乱世を歩む武人〜第四話〜 |
〜詠サイド〜
政務の気晴らしにと散歩に出てきただけだったのだが今、とても珍しい光景を目にしている。
張遼
「そらそらそらーっ!」
徐栄
「ああもう・・・手数多すぎて攻撃できないんですけどっ!」
あの霞と男が既に20合以上の打ち合いをしているのだ。
英傑たる才能を持つものには女性が多いこの時代。男で霞相手に打ち合いになる人間はとても珍しい。
張遼
「アッハッハッハッハ!やるやんか兄ちゃん!楽しい、楽しいなーっ!」
徐栄
「全く・・・少しは加減してくださいって!」
張遼
「そんなん無理に決まっとるやんかー!こないにやるやつは久々や!どこまでやれるか・・・見せてみぃ!」
徐栄
「殺気!殺気出てますよ張遼さん!」
霞がで目をつけたと言う話だが彼女自身もここまで出来るとは思わなかったのだろう。
恋が相手では力の差が開きすぎているせいで、華雄では相手が猪すぎていつも数合程度の打ち合いで決着が着いてしまうのが彼女の常だった。
だから彼女にとって本当に久しぶりに打ち合いとなっている勝負なのだろう。それが滅多にいない男が相手というのもあってか彼女はとても嬉しそうだった。
華雄
「まさか霞相手にあそこまで持つとは・・・しかし時間の問題だろう。」
右で見ている華雄がそうつぶやく?
詠
「どうして?ボクには互角の勝負に見えるけど・・・」
華雄
「よく見てみろ。確かに奴は霞の攻撃をしのげているが攻撃に移れていない。このままいけば霞が押し切るさ」
なるほど・・・確かに見ていると霞ばかりが攻撃していて相手の男は反撃に移れず、その顔は焦りと苦悶が浮かんでいる。
しかし霞の速度ならばソレも仕方ないだろう。反撃を求めるのも酷というものだ。
左にいる恋はいる当初とかわらずぼーっと彼女たちの剣戟を見ている。反応がない辺り華雄と同じ意見なのだろう。
勝てないだろうとはいえあれだけ霞とやりあえる実力者だ。部隊の隊長格程度ならば何の問題もないわね・・・
そんなことを考えつつボクは成り行きを見ているのであった。
〜詠サイド out〜
張遼
「どうしたどうした!守ってばかりじゃ勝てるもんも勝てへんで!攻めてきてみぃ!」
徐栄
「そういうことは速度を緩めてからいってくださいっ!」
神速の二つ名に恥じることのない暴風のような連撃をかろうじてしのいではいるが・・・
徐栄
(しっかしこの人・・・読みづらいったらありゃしない!)
流石に完全に防ぎきるとまではいかず、すでに何度か攻撃がかすってしまっている。明日は多分ミミズ腫れで酷いことになっているだろう。
彼女は典型的な「戦いそのものに意義を見出す」武人だ。この手の人はより楽しく戦うために時折おかしな手を混ぜてくることが多い。
私の戦いは相手の最善手を読み対応することで敵を倒していく。
攻撃をしのいでいるというのも次に相手がしそうなことを先に読んでおきそこに武器を「おいておく」ことで防いでいるに過ぎない。
剣を選んでおいて正解だった。もし同じ長柄の武器を選んでいたらもっとあっさりやられていただろう。
そんなことを考える余裕がある程度にまでは攻撃を覚え始めてきた。
こちらとてただ黙って受けていたわけではない。彼女の連撃の流れはおおよそ把握したこともある。
徐栄
(一度距離を空けよう。このままだと押し切られる・・・!)
私は彼女の流れの一つである横薙ぎを縦に防がせてからの突きに合わせ刃の根元にある飾り・・・竜の角部分に狙いをつけて
徐栄
「ふっ!」
剣を押し出すように引っ掛けその反動をつかい距離を空けた。
張遼
「何や今の・・・狙ってやったんか?」
彼女もそんな手段を使ってくるとは思わなかったのだろう。驚いた顔をしている。
徐栄
「いえいえ・・・むちゃくちゃに振った一発がたまたまいい結果になっただけですよ。」
と苦笑いをしつつごまかす。彼女はまぁそうやろうなぁと軽く頷いた。流石にあんなことが狙ってできるとは考えなかったのだろう。
熱くなりすぎたな。そろそろ勝負を決めさせてもらおう。
徐栄
「さて・・・偶然とはいえ折角間があいたんです。こちらも攻撃に移りましょうかねっ!」
私は改めて剣を両手に持ち、前進する勢いとともに剣を下からすくい上げるように放つ。
張遼
「そんな見え見えの攻撃通用するかい!」
彼女は上段に構えて武器を振り下ろす。
徐栄
「ええ。でしょう・・・ね!」
こちらとしても防がれるのは想定内だ。武器同士の衝突の反動を生かし勢い良く回転しつつ横になぐような攻撃をする。
張遼
「ちぃ!」
かなり強めに打った分打ち合いの反動もあるのだろう。ギリギリのところで彼女は剣を防いだ。
十全だ。私はすぐさま後ろに構えてていた足を開き距離を少し開け勢い良く振りかぶる。
彼女も意図を察したのか武器を下段構え体勢を立て直す。
私が今立っているココ・・・それは彼女の武器と私の武器が最速で交わる絶妙な地点。
徐栄
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私が最速の一撃を振り下ろし
張遼
「でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!」
彼女が最速の一撃を振り上げる。
この勝負の明暗を分けたのはほかでもない
ーーーーーーーー彼女の「神速」
振り上げているはずの偃月刀は振り下ろしている私の剣の速度をはるかに凌駕しその勢いとともに私の剣を弾き飛ばす。
キィンと一際甲高く鳴り響く剣戟の音。
振り下ろしきった私の腕には既に剣はなく
私の眼前には偃月刀をもつ張遼さんの姿があった。
張遼
「いや〜危なかったわ!やっぱ強かったな徐栄!ウチの睨んだ通りや!」
バシバシと私の肩を叩きながら張遼さんは上機嫌に笑っている。
徐栄
「うまく行ったと思ったのですがね。流石は神速の名がとどろく張遼さんです。あの状況でなおあの速さ。お見事でした。」
あの場で振り下ろしたその剣は今の自分の最速の一撃、それを凌駕する速度で打ち返されたのだから実際恐ろしく速い。
張遼
「そーやろそーやろ。ウチの神速は伊達やないっちゅーことや。あんたもなかなかもんやったで!」
そんな感じで談笑をしていたら見ていた軍師の子がこちらに向かってきた。
???
「見させてもらったわよ。えーと・・・貴方名前は?」
徐栄
「はっ。私は徐栄と申します。」
賈駆
「そう。ボクの名前は賈駆。ここの筆頭軍師をやっているわ。それで徐栄、貴方はここに士官をしにきたのよね?」
徐栄
「ええ。一人旅をしてきたのですが、路銀が心もとなくなったということもあり一兵卒としてでも雇っていただこうと思いまして。」
賈駆
「そう、でも残念だけど徐栄。貴方を兵卒として雇うことはできないわ。・・・もったいなくて、ね」
徐栄
「と、いいますと?」
賈駆
「霞とあそこまで戦える人間を兵卒で使えるほどウチの人材は豊富じゃないわ。貴方には部隊の隊長格になってもらう。」
徐栄
「部隊長ですか・・・?生憎と私は部隊を率いたことはないのですが・・・」
賈駆
「え?ああそっか・・・今まで一人旅だって言ってたもんね・・・じゃあ誰かの副官として補助をしてもらえない?」
徐栄
「はい。それなら問題ないかと「ならコイツはウチがもらうで!」・・・張遼さん?」
これは予想外。そこまで気に入られたのか。
賈駆
「そうね。霞の所には副官もいないし、ちょうどいいわ。」
張遼
「そういうことや。よろしゅうな徐栄!」
ここまで来たら仕方ない。
本当はあまり気は進まないが・・・
徐栄
「はい。こちらこそよろしくおねがいしますね。張遼さん」
いい勉強になると思って諦めるか。
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コメント | ||
手数多すぎて攻撃できないんですけどっ!}⇒っ!」 口撃をしのいでいるというのも⇒攻撃 一度距離を開けよう。⇒空け 反動をつかい距離を開けた⇒空けた 距離を少し開け勢い良く⇒空け(黄金拍車) >>アルヤさん 予想されていた・・・だと・・・? 実際のところは結局霞くらいには勝てない程度の腕でしたが見捨てないでやってください。(RIN) なかなかの腕ですね。予想以上です。(アルヤ) |
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