真恋姫†夢想 弓史に一生 第二章 第一話 出立の挨拶と策謀
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〜聖side〜

 

「さて、出てきたは良いけど…まずはどこに向かおうかな…。」

 

「「考えてなかったんですか(のか)…。」」

 

「うっ!! …まっ…まぁ、適当に行こうかなって思ってて…。どうせ一周しちゃうんだし…。」

 

「はぁ〜…。 聖様…そんなんじゃあ、行き先真っ暗もいいとこですよ…。もうちょっと計画的に行きましょうよ〜…。第一、聖様は危機感と言うものが…。(くどくど)」

 

「あ〜あ…芽衣の説教が始まっちゃったよ…。 こりゃ長くなるね…。」

 

「奏…。そんなこと言ってないで、とにかく止めてくれないか?」

 

「そんなこと言われてもねぇ…。」

 

「そんな〜…。」

 

「…ですから、もっと君主としての…って聞いてらっしゃいますか!?聖様!!」

 

「はっ…はい!!」

 

「まったく、だから危機感がないと…。」

 

「もう良いから、もう分かったから…ね!? とにかく今後のことを先に話そう!!」

 

「…まぁ〜そのほうが先決ですね…。」

 

「ほっ…。」

 

「で、行き先ですが、まずは広陵の城に行った方が良いと、私は思うのです〜。」

 

「それはまたどうして??」

 

「聖様、あなた様は任命された県令なのですよ?? その県令が、旅に出るから村を他の人に任せたと言うことを伝えなくて良いんですか??」

 

「えっ!? 使者は出したんじゃないの?」

 

「こういうのは自分で行くものですよ…。」

 

「…まぁそれもそうか…。 じゃあまずは広陵に向かおうか…。」

 

「お頭…。 広陵に行って、お頭たちが挨拶しに行ってる間に、あたいはちょっと故郷に行ってきて良いかい?」

 

「そうか、そう言えば奏はその辺出身だったね。良いよ、行ってきな!! 村の人たちに元気でやってることを伝えてあげて。」

 

「ありがとお頭。恩にきるよ。」

 

「よしっ、じゃあまずは広陵に行きますか!!」

 

「「はいっ!!」」

 

一向は広陵を目指して歩き出す。

 

聖たちが治めてた村と広陵とは大体五十里(約20キロ)程だったので、午前に出た聖たちは、日が真上にきたぐらいの所で広陵の町に到着した。

 

 

道中で、奏は故郷に向かうために別れ、明日の同じく日が真上に来る頃に、広陵の城門集合となっていた。

 

広陵の町は大きな塀で囲まれており、見た感じは日本の城に似ている気がする。

 

俺たちはまず、門番たちに来訪の目的と拝謁を願い出た。

 

門番たちは、俺が徳種と言うと、「あなたがあの有名な天の御使い様ですか。噂はかねがね聞いております。しばらくお待ちください、今使者を立てて張超様への謁見許可をもらってきますので。それまではすいませんがここでお待ちください。」と言って拱手して下がっていった。

 

しょうがないので、門付近からこの町を見てみた。

 

芽衣は別の門兵と話しこんでいた。

 

…俺の知っている知識では、部下が優秀なはず…。

 

なので、町はそこそこ発展してるかと思いきや、町の大通りには人が少なく、いる人には活気がない様子…。

 

商人もそれほど多くはない…。

 

とてもじゃないが、発展している、豊かであるとは言えない状態となっている。

 

たまたま、俺が見ている場所がスラム街なだけであろうか…それとも…。

 

「どう致しましたか御使い様? あぁ〜この光景ですか…。廃れたものですよね…。 数年前まではこの町は、ここ広陵郡で一番発展している町だったのに…。それこそ、人の往来が絶えることの無い賑やかな町…。」

 

先ほどの男とは別の門番の男が、そのように語る。

 

その男は、40過ぎくらいの渋いダンディーなおじさまって感じの人だった。しかし、その顔はなんとも悲哀に満ちた顔をしている。

 

「なぁ…一体何があったんだ?」

 

「…ここだけの話、張超様の部下だった滅洪殿が亡くなってからこのような調子なのです…。 張超様は、内政など全てを任せていた中核を失ったため政事はボロボロ…。民はそのしわ寄せを受けているのです。」

 

「他にも文官はいたんだろう? そいつらでは駄目だったのか?」

 

「…実は、文官はあの城には居りません…。滅洪殿が全てお一人でこなしていたのです…。」

 

「そりゃ…滅洪さんは凄い人だね…。張超殿はこの町の状況をこれからどうしようと思っているんだろう?」

 

「さぁ…噂では、お手上げだから放棄して、別の城に行く準備をしていると、かつて聞いたことがありますが…。」

 

「もし本当にそうなら、どうしようもねぇ屑だな…。」

 

「ははは…御使い様ははっきりとものを仰る方だ…。 もう少し早く…この部隊に入る前に、あなたのような主君に会いたかったです…。」

 

「…今からでも遅くはないんだぜ?」

 

「…そのお言葉は嬉しいですが、私も一度は主君に忠誠を誓った身…。そう簡単にはいきませんよ…。」

 

そう言うと、男は苦笑いを浮かべるのだった…。

 

この君主にしてこの臣下ありとは…なんとも悲しいものだな…。

 

すると、城から一人の門兵が帰ってきて、俺の傍に寄る。

 

 

「御使い様、拝謁の許可が出ました。どうぞこちらです。」

 

「ありがとう。 芽衣!! ほらいくよ!!」

 

そう言って俺は歩き出した。後ろではあわてた芽衣が、足を引っ掛けて思いっきり転んでいたけど…大丈夫かな?? 追いついたら診てやるか…。

 

 

 

広陵という町の全ての中心。それがこの館なのだが…。

 

 

「ずいぶんとまぁ、大きくて装飾の綺麗なこと…。」

 

「ほぇ〜…。町の規模がこのぐらいになると館も大きいですね〜…。」

 

「だな…。」

 

俺たちはそんなことを呟いていた。

 

もしこの時代にtwitterがあったなら、「広陵の館なう 大きさ半端ねぇww」とかツイートしてただろう…。

 

俺たちは武器類を回収された後、謁見の間に通された。

 

玉座には、少し小太りの背の小さな男。張超本人が、そして、その脇には武官らしき男たちが並んでいた。

 

俺たちは膝をつけ、恭しく拱手した。

 

「お初にお目にかかります。県令をさせていただいております。徳種聖と申します。」

 

「私は、その補佐をさせていただいている徐元直と申します。」

 

「そなたたちか? わしに謁見をしに参ったのは?」

 

「はい。この度、私共は少しの間旅に出ることになり、その間、私の仲間が県令の職を受け継いでやってくれております。今回はその報告に参った次第でございます。」

 

「旅とな…。『逃げ出す』の間違いではないのか?」

 

「…どういう意味でございましょう?」

 

「そちは確か、天の御使いとか呼ばれておるそうじゃな。」

 

「恐れ多くも…そう呼ばれている事実はございます。」

 

「そちはその重圧と、黄巾族に襲われる恐怖とにおびえておるのじゃろう??」

 

「…は??」

 

「そう秘密にしようとせずとも良いぞ。わしにもその気持ちは分かる。逃げたいときは好きに逃げればよい。」

 

「…は…はぁ…。」

 

「田舎で貧しくとも、隠遁生活を送りたいその気持ち。わしは良く分かっておる。無論すぐにでもそうしたいのじゃからな…。」

 

「しかし、それでは残った民たちはどうなされるのでございますか?」

 

「なに、皆たくましい者たちじゃろうて。きっと頑張って暮らすじゃろうよ。それに、すぐに中央から別の太守が来るではないか。」

 

自分の事しか考えてないのか…。残された民はどうでも良いって言うのか…。

 

なんて屑だ!! こんなのが太守だと!? ふざけんな…。

 

これじゃあ、頑張ってるやつらが…太守を信じているやつらが…報われなさ過ぎる…。

 

気付けば、無意識に握りこぶしを作り、その手から血が出るほどの力で握っていた。

 

「おっと、少々話が長くなってしまったかの。とにかく、事情は分かった。行ってよいぞ。」

 

「「はっ。」」

 

俺と芽衣は拝謁を終え、宿に戻った。

 

実は、この後いろいろあったのだが…。それは別の機会に…。

 

 

翌日、昼前に門前に行き、奏との合流を待つ。

 

その俺たちに、昨日のおっさんが話しかけてきた。

 

 

「もう行くんですね。なんともお早い…。」

 

「あぁ、あくまで拝謁の為に寄ったにすぎないからね…。」

 

「実は、あなた様方に使ってもらいたいものがございます。」

 

「なんでしょうか??」

 

「これです。」

 

そう言うと、三匹の馬を連れてきた。

 

燃えるような毛色の赤い馬、透き通るように白い馬、漆黒の如き黒い馬。

 

三匹とも優秀な馬に見える。

 

「是非受け取っていただけませんか。あなた様方の旅の手向けと、この馬たちのためにもお願いします。」

 

「そうは言われても…そんなに急に受け取ることは出来ないよ…。」

 

「…この馬たちは、実はもう少ししたら殺されます。というのも、張超様がお乗りになった時、三匹とも振り落としてしまったのです…。 そのことを張超様は怒り、この馬たちの処刑を決めたのです。」

 

「ひどい…。」

 

「ですから御使い様。是非もらってやってください…。上には上手くやっておきます。」

 

「…馬の命一つでさえ守れねば、天下に安寧をもたらすことなど出来ないか…。分かった。ありがたく受け取るよ。」

 

「そうしてくれると、こいつらも喜びます。」

 

「「「ヒヒ〜ン、ブルブル。」」」

 

まるで喜び合うかのように、三匹はじゃれついていた…。

 

そして、しばらくすると奏がやってきた。

 

事情を説明し馬に乗る。

 

 

「何から何まで悪かったね…。ありがとう。」

 

「良いってことです。」

 

「最後に一言良いか?」

 

「なんでしょう?」

 

「悪いがもう少し…この町の門番をやってもらっていて良いか? もし、この町に何があろうとも…。」

 

「…私の家族のいる町です…。 そう簡単に見捨てたりはしませんよ…。」

 

「そうか…。いつか…俺が一勢力として戦乱の世を駆ける時…その時はこの町を俺が救う…。 この町をあんたが言っていたみたいな昔の町に戻してやる!! …だから…その時は力になってくれるか?」

 

「…先ほども言いましたが、主君を裏切るのはゴメンです…。 ただ…もし、この城の城主が消え、この町を治めるものがいなくなったときは…その時は協力すると誓います…。」

 

「それで結構だよ…。お前さんみたいなやつと出会えただけでも、この旅に意味はあったわけだ…。」

 

「御使い様は不思議な方だ…。身分に差を感じさせず、誰とでも平等に接する…。そして嘘のない芯のある言葉が、不思議と人の心の垣根を消していく…。まさに前漢の立役者、劉邦のように…。やはり、御使いという名は伊達ではないですね…。」

 

「そんなに言われると恥ずかしいな…。」

 

門番の男の言葉がむず痒く感じ、照れくささに頭をかきながら、俺は苦笑した。

 

「じゃあまたいつか。この地に安寧をもたらしにくるその日まで。」

 

「はい。御使い様、ご武運を。」

 

「そっちもな。」

 

馬の腹を蹴り、三人は広陵の町を出た。

 

思わぬ形で移動の足を得た俺たちは、一路、荊州は江陵に向かうのだった。

 

 

〜××side〜

 

「あぁ〜つまんな〜い!! 大体、机に向かって仕事なんて私の柄じゃないのよ!!」

 

「そんなこと言ってないで、少しは手を動かして!! はぁ〜まったく…あなたはすぐそうやって…飽きっぽいんだから…。」

 

「だって〜。」

 

「はいはい、口を動かしてる暇があったら手を動かして頂戴。」

 

「ぶぅ〜。冥琳の意地悪…。」

 

冥琳と呼ばれた褐色の肌、黒髪に聡明そうな顔立ちのその女性は、友の言葉にふふふっとかすかに笑った。

 

そして、持っていた筆を置き、「少し休憩でもする?」と褐色の肌に桃色の長い髪をした友に尋ねるのだった。

 

 

「それにしても、母さまはどこに行ったのよ?」

 

「文台様は今日は一人でお出かけになると言っておったぞ。雪蓮、お前は知らないのか?」

 

「母さまが一人で…そうか、じゃああそこね…。」

 

「どこだ?」

 

「父さまの墓参りに行ったのよ、きっと。ここのところ忙しくて行けてなかったから…。」

 

「なるほどな…。」

 

しばらく沈黙が流れる。

 

「ねぇ冥琳。なんだかもうすぐ、面白そうなことが起こりそうよ。」

 

「それはいつもの勘か?」

 

「そう、勘♪」

 

「やれやれ、でもあなたの勘は当たるから、その面白いこととやらは起こるのでしょうね…。」

 

「一体何が起こるのかな?」

 

「さぁ? 私は分からないわよ。」

 

「あぁ〜今から楽しみだな〜。」

 

「楽しむ前に、この竹簡を片付けてもらいましょうか。」

 

「それは、冥琳の仕事でしょ。私はちょっと出てくるわ♪」

 

「ちょっと、雪蓮!! …まったくあの子は…。」

 

扉を出て、町を見渡しながら廊下を歩いていく。

 

「ふふふっ。何が私を楽しませてくれるのかな!? あぁ〜待ち遠しいわ。」

 

そう言って、少女は町のほうへ消えていった。

 

説明
どうも、作者のkikkomanです。

第一章の出来は、作者的には満足してます。ちゃんと基盤となるところは書けてるのではないでしょうか。まぁ、仕様により隠してるところはありますが…。

第二章もオリキャラたくさん、ハーレム展開でお送りいたします!!皆さんお楽しみに…。
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コメント
おつかれさまです。やっと追い付きました。お次は呉でしょうか?孫堅さんが生きているとなると、雪蓮さん以上のじゃじゃ馬姫何でしょうか?次回も楽しみに待ってます。(epiyon)
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真恋姫†夢想 恋愛 主人公最強 ハーレム オリ主 オリキャラ多数 ご都合主義 R15 

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