英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 50 |
〜空賊団アジト内〜
「待ちな、てめえら!」
「ここから先には行かせねえ!」
ドルン達を追ったエステルだったが、途中で倒したはずの下っ端達に行く手をさえぎられた。
「も、もう復活したの?」
「なかなかタフな連中だね。」
気絶したはずの空賊達を見てエステルは驚き、ヨシュアは感心した。
「絶対にここは通さねえ………ぜ!?」
一人の空賊が意気込んでいたが、足元から水の柱が吹きあがり、吹きあがった水の柱によって意気込んでいた空賊は天井にぶつかり気絶した。
「え……今のは……!?」
何もしていないエステル達は驚いてあたりを見渡すと、いつの間にかエステル達の後ろにペルルとマーリオンがいた。
「ペルル、マーリオン!どうしてここに?」
「……プリネ様……に……頼ま……れて……援軍……に…来ま……した。」
「部屋に空賊達の援軍が来ないように外で見張っていたプリネが敵を追っかけるエステル達を見て、自分達の持ち場は離れられないから、代わりにボク達をエステル達を追って手伝うように指示したんだ!」
「フフ……親娘揃って世話になってしまうわね……ここは任せてもいいかしら?」
マーリオンとペルルの言葉にシェラザードは笑みを浮かべて尋ねた。
「おまかせ……下さい……」
「マーリオンの言う通り、ここはボク達に任せて、エステル達は敵のボスを追って!」
「うん!」
「さっきから何を勝手なことを……数が増えたからと言って絶対にここから先には行かさねえぜ!」
空賊達は絶対にエステル達を通さないよう、先に進む道を塞いでいたが
「行っくよ!……それぇ!」
「「「うわぁっ!?」」」
体全体を回転させて突進したペルルの攻撃に驚いて、横に回避した。
「今だよ!」
「わかった!」
ペルルの言葉に頷いたエステル達はペルルの横をすり抜け先に進んだ。
「あ、待て!」
「逃がさねえぞ!」
空賊達は慌ててエステル達を追いかけようとしたが
「超ねこパ〜ンチ!」
「水よ……」
「「「うわぁ!?」」」
ペルルの翼による攻撃とマーリオンが放った水の魔術をうけて、後退した。
「ここは通さないよ!」
「エステルさん達……の……邪魔……は……させ……ません……」
「「「く、くそ!どけぇ!」」」
エステル達を追うためにペルル達に襲いかかった空賊達だったが、相手は主と共に厳しい戦いを勝ち抜いて来た使い魔。数の優劣に関わらずペルル達によって気絶させられた。
ドルン達を追ってさらに進んだエステル達だったが、後少しで空賊艇がある場所に行く手前の部屋でまた下っ端達が行く手を遮った。
「けっ、おいでなすったか……」
「勝とうとなんて思うな!兄貴たちが逃げるまでの間、時間稼ぎができればいいんだ!」
「ああ!兄貴たちにはいろいろ世話になったからな。恩返しをさせてもらうぜ!」
「フッ、自らを盾にして主人のためにつくすか……。愚かではあるが、なかなか天晴な心意気だ。」
下っ端達の叫びにオリビエは感心した。そこにサエラブが前に出て来て、口を大きく開いて大声で吠えた!
「ウオオオオオオオォォォォッ!!」
「「「「ウワァッ!?」」」」
サエラブの咆哮は強力な衝撃波となり、道を塞いでいた空賊達を吹き飛ばした。
「すごっ……!」
「吠えるだけであそこまでの威力……!」
サエラブの咆哮による攻撃にエステル達は驚いた。
(何をしている!こいつらは我が相手をしてやる!行け!)
驚いているエステル達に念話を送り、サエラブは頭をドルン達が逃げ去った方向に振り、エステル達に先に進むよう促した。
「う、うん……一人で大丈夫!?」
(侮るな!我は自らの悪を喰らいさらなる強さを手に入れた”善狐”!このような雑魚共相手に手間取る我ではない!)
「わかったわ、気を付けてね!」
「お願いします!」
「フッ……このボクに任せたまえ、狐くん♪」
「行くわよ、3人共!」
サエラブの念話に頷いたエステル達は吹き飛んで壁にぶつかり、呻いている空賊達を無視してさらに先に進んだ。
〜空賊団アジト・地上〜
ようやく空賊艇がある地上に出たエステル達だったが、なんとそこには王国軍の警備艇が停泊しており、ドルン達を拘束した王国軍兵士達がいて、さらにはナイアルとドロシーがいて、ドロシーがドルン達の写真を撮っていた。
「へっ……」
「これは……」
いつの間にか現れて空賊の首領達を拘束した王国軍兵士達にエステル達は驚いた。
「くそっ、まさか軍にここの場所を知られるとは!あの野郎、話が違うじゃないか!」
「こ、こらっ!気安くボクに触るなよっ!」
「おいおい……何がどうなってるんだぁ!?」
拘束された空賊の首領達は連行されながら、さまざまな事を言った。
「は〜、あの人たちが空賊さんたちのボスですか。女の子もいるなんて、なんかビックリですねぇ。」
「無駄口叩いてないで、とにかく撮りまくれっ!こんなスクープ、滅多にあるもんじゃねえ!」
「どうだ、ナイアル君。いい記事は書けそうかな?」
ドロシーに必死の形相で指示しているナイアルに兵士達を引き連れ、カノーネやモルガン達と共に来たリシャールが話しかけた。
「そ、そりゃあもちろん!連れてきてくれて、ほんっとーに感謝してますよ!あっ、ついでですから大佐も撮らせてもらえませんかねぇ?」
「ふむ……閣下、よろしいですか?」
頭を下げながらするナイアルの要求に答えるため、リシャールは上官であるモルガンに許可を聞いた。
「勝手にするがいい。今回の作戦はお前の立案だ。正直、大した手並みだったぞ。」
「いや、情報部のスタッフの分析が正確だったからです。それと、そこにいる諸君の協力のたまものでしょうね。」
「なに……?」
リシャールに言われたモルガンはエステル達に気付き、信じられない表情をした。
「ゆ、遊撃士ども!?なぜ貴様らがここにいる!?」
「念のため言っておくけど、また一足先に潜入していたの。このアジトもすでに制圧済みよ。」
「逃げた空賊の首領たちをここまで追ってきたんですが……。まさか王国軍の警備艇が来ているとは思いませんでした。」
怒鳴りながら尋ねたモルガンにシェラザードとヨシュアは落ち着いて説明した。
「ぐぬぬぬ……また出過ぎたマネをしおって。……ハッ!ま、まさか!あの方達もここにいるのか!?」
(ん?あの方達……?一体誰だ??)
エステル達が先に空賊団のアジトを見つけたことに悔しがったモルガンだったが、エステル達に同行しているはずのリフィア達の事も思い出し、顔を青褪めさせた。
ナイアルはそれがわからず、心の中でモルガンが慌てているほどの人物達が何者か考えた。
「お言葉ですが、閣下。彼らがいたから、我々の突入もここまで上手くいったのです。その功績は認めるべきかと。それにみだりにあの方達の事を口にしていただくのは困ります。あちらはあちらで恐らくこちらに気を使ってこの場にいないのでしょうし。」
「……くっ。まあよい。後の指揮はおぬしに任せる。わしは一足先に船に戻って空賊どもを締め上げてくるわ。………くれぐれもあの方達に失礼のないようにな。」
「承知しました。」
リシャールの正論と注意にモルガンは唸った後、その場から引き上げて言った。
「相変わらず頑固オヤジね〜。」
「悪い人ではないのだがね。いささか柔軟性には欠けるな。ところで、他の空賊たちと人質の方々はどこにいるんだね?」
去って行くモルガンの後ろ姿を見て溜息をついたエステルに、リシャールは同意した後尋ねた。
「他の手下たちはそこらで転がっているはずよ。人質たちには、監禁されていた部屋で待機してもらっているわ。……ちなみに私達に同行者がいるんだけどその人達に人質達の身を守ってもらっているわ。」
「後、大きな狐が砦内にいると思いますが僕達の味方なので手は出さないで下さい。」
「そうか……。いや、本当にご苦労だった。人質や積荷の移送を含め、後のことは我々に任せて欲しい。行くぞ、カノーネ大尉。」
「承知しましたわ。」
シェラザードとヨシュアの説明に頷いたリシャールはカノーネと共に兵を引き連れて砦内に入って行った。
「あ、ちょっと大佐!お前さんたちにもインタビューしたいんだが、今回ばかりはあっちが優先だ。機会があれば、よろしく頼むぜ!」
「まったね〜!エステルちゃん、ヨシュア君。」
去って行くリシャールを見て慌ててナイアルとドロシーが追って行った。
「いやはや、美味しいところを根こそぎ持っていかれた気分だね。」
「うーん、確かに……せっかくマーリオン達が頑張ってくれたのに……」
リシャール達が去った後呟いたオリビエに同意するようにエステルは残念そうな表情で頷いた。
「フフ、いいじゃないの。遊撃士の本分は縁の下の力持ちというもの。無用に目立っても仕方ないわ。それに彼らもきっとわかってくれるわ。」
残念そうな表情をしているエステルにシェラザードは本来のやるべきことは達成したと慰めた。
「確かにそうですね。父さんも、そのあたりには気を配っていたみたいですし。」
「あれ、そうだったっけ?………………………………ああっ、父さん!」
「うん……その問題を考えなくちゃね。父さんが今、どこにいて何をしているのか……どうして連絡をくれないのか。」
「うん……」
未だ消息がわからにカシウスの事を思い出し、エステルとヨシュアは俯いた。
「ここで、私達が出来ることはもう無さそうね。とりあえず、プリネさん達と合流してボースに戻って事件の報告をしておきましょう。先生の事を考えるのはそれからよ。」
その後王国軍兵士を見て、安心したプリネ達は後をリシャール達に任せた後エステル達のところに戻って来て合流し、エステル達はボース市に戻って行った。また、サエラブはいつの間にか姿を消していた。
こうして『定期船消失事件』はいくつかの謎を残して幕を閉じた…………
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第50話 | ||
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