たとえ、世界を滅ぼしても 〜第4次聖杯戦争物語〜 英霊混戦(狂気咆哮)
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驕り等、ないと思っていた。

 

その考えこそが、驕りなのだと今更知った。

 

その結果がコレならば、ああそれはなんという報いだろう。

 

故に今は耐えねばならぬ、それが先へと繋がるならばしょうがない。

 

――――――――――されど、されど、この身は嘆かずにはいられない。

 

 

どうして、【私】は貴方を守る事すら、赦されないのだ。

 

 

*************************************************

 

 

僅かな魔力を使って戦場を監視している蟲から伝わってくる視界に、アーチャーが撤退したのを確認して、雁夜は喜びの声を上げずにはいられなかった。

 

「やった…!アイツの、時臣のサーヴァントを退けたぞ!俺のバーサーカーが…!」

 

(アイツは今頃あの澄ました面を歪めて悔しがっているだろう、だがこれだけじゃ済ませない。

あの子を、桜ちゃんを苦しめた分だけの報いは受けてもらうぞ時臣!そして必ず後悔させてやる!!)

ぐっ、と麻痺していない右手を握り締めると、これからの事を考えてほくそ笑む。

その表情は少し暗い歓びに染まっていたが、それでも雁夜は戦場に目を向けて思考を巡らせる。

 

(……セイバーやランサーとわざわざバーサーカーを当てる必要は無いだろうな。

よく分からないがあのライダーもちょっかいを出してきただけの様だし…奴らは勝手に潰しあっていればいい。

この【指輪】のおかげで必要以上に魔力を使わないで済んでるんだ、充分な情報も手に入ったしここは退こう………)

『もういいぞ、戻ってこいバーサーカー、そいつらまで相手にする必要はない。』

 

そう結論を出すと、単純な命令をパスを通してバーサーカーへ伝える。

完全には分からないのだが、なんとなく了承したような意思を感じると、雁夜は下水道を移動しようと歩み出す………が。

 

『――――■r■r■』

「……っ?」

 

雁夜の頭の中で、何か、【ナニカ】を呟いたような声が

パスを通して、今の今まであまり感じた事の無い思念が、バーサーカーの声が聞こえて、雁夜はその場に足を止めた。

 

 

『バーサーカー…?おい、どうした?』

 

 

ふと感じたのは嫌な予感。

思わずパスを通して語りかけるが、その声に返事が返る事は無い。

その、嵐の前兆のような、悍ましい程の静けさが、雁夜の不安を煽り立てる。

 

急いで監視させている蟲を通じて戦場を視れば、バーサーカーはセイバーを見てその動きを止めていた。

その姿に、雁夜は自らのサーヴァントが、【何の】クラスだったかを((やっと思い出した|・・・・・・・・))。

 

そう、彼の英霊は【((バーサーカー|狂戦士))】。

今の今までその素振りがなかったからこそ、間桐雁夜は失念していた。

何がきっかけで【暴走する】なんて、そんなの分かってもいなかったのだという事に…!

 

『バーサーカー!?止めろ戻れ!バーサーカー…!』

 

必死にパスで声をかけるが、時既に遅し。

バーサーカーの姿は一気にセイバーへ駆け出していく、それと同時に、雁夜の頭の中に凄まじい【声】が響き渡った。

 

『■■■■■■■■■■■■■■■a■■■■■■■■■■■■■e■■■■■■■■r■■■■■■■■■■■■■■a■■■■■■■■■■■■■■■s■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■e■■■■■■■■■■■■■■e■■■■■■■■■■■■■■■■■a■■■■■■■■■■■■■■■■■■■r■■■■■■!!!!!』

「っがあああああああああああああああ!?」

 

ただの声ではなく、狂ったサーヴァントの狂った思考が雁夜の中へと流れ込む。

たかが【声】等と馬鹿には出来ない、それは確かに聞いた者の精神を破壊しかねない凶悪な意思だ。

それは怨嗟の声。

それは憎悪の声。

それは狂気の声。

真っ当な存在では、まともに耐えようとすれば精神崩壊を引き起こしかねない程の憎悪が雁夜を襲う。

パスを閉じればいいのは分かるのに、バーサーカーはそれを許そうとしない、むしろソレを通して魔力を雁夜から奪い取っていくのだ。

それを元に、更に事態は悪化を辿っていく。

 

「っあぅ!?ぎ、あが、うがぁあああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

バーサーカーが暴走し、その精神汚染レベルの意志が流れ込むと同時に、想像を絶する苦痛が雁夜を襲った……指輪の魔力では足りなくなってしまった消費量に、体内の刻印虫が目を覚まし、雁夜の内を食荒らしだしたのだ。

 

蟲が体の内側からバーサーカーへ魔力を供給する為に雁夜を食い荒らしていく。

血を、肉を、内臓を、骨を、神経を、ありとあらゆる器官を食い散らかして、雁夜を内から壊していく――――

 

「止めろぉぉぉぉ!!!!ぎぁ!あがぁっ!止め…!いぅ、ぐ!ああ!っづうぁああああああああ!!!!!!!!!!!」

 

暗い下水道に雁夜の悲鳴が響き渡る。

令呪を使おうにも、その頭に響く怨嗟の声が精神が集中させるのを邪魔をする。

何度も何度もバーサーカーに戻れと命令を叫びながら、それが無駄になりながらも必死に呼びかける。

肉体の激痛と、精神の激痛が雁夜を苛み苦しめる、その中でただ訳も分からなくなりそうな苦しみの中で、雁夜は悲鳴を上げ続けた。

 

『苦しい、痛い、蟲が、止めろ戻れ!バーサーカー!止めろ!止めろ!止めろ!バーサーカー!!戻れ!戻れ!戻れ、戻れ!止めろ!止めてくれ!止めてくれ!ぁああ痛い痛い痛い嫌だ!嫌だ!嫌だ!痛い!!!止めろ痛い!食われ、食われる!痛い痛い痛い!止めろ!止めて!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だああ!!!!!痛い痛い止めろ!嫌だ苦しい!!嫌だ!!痛い痛い痛い止めろ!止めて!止めてくれぇぇ!!バーサーカーぁぁぁぁ!!』

 

 

その【魂の悲鳴】を聞き届ける者はいない、その絶望を止められる者はいない。

止められる筈のサーヴァントが暴走した以上、この場へ間桐雁夜に差し伸べられる【救い】等は有り得ない。

 

 

…………………そう、この場にはいない、【たった1人】を除いては。

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<SIDE/セイバー>

 

倉庫街での死闘は、ここにきて新たな局面を見せていた。

アーチャーと戦闘を終えたバーサーカーが、セイバーに襲い掛かったのである。

バーサーカーはその手に持った得物をセイバーに叩きつける。

勿論まともに喰らうようなセイバーではない、不可視の剣で危なげなく受けるが、

バーサーカーの持っている武器を見て愕然となった。

 

バーサーカーが持っているものは鉄柱、さっきアーチャーが足場にしていた街灯の残骸だった。

長さは数メートル、寸断されたそれを槍のように持ってバーサーカーはセイバーの剣と鍔迫り合いをしている。

 

セイバーの剣は至高の宝具である、それがただの鉄柱に斬り合える等、まず出来ない筈だ。

それと対等以上に戦える物はただ1つ、【宝具】以外にありえない。

 

「…っなんだと?」

思わずセイバーから驚愕の声が漏れる。

それもその筈、バーサーカーの持つ鉄柱が黒く染まり、葉脈のような黒く赤い線が幾つも鉄柱を侵食していたのだ。

そして、その大本はバーサーカーの籠手から発生している。

悍ましい程の殺意と狂気、そのどす黒い魔力が鉄柱を武器へと変換していた。

 

「…まさか!?」

 

セイバーだけでなく、それを見ていたランサーとライダーも理解した。

バーサーカーの見せた、アーチャーの攻撃を捌ききった【力】を。

 

「……そうか、あの黒い奴がつかんだものは、何であれ奴の【宝具】になるということか」

 

心の底から感心したようなライダーの言葉に、ただ見ているしかないマスター達も潔く理解する。

 

宝具の中には武具の形をしたものだけでなく、特殊な能力としての発現するモノも存在する。

バーサーカーのソレは恐らく、

手に持ったものを侵食し、己の一部とする略奪の能力、それがたとえ【他者の宝具】であろうとも支配権を奪う事が出来るのではないだろうか?

更にそれだけではなく、その籠手が触れたモノ全てが宝具となり、セイバーの宝具と打ち合う事が出来る程の強度を与える事が出来るという事だ。

そうこうしている内に、徐々にセイバーがバーサーカーに押されだした。

その表情は硬く、明らかに焦りが浮かび始めている。

 

「セイバーっ!!」

 

悲痛な声をあげるアイリスフィールに、セイバーは言葉を返す余裕もない。

目の前のバーサーカーが相当な実力者であるという事実があるが…………ここにきて、彼女が強いられていた負担が牙を剥いたのだ。

ランサーの【((必滅の黄薔薇|ゲイ・ボウ))】につけられた傷と、それまで戦っていたにも関わらずこの連戦となれば体力が持たない。

しかも親指が使えない為、右手の握力だけで剣を握らなければならないのだから、攻撃に転ずる事も出来ないのだ。

 

このバーサーカーの攻撃には、右手だけでは対抗出来ないと、セイバー自身分かっているというのに、だ。

 

 

「貴様は…っ一体!?」

 

 

困惑と警戒が内に溢れるままに、セイバーは問い掛けずにはいられなかった。

だがバーサーカーに、その答えを返す知性が残っている訳が無い。

返事の代わりとでも言うかのように、鉄柱が振り上げられる。

セイバーを叩き伏せようという、明確な殺意を込めた強力な一撃が放たれようとしていた。

 

「……っ!!」

 

まずい、と一瞬でその次に来る衝撃にセイバーは身構える。

下手に捌こうとしても、アレによる一撃は今の自分では捌ききれない。

ならば少しでも衝撃を殺せるように、このバーサーカーの一撃をあえて受け、距離を取る為に後ろへ飛ぶしかない……!

そう考えるセイバーに、無情にもバーサーカーの鉄柱が勢いよく振り下ろされ―――――――

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―――――ギィンッ!

 

「……悪ふざけはそこまでにしてもらおうか、バーサーカー」

 

―――だが、セイバーにその鉄柱は届くことはなかった。

呆然と彼女が前を見れば、その代わりにランサーの背中が、そこにあった。

 

ふと見れば、バーサーカーが振りかざしていた鉄柱は、その半ばから断たれて宙を舞っていた。

 

恐らくは目の前のランサーが、バーサーカーの【宝具化】させていた鉄柱を両断したのだ。

更にランサーは、右手の【((破魔の紅薔薇|ゲイ・ジャルグ))】の切っ先を、しっかりとバーサーカーに向けている。

そうしてセイバーや他のマスター達は気付く、自らの聖剣が纏う風すらも断ち切った【((破魔の紅薔薇|ゲイ・ジャルグ)))】こそが、バーサーカーの天敵なのだと。

打ち合った魔力を打ち消す事の出来る、【((破魔の紅薔薇|ゲイ・ジャルグ))】ならば、バーサーカーの能力によって【宝具】となった鉄柱でも、たやすく破壊する事が出来るのだと。

 

「そこのセイバーには、オレと先約があってな…これ以上つまらん茶々を入れるつもりならば、俺とて黙ってはおらぬぞ?」

「ランサー…」

 

目の前で殺意を垂れ流すバーサーカーを前に一歩も引かないランサーに、セイバーは感嘆せざるを得なかった。

自らの戦っていた相手を、横から入ってきた乱入者から庇う等、それはまさに誇りある騎士でなければ出来ないであろうからこそ、彼女はランサーを認める。

 

ああ彼こそは、自らと同じ騎士道を胸に、この世に再び蘇った誉れ高き英雄なのだと―――――

 

 

『何をしているランサー?セイバーを倒すならば今こそが好機であろう。』

 

 

だが、そんな騎士同士の誇りに横槍を入れたのは、他ならぬランサーのマスターであるケイネスだった。

騎士でもない魔術師である彼からすれば、ランサーのした事は余計な真似でしかなかったのだ。

 

「セイバーはこのディルムッド・オディナが!誇りにかけて討ち果たします!」

 

しかし、己のマスターに向けて宣言するランサーは、セイバーと決着を付けるのは今ではないのだと、そう考えていた。

セイバーは彼が認めた好敵手、それをみすみすバーサーカー等に倒させるのは、彼の戦士としての意志が許さなかった。

彼女とは、正々堂々と真正面からランサーは戦いたいのだから。

 

「何となればそこの狂犬めも先に仕留めてご覧に入れましょう。

故にどうか主よ!私とセイバーとの決着だけは尋常に………!」

『ならぬ』

 

冷たい声が響く、それは余りにもランサーには酷な答えだった。

そんな物知った事かと、騎士達の誇りや戦士の意志等、無意味としか捉えていない魔術師には、

セイバーこそが真っ先に排除するべき【敵】でしかなかったのだから。

 

 

…………だが、その時だった。

 

 

                   ゾクゥッ!!!!!!!!!

 

 

                  「…………ッッ!!!????」

 

 

 

―――――突然、セイバーの背筋に凄まじい程の悪寒が走った、否、もはや悪寒等と軽い言葉では済まされない【何か】。

 

 

バーサーカーに向けられた比ではない、周りの状況すら気にしている程の余裕も許されない。

何故他の誰もがこの悪寒に気付かないのだと、叫びだしたくなる程の【脅威】が迫ってきている。

 

ただ【アイリスフィールを連れて逃げろ】、と。

騎士王ことセイバーの脳裏を、サーヴァントとしての本能が凄まじい警鐘を鳴らしている。

彼女の生前鍛え上げられた騎士としての【直感】が、この場に留まる事の危険性を全力で告げている―――――!

 

 

 

…………………………この場に、【ナニか】が、来る!

 

 

 

「っ!この場から離れて退け!ランサー!!!!!!!!!!」

「っ!?セイバー!?」

 

自らを庇ったランサーを【この脅威】に晒してはならぬと、半ば突き飛ばすようしてセイバーはバーサーカーの前から離脱する。

ランサーとセイバーが、【バーサーカーへ至る射線上】から、その身を逃れさせた次の瞬間、それは起こった。

 

 

「■■■ア■■あ■■■ア■ああ■■■ア■あ■■■■■あ■■■あ■■アア■■■■■■■あ■■■■■■■ア■■■あ■■■あ■■ア■あ■■■■■あ■■■■あ■アア■■あ■■■ア■あ■■■■■ア■あ■■■■ア■あ■■■■■あ■■■あ■■ア■■■あ■■■あ■■ア■あ■■■■■ア■あ■■ア■あ■■■■■あ■■■■■あ■■ア■■■あ■■■あ■あ■■■■■■■ア■■■あ■■■ア■あ■■■■■あ■■あ■■■■あ■アア■■あ■■!!!!!!!」

 

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンッッ!!!!!!!!!

 

 

恐ろしい程の咆哮と、それに続くように響いた爆音と破壊音。

足に伝わる振動に、守るべき女性の体が揺らぐのを見て、セイバーは全力で彼女へ駆け寄った。

 

「アイリスフィール!後で説明しますから今は私に掴まってください!この場から離脱します!!!」

「っ、分かったわ!」

 

背後を振り返る事無く、そのまま一気にアイリスフィールの元に辿り着くと、セイバーは彼女を横抱きにして戦場を後にした。

……………本来なら有り得ないが、セイバーは今、敵に背を向けて逃走したのだ。

恥ずべき事だろう、騎士が戦場から逃げ出す等、セイバーからすれば屈辱以外の何物でもない。

しかし、それ以上に彼女は己の直感に、これ程までに感謝した事も無かった。

 

(もし、【アレ】の接近に気付かず、あの場に今も立っていたならば……!)

 

セイバーは想像したくもない光景を幻視し、その表情を強張らせる。

ランサーは恐らく無事だろうがライダーはどうなっただろうか?

しかしそれを確かめる為だけに、わざわざあの場に戻る等、したくもないしするつもりもない。

 

(一体、何だというのだ………!?)

 

あの脅威を感じた時、胸に抱えた感覚だけが【違和感】として残っているのだ。

そうまるで、何かとても……【近しいモノ】が、いたような感覚が。

それをセイバーは表面には出さず、アイリスフィールを連れて駆けていく。

しかしその瞳だけが、気丈な意思を宿してはおらず、ただ困惑に揺れていた――――

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<SIDE/ドラグーン>

 

――――状況は、今から数分前に遡る。

その時、間桐邸に待機している筈のドラグーンは、桜の許可を得て冬木市内を行動していた。

別にドラグーンは雁夜の命令を無視したい訳ではないのだが、自らの魔力供給に対する問題解決の糸口を探していたのだ。

そうして【協力者】の助力も得て、ドラグーンは其処に辿り着いていた。

 

「此処が…町の霊脈が集結してる場所の、最後の1つか。」

 

時刻は真夜中、誰もいないその池の畔で。

幾つかの街の霊脈ポイントを歩いていた中で、ドラグーンは此処こそが一番【自分と相性が良い】と呟いた。

その場に膝を付き、おもむろに池の水を掬うと口に含む。

本来ならただの水でしかないソレは、普通の場所とは違う為かそれなりの魔力を孕んでいた。

 

(この戦争の影響か…土地の霊脈が活発化しているのが、こんな所にまで影響を与え始めているんだな。

土地に住まうモノ達にとっては、歓迎できる事ではないんだろうが、今だけはこの現象に感謝せざるを得ない…か。

だがこれで現界する分には、十分な魔力供給の目途が立った……またカリヤとこの事を話し合わないとな。)

 

多少の魔力を込めている水。

通常のサーヴァントならば大して意味の無いモノでも、魔力を内で増幅できるドラグーンからすれば、貴重な魔力源となるのだ。

今はこれで充分な回復を図ろうと、ドラグーンは再び水を口にしようと手を伸ばし――――――――

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■a■■■■■■■■■■■■■e■■■■■■■■r■■■■■■■■■■■■■■a■■■■■■■■■■■■■■■s■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■e■■■■■■■■■■■■■■e■■■■■■■■■■■■■■■■■a■■■■■■■■■■■■■■■■■■■r■■■■■■!!!!!』

「うぁ…っ!?」

 

 

――――――――突然パスを通じて流れ込んできた憎悪と狂気に、頭を横殴りされたような衝撃を受けた。

 

凄まじい負の感情に、ドラグーンは思わず頭を抱える。

予想以上の強い念に押し負けないように、何とか気を持ち直した。

頭の中に響く【声】に、その主が誰なのかをすぐさま特定すると、その異常事態に顔を顰める。

 

(っ、これはバーサーカーか!?どういう事だ、何故こんな急に感情を暴走させている!?今まで安定していた筈だ!

っ…下手に干渉するのは無理か、無意識か?何て硬い拒絶だ………待て、私で【コレ】なら、まさか……っ)

 

その中で、唐突に思い当った事に、ドラグーンは一気に青褪めた。

そう、【同じサーヴァント】でも最初はダメージを受けるようなこの狂気に、同じように晒されているだろう【人】の事を。

 

その瞬間、ドラグーンの頭に、パスを通じてバーサーカーではない声が………【マスター】の悲鳴が響き渡った。

 

 

『苦しい、痛い、蟲が、止めろ戻れ!バーサーカー!止めろ!止めろ!止めろ!バーサーカー!!戻れ!戻れ!戻れ、戻れ!止めろ!止めてくれ!止めてくれ!ぁああ痛い痛い痛い嫌だ!嫌だ!嫌だ!痛い!!!止めろ痛い!食われ、食われる!痛い痛い痛い!止めろ!止めて!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だああ!!!!!痛い痛い止めろ!嫌だ苦しい!!嫌だ!!痛い痛い痛い止めろ!止めて!止めてくれぇぇ!!バーサーカーぁぁぁぁ!!』

 

 

      「っ!((マスター|カリヤ))ぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

 

叫ぶ

ただ叫んだ

己の主の魂の悲鳴に

嫌という程感じられる【ソレ】に

 

同時に霊体化して走り出す。

夜の山を、林の中を、川を通り過ぎる、橋すらも飛び越えて

走る、急いで、とにかく駆けた。

早く、速く、はやく、ハヤク、急げ、走れ、もっと、ハヤクハヤクハヤクハヤクハヤクハヤク!!!

 

その間にも、伝わってくる【ソレ】

おぞましい、内から食い潰される感覚

痛ましい、苦痛と絶望を訴える恐怖の声

骨を、肉を、内臓を、精神を、神経を、心を、想いを食い潰される

 

 

ああ、嫌だ

あの時を、思い出す

自分が嫌だった、【アレ】と同じ

こちらの意思と関係なく、体と心を潰される

 

頭に響くバーサーカーの怨嗟の声等、もうドラグーンには聞こえて等いなかった。

今、ドラグーンにとって重要なのは、1つだけ

 

 

カリヤが、自分のマスターが、確かにこの身を呼んでいる――――――――――

 

 

 

その時、駆けるドラグーンの脳裏に、何かが、フラッシュバックしてきた

駆ける【彼】の脳裏に流れ込んでくる景色は、違う場所を映し出し他の存在の場所を告げている。

ソレは苦痛に悲鳴を上げる雁夜の意識が見ている光景…そう、混濁した意識から今までの状況がパスを通じてマスターからサーヴァントへ逆流してきたのだ

 

 

 

             故に、【彼】は、その事態を知るに至った。

 

 

 

悲鳴と共に、その状況が断片的に伝わってくる

 

『何を』

 

視界が、一瞬で、色々なモノを見ながら通り過ぎる

 

『している?』

 

戦っている者達、銀の女騎士、若草色の騎士、赤くも大きな覇王

 

『お前は』

 

現れる、黄金の王、降り注ぐ、剣の雨、そして戦いを挑んだ、黒い狂戦士

 

『いったい』

 

戻らない、暴走、女騎士に襲い掛かる、バーサーカー、■s■■r、それは誰の事だ

 

『何をしている…!?』

 

カリヤ、血を吐いて、蟲が笑っている、悲鳴が、削られている、命が、心が、涙を流して苦しんでいる………!

 

 

 

『((マスター|カリヤ))を―――――殺すつもりかああああああああああああああ!!!!!!!』

 

 

 

どんな形であれ容認しようと思っていた、今、【自分】が役立たずだと理解していたから、この身は【時を待つ】のだと決めていた。

 

なのに

それなのに

お前は一体何をしている?

お前は一体誰を傷付けている?

何の為にお前はその人に呼び出されたのだ?

お前が、【私】がマスターに近付くのを嫌がったのは、彼を守りたかったからだろう?

お前が、【俺】に敵意を向けていたのは、カリヤに害をなされるのが嫌だったからだろう?

 

完全に【狂化していない】お前が、マスターと言葉を交わさなかったのは、

マスターが―――――――カリヤがそう望んでいたから!狂戦士としてのお前を望んだからだろう!

 

 

 

 

         決して、マスターの、主の命を脅かし奪う為では、ない!!!

 

 

 

 

『―――――止めてくれええええええええええええ!!!!!!バーサーカーぁぁぁぁ!!!!!!!』

 

「■■■ア■■あ■■■ア■ああ■■■ア■あ■■■■■あ■■■あ■■アア■■■■■■■あ■■■■■■■ア■■■あ■■■あ■■ア■あ■■■■■あ■■■■あ■アア■■あ■■■ア■あ■■■■■ア■あ■■■■ア■あ■■■■■あ■■■あ■■ア■■■あ■■■あ■■ア■あ■■■■■ア■あ■■ア■あ■■■■■あ■■■■■あ■■ア■■■あ■■■あ■あ■■■■■■■ア■■■あ■■■ア■あ■■■■■あ■■あ■■■■あ■アア■■あ■■!!!!!!!」

 

 

 

パスを通じて響くマスターの悲鳴を脳裏に、そうして【彼】は現界し、その衝動を解き放った。

 

 

 

………それは、なんという皮肉か。

英霊である筈の、【彼】の初陣は華々しい物にはならず、【不意打ち】という決して誇れる形ではなかった。

ましてやソレは戦いにもならない、相手は自分と同じ立場の存在故に、

しかし…だからこそ、決して認める事等出来なかったのだ。

 

もはやそれは言葉にもならず、内から沸き起こる激情のままに、咆哮として迸る。

周りの全てが今はどうでもよくて、ただ【それだけ】が許せなくて、一気に相手へと飛びかかる。

 

その感情のままに―――――ドラグーンは、目の前の【((味方|バーサーカー))】へ、

全力でその【意志】と共に、殴りつけたのだった。

 

 

 

*************************************************

 

 

驕りは、抱いた者へ必ず報いを強いる。

 

どんな形であれ、報いとして受ける傷は軽くは無い。

 

悲鳴は響き、嘆きは届いた、怒りの咆哮は迸るも、その声こそは悲痛だ。

 

 

【守れない】

 

 

その意味は今はまだ分からずとも、どうか届け。

 

狂える者よ、その想いを見据えよ、その狂気と相反する慟哭を。

 

そして知れ、御身が向けられていた【信用】の重さを、その祈りを―――――気付いてくれ。

-5ページ-

【あとがき】

 

今回は、バーサーカー暴走&ドラグーン咆哮の回でした。

完全に暴走したバーサーカー、更に混線したパスの弊害が此処に来て現れました。

まっとうな人にバーサーカーの狂気は相当な負担になると思います。

今までのバーサーカーのマスターも、下手をするとこんな感じに精神破壊されたのでは?と作者は考えたわけです。

いくら肉体や魔術が優れてても、精神はそう簡単に鍛えられない訳ですし…。

ドラグーンは今回ちょっと理性を飛ばしてました。

かといってこれはバーサクとは違いますので、バーサーカーは死んでません。

英霊混戦は次の回にて終了です。

終わりを迎える初戦、それぞれの陣営に勝利者は現れず、ランサーも令呪を使用されていない状態です。

ここからどう物語が始まるのか?作者も頑張って更新していきます。

それでは、今回はこれにて…閲覧ありがとうございました。

 

今回のBGMは、【龍(天野月子)】でした。

※感想・批評お待ちしております。

説明
※注意
こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
それでも見てやろう!という心優しい方のみ、どうぞ閲覧してくださいませ。

今回は注意点があります!バーサーカーが暴走する為、雁夜おじさんがかなり酷い目に合います、色んな意味で酷いです、もうこれ以上は無いだろうってぐらい酷いです。(どれだけだよ) もうやめて!おじさああああああああああん!!と、悲鳴を上げそうな方や。
そんなの見れるかあああああああああああ!作者殺す!という人はここでどうかUターンをお願いします。
ここまで読んで、それでも見たい! と言ってくださる方だけスクロールをお願いいたします。
前書き閲覧、ありがとうございました。

………作者は本当に雁夜おじさんが好きですよ、これ書きながら後悔してましたが、それでもバーサーカーを使役するのってこれぐらい辛いよね。 という意味も込めて書きました。
アレを普通に従えられる、5次のイリヤちゃんが規格外なだけなんだよ……!
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