし魔法陣の境界線に体が残っていたら、中と外で男の体が分断され、泣き別れになっていた所である。
転移魔法の基本、本格的に転移魔法が発動してしまったら危ないので手出し無用、良い子も悪い子も真似しちゃダメである。
「お前に一つ確かめたい事が出来た」
「確かめたい事があるだけでこんな無茶をするな!!」
男の意見は実に尤もであるが…シグナムはそれよりも気になる事があるのか、じっと男を見ている。
まるで何かを観察するかのように、そして確かめるかのように…その視線に男が居心地悪そうに顔を逸らした。
「……何だ?悪いがこれ以上話す事はないぞ?」
「いや、そうじゃなく…」
何かを思い出したらしいシグナムが、ポンと両手を合わせた。
「やはり…私はお前の顔に見覚えがあるようだ」
「な!?」
これはいくらなんでも予想外だったのだろう。
仮面越しであってもはっきりと分かるぐらいに男が驚いた。
「お前…海鳴に来た事があるだろう?」
「そ、それは…」
「幼子にいたずらする為に」
「なんじゃそら―――――!?」
それは魂から絞り出した叫びだった。
「とぼけても無駄だ。その仮面顔の指名手配書を見た覚えがある」
「し、指名手配書――――!?」
どうやら、男本人は自分が指名手配されていた事を知らなかったらしい。
「そう言われて見れば、一昨日の回覧版に挟まっていたわね、年末の不審人物に気をつけましょうって」
「回覧板?そんなレベルで手配されてるの!?」
シャマルの言葉に、男が唖然としている。
「あたいは見た覚えがないな、シャマル?こいつ何したんだよ?」
「えっと、確か幼女に対する拉致に監禁、誘拐に暴行罪、ストーカー」
「後は猥褻物陳列罪と視姦で懸賞金までかけられている変態だ」
「ちょっと待ってーーー!!なによその不名誉極まりない罪状の羅列は!!」
シャマルとザフィーラがつらつらと手配書の内容を並べて行くのにたまりかね、男が女言葉に戻って反論するが、ヴィータがあからさまに男から距離を取っていた。
最初に幼女の単語が混じっていたからだろう。
自分の外見に自覚があったヴィータがじりじりとグラーフアイゼンを構えたまま後退するのに合わせて、シャマルとザフィーラがさりげなく男との間に入って視線から隠す。
「さいってーだな!!」
「ぐは!!」
シグナムとザフィーラの後ろに隠れているヴィータの男を見る目が、害虫を見るそれになっている。
見た目幼女のそんな視線には、グサリと心を抉りに来る何かがあった。
男が胸を押さえてゆらりとよろめく。
「ち、ちが…そんな事してない!!似たような事をしそうになったけど全部未遂よ!!」
「「「「未遂でも十分だろうが!!」」」」
御尤もである。
男がヨヨヨとシナを作りながら膝をつく…この男、歌舞伎の女形か何かじゃないだろうな?
さっきから仕草の一つ一つが妙に色っぽい気がするんだが?
「読めたぞこの野郎、ここで恩を売っておいてあたしに続いて姉ちゃんを手に入れるつもりなんだな!?ロリコン!!」
「な、ちが…」
「なるほど、将を射んとすれば馬からか?」
シグナムがようやく合点がいったという風に頷くのを見て、男から言葉が消えた。
無言で言い分を認めたというより、仮面の下で口を金魚のようにパクパクさせているらしい。
思いが言葉にならないのだ。
「そんな下心があったなんて…感謝して損したわね…」
「お前に一つだけ言っておく、我は馬では無い…狼だ!!」
ヴォルケンリッターの敵意丸出しな視線を向けられ、男がタジタジになる。
特にザフィーラ…何か色々気にしていたようだ。
「ちょま、その話の発展仕方は何!?私はロリコンじゃないノーマル!!普通に、自然に、男の人が好きよ!!」
言った瞬間…場の空気が変化した。
全員が白い目になり…ヴィータの代わりに、今度はザフィーラが距離を取る。
まあ、女言葉を話していて、しかも女に興味がないとぬかした揚句、男が好きでそれがノーマルとかほざくような“男”を前にすれば…当然の反応では無いだろうか?
「はぁ!!ま、待って…そう言う意味じゃなくって…」
自分が何を言ったのか、やっと理解したらしい男が慌てるがもう遅い。
「…すまないが、名前を教えてもらっていいか?」
「ロッテ…ってしまったーーー!」
ザフィーラの問いかけに、思わず素で答えてしまった男が絶叫する。
ガムを連想してしまう名前だが、どうやら本名だったらしく、それがNGで焦っているらしい…だが、この場はとりあえず置いておこう。
「ロッテ殿か…すまん」
いきなりザフィーラに謝られた。
「世の中には色々な趣味を持った人間がいるが…我ではお前の思いには応えてやれそうにない」
ザフィーラがごめんなさいしつつ、いつもの無表情を無理やり作ってそっぽを向く…何でシャマルはそんな期待するような視線を、二人の間で行ったり来たりさせているのか?
こいつも腐ってやがるのか?
「ち、違うの…そんなんじゃ…そんなんじゃないんだからーーー!!」
男は逃げ出した。
仮面から目の幅涙を流しつつ…ヴォルケンリッターは、去り行く彼にどう声をかけていいものか悩み…そもそも出来れば声をかけるのもちょっと嫌だなーとか思ったりしながら、結局姿が見えなくなるまでその後ろ姿を見送ることしかできなかった。
――――――――――――――――――――――――――
「アリア!!!」
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁ!!」
グレアム提督の使い魔の片割れ、リーゼ・アリアは本局で仕事をしていたところ、いきなり後ろからのタックルを食らって吹っ飛んだ。
そのまま襲撃者と一緒にごろごろと転がり、壁に激突してやっと止まる。
「だ、誰!?ってロッテ!!」
身を起こして見れば、自分と同じグレアムの使い魔にして双子の片割れ、リーゼ・ロッテだった。
しかもマジ泣きしている。
これで何かあったと思わない奴はいねえ。
「な、何があったの!?」
「∠鹿鹿●●××(カクカクシカジカマルマルバツバツ)!!」
「な、何ですってーーー!! やっぱりあの杖がーーー!!」
何でそれで伝わるんだ?
やはり双子だからか?
「子供も女の子も好きです!!でも男の人はもーっと好きです!!」
「わ、解ってるわ、貴女は正常、普通、何の問題もないから落ち着いて、ね?」
「うん…」
未だに泣き続ける姉妹を腕に抱き、リーゼはルビーに対する新たなる怒りを燃やすのだった。
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リリカルなのはに、Fateのある者、物?がやってきます。 自重?ははは、何を言ってるんだい?あいつの辞書にそんなものあるわけないだろう?だって奴は・・・。 ネタ多し、むしろネタばかり、基本ギャグ | ||
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