たとえ、世界を滅ぼしても 〜第4次聖杯戦争物語〜 英霊混戦(主従敗走)
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嘆いても戻らない時間がある。

 

あの時ああしていれば、なんていう思いはもはや無意味だ。

 

なら、その苦痛を背負ってなお、前に進むしか道は無いだろう。

 

 

だからこそ今はこの苦汁を飲み干せ、その先に待つ未来へ進むために――――――――

 

 

*************************************************

 

 

―――――((ソレ|・・))は、何の前兆すらなく、突然その場に現れた。

 

ウェイバーがその目に捉えられたのは、ほんの一瞬。

バーサーカーの前から、【何故か】全力で回避したセイバーと、それに突き飛ばされるような形で離れたランサーの影へ被さるように、

((何か|・・))がその場を駆け抜けたのだ。

それと同時に、倉庫街一帯を、震撼させる程の凄まじい咆哮が迸った。

 

 

「■■■ア■■あ■■■ア■ああ■■■ア■あ■■■■■あ■■■あ■■アア■■■■■■■あ■■■■■■■ア■■■あ■■■あ■■ア■あ■■■■■あ■■■■あ■アア■■あ■■■ア■あ■■■■■ア■あ■■■■ア■あ■■■■■あ■■■あ■■ア■■■あ■■■あ■■ア■あ■■■■■ア■あ■■ア■あ■■■■■あ■■■■■あ■■ア■■■あ■■■あ■あ■■■■■■■ア■■■あ■■■ア■あ■■■■■あ■■あ■■■■あ■アア■■あ■■!!!!!!!」

 

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンッッ!!!!!!!!!

 

 

それは、言葉にならない咆哮だった。

 

凄まじい威圧と音量に、聞く者の魂までもが震え上がってしまいそうな程の声。

ありとあらゆる罵倒を投げつけようとして、爆発してしまったようなその咆哮は、

ありったけの感情を込めたその声は、叫んだ存在の怒りがどれだけのモノかを告げていた。

その直後、セイバーに追いすがろうとした、バーサーカーが吹き飛ばされる。

まるで高速で移動して来た、トラックに激突でもされたかのように、恐ろしい勢いで吹き飛ばされた。

同時に辺りへ巻き起こる粉塵、吹き飛ばされたバーサーカーの姿すら見えなくなる程のモノ、

それがその場を陥没させる程の余波を持つ一撃によるものだったと、一体何人が、すぐさま気付く事が出来たであろうか?

ウェイバーは急な展開と、その怒れる咆哮に完全に意識が固まってしまっていた。

それでも、なけなしの矜持をかき集めて、目の前で何が起こったのかを知ろうと、視線を向ける。

…だが、バーサーカーが吹き飛ばされた時に、破壊されてしまったその場は大きな穴が開いており、まともな形をとどめていない。

突然の事に足場を失うのを恐れたセイバーやランサーも、いつの間にか離脱しているようだが、あの咆哮の主は何処にいるのだろうか…?

「ほう、バーサーカー以外にも、随分と芸が上手い奴がいるようだのう…ありゃキャスターか?随分と腕っぷしが良いようだが。」

「お、お前、今のが見えたのかよ!?」

「いや、一瞬だがなぁ…バーサーカーを攻撃する為に現界したその時に、【銀】が見えた。

しっかし…随分と手早い事だがなぁ、坊主。

((あの|・・))サーヴァントは本当にバーサーカーにしか用がなかったようだぞ?

恐らくもう此処にはおらんだろうなぁ…何せ、バーサーカーを攻撃して、【そのまま霊体化して】立ち去りおったようだしのう。」

「はぁ!?何だよそれ、殴って逃げたっていうのか!?サーヴァントが!?」

「さてな、恐らく残るキャスターのサーヴァントであろうが、騎士の立ち合いに横槍を入れたバーサーカーに怒りを覚えたのかもしれん。」

「……おい;お前本気でそれ言ってるのか?」

「そうだのう、

それか我等の戦いを盗み見ていたのが何らかの理由でばれた為、即逃げ出した臆病者かもしれん、

或いは……………よほど戦場を【戦い慣れている】、猛者かもしれんなぁ…………坊主、あの声の主、もしかしたら随分な【大物】かもしれんぞ?」

 

にやり、と楽しそうに笑う自分のサーヴァントに、ウェイバーは何とも言えない表情で辺りを見渡した。

 

いつの間に他の陣営は撤退したのか、そこにいるのはもはや自分達だけだった。

ランサーもセイバーも、そして吹き飛ばされたバーサーカーですら姿も形も見えず、

しかしそれが決して彼等の意思によるものではなかっただろうと考える。

 

(…一体、アレは何だったんだろう……ライダーの言うとおり、キャスターだと思うけど、【攻撃的な魔術師】が英霊として呼び出されるなんて。)

 

正体不明のサーヴァントは、あの驚異的な強さを誇るバーサーカーを見事【奇襲】するのに成功していた。

もしかしたら、ずっと機会を伺っていたのかもしれない…あの時セイバーが全力で避けていなければ、ランサーとセイバーは、確実にバーサーカー共々巻き添えを受けていただろう。

ならば、それを従えるマスターも、きっと並みならぬ実力を持つ相手に違いない。

だからこそ、他のマスター達もこの場に留まるのは危険だと判断し、撤退していった。

当たり前の行動だ、敵の姿が見えないというのなら、次に狙われるのは自分かもしれないのだから。

「とにかく、僕達も早くここを離れよう。

これだけの騒ぎになったんだ、きっとすぐに一般人がやってくる。」

「ふむ、そうだな、ならば今日は早々に寝屋に戻るとするか!

 しかしつまらんのう……世の臣下に加わろうとする英霊はおらんかったか…」

「お前なぁ…;」

 

新たな強敵の出現に困惑しながらも、ウェイバーはライダーに告げてその場を後にした。

 

 

 

……………ちなみに、コレは((IF|もしも))の話だが。

もし、ウェイバーが他のマスターと違い、この場に【((留まっていた|・・・・・・))】事を、【彼】がこの場で知ったならば。

 

【彼】は迷わず、ライダーのマスターウェイバーの前に現れ、彼を称賛していただろう。

その理由がただ自失して動けなかったというだけでも、ライダーの存在を支えにしたモノだったとしても、だ。

【戦士でもない魔術師の少年】が、戦闘時の【彼】の咆哮を聞いて【意識を失わなかった】だけでも称賛ものなのだから。

 

そう、かつて【最強】と謳われた英雄の1人、その存在の怒気を目の当たりにして逃げださなかった者等、数える程しかいなかったのだから。

 

 

 

 

――――――――ウェイバーが、己が知らない内に【王の従者として】誉ある武勲をあげていた事に気付くのは、それから数日後の事である。

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<SIDE/ドラグーン>

そんなライダー陣営の会話等、露にも知らず。

倉庫街地下の下水道、そこにドラグーンとバーサーカーはいた。

 

「……っ!何処だ、何処にいるカリヤ!」

 

倉庫街から一転、バーサーカーに攻撃したと同時に、ドラグーンは瞬時に霊体化するとバーサーカーへパスで意思疎通を行った。

『マスターは何処だ!?』と、

思えば、自分でパスを通して探せばいいのだと気付いたのは、それから数分立ってからだったが、

暴走状態から戻ったバーサーカーの意識から、下水道にいるのだけは分かって直行したのだった。

わざわざ他のマスターやサーヴァントに、姿を晒す気もなかったし、そんなのどうでもよかった。

むしろバーサーカーすらほったらかしてやろうか、とすら考えていたのだが、それどころではなかったので止めた。

 

しかし、ドラグーンは今はひたすらに雁夜の姿を探していた。

バーサーカーに案内された場所には、夥しい血痕と数匹の蟲しか残っていなかったのだから……

 

(何処に行った!?あのダメージで歩ける筈が…!まさか他のサーヴァントに連れ浚われたのか!?…っいや、まだパスはこの付近に感じる、まだこの辺りにいる筈…!)

 

とにかく、見つけ出さなければとそこから急いでパスの反応のある場所へ下水道を走り続ける。

今は無事でも、見つかるのが遅くなればなるほど、雁夜の体に負荷がかかってしまう。

ドラグーンには、それが何よりも恐ろしかった、桜との【約束】も、あるというのに。

 

 

「………う、あ…」

 

 

「■■■――――――…!」

「っ!?カリヤっ!!!!」

 

その時、小さく響いた呻き声に、2人のサーヴァントはそこへ駆け寄った。

倒れ伏していた………その姿は、酷く痛々しかった。

口からは喀血していて、その顔は蒼褪めるのすら通り越して真っ白だ。

これでまだ生きているのだとは思えない、死体だと言われた方が納得出来る程、弱っていた。

 

「カリヤ…っ」

 

…それでも、きっと【行こう】としていたのだろうと、ドラグーンは気付いてしまった。

まるで這うような形で倒れている雁夜、何処かへ移動しようとしていたのだと、それは指していた。

辛いのに無理に歩いていて、倒れてしまって、それでも這い蹲ってでも移動して、行こうとしていた。

……………何処へ?

決まっている、そんなの、あの少女桜の元へ行こうとしていたのだと!

今も苦しそうにその名を!うわ言のように呟いているその姿を見れば、誰にだって分かるのだから!!

 

「っ、霊体化しろバーサーカー!今は時間がない!気は進まないがあの蟲屋敷に戻るぞ!!」

 

背後の気配が揺らぐのを確認するのも惜しく、急いでその体を抱え上げる。

その恐ろしい程の軽さに、思わず眉を寄せてドラグーンは全力で駆けだした。

 

…………脳裏に過る少女の表情、今はまだ幼く、ほんの僅かばかりの笑みが、思い起こされる。

 

(「おじさんを1人にしないであげて」、か……最もだな、桜、放っておいたら手遅れになると、嫌という程、思い知らされた……【俺】が戦えれば、こんな事には、ならなかった……っ!!)

 

沸き起こる悔恨、苦しくて堪らない、だがそれも、明らかに自業自得。

可能性を考慮せず、バーサーカーに任せきりにした自分の不手際と慢心が、この結果を呼んだ。

あの蟲翁が何かを言い出した時に、傍にいればよかったのだ、【何もしなかった事が何よりも罪深い】

 

……自分の驕りが、マスターを、こんな形で傷つけてしまった。

 

 

「すまない、すまないカリヤ……私は、愚か者だ……」

 

 

一瞬だけ目を伏せて、ドラグーンは静かな声で謝罪すると、あとはただ、目的の場所を目掛けて駆けていく。

その意識をありとあらゆる方面に研ぎ澄まして、誰にも見付かる事が無いように、その場を離脱する事に、全力を尽くして走り続けて行った。

 

 

――――――――――――地下を走るその姿は、英雄とは程遠い。

憐れな程に、それは惨めとも取れる姿だった。

守るべき相手を守る事もままならず、ただ薄闇を駆けるその姿は。

……戦場へ向く事もままならぬ、憐れな敗走者に他ならなかった。

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<SIDE/バーサーカー>

 

 

「バーサーカー!お前の実力を俺に見せてくれ!無理に奴を殺す必要なんてない、ただ出来るならあのサーヴァントの情報を集めてこい!!」

 

 

…………………めいれいをうけた、そのまませんじょうにむかう。

ますたーのめいれいをうけて、きんいろのサーヴァントをこうげきした。

たいりょうのぶきをなげつけてくるが、わたしにはそれはいみがないとしかおもえなかった。

とんでくるぶきのなかからあいしょうのよいものをえらび、うばう

ますたーの、かりやのめいれいは、あれ・・をころすことではない。

あのサーヴァントのたたかいかたをしらべてこいといった。

ならばわざとおこらせればいい、あれはどうもたんきなようだからもんだいはないだろう。

むかってくるぶきをたたきおとしてのっていたあしばをこわしてやると、あきらかにおこったこえでどなりちらしていた。

………とつぜんぶきがぜんぶきえていた、きんいろのサーヴァントもどこかへいってしまったようだ。

ますたーますたーアレがいなくなりましたどうしたらいいのですかめいれいをくださいしじしてくださいめいれいを。

 

 

『もういいぞ、戻ってこいバーサーカー、そいつら・・・・まで相手にする必要はない』

 

 

ますたーわかりました、いまもどります…………………っ?

 

 

 

                (視界の隅に、何か、銀色が見えた)

 

 

 

ふりむく、めがあう、アレは、あれは、あれは、アレは、あれは、あれはアレはあれはあれはあれはあれはアレはあれはあれはあれはあれはあれはアレはあれはあれはあれはあれはあれはあれはアレはあれはあれはあれはアレはあれはあれはあれはあれはあれはアレはあれはあれはアレはあれはあれは

 

『バーサーカー…?おい、どうした?』

 

みつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたみつけたあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だあのひとだあのかただあの■だ

 

『バーサーカー!?止めろ戻れ!バーサーカー…!』

 

■■■■■■■■■■■■■■■a■■■■■■■■■■■■■e■■■■■■■■r■■■■■■■■■■■■a■■a■■■■■■■■■■■■■■■s■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■e■■■■■■■■■■■■■■e■■■■■■■■■■■■■■■■■a■■■■■■■■■■■■■■■■■■■r■■■■■■!!!!!!!

 

 

「セイバーっ!!」

「貴様…っ一体!?」

 

 

なにもきこえない、ただめのまえの■にきりかかる、ただ■すためにただ■れるためにただ■きをうけるためにきこえないきこえないなにもきこえないただ、めのまえのおうを■したいのだからだれもだまれじゃまをするなわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしは■れたいのだ、けんをもった■をたおしてそしてわたしはやっとだからだからだからだからだからだからだからだから………!!

 

 

――――――――ぎんいろ、が、しかいをそめた

 

 

 

         『((マスター|カリヤ))を―――――殺すつもりかああああああああああああああ!!!!!!!』

 

 

 

たたきつけられる、つよいこえ、なにかでふきとばされる、しょうげきが、けしきが、まわる、なぐられ、た?なぜ、じゃまをする、わたしのじゃまを、するな!■を、■を!このみでこんどこそわたしはやっとだからあの「ひと」のかなしみをあのときのこうかい■をつぐなえる、あのときのわたしの■をやっとあのいたみをなげきをぜつぼうをこんどこそわたしはつぐなえるのだからはばむな!だからじゃまをするなまだとどくこのうでをのばせば■にもどればいいのだそうすればこのねがいはかなうのだか

 

 

 

 

『―――――止めてくれええええええええええええ!!!!!!バーサーカーぁぁぁぁ!!!!!!!』

 

 

 

 

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………ます、たー?

 

つながる、くるしんでいる (誰が?)

ないている、いたいとないて (どうして?)

ちをはいている、やめてくれと (そうなったのは)

ますたーが、ぼろぼろで、ないている (誰の、せいだ)

 

……わたしが、ぼうそう、したからだ  (私が、マスターを傷付けた)

 

あ、ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!

 

もどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるマスターますたーマスターますたーマスターますたーマスターますたーマスターますたーマスターますたーマスターますたーもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるもどれもどるマスターますたーマスターますたーマスターますたーマスターますたー……っかりや、かりや!かりや!!

 

ぎんいろにかかえられている、ますたー

ちのけがうせて、まっしろになったひょうじょうはくるしそうで

いしきがないのは、わたしがかんがえていたことがながれこんだせいだと

そんなことがわかるのに、どうしてあのときにわかることができなかったのか!

 

ますたー、ますたー!かりや!ああ、ああ!わたしはわたしはなんてことを!?そんなつもりじゃなかったんです、わたしは…!!!■にただ■てほしくて、あなたをきずつけたかったわけではなくて、あなたをくるしめたかったわけではなくて、ちがうんですそんなつもりじゃなくて、こんなことをするつもりではなくて!また、またわたしはあるじをうらぎってしまう、どうして…!!!

 

 

 

      『……そんな事、誰も聞いてないだろう、それにお前だけのせいじゃない。』

 

 

 

そんな、こえが、した。

ぱすをとおしたこえ、まえをはしるぎんいろ…どらぐーんの、こえ。

 

 

『カリヤが苦しんだのは変わらない、それはもう起こった事で、今更悔いてもどうしようもない。

 だが、バーサーカー(狂戦士)を望んだのはマスター(カリヤ)だし、

理由が何であれ、暴走したのは事実だが、お前は自分の「クラス」通りに動いただけだ。

私も、今の今まで傍に居なかった……どう考えても、詰られるべきなのは、【私達全員】だろう。』

 

 

しずかなこえ、とてもしずかなこえ。

 

 

『むしろ【私】のせいか、この身の【■■】は、本当に質が悪い…本当に、私はなんて……罪深い』

 

 

それでも、そのこえはどこか、たえているように。

 

 

『……………戻るぞバーサーカー、カリヤを早く、安静にしてやりたいからな。』

 

 

………………ひどくしずかなこえだった。

 

 

 

 

 

……………………………くるっているおのれに、ざつねんがふえる………くるっているのに、くるえない…………くるいたい…………なにもわからなくなれば……………すくわれるのに………………………………………わたしは……………わたしは………………■に………………………■れなければ…………………

 

りかいできないわからないくるっているからそれでいいのにそれなのにわからないのがいまはいまは■い

なぜそうなってどうしてわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない!

 

………ああ……それでも……【カリヤ】………私は、貴方を…………傷付けたくは、なかった……………

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<SIDE/間桐雁夜>

 

 

………ふと、間桐雁夜は、自分が暖かいモノに包まれている感覚に意識を浮上させた。

苦しくて、痛かったのだが、今は何ともない事に気付く。

だが、やはりぼんやりしてしまって、目を開ける事もままならない。

動けない、苦しいのも痛いのもマシにはなったけれど、自力で動けない事が酷く悔しかった。

 

 

(俺は、どうなったんだ?)

 

 

まだ下水道で倒れているんだろうか、この暖かい感覚は錯覚なんだろうか、バーサーカー、何で暴走したんだ、蟲が体を喰らっていた、俺は、俺は……まさか、死んで、しまったんだろうか?

 

 

(桜、ちゃん…)

 

 

そんなの許される筈が無い、この命はあの子の為に、だからこんな所で倒れている訳にはいかない。

帰らないと、あの子を1人にしたら、きっと爺がまたあの子に酷い事をするから、俺が守らないと。

 

 

そう思って、雁夜は何とか動こうとして――――――――

 

 

 

                『カリヤ……』『…かりや…』

 

 

 

――――――――自分の名前を呼ぶ、2つの声に、息を呑んだ。

 

 

聞き覚えのある声だ。

自分が、酷く詰ってしまった、相手

自分の、命令を無視して暴走した、相手

 

そのどちらもが、自分の名前を呼んでいた………酷く、悲しそうに、ただ哀しそうに何度も何度も、深い謝罪と悔恨を滲ませる声で、ただ雁夜自分の名前を、呼んでいた。

 

どうして、まさか、何で、何を、と意識が混乱する。

彼等は自分を、見下しているのではないのか、役に立たないマスターだと。

碌に魔力も供給出来ない、役立たずだと、そう、思っているのではなかったのか。

それなのに、声は聞こえる、次第に名前だけでなく、言葉として聞こえてくる。

耳を傾けなくても聞こえるのは、それが直接、意識に流れ込んでくるから。

 

 

……………【ソレ】は、嘘偽りない、彼等の心の声だった。

 

 

 

『カリヤ…カリヤ、すまない、私はこうして、貴方を移動させるだけで精一杯なんだ。』

 

(…充分だろ、そんなの、そもそもお前はどうして来てくれたんだ…)

 

『かりや、かりや、どうして、こんなつもりじゃなかった、どうして、どうして、わたしはかりやを。』

 

(…しょうがないだろ、お前はバーサーカーなんだから、いつかは暴走するのは分かってた)

 

『私が戦えれば、貴方はこんなに傷付かなかった、私が戦えないから、貴方をこんなに苦しめてしまった。』

 

(違う…っお前は、桜ちゃんの傍にいてくれるじゃないか、俺が、そうしろって言ったんだろう!)

 

『わからない、どうして、どうしたら、わかるはずなのに、わからない、ますたー、かりや、あなたをまもりたいのに。』

 

(止めてくれ、そんな事言われたら、俺はもうお前を責められない、お前をバーサーカーで呼んだのは……俺じゃないか!?)

 

 

 

其処から伝わるのは、自分を助けに来た事と、自分を傷付けた事による後悔。

信じられていない所ではなく、守ろうとしてくれていた事に雁夜は戸惑った。

信じていないのは、信じられていないのは、自分と彼等の形の筈で、ただ互いに利用し利用される間柄だろう。

そう思って、いたのに、いや、そう思っていたのは……最初から、【自分だけ】だったんだとしたら?

 

 

『カリヤ、どうか、許さないでください、私達はこんなにも愚かで、貴方を守る事すらままならない。』

 

 

(……違うだろ、ソレは、お前達のせいじゃないだろ!俺がお前達を呼んだんだ!ああ爺の言うとおりだ!

俺の魔力じゃお前達を維持しきれない、俺なんかじゃお前達の負担にしかなれないじゃないか!

なのになんで謝るんだよ!?なんで責めないんだよ!?【役立たず】って言えばいいだけだろう!?

俺はお前達に認めてもらえるなんて、思っていないんだよ!俺は――――こんなに、弱いのに)

 

 

その思考を最後に、雁夜は再び意識を闇に沈めていった。

自らを抱える腕の温もりに、その暖かさを信じられない事へ、一抹の悲しみを感じながら――――――――

 

 

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誰も知らない、その【マスター】が、今はただ血を吐き激痛に苦しみながら、ただ1人の少女の未来の為に、命を懸けているという事に。

誰も知らない、その【サーヴァント】が、自らの力を奮う事すらままならず、マスターを守れない事に深く傷付いているという事に。

誰も知らない、その【サーヴァント】が、受けた命令を無視した事で、マスターを傷付けた事に深く苦しんでいるという事に。

 

――――――――――【彼等】の初陣はこうして幕を下ろしたが、しかしそれは、決して誇れる勝利ではなく、痛々しい傷のみを残した敗北でしかなかったのだという事に。

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【あとがき】

 

………英霊混戦、これにて終了となります。

石を投げられるのを覚悟で、今回更新いたしました。

バサカ&ドラ組、ある意味見事に撤収&退却です。

見様によっては強敵扱い、でも実際はマスターがいきなり瀕死状態でピンチ。

その為、おじさんの聖杯戦争は前途多難状態です。

バーサーカーとドラグーンは、おじさんを守る為にこれからは少し歩み寄ります。

そしておじさん自身も、以前の夢のような不思議体験をすることに…これがどういう物語になるのかも、お楽しみに。

桜ちゃんも勿論出ますよ!

 

 

今回のBGMは、【〜蝶〜(天野月子)】でした。

※感想・批評お待ちしております。

説明
※注意、こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。

それでも見てやろう!という心優しい方のみ、どうぞ閲覧してくださいませ。


今回はタイトルの通り、主従敗走です。
決してやられてしまう訳ではないので、そこはご安心くださいませ。
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