残念美人な幼馴染が勇者として召喚された 第2話
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「んで?飯食いに行くっていっても、どうするんだ?日本円は使えないだろうし、俺達ここの金持ってないんだぜ?」

 

 俺が尋ねると、凛音は遠くに見える巨大な建物を指さした。

 

「どうするって、あそこに食べに行くに決まってるじゃん。」

 

(・・・・・・そうだ、コイツはこういうやつだったよ)

 

 そもそも、コイツに判断を委ねた時点で失敗だったのだ。ここは、多少強引にでも、近くの定食屋か酒場を探して入るべきだった。金は、そこらのゴロツキをシメるか、最悪食い逃げでもするべきだったんだ。

 

―――悪党じゃないか

 

(悪党とかいう声がどこからか聴こえた気がするけど、それは間違いだ。俺は、逆にこの国の事を心配して言っている。今俺が考えた事柄こそが、一番被害が少なく、穏便にすませる方法だったと、確信を持って言える)

 

 何故なら・・・

 

「だって、あそこの主が私達を呼んだんだろ?私達を客としてもてなすのが礼儀だと思うが?」

 

 凛音が指さしている、小高い丘の上に建っている建物は・・・どう見ても王宮なのだから。

 

 

☆☆☆

 

 

 『残念美人』というのが、天上凛音の一番有名な二つ名だ。その知名度は凄まじく、外国のスラム街に住んでいる子供ですら知っているとかいないとか。

 

 俺の名前は、((大地龍騎|だいちりゅうき))。この幼馴染とセットで『天地コンビ』とか不本意な渾名を付けられている。この幼馴染が無茶をするたびに巻き込まれ、そのせいで一般人の俺の知名度も((鰻登り|うなぎのぼり))。最近では、凛音に個人的な恨みを持つ近所のヤクザや不良とかと戦う日々が続いていた。

 

 大体、こいつの巻き起こす事件は規模が大きすぎるんだよ。俺達二人で外国に旅行に行けば大統領の誘拐事件に巻き込まれそれを単独で解決し、世界征服を企む謎の組織を壊滅し、細菌兵器による無差別テロを未然に防ぐなど、一体何処の映画の主人公だよと言いたくなる程の活躍。

 

 大統領を救った事件では、その人に大変気に入られ、大統領自ら感謝状を送るという異例の自体になった。更に、その事件をほぼ完全に再現したノンフィクションの映画も公開され、大ヒットになった(何と、大統領本人が出演していた)。俺達にも、キャストとしてオファーが来ていたのだが、面倒臭いという理由で断った。

 

 おまけに、手入れもしていないのに枝毛の一つも無い、腰まで伸びた艷やかな黒髪、そこらの女優も裸足で逃げ出す程に人間離れした美貌、有名大学の教授を唸らせる程の頭脳、オリンピック優勝選手を軽々負かす程の運動能力とくれば、人気が出ない筈がない。コイツは、中学生の時点で、既に世界で一番有名な人間と言っても過言では無かった。

 

 ・・・そこまで人気なのに、何で二つ名が『残念美人』やら『世界で一番勿体ない女性』やら、『飽き女』やら何だって思うだろ?まぁ、焦るな。ちゃんと理由がある。

 

 そもそも、コイツは生まれた時から異常だった。大人が投げ出すような難しい事柄をいとも簡単にクリアする。・・・だが、天災(誤字じゃない)には欠陥が付きものだ。

 

 コイツの欠点は、飽きやすいこと。

 

 何をやっても長続きしない。例えば、学校のテストあるだろ?あれも、半分程度やったところで飽きて止めてしまう。だから、頭脳は世界最高レベルなのに何時も50点代をウロチョロしてる。

 

 例えば運動。マラソンをしてても、体力にはまだまだ余裕が有るのに、飽きて止めてしまう。バスケなどでも同じで、チームメイトが困ろうともお構いなしだ。

 

 例えば娯楽。漫画も、半分読んだら飽きてしまう。ゲームも半分やったら飽きてしまう。友だちと遊んでいても、飽きた時点で止めてしまう。当然、俺以外の友達なんていない。

 

 ・・・そんな人間とお近づきになりたいと思う人間が何処にいる?最初は英雄を扱うように騒ぎ立てていたメディアも、凛音のこの性格を知った瞬間、手のひらを返しやがった。あのダサい二つ名を考えたのも全部アイツらだしな。

 

 でも、俺がそんなコイツから離れられないのは、やっぱり惚れたほうが負けってことなんだろうな。・・・昔、コイツに助けられた事がある。その時のコイツが、まるでテレビのヒーローのように見えたんだ。何時か俺もコイツみたいになりたいと憧れて、何時しかその心は恋心へと変わっていった。

 

 可笑しいと思うかい?でも、理屈じゃないんだよこういうのは。

 

 後、もう一つ離れられない理由がある。

 

 ・・・不安なんだよ。コイツが何時か、『生きるのに飽きた』と言って突然俺の前から消えてしまいそうで怖いんだ。だから、何時でも傍にいて、コイツが人生に飽きないように盛り上げる。

 だが、コイツがやる気を出すと、周りが被害を受けるんだよな。だから俺は、せめてコイツの起こす被害が酷くならないように抑えるのさ。

 

☆☆☆

 

 

(・・・あぁ、やっぱり駄目だったよ。俺程度の力でコイツを押さえつけるとか不可能だから)

 

 俺は、早くも諦めの境地に達していた。城下町を一望出来る小高い丘に悠然とそびえ立っていた白亜の城。まるで御伽噺に出てくる幻想の城のような美しさを誇っていたその城は、今や魔王に攻め込まれたかのようにズタボロになっている。

 

 原因はホラ、言わなくても分かるだろ?

 

「で、ここの主はどこにいるの?誘拐じみた方法で連れてきたんだから、挨拶の一つでもするのが礼儀じゃない?」

 

「くそ・・・何が勇者だ・・・。これじゃまるで魔王じゃねぇか・・・!」

 

 既に、意識を保っているのは一人だけ。残りの兵士は後ろで気絶している。俺たちが通ってきた所は、戦闘(虐殺?)の余波でボロボロだ。皆は知ってるか?城の壁って、人が殴ると粉々に破壊されるんだぜ(普通の人間には出来ません)?

 

「そもそも、私達がお前たちの言うことを聞くメリットはあるの?」

 

「な、何を言ってやがる!勇者なんだから当たり前・・・!」

 

「話にならない。邪魔だから退いて。」

 

 最後まで話させても貰えずに、そいつは壁にめり込んだ。

 

(ま、今のは自業自得だよな)

 

 勇者なんだから自分たちを救うのが当たり前とか、御伽噺の読みすぎだろ。頭沸いてるんじゃねぇか?

 

 邪魔者を排除した俺たちはそのまま進む。凛音の無双状態を見ていた他の兵士達は既に戦意を失っており、武器を捨てて逃げ出した奴までいる。

 

(な、情けねぇなオイ・・・。近所のヤクザのほうが根性あったぞ・・・)

 

 どうやら、ここの兵士達は駄目駄目っぽい。

 

「此処っぽいね。如何にも王様の部屋って感じ。」

 

 暫く歩いていると、マジで巨大な扉を発見した。

 

「すげーなコレ。一体何メートルあるんだ・・・。」

 

 見上げるほど大きな扉なんて始めて見たぞ。

 

「じゃ、開けるよ。」

 

「・・・ホンッとにお前は緊張とかしないのな!」

 

 ここにいるのは一国の主だぞ!?もう少し緊張とかしないのかな(ここまで暴れてきたのを止めなかった人間の言うセリフじゃ有りません)!?

 

「邪魔するよ。」

 

 凛音が入ってしまったので、俺も中に入る。豪華な調度品が幾つも並んでいて、日本円に換算すれば幾らくらいするのかを考えてしまう(此処に来るまでに壊した物全て合わせると、既に10億円位)。

 

「お前が私達を誘拐した犯人か。」

 

 凛音の視線の先には・・・王冠を頭に乗せた5、6歳位の少女が震えていた。

 

「うわ・・・狼に睨まれた羊みたい・・・・・・。」

 

 もしくは、蛇に睨まれた蛙か?でも、この少女の持つ雰囲気が羊っぽい。哀れな生贄を前にして、容赦ない攻撃が始まったのだった。

 

説明
口癖は「飽きた。」熱しやすく飽きやすい幼馴染と俺が、異世界に勇者として召喚された。・・・俺はオマケだったらしいが。・・・だけどさぁ、この『残念美人』を制御出来ると思ってる訳?最悪の場合、コイツに色々されて世界滅ぶんじゃないの?しょうがない、俺が手綱を握ってやるかね。
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ファンタジー バトル  勇者 幼馴染 最強 残念美人 異世界 飽きっぽい 魔法 

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