リリカルとマジカルの全力全壊  A,s編 第十七話 Reunion
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「ニャニャニャニャ〜あっとー的じゃニャいかわが軍は〜!!」

 荒れ狂う闇色のスフィアの中心で、闇の書が愉快そうにのたまう。

 その言葉は実に的確だ。

 宙を舞っているスフィアの数はすでに数えきれないほど多いとしか認識できない。

 その中に、嵐に巻き込まれた木の葉のように翻弄される人影がいくつか…。

「ちっくしょ!!数が多すぎる!!」

 バリアーやシールドで守りに入ってもらちが明かないと、グラーフアイゼンをギガントハンマーにしたヴィータがその大質量を振るった。

 確かにその巨大な鉄槌はスフィアの群れをまとめて粉砕し、包囲網に穴を穿つがそれも一瞬、周囲の無事なスフィアがすぐさまその穴を埋めてしまう。

 鈍重な一撃は確かに威力こそある物の、相性の問題からこの場を打開するには至らない。

「っち、しまった!!」

 それどころか、重量武器につきものの攻撃後の隙にスフィアが殺到してくる。

 巨大化し、重量が増しているグラーフアイゼンの切り返し速度は最悪だ。

「危ない!!」

「ぐっ!!」

 完全に閉じ込められる前に、ヴィータの小柄な体を?っ攫ったのはフェイトだ。

「わ、わりい!」

「それよりもシールドを!!」

「おうさ!!」

 後方に向けて展開したシールドが、追いついてきたスフィアを受け止める。

 もはや過去や遺恨はそっちのけで協力しなければ即座に落とされる状況だ。

「…まずい!!」

 ヴィータのシールドを避け、進行方向に先回りしたスフィアが反転して襲ってくるのを、今度はフェイトがシールドを展開して受け止める。

「おい!?」

「こっちは大丈夫、それよりも後ろを…」

「くそったれーーー!!」

 止まった事で、残りのスフィアが二人に追いついてきた。

 前後を挟まれ、身動きのできないフェイトとヴィータに全方向からスフィアが殺到する。

「シュランゲバイセン・アングリフ!!」

『Schlangebeisenangriff』

 絶体絶命の二人を救ったのは銀の蛇だった。

 うねる蛇体がスフィアを切り裂き、フェイトとヴィータを守る様に周囲の空間を制圧してゆく。

「無事か!?」

「済まねえシグナム!!」

 スフィアを一掃し、とりあえずの安全地帯を作ったシグナムが連結刃を戻しながら二人に合流した。 

 彼女自身、スフィアに追いかけまわされたのがバリアジャケットの所々に煤が付いているのを見れば分かる。

「ほかの連中は!?」

「何とか落とされてはいない。ザフィーラは…」

「雄嗚嗚嗚!!」

 最後まで言い切るより早く、本人の雄叫びが聞こえてきた。

「嗚呼ぁぁ!!」

「アルフ!?」

 一緒にいるのはアルフだ。

 ザフィーラは拳を、アルフは蹴りでもって闇の書の上下から奇襲をかける。

「おお…なんって、甘いニャ!!」

「なっ!?」

「冗談だろ!?」

 タイミングを合わせた二つの打撃は同時に止められた。

 闇の書の二本の腕が無造作に拳と足の裏をキャッチしたのだ。

 体重を乗せた蹴りと打撃を細い腕が簡単に受け止めた光景は常軌を逸しているが、残念な事にその全ては現実である。

「まさか、強化の魔術まで使えるのか?」

 身体能力の強化、それ自体は単純だ…単純すぎて有効な対抗策がないほどに…。

「大・回・転〜!!本日も余計に回っておりますニャ〜!!」

「ぬ!?」

「げ!!」

 しかも闇の書は、受け止めただけでは無くそのまま二人を振り回し始めたのだ。

 子供が人形でやる様に、ただ力任せに大人二人分の体躯と体重を振り回す。

 相手の力を利用するとか、そんな技術的な要素の全くない力技、一体どれだけの魔力を強化につぎ込んでいるのか?

「ぐっう!?」

「うぁぁぁぁ!!」

 闇の書がその手を放せば、当然二人の体が遠心力で投げ出される。

 周りにあるはコンクリートのビル、この勢いのまま叩きつけられればただではすまない。

「チェーンバインド!!」

「くっつ」

「だぁ!?」

 二人を救ったのは、蜘蛛の巣状に展開された輝く鎖だ。

チェーンバインドは本来、拘束用の魔法だが鎖状のそれは二人の体とそれに付加されていた勢いをしなる事によって吸収し、抱きとめることに成功した。

「大丈夫ですか!?」

「助かったよ!!」

「かたじけない」

 二人とも無事のようだ。

 流石に、あれだけの力で振り回されては無傷とはいかないが、潰れたトマトよりは何倍もましだろう。

「二人共大丈夫!?」

「シャマルか、すまん、油断した。頼む」

「わかってる。湖の騎士シャマルと、風のリング・クラールヴィントは癒しと補助が本領なのだから」

 駆けつけたシャマルの両手で四つの指輪が光を放つ。

 光に照らされたザフィーラとアルフに変化が起こった。

「お、おお〜こりゃすごい」

 アルフの純粋な感嘆の言葉が漏れた。

気がつけば、二人の傷は完全に回復している。

 癒しと補助が本領という言葉に偽りなしのようだ。

「くっ、遊ばれているな…」

 ザフィーラが悔しげに言うとおり、闇の書に遊ばれている。

 比喩でも何でもなく、闇の書は自分達と戦っているとは思っていないのかもしれない。

 むしろ猫のじゃれあいに近い感覚であしらっているように見える。

 ただし、猫は猫でもそれがライオンやトラのような猛獣に分類される生き物だった場合、相手は遊びのつもりでも、その相手に指名されてしまった方はたまったものではない。

「ん?あれはアリシアとルビー!?」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

『ちょっと可哀そうですが、狙いは彼女の羽根です。あれを切って地上に落しますよアリシアちゃん!!』

「はい!!」

 空中にとどまっているアリシアからは、魔力の紫電がほとばしっていた。

 目に見えるレベルの魔力がアリシア達に集まっている。

「ムム?」

 闇の書も、アリシアの存在に気がついたようだ。

 その魔力を感じ取ったのか、それとも危険に対する野生の本能か、ザフィーラとアルフを相手にしていた時より難しい顔になる。

「咎人達に、滅びの光を」

 指先をルビー達に向けて呪文を詠唱し始める。

 同時に、周囲の魔力がその指先に集まり始めた。

「星ニョ集え、全てを撃ち抜く光とニャれ!!」

『なぁーーーの魔法はまさか!?しかもなのはちゃんより魔力収束が早い!?』

「ルビーさん!!」

『こーなったら〜一騎打ちですよ!!』

「はい!!」

 アリシアが大上段にルビーを構え、ルビーも貯めこんだ魔力を放出する。

 勝負は一瞬だ。

「貫け!閃光! スターニャイト・ブレイカー!」

 ちょっとぱちもの臭いスターライトブレイカーが放たれた。

 砲撃というよりも光の柱と形容するのが正しいそれは、一直線にアリシアに向かって空を駆ける。

『大斬撃!!』

「ええええい!!」

 応じて第二魔法の奥義も放たれる。

 世界がズレ空間の境目が刃となり、星の光が殲滅の砲撃となる。

 どちらも最強、必殺の名を冠するに相応しい術は両者の中間で、大爆発という結果を招いた。

「ニャ!?」

『ノオオ!?』

「キャーーーー!!」

 これだけの力同士の衝突となると、その余波だけで十分な破壊力がある。

闇の書とアリシアがそれぞれ自分の背後に吹き飛ばされた。

「大丈夫ですかルビーさん?」

『ま、まさか大斬撃と相打つなんて…』

 何とか空中にとどまることに成功したアリシアだが、ルビーの声には珍しく純粋な驚きの響きがあった。

 第二魔法の奥義は伊達では無い。

非殺傷設定がないので危なすぎて使えないというデメリットが存在するが、まともに食らってはただではすまないはず…まさかそれが力技の砲撃と相殺されるとはルビーを持ってしても予想外だった。

『空間による斬撃を相殺するって事は、あのスターライトブレイカーの威力は対界宝具並という事ですか〜?力技にも程がありますよ〜パネェですね〜』

『その事なんだけど…ルビーちゃん?』

 敵ながらあっぱれと感心していたルビーに、通信をつなげて来たのはリンディだ。

 顔色が悪いというか、頭痛をこらえているように見える。

『さっきのぶつかり合いだけど、再現は止めてほしいの…結界が一発で限界に来たわ』

 リンディの言っている事を要約すると、もう一度同じ事をやれば封鎖結界が破壊され、現実世界の中に放り出されるという事だ。

『それは…まずいですね…』

 ルビーをしてもそう言わざるを得ない…理由は明白、視線を直下の街に下せば一目瞭然…海鳴りの街が、見る影もなく壊滅状態になっている。

 勿論、これらは本物の町では無いが、闇の書をこの結界の中から出した後の未来予想図でもある。

これだけの破壊が人のいる現実の町の中で起これば、大災害レベルの被害が出るのは間違いない。

 同時に、余波だけでこれなのだから、ルビー達というストッパーがなくなり、本格的に闇の書が破壊活動を始めた時に出る被害者の数など予想不能だ。

『でもリンディさん…それはむしろ闇の書に言ってくれませんか?』

「ムム、た〜のしいじゃニャいかーーー!!」

 何と言うか向うは元気いっぱいだった

 むしろ真正面から渡り合ったルビー達を遊び相手としてロックオンしたっぽい。

 こっちが大斬撃を使わなくても、向うがスターライトブレイカーを使わない保証は残念ながら出来ないのだ。

 そして、闇の書がスターライトブレイカーを使用したとき、それを相殺するすべも大斬撃しかないとなると八方塞がりもいい所だ。

「さあ、もっと遊ぼうニャ!!」

 やはり…やはり闇の書はこれを戦いとは思っていなかったようだ。 

 まあ、これだけ戦力に差があれば仕方のないことかもしれないが…。

『う〜ん、決め手に欠けちゃいますね〜』

大斬撃まで効かないとなると、闇の書に確実にダメージを与える術がない。

 こうなると数で攻めて長期戦に持ち込むしかないのだが…本格的な暴走が始まる前に決着をつける事が出来るだろうか?

「今度はこっちから行くニャ!!」

「くっ!!」

 闇の書の宣言に、全員が身構える。

 今まではこちらから仕掛けて闇の書がそれを退ける形だったが、今度は向こうが攻勢に出る……凌ぎ切れるか?

『あ〜テステステス、本日は晴天な〜り本日は晴天な〜り。アメンボアカイナアイウエオ。こちら闇の書の中、聞こえてますか〜?』

『『「「「「「「「は?」」」」」」」』』

「ニャ?」

 呑気というべき内容の念話が、一触即発の空気を見事に固めた。

 あの闇の書でさえ、驚きで動きを止めてしまったほど…簡単に言えば場違いな声だったが、逆に即座に反応した者達もいる。

「おい、シグナム…この声って」

「ああ、たぶん間違いない」

 ヴォルケンリッター達はすぐに声の持ち主が誰かを悟ったらしく、表情に喜色が混じる。

『ありゃ?反応薄いな〜聞こえとらんのかな?もしも〜しこちら八神はやて、皆のアイドル八神はやてちゃんやで〜』

「はやてだ…」

「このノリは間違いなく本人ね」

 その断定ポイントはどうかと思うが…|家族達(ヴォルケンリッター)が断言するのだから、本人で間違いはなかろう。

『はやてちゃん、念話は電話じゃないからもしもしはいらないんだよ?』

『わかっとるよ。でもまあここは気分やね〜』

『あ、闇の書の中から高町なのはです。外にいる皆さん大丈夫ですか?』

「なのはも無事だったんだ…」

 なのはもなのはで何所かニュース中継のようだが、どうやら本人で間違いないらしい。

 ルビーによってなのはの生存は保障されていたが、念話をつなげられる状態にある事が分かった事でフェイトが安堵の息を吐く。

 普段ならば何気ない相手の言葉が聞けるという事が、予想外に嬉しい。

「あ、あニョ〜?」

 なのはとはやての声が聞こえてから無視されまくりの闇の書が自己主張しようとしている。

 遊び相手が他の事に気を取られているので寂しくなったか?

 構ってオーラが漏れ出している。

「「「「「「「…やかましい」」」」」」」

「は、はいニャ!!黙ってますニャ!!」

 闇の書の自己主張終了。

 二人の無事に水を差されてむかっと来るのは分からなくもないが…こいつら、切れた勢いで最高ランクの危険指定ロストロギアを黙らせやがった。

 かわいそうに闇の書はネコ耳をペタンと倒してこちらを警戒している。

『皆、いたいけな子猫を苛めちゃ可哀想やで?』

「ニャ?」

『とりあえずその子を皆でぼこぼこにして魔力攻撃で気絶させてほしいんや』

「ニャんですと!?」

 それを苛めと言わずになんという?

「主、どう言う事ですか?」

『実はなぁシグナム、その子が走っていると私の管理者権限が使えんらしいんよ。なんで可愛そうではあるけど魔力ダメージでその子を気絶させんとわたしもなのはちゃんも何も出来んのや』

「なるほど…」

 つたない要点だけの説明だったが、全員が理解を示してくれた。

 魔法に対する知識があると説明も楽でいい。

「異議あり!!そんニャ個人理由でいたいけな猫をフルボッコにするなんて許されるはずがあーりませんニャ!!」

『中の本体さんからも許可をもろてるからどんどんやっちゃってええで、そっちの子は防御プログラムだけやさかい』

「ぬな!?本体のお墨付きなんてそんな悪い事しましたかワタクシ!?」

『むしろ乗り気やね、早くやってくれって言われとるで』

「…なぁ、ちょっと良いか?」

 どうも変だなと呟いたヴィータが、会話に入って来た。

 半目で闇の書を見れば、ビクリと身をすくませている。

「さっきからお前、何慌ててんだ?」

「にゃんと!?いえいえワタクシ何もあわててなどおりませんの事ニャよ?」

 どうもおかしい。

 確かにこの場にいる全員の相手をするのは難しいというか自殺行為に近いが、さっきまで圧倒していた張本人にそれは通じない。

 なのにこの猫…さっきから挙動不審というか戦いを必死で回避しようとしているように見える。

「「「「「「「……」」」」」」」

「な、何ですかニャ?」

 ヴィータの疑問は誰もが感じているらしく、視線を一身に受け止める闇の書は顔を逸らしてあらぬ方向を向いてしまった。

 それでもだらだらと目に見えるほどに流れる冷や汗は隠せない。

『ああ、その子今動けんから』

「ニャーーーー!!」

 そしてあっさりはやてがばらした。

『こっちからもそんくらいの事はできるらしくって、無理矢理動きを封じとる』

 つまり今ならこのバグキャラも案山子同然、口は動くようだがそれさえ無視すればやりたい放題だという事らしい。

『一発がつーんといってみよか?』

「し、しかし…」

 シグナムが苦い顔だ。

 主であるはやての為で、しかも本人の命令とあれば否やはないのだが……それでも抵抗の出来ない相手に一方的に攻撃を加えるのは騎士としての矜持とか人間性的にどうよ?っと思う所がある。

 他の皆も似たようなものらしく、少し戸惑い気味だ。

「ニャー!!やめろ、やめるんだニャんショッカー!!」

 そんな風に逡巡していたら闇の書が騒ぎ始めた。

 本人にとっては無理もあるまいが…その辺りのネタも魔法と同じく、なのはやはやてからダウンロードしたのだろうか?

「誰がショッカーだ!?」

「「「「「「あ!!」」」」」」

 思わず突っ込みを入れたのは、この場で一番こらえ性のなさそうなヴィータ…しかもグラーフアイゼンで…ギガント状態のまま元に戻してなかったグラーフアイゼンでの突っ込み………問題は|突っ込み(それ)自体では無く、ギガント状態のグラーフアイゼンの打撃には素で魔力ダメージが付加されている所にある。

それで突っ込みを入れられるという事はつまり…。

『よっしゃよくやったヴィータ!!』

「な、懐かしの昭和突っ込みで退場なんて嫌だニャー!!」

 ああ、まさにそんな感じだ。

 闇の書の悲痛な声がドップラー効果で耳に残る…本気で嫌だったようだ。

 同時にそれを見ていた全員が膝をついたり頭をたれたりと残念なリアクションを取った。

「あ、あんなに苦労したのにこんなにあっさり?」

「結構ボロボロになったんだけどな…」

 そこに勝利の余韻はなく、勝者はいない。

いるのはプライドとかいろいろ大事そうなものが音をたてて崩れていく敗者の姿だ。

「あ、あたいは…あたいはなんて事を…」

なぜか一番ダメージがでかいのはヴィータだ。

 そういえば、ハンマーで殴るなんて神が許してもあたしが許さんとか言ってたな…本気だったのか? 

 だがそれはそれでこれはこれ、勝者のはずなのに敗者の気分を味わっていようが関係なく、動きだした状況は止まらない。

「む!?」

「く、この光は何!?」

 闇の書はひときわ強烈な光を発し、漆黒と純白の球体に分離する。

 漆黒の球体の方は重力に引かれて地面に落ち、巨大な半球状のドームとなった。

 それよりはるかに小さい白の球体は空中にとどまり続けているが、その下にベルカ式の銀の魔法陣が展開される。

「おいで、私の騎士達…」

 球体の中から聞こえた声に、ヴォルケンリッターの四人が反応する。

 即座に足下に転移魔法を展開すると、球体を中心に四方を囲む位置に現れた。

 それは中心の球体の中にいる大事な人を守るための配置だ。

「 我ら、夜天の主の下に集いし騎士・・・・・ 」

「 主ある限り、我らの魂尽きる事なし 」

「 この身に命ある限り、我らは御身の下にあり 」

「 我らが主、夜天の王、八神はやての名の下に 」

 球体がはじけ、彼女達の真の主…八神はやてがその姿を現す。

 ずっと車椅子に乗っていた彼女は、闇の書の影響がなくなった事により、銀の魔法陣の上にしっかりと自分の足で立っていた。

「夜天の光よ、我が手に集え!」

 厚めの黒い布地のミニスカワンピース姿の彼女は、先端に剣十字の意匠を持つ騎士杖、シュベルトクロイツを高く掲げる。

「祝福の風、リインフォース!セットアップ!!」

 黒のワンピースの上に白と黒の上着が現れる。

スカートの金色の金具からは黒のスカートが伸び、はやての頭に白の帽子が載るとともに、栗色だったはやての髪はその色を白く染め上げた。

 背中からは闇の書に在ったのとおなじ、黒い翼が三対六枚、羽ばたくように広がり、はやてのバリアジャケットが完成する。

「皆、待たせたな!!」

「ねえちゃん!!」

 真っ先に飛び込んできたヴィータを、はやてはやさしく抱きとめる。

 ヴィータの目にはすでに涙がたまっていた

「すみません…」

「あの…はやてちゃん、私達」

「……」

 感情をストレートに出せるヴィータとは違い、大人達はそう簡単にはいかないようだ。

 はやての意向に背いて行動した後ろめたさだろう。

シグナムもシャマルも言葉がうまく出てこない。

ザフィーラに至っては弁明など意味がないと思っているのか無言を貫いている。

反応は四者四様だが、はやての帰還を喜んでいるのは同じだ。

「リインフォースとなのはちゃんから話はきいとる。わたしのせいで、皆ごめんな」

「そんな…主のせいではありません」

「私達が勝手にやったことなの…ごめんなさい」

「ええんよ」

 尚も何か言おうとする|家族(ヴォルケンリッター)を、はやての笑顔が黙らせる。

「後で一緒に皆にあやまろ、特になのはちゃんには悪い事してしもうたしな…」

「「「「う…」」」」

 4人が同時に呻いた。

 襲われたり宙吊りにされたり部屋をめちゃくちゃにされたりと、地味ではあるが今回の件で一番被害を受けているのはなのはだったりする。

 特に闇の書とヴォルケンリッター達のせいでとんでもない事になったなのはの部屋の片付けなどは率先して手伝う必要があるだろう。

「ん?そう言えばなのはちゃんは?わたしと一緒に外に出てきたはずやけど…」

「あ、姉ちゃん、あれ」

「ん?なのはちゃん、何しとるんや?」

 はやてがヴィータの視線と指さす方向を目で追えば、一同から離れた場所で向き合っているなのはとアリシアを見つけた。

 

――――――――――――――――――――――――

 

「おまたせルビーちゃん」

『あはぁ〜大遅刻ですよなのはちゃん?待ちくたびれちゃいました〜』

「にやはは〜ごめんね〜」

 なのはの帰還に、一番喜んでいるのはルビーかもしれない。

「そろそろね、このお話を終わりにしようと思うんだ」

 なのはは静かに、しかしはっきりと口にした。

 この闇の書を中心とした事件に終止符を打つと…。

『なのはちゃんはどんなエンディングがお望みなんですか?』

「うん、闇の書の悲しい運命を終わらせて、皆でお家に帰るの、クリスマスパーティもやりたいな」

『いいですね〜もうルビーちゃんの事をかくす必要もないから、頑張ってパーティー盛り上げちゃいますよ〜』

「にゃはは、ほどほどにね」

 そう言いながら、結局ルビーは騒動を起こすだろうなとなのはは思う。

 まあ今年はある程度まで大目に見よう。

 あくまで大目になので当然限界もあるが…きっとルビーは平然とそれを超えてくる。

「にゃはは〜あんまりタガが外れるとガンドが火を噴くよ?」

『善処しますよ〜』

 絶対やらかすつもりの確信犯だ。

「だから、パーティを楽しむために今を頑張ろう」

『なのはちゃんはその為に何を望むんですか〜?』

「魔法使いとしての…力を…」

 なのはは右手にレイジングハートを持ったまま、左手をアリシアに差し出す。

 それに対して、アリシアは黙って頷くとルビーを差し出した。

「なのはさま、ルビーさんをお返しします」

「御苦労さま、ごめんねアリシアちゃん?危ない事はなかった?」

「はい、大丈夫です」

 微笑みとともに、アリシアはルビーをなのはに返す。

 ルビーをなのはに返した事で、アリシアが魔女っ娘から元の姿に戻るが、ほぼ同時にその足下に魔法陣が展開された。

 転移の魔法陣…こちらをモニターしているアースラがアリシアを回収してくれるのだろう。

 いい|仕事(タイミング)してますね〜。

「がんばってください。なのは様」

「うん、頑張るよ。全力全開でね」

 やがてアリシアの姿が消え、転移が完了する。

 それを見送ったなのはは一つ大きな深呼吸をして、ルビーとレイジングハートを交差するように構える。

「行くよ、レイジングハート…ルビーちゃん」

『『御心のままに、マイマスター』』

 ルビーが七色の光を放ち、レイジングハートが部品単位にまで分解される。

 光の乱舞の中、なのはは姿を変える。

 ツインテールはサイドポニーになり、成長した四肢は少女ではなく女性のそれに変わる本当の意味での変身…少女から女性となったなのはの体を、紅と白の和服に似た外套のバリアジャケットが包み、拳と足に黄金の手甲と脚甲が装備された。

「レイジングハート…ルビーちゃん…」

『『ここに…』』

 ルビーとレイジングハートが合体した杓杖型のデバイスを手に取るのは、魔法使いとなったなのはだった。

 ほとばしる魔力が意識しなくてもあふれ出し、その姿をほんのり輝かせている。

「…ふう」

 身の内に流れ込んでくる魔力の多さに恐怖を感じるのは相変わらずだが、三回目ともなれば慣れもする。

 余熱のように体にまとわりつく魔力の残滓を、杖の一振りで払えばそれだけで軽いつむじ風が起こった。

「行こうか…終止符を打ちに」

『『はい』』

 二人で一つになった相棒の返事に頷き、なのはは皆と合流すべく空中を滑るように移動する。

「おまたせ皆、ってあれ?はやてちゃん?」

 何故かはやてがなのはを見てびっくりしている。

 口を開けたり閉じたりして…何が言いたいのだろうか?

『なのは様、はやて様はなのは様のこの姿をご存じないのでは?』

「え?ああ、そうだった」

 レイジングハートの言う通りだ。

 思えば、ヴォルケンリッター達はなのはの変身を一度見ているし、リインフォースはヴォルケンリッター達と繋がっているはずだから知っていてもおかしくない。

 フェイト達に関しては今更、なのでこの場で唯一、はやてはなのはの魔法使いとしての姿を初めて見ることになる。

「あ、あのねはやてちゃん?」

「……」

 はやては口を開いて何かを言おうとしているようだが、それが言葉になって出てこない。

 友人がいきなり目の前で大人に成長する一部始終を見てしまっては、この反応も仕方ないのかもしれない…っとかおもっていたら。

「あれ?」

 気がつけば、はやてがなのはの目の前まで移動している。

 何時の間に動いたのか全く分からなかった。

 後ろのシグナムまで目を丸くしているのが見えるが…まさかヴォルケンリッターの目にも止まらない速度で動いたとか?

「は、はやてちゃん?ってえ?」

 これまたいつの間にか、はやての手がなのはの胸を掴んでいる。

 気配も予備動作もなく無拍子でボインタッチをかましやがった。

 いくら同性で10歳と言え、許されるのかこれ?

 しかも無拍子は色々な武道の奥義だぞ?

「ってちょっとーーー!!」

 正気に戻ったなのはが、思わずはやてを突き飛ばしたのは性別女として当然の反応だっただろう。

「あ、主!!」

「はやて!?」

「ねえちゃん!?」

 その結果、はやてが水平に空中を移動したことも自業自得と言える。

 魔法使い状態のなのはには、MAXの肉体強化が常にかかっているのだ。

「なんとーーー!!」

 しかしはやてもさるもの、背中の6枚の翼を使い、姿勢を制御して勢いを殺すことに成功すると華麗な動きで空中に静止する。

「なにそのニュータイプの操縦するMSみたいな動きは!?」

「人間なせば成るもんや!!」

 根性があれば誰にでもできるように言うな、今の動きは車椅子生活を長い間していた人間の物じゃないぞ?

「柔らかいし暖かかった…本物や…」

「そ、そうだね…茫然と手をニギニギしているの止めてほしいな?見てて怖いから」

 少なくとも作り物で無いのは確かだ。

 後数年先の物ではあるが、間違いなく自前である。

「…ちゃんの…」

「え?」

「なのはちゃんの裏切り者――――!!」

「ええ!?」

 なのはにしてみれば、いきなり胸を掴まれ(実はちょっと痛かった)、やっと話が通じたと思ったら裏切り者扱いされて何その無茶ぶり?という感じなのだが…しかもまだまだはやてのターンだ。

「なんやの、その狂部突起は!!!?」

「そ、そんな刺さりそうな物騒な物はなのはについてないよ!!!?」

 やったね、胸ではなく狂なので破壊力も凶悪さも大幅UPだ!!

「なのはちゃんが一人でさっさと大人の階段を上ってしもうた!!」

「ま、間違ってないけど言い方が卑猥!!」

「こんなんなってもまだシンデレラなんかな!?」

「はやてちゃんが何を言っているのか分からないの!!」

 Song by「想い出がいっぱい」(H2O)…いい感じにわけがわかりません。

 それになのはは誰かが持ってくる幸せを待つ草食系ではなく、どちらかと言えば障害を“撃ち抜いて”幸せをゲットする肉食系だと思う。

「何でいきなりそんな育ってしまうんや!?胸とか胸とか胸とか!?ず〜る〜い〜!!」

「いやずるいって…前から思っていたけど、はやてちゃんのその胸に対する執着は何なのかな?」

 おそらく無意識にでも、自分の限界を悟っているのだろう。

 主に自分の成長に対する限界という奴を…。

『あはぁ〜なのはちゃんの変身は魔術の奥義の一つですよ〜』

 そしてまた、話をややこしくしそうな|奴(ルビー)がややこしくなりそうなネタを振って来やがった。

確かに言っている事は間違ってはいないけれど…。

「ほんま!?ほんまに魔術を習えば瞬きの間にナインペタンが■カップのないすぼでーに!?そんならわたしも魔術習う!!」

 ちょっと触って見ただけでカップサイズまで分かるってなんだその無駄に高スペック?

 しかも感極まり過ぎてないすぼでーとか言って震えてるし、どんだけだよ|こいつ(はやて)!?

「は、はやてちゃん?魔術はバストアップエクササイズとか成長促進とかそういうものじゃ…」

「はやて、あたしもやるぜ!!そんでふたりそろってロリ卒業だ」

「「「「「|ブルータス(ヴィータ)お前もか!!」」」」」

 人は自分にない物を求めるものである。

 大人バージョンのなのはのスタイル…特に胸をガン見しているはやてとヴィータにセルメダルを放り込んだら、すごい勢いでメダルがたまりそうだ。

 セクハラで訴えても勝てるんじゃないかこれ?

「え、えっと…はやてちゃん?後でちゃんとお話しするから…ちょっと落ち着いてほしいな…」

「ほんまやね!?言質はとったよなのはちゃん!!」

「ねえちゃん、あたしも聞いたぜ!!」

「二人共食いつきが良過ぎるの!!」

 シグナム達に助けを求めてみるが、目があった瞬間逸らされてしまった。

 なんて薄情な…さっきまでの連帯感は何だったのか?

 やはり戦場というものは色々熱しやすく冷めやすいのか?

「あ〜ちょっと良いだろうか?水を差してしまってすまない…時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ」

「は、いい所にクロノ君!!」

 盛大に脱線しそうな予感と、未来の自分の胸とはいえ、ガン見されることに女性としての危機感を感じていた所に来た合いの手に、なのはが喜んで振り返った。

「みんな、待たせたわね」

「それにプレシアさんも…っと誰?」

そこにいたのは予想通りのクロノとプレシアの他に三人…白髪の老人とネコ耳の女性が二人…二人の女性は双子らしく、髪の長さ以外に見分けのつかない格好をしている。

「この人は、僕の上司でギル・グレアム提督とその使い魔のアリア…っと、リーゼ姉妹だ」

「え、あのグレアムさん?本人なの?」

 何故か途中で言い淀んだクロノの様子が気になるが、なるほどこの老人が件のグレアム氏か、まさかこんな場所で会う事になるとは思わなかったが…。

「え?ギル・グレアムさん?もしかしてグレアムおじさんかいな?」

 なのはが次の言葉をかけるより早く、驚いた風のはやてがグレアムに声をかけた。

「あ、ああ…その通りだよはやて君」

「いつもお世話になっとります!!」

 ぺこりと頭を下げるはやてが殊勝…どうやら二人が知り合いらしいのは一目瞭然だが、どう言うつながりだろう?

「あ。なのはちゃん?この人が私の両親の友人で、財産管理とかしてくれてるギル・グレアムさん。まさかこんな所で会えるなんて思ってもみんかったわ!!」

「そ、そうだね、私も、こんな形で君に会う事になるとは思わなかった」

 はやての恩人がなのはの恩人でもあったとは、人のつながりとは数奇というしかない。

 次元が違っても、世界は狭いという言葉は有効なのだろうか?

「手紙では外国でお仕事をされとるって書いてあったけど、そっか〜時空管理局で働いてはったんやね」

「そう言う事に、なるかな」

 なんだろう?

 恩人に会えて上機嫌にはしゃいでいるはやてに対して、グレアムの反応がぎこちない。

 何と言うか罪悪感にさいなまれているような?そんな感じに見える。

 しかも使い魔の猫姉妹まで震えている…っというか何だかちらちらとなのはの方を見ている気がするのだが…。

『あはぁ〜そう言う事ですか〜』

「「ひっ!!」」

「ん?どうかしたのルビーちゃん?向うのお姉さん達も変な声だしてたけど」

『いいえ〜何でもありませんよ〜』

「時間が無いので簡潔に説明する!!」

 明らかに何か含みのあるルビーの笑いだったが、なのはの言葉はクロノの言葉に遮られた。

 KYというよりわざと妨害したっぽいが…時間がないのは確かなので、ここは流しておく…後で追及してみよう。

「あそこの黒い球体、闇の書のプログラムがあと数分で暴走を開始する」

 全員が頷いた。

「僕らはアレを何らかの方法で止めなくてはならない、現在停止のプランは“3つ”ある。1つ極めて強力な氷結魔法で停止させる」

 クロノは指を三本立てて見せ、一本ずつ折りながら説明を続ける。

「2つめは軌道上に待機した艦船アースラの魔道砲アルカンシェルで消滅させるが、これは色々な事情からお勧めは出来ない。3つめは不確定要素が大きいのでとりあえず保留する。他に方法は無いか?闇の書の主とその守護騎士に聞きたい」

「1つめは例え氷結させてもコアが存在する限り再生は止まらん」

 おや、何故かグレアムとリーゼ姉妹の顔色が変わったな?

 何か予想外の事とか盲点でもあったのか?

「二つ目に関しては最終手段だ。可能な限り使いたくない」

「当然だろう!!アルカンシェル、駄目絶対!こんな所で使ったらはやての家が壊れちゃうじゃんか!」

 クロノの言葉に何を想像したのか、ヴィータが標語調子でとんでもない事を言いだした。

 はやての家が壊れるとか聞き捨てならないにも程がある。

「そんなにすごいの?」

「発動地点を中心に百数十キロを跡形も無く吹き飛ばすから、海鳴の街を地図から消すくらいの覚悟で使えばやれるんじゃないかしら?」

 プレシアが冷淡に断言してくれた。

 科学者として事実のみ語ってくれたようなので、やればおそらくその通りになるだろう。

 何かユーノが台詞取られたみたいな顔をしているが…マジで空気になっているな…。

「私も反対!」

「同じく絶対反対!」

「うちも反対や!」

 真っ先になのは、フェイト、はやてが反対する。

 自分がこれからも生活していくはずの場所がなくなるなど、地元民として看過出来る事ではない。

「わかっている。これは最終手段だと言っただろう?ぎりぎりまで使うつもりはない」

 クロノが言う事はつまり、逆を言えばこれから起こる防衛プログラムの暴走を止められず、どうにもこうにもならなくなったら、その最終手段を使う可能性もあるという事だ。

 その意味に気づいた全員がゴクリと唾を飲む。

「ではやはり三つ目のプランか…」

 全員が黙ってクロノの次の言葉を待つが…。

「え?私?」

 クロノは何も言わずなのはを見た。

 何でそこで自分を見るのか分からないなのはの頭上にはてなマークが浮かぶ。

 その後ろでユーノがせわしなく二人を交互に見ているが、こいつは無視しても構うまい。

「ルビーに聞きたい。君の見立てではどうだ?」

「あ、ルビーちゃんになんだ」

『そうですね〜』

 ルビーは詳しい説明を聞くまでもなく、クロノが何を言いたいのか理解しているらしい。

 逆に他の人間は話についていけないので見守ることしかできない。

『“条件”は整っていると思います。あれが本当にこの世界を滅ぼし、霊長を脅かす存在ならば…来ると思いますよ』

「そうか…」

「この世界…霊長…それってもしかして…っ!!」

 なのはは自分の予想を最後まで口にする事が出来なかった。

 いや、すでに問いかけはその意味を失っている。

 分かるのだ…感じるのだ。

 この気配に、この魔力に、世界が怯えているような、敵意をむき出しにした空気はあの時と同じ…。

「な、何だこれは!?」

「わけわかんねえけど、やべえんじゃないかこれ!?」

 ヴォルケンリッター達も、この空気を感じ取ったようだ。

 生粋の武人だけあって、なのは達より明確にこの異常を感じているかもしれない。

 

―――――― 体は剣で出来ている。(I am the bone of my sword.)

 

 何処からか声が聞こえてきた。

 思わず全員が体をこわばらせる。

 

―――――― 血潮は鉄で 心は硝子(Steel is my body, and fire is my blood.) 

 

肉声では無い…念話でもない。

 世界にしみこむような…世界その物から聞こえてくるような…これは…呪文か?

 

――――――幾たびの戦場を越えて不敗。I have created over a thousand blades.

 

「なんやこれ、誰が歌っとるんや?」

「歌?」

 …そう、これは歌だ。

 どうしようもなく不器用に頑張った…あの人の人生を詩にした歌…とても切なく、胸を締め付けてくる……気を抜けば涙が出そうになるのを、なのはは頑張って耐える。

 

―――――ただの一度も敗走はなく、ただの一度も理解されない。(Unknown to Death. Nor known to Life.) 

 

「大丈夫だよ…はやてちゃん」

「あ、なのはちゃん?」 

「怖い事なんてない」

 

―――――彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。(Have withstood pain to create many weapons.)

 

 困惑している友人に微笑みかけ、落ち着かせる。

 そう…怖がることはない。

 おびえる必要はないのだ。

 

―――――故に、生涯に意味はなく。(Yet, those hands will never hold anything.)

 

「この世界が本当に危なくなった時…あの人は現われる」

「なのはちゃん…それって、誰の事を言ってるん?」

「あの人は…」

 

―――――その体は、きっと剣で出来ていた。(So as I pray, unlimited blade works.)

 

「……正義の味方、そしてここはあの人の世界…」

 なのはは…静かに目を閉じた。

「「|無限の…剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)…」」

 なのはと“彼”の声が重なる。

 炎が自分の体を通り抜けてゆく熱を感じた。

 なのはが閉じた瞳を再び開けば…そこはすでに”彼の世界”が広がってる。

「……」

 何処までも続く荒野…地面に突き立ち、ただ朽ちて行くのを待つ主無き剣の群れ…斜陽に染まる空には鋼鉄の歯車が回り、鋼を作り続ける無人の世界…その中において、“彼”の姿は異質にして必然…故にその姿を見紛う事はない。

「また…会えましたね…」

 この世界の創造主にして王…生命の脈動が感じられない荒野で、鉄さびの匂いのする風に赤い外套をなびかせながら、剣と共に立つ男の後ろ姿があった。

 

 

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リリカルなのはに、Fateのある者、物?がやってきます。 自重?ははは、何を言ってるんだい?あいつの辞書にそんなものあるわけないだろう?だって奴は・・・。 ネタ多し、むしろネタばかり、基本ギャグ
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