化物になっちまったようです act5
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〜side??〜

 

 

 

 

 

 

 

人は皆、自分と違うものを恐れる。

 

爪を噛む癖、貧乏揺すりをしてしまう癖、目をキョロキョロさせる癖、イライラしてついつい叫んでしまう癖。

 

これら、些細な一般との違いさえ、他人との間に軋轢を生みかねない。

だから、人とかなり違う我々は、余計隠し通さねばならない。

 

これが、こちらの僕達の父の口癖だった。

 

まあ、正論なのだろう。

 

人の歴史を見れば、それは一目瞭然。

ヨーロッパの魔女狩りネタなんかは代表例。

エクソシスト、陰陽師などの「魔を討つ人々」だって、つまりは人間以外の超自然的存在を殺すもの。

 

常に、それらはヒーローの様に扱われてきた。

 

 

 

何故気付かないのだろう?

それら、「魔を殺す者」もまた、超自然的存在の力を持つ点で、「魔」と同等だという事に。

 

気付きたくない?

それとも、自分達の役に立ってくれれば崇め、害を為せば排斥する?

 

可笑しい。

可笑しくてたまらない。

 

あまりの人間の身勝手さに、笑いが込み上げてタマラナイ。

 

いつか、こんなくだらない認識を潰せたら。

 

そんな変な事をただ何となく考える、今日この頃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お待たせ……いや、誰も待ってないか。

ついつい、こんな風にいないはずの誰かに喋るような癖がついている。誰のせい?僕達のせいだ。

 

僕の名前は、((久我峰|くがみね)) ((獅貴|しき))。

聖祥大付属小学校3年生。成績はあまり良くないし、授業でもよく寝かけるごく普通の少年だ。

 

そして、これが一番重要なんだが……。

 

 

 

転生者、だ。

 

 

 

前世にて、人生があまりにもつまらなくて酷いもんだったから自殺したら、こんな事になっていた。

 

まったく、訳が解らない。

 

「『でも今はまだまだ楽しめてんだろ?良かったじゃねぇか』」

 

僕の口から出た言葉に、まあね、と返す。

 

おっと、今僕がどこぞの嘘吐き野郎に見えた?

残念、少なくとも容姿はそれっぽい、だけど事情がだいぶ違うんだ。……下手したら、もっとめんどくさいかも。

 

「……あのさ、通学路とはいえ人はまだいるんだよ?念話で喋ってくれないかな、ロキ」

 

「『だけどよ、お前さんは学校とやらについたら念話すらマトモにしてくれねぇじゃねぇか。退屈でたまらねぇんだぜ、あれ』」

 

端から見れば、独り言をぶつぶつ呟く、暗めの小学生に見えるんだろうね。

 

 

 

さて、この状況を説明する為には、少々「久我峰家」について説明しなくてはならない。

 

いきなり信じられない事を話すけど、まあ落ち着いて聞いて欲しい……って、誰に話してるんだろ?まあ良いか。

 

 

 

久我峰家を含む、幾つかの血筋の祖先は「人間じゃないもの」との混血なのだ。

 

 

 

「血」が薄ければ普通の人間として生きていける。

で、「血」が濃ければ……特別な力、魔力をその身に宿す。

 

種類は色々だよ……血を奪い、身体能力を増すものもあれば、やたらと死ににくかったり、遠くの物を動かせたりする。

 

だけど。

「血」が濃ければ濃いほど、人間としての生活を続けることは難しい。……いずれ、自我を失って、ただの化物になる。

 

 

「血」が比較的濃かった父も……遅かれ早かれ自分が人間でいられなくなることを本能的に悟り、3年前、自らの命を断った。

 

 

僕達もまた……「血」はかなり濃い方だ。

だからもう、軽く力を扱えたりする。

 

んだけど、僕達は更に例外だった。

普通、「人間としての自分」がその内「化物としての自分」に呑まれる、といったイメージで、僕等の「血」の因果は説明される。

 

でも僕達の場合。

 

僕、という「人間としての自分」と、他の「化物としての自分」が、結構はっきり別れちゃっているのだ。

 

えっと、要するに、僕が多重人格で、僕、という「人間要素で出来た人格」と、「化物要素で出来た人格」で別れているって事。

 

だから、通例に比べ僕は化物に意識を奪われにくいのだ。……まあ逆に言えば、同じ様な感じの「血」の濃さの奴に比べ、力を使いにくいって事だけど。

 

 

 

さて、これで僕達のさっきのあれも説明出来るだろう。

 

さっき僕の口を勝手に使って喋ったのが、ロキ。

北欧神話の悪戯好きで気まぐれな神の名と同名の、僕の化物人格だ。

 

こいつはとにかく、僕の体を動かしたがる。四肢とかは全力で拒否拒絶するのだが、口とかはたまに使われてしまう。

だから、独り言を喋ってる事になっちゃう訳だ。

 

「しょうがないだろ?学校じゃあの子もいるんだし……」

 

「『ああ、あの女か……俺達の同類とは程遠い、ただの一般人のようだが?』」

 

「だけど魔力量がとんでもないのは知ってるだろ?」

 

相手が僕の口を使っちゃってる以上、独り言に見られてしまうのはしょうがないので、僕も口から言葉を紡ぐ。……まあ、おかげで退屈することはないんだけど。

 

「『まぁな。月村のとこの野郎といい、良い具合におかしな連中だぜ、あの家族はよ』」

 

「君におかしな、なんて言われちゃうとはね……とと、学校到着、か」

 

なかなかに立派な校門をくぐる。

 

(それじゃ、大人しくしといてよ、頼むから。ぐっすり寝たいし)

 

(『へいへい。そーさせてもらいますよ』)

 

自分の教室へ入り、机に突っ伏す。

 

 

 

 

 

「おはよう、獅貴君」

 

 

 

 

 

可愛らしい声がかけられた。

絶妙なタイミングで声をかけてくれるね。これじゃ眠れない。

 

 

 

「おはよう、なのは」

 

 

 

目の前にはニコニコ笑う、茶髪の美少女。

その首には、紐をつけられた、綺麗に輝く赤い宝玉がかけられている。

 

高町なのは。

 

 

 

 

 

もう、お分かりだろうね。

 

僕は、リリカルなのはの世界に転生してしまったようだ。

 

 

 

 

 

ちなみに、原作はもう始まっている。なのはが赤い宝玉……レイジングハートを持ってるし間違い無い。

後最近、樹がかなりデカくなるイベントも確認した。

原作介入……したいけどなぁ……して原作ぶち壊してみたいけど……。

生憎、僕は化物だしね……戦ってる間は特に。この優しい子の隣に立って戦うのは無理かも。

 

 

 

「おはよー、2人共」

 

「おはよう、獅貴君、なのはちゃん」

 

 

 

おお、来た来た。

 

「おはようなの、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

アリサ・バニングス。

月村すずか。

 

これで美少女3人組の集結完了である。

原作でも、日常の象徴とされる2人だ。

 

……いやまあ……すずか、というか月村家の方はなぁ……「血」の関連で、非日常のお付き合いをさせてもらってるけど。

 

「おはよう、すずか、バーニング」

 

「バニングス、よ!いい加減覚えなさいよ!」

 

いやあ、流石金髪ツンデレ、清々しいまでに反応してくれるよね。退屈しないよ、ほんと。

 

「ごめんごめん。今日も調子良いね、何か良いことあった?」

 

「あんたまず自分の顔見なさい。それからあたしに殴られなさい」

 

「おお、怖い怖い」

 

 

 

と、まあこんな調子で。

 

今日も、平穏です。

 

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非日常の世界って良いよねbyとある転生者
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