魔法少女リリカルなのはStrikerS00(仮)−−17 派遣2〜海鳴〜−− |
CD二話目。
−−派遣2〜海鳴〜−−
野鳥の囀る声が時折聞こえる緑豊かな湖畔のコテージ。
そこに円と四角形が合わさった模様が地面に描かれる。
ミッド式と呼ばれる魔法陣。
その魔法陣の上には、機動六課の先発メンバーが佇んでいた。
初めて地球に来た((FW|フォワード))の4人が感嘆の声を漏らす。
「ここは、現地の方の別荘です」
「現地の……」
地球において、なのは達の事情を知っている者は限られている。
その中で別荘を所有している人物となると……。
刹那が暫く考えていると、一台の車がコテージの近くで停車した。
そして、ブロンドの髪の女性が一人、車から降りて小走りにこちらに向かって来た。
「なのは! フェイト!」
「アリサちゃん!」
なのはとフェイト、リインフォースも走って行く。
笑顔で挨拶を交わす4人。
その様子を見守っていると、置いてけぼりだったこちらを向いた。
「こちら、私達の友人」
「アリサ・バニングスです。よろしく」
アリサがFWの4人に笑顔で自己紹介をする。
「「よろしくお願いします」」
「うん」
と、アリサが刹那に視線を移すと、その笑顔が驚きの表情に変わる。
そして……。
「ちょ、ちょっと! なのは! フェイト!」
「「え?」」
アリサの変わりように、なのはとフェイトがキョトンとする。
「あ、あんた達! いつの間に彼氏ができたの!?」
「……え? ええええええぇぇぇ!!!!?」
「か、彼氏って誰のこと!?」
アリサの言葉になのはとフェイトが大声を上げた。
「何言ってる! あの人の事に決まっているでしょう!!」
そういって、アリサは刹那を指差した。
「ち、違うって!」
「どっちの!? それとも、はやて!?」
「アリサ、落ち着いて……」
なのは達のやり取りに、FW一同はポカーンと口を開けて立ち尽くしていた。
見かねた刹那が溜息混じりになのは達に近寄る。
「お前達、それくらいにしておけ」
「そ、それくらいって……貴方の事をっ!」
「十年振り……と言えばいいか? アリサ・バニングス」
「え?」
アリサが徐々に落ち着いていき、刹那の顔をマジマジと見る。
「もしかして……刹那さん?」
「ああ」
「! う、うそ。だって……なのは達は、もう会えないって……」
アリサが口元に手を当てて、声を震わせる。
「色々あってな。また来てしまった」
「そ、そうですか……」
「なのは達とは連絡を取りあっているのだろう? 俺の事は聞いていないか?」
「そういえば、二カ月くらい前にメールに書いてあったような……」
それで何故、先程の発想に至ったのかは聞かないことにしておくか。
理解できそうにないしな。
「まぁ、そういうわけでよろしく頼む」
「は、はい」
刹那が入って、ようやくアリサの騒動が鎮静化した。
アリサが用事により立ち去ったあと、入れ替わるようにはやて達が合流した。
はやて達は、月村邸の庭に転送されたそうだ。
コテージの部屋に荷物を置く。
一部屋3人とのことで、刹那はエリオと同室に割り当てられた。
「捜索地域は海鳴市全域。現在、判明している事は((古代遺失物|ロストロギア))の反応地点が移動しているということ」
なのはが携帯端末を持って、今回の任務の確認を行う。
地球でも空間パネル等は使用できるが、この地球においてはそのような技術は存在しない。
無関係の人間に見られて余計な疑念を持たれないように、携帯端末を使用している。
他のメンバーも所持している。
無論、刹那にも配布された。
「スターズとライトニング。それぞれ、二人一組で探索を行っていこうか」
「「はい」」
「俺は個別行動を取らせてもらってもいいか?」
「刹那?」
「丁度、余るしな」
「別にいいけど……大丈夫?」
「心配しなくても仕事はする」
「そうじゃなくて、久しぶりの海鳴市は大丈夫かなと思って」
なのはとフェイトの心配事は、迷ったりしないかの方だったようだ。
「問題ない」
「うん。それじゃあ、サーチャーとセンサーを設置しながら探索開……」
「待て」
なのはが行動開始を告げようとしたところで刹那が止めた。
「え? なに?」
「フリードはどうするんだ? 流石に市内に連れて行くのは無理があるだろう?」
「あ、そっか」
「キュク〜」
エリオやキャロと同じサイズになったリインフォースはまだしも、流石に地球で竜が目撃されたあれば大騒ぎになってしまう。
「私とシャマルが預かるよ」
どうしたものかと考えていると、はやてとシャマルが歩み寄って来た。
「八神部隊長。よろしいのでしょうか?」
「かまへんよ。フリードは?」
「キュク〜」
了承の意なのか、フリードが一鳴きした。
「うん。ごめんね、フリード」
「キュク〜」
キャロの言葉に「気にしないで」と言わんばかりにフリードが鳴く。
「フリード。こっちおいで」
シャマルの言葉にフリードが従い飛んで行く。
「ほな、みんな頑張ってなー」
「「はい!」」
「それじゃあ、改めて探索開始」
「「はい!」」
海鳴市内を歩きながら、サーチャーとセンサーを設置する。
刹那にとってはほぼ四年振りの海鳴市だが、実際の時間経過は十年。
所々風景が変わっていたが、目印となる大きな建物や看板はそれほど変わっていなかった。
(設置は全て済んだな)
(この後は?)
(少し歩くか。いや、((あそこ|・・・))に行くか)
(あそこ……とは?)
(行けばわかる)
エクシアと念話をしながら、歩みを進めて目的地を目指す。
その場所は海鳴市の公共施設。
市立図書館。
ここ最近の出来事を知るために、新聞をいくつか借りて空いているテーブルに置き読み始める。
「大規模な紛争は起きていない様だな」
国際関連の記事を中心にざっと目を通して呟く。
「四年。いや、十年……ややこしいな」
自分の経過時間で考えたらいいのか、世界の時間経過で考えたらいいのか。
そんな事を考えていると、エクシアが念話を送ってきた。
(マスター)
(どうした?)
(レイジングハート経由で、なのはさんから連絡です)
(用件は?)
(フェイトさん達と合流して、((待機所|コテージ))へ戻るそうです。合流地点は((翠屋|みどりや))です)
(わかった。これから、向かうと入れておいてくれ)
(了解しました)
席を立ち、新聞を片付けて図書館を出る。
「翠屋か……」
かつて自分がアルバイトとして働いていた店の名を呟く。
日も暮れ始めて帰宅の途に着く人とすれ違いながら、商店街の中心だったはず。と、自分の記憶を頼りに歩みを進める。
目的の場所に辿り着き、その店を見つめる。
店の佇まいは、自分の記憶とそれほど違いはない。
少し壁が綺麗になっている気がする。
扉を開けると、懐かしい鈴の音が鳴り響いた。
「いらっしゃいませ。お一人ですか?」
長い黒髪の女性が笑顔で歩み寄って来る。
高町美由希。
なのはの姉だ。
「待ち合わせだ」
「では、こちらに……」
「いや、その必要はない」
扉近くの4人が座れるテーブル席を案内されたが、刹那はそれを断った。
「え?」
刹那の言葉に不思議に思った様だが、刹那が向ける視線を追い……理解した。
「せ、刹那君」
「ああ」
美由希の言葉に首肯する。
「刹那さん、お疲れ様です」
「ああ」
リインフォースが刹那に労いの言葉をかけ、刹那はそれに短く答えた。
「十年振りだね。刹那君」
その言葉に振り向くと、長身の男性が立っていた。
なのはの父、高町士郎。
この店のオーナーでもある。
「元気そうね。安心したわ」
士郎の隣に並び立つのは、なのはの母。
高町桃子。
年頃の娘がいるとは思えないほど、二人は若々しい。
実際の年齢はわからないが、初めて会う人間は必ず驚くだろう。
「……久しぶりだ。士郎、桃子」
かつてと同じ様に二人の名を呼ぶ。
そこで、スバルとティアナが目を見開いた。
刹那がなのはと親しいのはわかるが、その両親を呼び捨てにしたのだ。
さん付けにするなり「なのはさんのお父さん」とかが普通だろう。
刹那にはそういう習慣がないだけなのだが……スバルとティナは「もしかして両親公認?」などと思っていた。
二人がそんな事を考えているとはつゆ知らず、刹那達は会話を続けていた。
「また会えたのは嬉しいけど、駄目よ刹那君」
「ん?」
桃子の顔から笑顔が消えた。
士郎からも。
「事情があったにせよ。ちゃんと事前に言ってくれないと……」
桃子が言っているのは十年前の別れのことだろうと、刹那は察した。
あの時は時間もなかったし戦いの前だったため、なのは達には説明をせずに急な別れとなり、なのは達を泣かせてしまった。
桃子と士郎は、そのことで怒っているのだろう。
刹那はそんなそのことを考えていた。
「すまな……」
「急に辞めちゃうから、アルバイト代も渡せなかったし、人手が急に減っちゃったから大変だったのよ?」
うんうん、と士郎が肯く。
「……」
俺が考えていることと……違った。
「あの〜……アルバイトって?」
会話を聞いていたティアナが遠慮がちに会話に入ってきた。
「ん? ああ。刹那君はね。前にここでウェイターとして働いていたんだよ」
士郎が刹那の肩に手を置いて、ティアナの質問に笑顔で答えた。
「「…………ええええええぇぇぇぇ!!!!!!?」」
本日、もう何度目かわからない驚きの声。
スバルとティアナにとっては、一番の驚きだったかもしれない。
隊長陣が認める実力者。
デバイスマイスター顔負けの技術力。
((あの|・・))刹那が……ウェイター。
スバルとティアナの二人は口を開けたまま固まっていた。
(スバルさん。ティアナさん)
そんな二人に、エクシアが念話で話しかける。
(え、エクシア?)
(これでもマスターは、若い女性客に人気があったんですよ)
(そういえばそうでしたね。刹那さんは気がついていなかったようですが)
何故か、レイジングハートも参加した。
(まぁ……マスターですから)
(そうですね。刹那さんですから……)
(え、えっと……)
スバルとティアナは視線を士郎に移す。
士郎の支度は、白いシャツの上に黒いエプロン。
その支度を刹那に重ねる。
営業スマイルで接客をする刹那。
…………駄目だ。
想像出来ない。
実際には普段と同じポーカフェイスなのだが、スバルとティアナも知らないため、二人はは頭を抱えた。
その様子を見て、「どうした?」と刹那が問いかけるが、二人は苦笑いしながら「何でもないです」と答えるのが精一杯だった。
だが、リインフォースは違った。
「刹那さんが働いている姿……見てみたかったですぅ」
両手を合わせて、目を輝かせていた。
「私、画像持ってるよ? リイン見たい?」
「見たいです!」
なのはの言葉にリインフォースが勢いよく立ちあがった。
「ちょっと待て」
「え?」
刹那の言葉にリインフォースが首を傾けた。
「なのは。何故、そんなものを持っている」
「え、え〜と……」
「翠屋で写真を撮った覚えは無いぞ」
「あ、あはははは……」
「なのは」
「……」
「なのは」
冷や汗を掻き始めるなのはに刹那が近寄る。
「ご、ごめんなさい」
刹那の雰囲気に圧倒されたなのはが、テーブルに頭を付けて謝った。
「じ、実はフェイトちゃんと一緒にこっそりと……」
両手の人差し指をちょんちょんと突きながらなのはが素直に自供した。
それは、盗撮なのでは?
と、スバルとティアナは思ったが口には出さなかった。
「フェイトも持っているのか?」
「う、うん」
「……消しておけば咎めは無しだ」
「え? で、でも……」
「いいな」
「はい……」
ガックリとなのはが項垂れた。
落ち込んでしまったなのはを他所に士郎が刹那に話しかけた。
「なのはからメールで連絡があったけど、本当にまた会えるとは思わなかったよ」
「俺自身も驚いている」
「そうだ。少しお店を手伝ってくれないかい?」
「ちょっと、お父さん」
士郎が刹那に店の手伝いを申し入れた。
父を少し咎めるかの様に、なのはが口を挟んだ。
立ち直りが早いな。
「すまないな。一応、今は仕事中なんだ」
真面目に返答する刹那に「冗談だよ」と士郎は笑った。
「また、なのはの力になってくれているんだったね」
「ああ」
「そうそう。なのはと一緒に暮らしていたのよね。刹那君、なのはは迷惑かけなかった?」
「お、お母さん!」
ヘリの中での事やアリサの騒動もあって、なのはが顔を赤くして立ち上がった。
「いや、むしろ良くしてくれた。部屋を提供してくれたなのはには感謝している。逆に俺の方が迷惑をかけたのではないかと思っている」
「あら、そう」
「へぇ〜。良かったね、なのは」
桃子と美由希が口元に手を当てて、なのはに笑顔を見せたが、その笑顔はどこか悪い笑顔に見えた。
「〜〜〜〜〜〜っ!」
そんな二人の笑顔になのはは睨みつけて、声を殺して座る。
「知っていたんだな」
「なのはからメールが送らてきたからね」
当然か、と刹那は思ったが、士郎の言葉にスバルとティアナは「やっぱり公認?」と思った。
なのは達から少し離れたカウンター席に座り、士郎と時折話しをしていると、扉が開き鈴が鳴った。
「遅くなってごめん。なのは」
「フェイトちゃん」
フェイトがエリオ達を伴って店に入ってきた。
そして、最後に入って来た人物――翠の髪の女性が刹那の目に入った。
「こんばんは。士郎さん、桃子さん」
「あら、こんばんは。リンディさん」
「いらっしゃいませ」
リンディ・ハラオウン。
クロノとフェイトの母親にして、かつては次元航行艦【アースラ】の艦長を務めた人物。
「そして……久しぶりね。刹那君」
「ああ。こっちに居るとは思わなかった」
「((艦|ふね))を降りて、今は内勤なのよ。だから、前ほど忙しくはないし。孫の面倒もあるから……」
「孫……クロノの子供か」
「ええ。……刹那君。ちょっと、いいかしら?」
「……わかった」
先程までと違うリンディの真剣な表情を見て、刹那はリンディの後をついて行く。
「あの……母さん?」
「大丈夫よ。ちょっと、お話しをするだけ」
「だそうだ」
そう言って、リンディと刹那は店を出て行った。
「さて、刹那君。私が言いたい事はわかりますか?」
「……十年前の事か?」
「ええ。あなたに事情があった事は理解しています。ですが……それでも、せめて私かクロノには話しておいて欲しかったわ」
「すまない」
リンディ・ハラオウンの言っていることは正しい。
そして、本当は士郎達も先程そのことを言いたかったのだろうが、あえてその話を逸らしたというのが正しいだろう。
「あなたが元の世界へ帰ったあと、あの子は塞ぎ込んでいたわ」
「……」
「いつも傍に居た人が、言葉一つで急に居なくなったら……残された人はどう思うかしら」
言葉がないな。
いや、反論するつもりは毛頭ないが。
「なのはさん達と一緒に居る時は笑顔を見せていたけど、声を殺して……泣きながらあなたが残していった物を整理していたわ」
「……」
「私は、あの子の母親として、あなたを怒らなくてはいけないわ」
「ああ」
「……覚悟は出来ているようですね」
刹那はリンディ・ハラオウンの強い視線を真正面から受け止める。
リンディの右手が動き、ペチっと軽い音がした。
リンディの右手が刹那の頬に触れていた。
「はい。おしまい」
「?」
強く((叩|はた))かれることを覚悟していた刹那には予想外だった。
「あなたはちゃんと理解している。だから、おしまい」
「だが……」
「あなたをこれ以上責めたら、私があの子に責められちゃうわ」
リンディが微笑む。
「だから、私から言う事は一つだけ。二度と同じことはしないでね」
リンディの言う事はわかるが……。
「言いたい事はわかるが確約はできない」
「刹那君」
「俺の地球はここではない。異なる次元の地球だ。どのような要因で戻るか……想像がつかない。その事はフェイトも知っている」
「あのね……」
「あいつの覚悟は六課が始まる前に聞いた。だから、俺も力を貸すことを決めた」
「……」
「決めた以上は全力を尽くす。あいつの……あいつらの道を切り拓く。俺に出来る事はそれだけだ」
「はぁ〜〜〜」
リンディが深い溜息をついた。
「こういう時は、嘘でも「わかった」って言うものよ」
「その嘘をついて何になる」
「嘘も方便と言うでしょ。あなたは本当に不器用ね」
リンディが苦笑した。
店内に戻るとフェイトが心配そうな顔で出迎えた。
リンディと二人で「何でもない」と伝えて安心させる。
そして、フェイトが持っている画像も消去させた。
なのは同様、フェイトも落ち込んでしまった。
盗撮などという行為をする方が悪い。
大体、俺の画像など持っていても何の得があるというのか……。
(マスター……)
エクシアの呆れた様な声が頭に響いた。
((待機所|コテージ))に戻るために店を出ようとした時だった。
士郎が封筒を差し出した。
十年前に渡しそびれていたアルバイト代だそうだ。
正直、今渡されても使い道がない。
一度断ったが、結局受け取ることになった。
……どうしたものか。
フェイトの運転で待機所に戻ると、アリサと白いカチューシャを身に付けた黒紫の長い髪の女性――月村すずかが出迎えた。
なのは達との談笑に一区切りつけて、こちらに歩み寄って来る。
「お久しぶりです。刹那さん」
「月村すずか」
「ふふ。覚えていてくれて光栄です」
「お前は落ち着いているな」
昼間のアリサの騒動を知らないすずかが、刹那の呟きに不思議そうな顔をした。
「?」
「何でもない。気にするな」
すずかを交えて談笑をするなのは達。
そんな様子を見つめるFW4人――特にスバルとティアナは、やはり驚いていた。
教導官や執務官という魔導師としてのイメージが強いなのは達。
しかし、なのは達はまだ19歳。
もし、管理局へ入らず普通の女の子としての道を選んでいたら、アリサやすずかと同じく大学に通っていたかもしれない。
普通の女の子としての側面を持っていて当然なのだ。
なのは達が談笑を続けていると、一台の車がコテージ前に停車した。
その車から降りてきたのは、高町美由希。
その姿を見たスバルとティアナが美由希に話しかけた。
「美由希さん?」
「さっき、別れたばっかりなのに……」
「シフトの合間だったし、エイミィから合流するって連絡があったからね」
そう言うと、後方を見る。
その視線の先には、女性と少女がいた。
「エイミィさん」
「アルフ」
女性と少女の姿を見たエリオとキャロが駆け寄った。
女性の名は、エイミィ・リミエッタ――いや、エイミィ・ハラオウンか。
少女の名は、アルフ。
「エリオ、キャロ。元気だった?」
エイミィが二人の視線に合わせるように少し屈んで頭を撫でた。
「「はい!」」
くすぐったそうに二人が少し身を縮めた。
エリオとキャロから離れると、アルフと一緒に刹那に歩み寄る。
「久しぶり。刹那君」
「エイミィもアルフも元気そうだな」
「うん」
「元気だぞ!」
アルフが尻尾を振りながら元気よく手を挙げた。
「それにしても十年かぁ。刹那君の方が年上だったのに……逆転しちゃったね」
「そういえば、そうだな」
エイミィが苦笑した。
その言葉を聞いていたFW一同は意味がわからず、頭に疑問符を並べていた。
「アルフは……ますます小さくなったな」
「前に言った事があったけどさ。フェイトに負担をかけない姿を追求したら、こうなっちゃったんだよね。本当はもっと小さくなれるんだけど、これ以上小さくなると家事の手伝いが出来なくなっちゃうから、今はこの姿が一番いいんだ」
「そうか……」
一通り話しが済むと、スバル達が何かに気が付いた。
何かを焼く音。
食欲をそそる様な香り。
その元へ向かうと、はやてがエプロンを付けて、鉄板の前で料理をしていた。
その姿を見たFW一同は、驚きと戸惑いの声を挙げた。
部隊長に夕食の準備をさせるわけにはいかないと思ったのか、キャロが自分達がやると言い出した。
「お料理は昔から趣味やったし、六課には食堂があるからお料理なんてせぇへんしなー。
何よりそんな時間もあらへし、久しぶりにやらせてなー」
料理をする手は止めずに、はやてはやんわり断った。
そこで、シグナムがある事に気が付いた。
はやての傍に立つシャマルの姿だ。
シグナムがやや顔を曇らせて、シャマルに確認をとる。
「シャマル……お前は……手を出していないだろうな?」
「シグナム、ひどい!」
「ちゃんと、手伝ってくれたよ。材料切りとか」
「はい」
はやての言葉にシャマルは笑顔になったが、果たしてフォローになっているのか疑問だが、シャマルが喜んでいるのであれば別にいいか。
「……シャマルは相変わらずなのか?」
「あ、あははは……」
いつの間にか隣に来ていたフェイトに尋ねたが、乾いた笑いが返ってきた。
その答えで、どうなのかは十分すぎるほど理解できた。
シャマルは料理が出来ないわけではない。
何故か、微妙な味付けになってしまうそうだ。
「ところで、はやて……」
「うん? どないしたん? ひょっとして、何か作って欲しいものでもあるん?」
「いや、そうではない」
「?」
はやてが首を傾げた。
こうして、会話をしながらでも手を止めないのは流石と言うべきか。
「作り過ぎじゃないか?」
鉄板の脇には、焼肉やら焼きそばやらが大量に作られている。
確かにこの場にいる人数は多い方だが、それでも作り過ぎのような気が……。
そこで先日の昼食を思い出した。
スバルとエリオがかなり食べることを。
「いや、やはり何でもない。気にしないでくれ」
「そうか?」
はやてが再び首を傾げた。
食事前に初対面であるFW一同と現地組が自己紹介を行った。
現地組――特になのはの姉、美由希は想いを込めて自己紹介を行った。
なのは達の仕事は、危険が伴うこともある。
どれだけ信じていても、やはり心配なのだろう。
それが家族というものなのだろう。
幼くして『家族の温もり』というものを手放してしまった自分は、二度と手に入れることが出来ない。
それでも、他者を心配する気持ちは持ち合わせている。
俺の仲間――ソレスタルビーイングの仲間は、今はどうしているのだろうか。
自分の生存を信じて、探しているのだろうか。
探索を諦めて活動を続けているのだろうか。
世界は……次なる変革を迎えたのだろうか。
読了おつかれさまでした。
実は、投稿は先週できたはずだったのですが、区切れなくなってしまったのと、
この続きの展開を書いていたら、違う展開がいいなと思ったため、
今回の区切りを作るのに時間がかかりました。
次回、また少しお遊びを入れる予定です。
それでは、また。
説明 | ||
再び魔法少女の世界へ降り立ったガンダムマイスター刹那・F・セイエイ。聖王教会から再びロストロギア関係の依頼が舞い込んでくる。今度の目的地は……。魔法少女リリカルなのはA's00〜とある日常〜(仮)の設定を踏まえたクロスオーバー作品です。読みづらい、誤字脱字等の至らないところが多々あると思います。作者の原作知識は、それほど高くありません。また、オリジナル設定が含まれておりますので、原作を大切にされている方はご注意ください。 | ||
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コメント | ||
>ゼロ・スパークさん。アリサとのやり取りは、やるべきか少々迷いました。強化プランはまだ先ですね。誤字が多くてすみませんm(_ _)m(ケイ) もう一つですが、以前報告させていただいた誤字の件ですが、まだ訂正されてない箇所がありますよ。(ゼロ・スパーク) アリサの狼狽えぶりに思わず笑いました。そして刹那の正直な所と、不器用さがよく再現されていたと思います(だから沙慈君に殴られた・・・)。あとやはり、エクシアの強化プランが気になります。個人的にはアヴァランチBかRVが出てきてほしいです。(ゼロ・スパーク) |
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