たとえ、世界を滅ぼしても 〜第4次聖杯戦争物語〜 英霊混戦(槍剣乱舞)
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開幕の剣戟は響き渡り。

 

運命はここに始まりを高らかに謳う。

 

 

――――――戦いの音色は、新たな挑戦者を招く。

 

 

故に、その時は近付いてくるだろう、誰が望まずとも、必ず。

 

 

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<SIDE/間桐雁夜>

 

 

暗いくらい闇の中、本当に小さい声でその言葉は呟かれた。

 

「始まったか……」

 

薄暗い下水道―――――――――そこに、雁夜はいた。

間桐の家を出てから一日、彼は他のマスターに見付からないように、地下を移動していた。

何故そんな事をしているのか?

それは、下手に動き回って襲われては堪ったものではない、という理由と。

今の自分の体では、逃げ切れないという理由からだった。

雁夜は自分の肉体が余命一か月という事もあり、出来る限り敵に遭遇しないのを優先している。

だからこそ、今は情報を集めるのだ。

偵察に向けている蟲から、雁夜の右目に映し出されるのは2人の騎士の姿。

何としても勝利する、その為になら今はどれだけ無様だろうとこうして隠れている方が賢いのだ。

 

 

だが―――――――――もしも、あの【サーヴァント】がこの戦いへ現れるならば…

 

 

「……その時は、お前に任せるからな、『バーサーカー』…」

 

【指輪】の嵌った右手を雁夜は握り締めた。

あのドラグーンに通常の戦闘なら支障は無いと云わしめたソレは、確かにバーサーカーへ魔力を問題なく供給している。

そのおかげだろう、体の中の蟲共も、いつもよりはずっと大人しい分、余裕をもって動く事が出来る。

 

「無理に戦う必要もない、けど、あの野郎に吠え面ぐらいはかかせてやれる…!」

 

そう言って歪んだ笑みを浮かべる雁夜…だが、彼はちゃんと覚えているのだろうか。

確かに支障は無いと言っていたけれど、それは【通常】に限られるとも、言っていた事を。

何かに焦るように、冷静さを欠いている雁夜は気付いていなかった。

もしかしたら、それは間桐の家を出る前に言われた言葉のせいだったのかもしれないが、

それでも、マスターとしてサーヴァントの状態を把握していないのは、明らかに失態だった。

………傍にいるバーサーカーが、【何か】に反応している事を。

その気配が、何処か動揺するように揺れ動いていた事を、気付いていなかったのだから。

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<SIDE/セイバー>

 

(よもや、これ程の戦士とは――――――――――!)

 

打ち合う事既に30を超え、辺りは騎士達の決闘により荒れ果て始めていた。

地面は砕け、倉庫を破壊し、死闘を繰り広げているにも関わらず、その実力は拮抗している。

 

セイバーは、かつて目の前の相手同様に、愛剣ではなく槍を携え戦場を駆けた事もあった。

そんな彼女の知る限り、『槍』は一つきりであり、両手で扱い敵を貫き裂く武器として認識していた。

だからこそ、ランサーが『2本』の槍を携えて立ちはだかった事を、こちらを欺く策と考えていたのだが。

 

(この男…欺くどころか完全に使いこなしている!それも達人の域と言っていい程に!!)

 

打ち払う二槍は激しく自らの剣と打ち合っている、だが微塵のブレも隙もないそれは、

明らかに目の前の敵が強敵なのだという事を告げていた。

その事実に、セイバーは驚きと共に喜びを感じずにはいられなかった。

まさか初陣にて、このような猛者と戦えるとはと、武者震いが体を駆け抜ける。

それは目の前のランサーも同じようで、彼もまたこちらを見つめ薄く笑みを零している。

 

「視えぬ剣とはな、なかなかどうして、楽にその首は取らせて貰えそうにないな。」

「その言葉、私には誉れだ……貴方こそ、素晴らしい腕だ、ランサー。」

 

そう言葉を交わしながらも、2人の距離は縮まらない。

下手に動けば相手に切り伏せられると分かっているが故の距離。

完全な拮抗状態において、互いの動きを読もうと視線を走らせ――――――――――

 

 

『戯合いはそこまでだ、ランサー』

 

 

倉庫街に何処からともなく冷淡な声が響いた。

ランサーを呼んだ謎の声、それが彼のマスターである事をセイバーとアイリスフィールは悟る。

 

『そのセイバーは難敵だ、早々に排除しろ……宝具の開帳を、許す。』

 

姿を見せないランサーのマスターの言葉に、セイバーは一気に緊張を高めた。

今の今まで、恐らく正体を分からせない為にであろうが、

呪符を巻きつけている二槍が、真の姿を見せようとしているのだ。

ならば、次に来るのは相手の【全力】、ここで気を抜けば即刻死に繋がる……!

 

「了解した、我が主よ……そういう訳でな、悪いが勝ちに行かせてもらうぞ、セイバー」

 

その瞬間、セイバーとアイリスフィールの眼に見えたのは朱色の美しい色彩、

槍に纏われていた布は失われ、ランサーのサーヴァントの【宝具】が、その姿を晒していた。

そのままランサーは深紅の槍を両手に構え、その槍は尋常ではない魔力を放っている。

そして、その場に転がされている【もう一本の槍】に、セイバーは少し眉を寄せた。

 

(片方の槍を捨てた?…宝具の使用を許可された以上、やはりあの朱槍が真の宝具だということか…)

 

しかしこれ以上考えている余裕はセイバーにはなく、同様にランサーに愛剣を構える。

かの宝具が何であれ、使用される前に倒せば問題はあるまいと結論付けて。

 

 

――――――――――そうして、再び2つの影は衝突した。

 

 

 

 

…………この戦いを…………………闇より見つめる黒き暗殺者の姿がある事も知らずに。

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「………始まっているな。」

 

そこ、冬木教会の地下室にて、死闘が続く倉庫街を監視する者がいた。

 

冷たく静寂な地下室の中で、全神経を集中させ情報を整理している人間は、言峰綺礼といった。

眼を瞑り、激しい剣戟の火花が飛び交う様子を観察する。

それが出来るのは何故かといえば、彼の未だに現界している【アサシン】とパスを利用して、

アサシンが見ている光景をそのまま見詰めているのだ。

しかし、ここで疑問が生じる。

何故【アーチャーに倒された筈の、アサシンが生きている】のか?

 

「未遠川河口の倉庫街で、動きがありました……いよいよ『最初』の戦闘が始まった様子です」

綺礼は卓上に載せられた真鍮製の朝顔が特徴的な古めかしい蓄音機へ向かって言葉を投げかける。

すると、一見独り言にも見えた彼の行動に対して蓄音機から反応があった。

『……『最初』、という言い分はあるまい?公式には"第2戦"だよ、綺礼』

少しばかり歪んだ音質ではあるも、余裕のある洒落な声は、まぎれもなく遠坂時臣のものである。

一見蓄音機と見間違うこの装置だが、よく見るとその下にあるべき針とターンテーブルが無く、

代わりにあるのが、針金の弦によって支えられた大粒の宝石である。

遠坂家伝来の魔導器であり、遠坂の人間でなければ使い方も分からないこの通信機。

こうして【連絡を取り合っている】相手でもある綺礼の下にも、全く同じ装置が設けられていた。

そう―――――――――【聖杯戦争の敗北者】として、冬木教会に保護される【段取り】となっていた綺礼と、

密かに時臣が連絡を取る為に、わざわざ用意されたのだ。

 

―――――――――そう、何故アサシンが生きていたのか?

 

 

それは、あの戦いがそもそも【茶番】だった、という事実があったのだ。

 

遠坂時臣と、言峰綺礼、そしてその父親たる言峰璃正がグルになっての茶番劇。

全ては遠坂時臣の勝利の為、彼の弟子でもあり、アサシンのマスターでもある言峰綺礼は、

聖杯戦争の監督役でもある父親に指示されたこともあり、最初から彼に協力していた。

本来なら、平等でなければならない聖杯戦争の監督役が、1人のマスターに加担する等以てのほかだ。

しかし現実として彼等はグルとなり、陰で言峰綺礼は遠坂時臣が有利に動けるように暗躍していた。

そうして、確かにその茶番は成功し、言峰綺礼は((冬木教会|安全地帯))で己のサーヴァントを駆使し。

完全に情報収集に回っていた。

 

「戦っているのはどうやらセイバー、それにランサーのようです。

とりわけセイバーはその能力値ステータスに恵まれています」

『成程、流石は最優のクラス、といったところか……マスターは視認できるか?』

「堂々と姿を現しているのは、一人だけ……セイバーの背後に控えている、銀髪の女です。」

 

状況的にを見て、セイバーに守られるように立っているのが彼女のマスターであろう、と綺礼は見当をつけた。

他にもマスターが潜んでいるかもしれないが、現状で視認出来るのは彼女だけであった。

 

『そうか、ランサーのマスターには身を隠すだけの知恵がある……この戦争の鉄則を弁えている。

だが待て、セイバーのマスターだが、【銀髪の女】だと?』

「はい、白人の若い女です……銀髪に赤い瞳、どうにも人間離れした風情に見えますが。」

 

だがどちらかというなら、【人形】が人間と変わらぬ動きをしていると言った方が正しいだろう。

そう綺礼が考えていると、その疑問に答えるように声が響いた。

 

『…アインツベルンのホムンクルス?またしても人形のマスターを鋳造したのか……ありえぬ話ではないが、な』

「ではあの女がアインツベルンのマスターなのですか?」

『アインツベルンの翁が用意した戦争の駒は、衛宮切嗣だとばかり思っていたが……まさか見込みが外れるとはな』

 

その言葉に、言峰綺礼は内心で溜息を吐いた。

衛宮切嗣が出てくるのなら、きっと問い掛ける事が出来たであろう【答え】を、

今度こそ知りたかった【答え】を、その手に出来るかもしれないチャンスが失われたからだ。

 

『とにかく、その女は聖杯戦争の趨勢を握る重要な鍵だ……綺礼、決して目を離すな。』

「了解しました……では常時、【1人を付けて】おきましょう。」

 

そう受け答え、綺礼は再び倉庫街で繰り広げられている、2人の英霊の激闘の監視を続ける。

 

 

 

―――――――――己の本質を見極められず、今尚道を探し求める求道者は、今はただ、先の見えない暗闇をさまよい続けている。

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<SIDE/セイバー>

 

――――――――戦場は、一気にその様子を変えていた。

 

セイバーは自らの油断によって、完全に不利な状況へ追い込まれていた。

 

宝具として認識してた深紅の槍、それを手にした不可視の剣で打ち払おうとしたのだが、

槍先が『((風王結界|インビジブル・エア))』に触れた瞬間、突然一陣の風が旋を巻いて吹き荒れた。

それが原因で屈折角を利用した風の護りが破れ、『((約束された勝利の剣|エクスカリバー))』を晒すことになったセイバーはランサーに真名を看破される形となった。

それだけではない、ランサーがその場に捨てていたもう一本の槍、あれもまたランサーによって仕掛けられた罠だったのだ。

これにより不意をつかれたセイバーは、((不治の呪い|ゲイ・ボウ))を与えられてしまい、

自身の最強の宝具を開放する事が出来なくなってしまった。

 

たとえ、その宝具に気付き、ランサーの真名を言い当てたとしても。

決して軽いとは言えない代償を負ってしまったのだ。

 

「覚悟しろセイバー、今度こそは獲る。」

「……それは私に獲られなかった時の話だぞ?ランサー」

 

(負けるつもりはないが、しかしこのまま打ち勝つのは容易ではない…な。)

 

真正面から向き合い、2人の騎士は睨みあう。

湧き上がる闘気はいっそ美しくすらあり、周りの者は動く事すら許されない。

そうして、徐々に高まる空気はいつ破裂してもおかしくない程に緊迫していた。

 

 

 

 

         ガラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!!

       「((AAAALaLaLaLaLaie|アアアアアアアララララライッ))!!」

 

 

 

その時、不意に轟いた雷鳴の響きによって、その空気が破られた。

 

 

 

『―――――――――っ!?』

 

 

東南の方角の空へ共に振り返る。

彼等の瞳に映り込んだのは、激しく放電する紫電の輝きを夜空に散らしながら

ただまっすぐに彼等の間へ目掛けて駆けてくる、【ソレ】は。

 

「え……((戦車|チャリオット))……?」

 

 

雷鳴を鳴り響かせながら空中を疾走する二頭の逞しくも美しい牡牛が牽いている戦車。

その2頭は蹄で虚空を蹴り、壮麗に飾られた戦車で神々しく上空を旋回し、

そうして速度を徐々に緩めていくと、対峙していたセイバーとランサーの間へ割り込む形で、

ゆっくりと地上へと降り立ってきたのだ。

 

そうして、同時に溢れんばかりの威光威風を背負った巨漢の男が現れたのだった………

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【あとがき】

 

今回は、少し長くなりそうですので、一度ここできる事にしました。

また近いうちに更新しますので、長い目で見守ってくださいませ。m(__)m

ちなみに、前回と違いドラグーンは出ませんでした。

その代わりに色々とフラグを立ててる雁夜おじさんとバーサーカーが出ました!

そして活躍している他陣営・・・次回は征服王さんと英雄王さんが出撃!

更にバーサーカーの活躍をご期待くださいませ!

それでは次回、『英霊混戦(三騎来襲)』をお楽しみに・・・。

今回のBGMは、【Gregorio(榊原ゆい)】でした。

 

※感想・批評お待ちしております。

説明
前書き
※注意、こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。 それでも見てやろう!という心優しい方のみ、どうぞ閲覧してくださいませ。 戦闘を開始したセイバーとランサー、その二人を見極める為に他のサーヴァントも動き出してきます・・・
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英雄 物語 残酷描写 間桐雁夜 ランサー 原作改変 Fate/Zero セイバー 腐向け 

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