使い魔のおしゃべり2 − かくも平凡な一日 −
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「ゲココ〜〜!(この粗忽者が〜〜!)」

「きゅいいいぃぃぃっっっ!!!?」

トリスティン学院に風韻竜の絶叫がこだまする。

 

「おや断末魔だ」

「カアカア(またイルクゥが翁に折檻されてんだろ)」

「しゃしゃー(もう少し学習すれば良いのに)」

学院の広場の一角でその声を聞きつけたのは人間とカラスとヘビ。

それぞれ学院の生徒に召喚された使い魔だ。

「……聞かなかった事にしよう」

「カアァ(そうだな)」

「しゃ〜〜〜(翁が怒ったときは遠くに用事を思いつくに限るわ)」

3人(?)は声のした方とは反対側に移動し始めた。

 

彼らが何故このような行動をとるのか?

それは3日前の事だった。

 

授業中に人間を呼び出した生徒の呪文が失敗して爆発。

ショックを受けた使い魔たちが大混乱に陥った。

その混乱の中でヘビがあわやカラスを飲み込もうとしてしまった。

それを電光石火の動きでヘビを叩き伏せカラスを救ったのが

翁−モンモランシーの使い魔のアマガエルなのだ。

さらに戸惑う他の使い魔を落着かせ、混乱の収束に寄与した。

 

この時人間―「あらゆる獣を操る神の右手ヴィンダールヴ」は

爆発に吹き飛ばされ頭部を強打して気絶していた。

意識を取り戻したのは魔法で教室を吹き飛ばした生徒が

教師に命じられた教室の片づけを終えてからだ。

片付の役に立たなかったと昼食は抜き。食堂で賄いを恵んでもらった。

最近お世話になりっぱなしなので手伝いでもしようかと考えている。

 

「しゃー……(何で私がカエルごときに……)」

その事を思い出して黄昏れるヘビ。

「そう気を落とすなって。

世の中には不条理なことはいくらでもあるさ」

そういってヘビの肩を叩いて慰める人間。

「しゃーしゃー(そう言われてもねえ。

 これまで餌にしてたカエルに叩き伏せられたなんていい恥よ)」

人間の慰めもヘビには効果が無いようだ。

「いや、爺はルーンの力抜きで

 タロー ― 秋田犬に勝てるからヘビじゃ無理だよ」

「カアカア(犬に勝てるアマガエルってなんだよ)」

言葉を重ねる人間に口を挟んだのはカラス。

「昔の両国の川開きの花火を知ってるって言ってたね。

 享保18(西暦1733)年に始まったから250年以上前かな」

「「しゃー、カアァー((それはアマガエルじゃないよ))」」

同時にツッコムヘビとカラス。

「うん。僕もカエルっぽい何かと思っている」

 

「貴方たち本人がいないと思って好き勝手言ってるわね?」

そこに翁(おきな)の主モンモランシーが立ちはだかる。

「あれ?モンモンだっけ?君、使い魔の言葉解ったっけ?」

「私は解らないわ。でもロビン(=翁)は解るのよ。

 そして使い魔は主と感覚共有できる。意味は解るわね?」

「……筒抜けですか。そうですか」

「命があったらまた会いましょう。それからモンモン言うな」

絶望に身を捩る使い魔達に言い放つとモンモランシーは去ってゆく。

 

その日、三人の生徒が使い魔の怪我の治療に秘薬を使う事となった。

そしてモンモランシーは少し懐が潤った。

 

あと、宝物庫から破壊の杖が盗難にあった。

加えて、急に退職した学院長秘書がロマリア人の若い男を恋人にしたという噂も立った。

しかし、どちらもルイズ達には関係の無い話である。

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口は災いの元
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