真・恋姫†無双〜とある外史の妖術使い〜13
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「は、早く逃げなきゃ・・・って、きゃっ! あ、あんた危ないじゃないの!

こんな荒れた道のど真ん中に突っ立ってんじゃないわよ!」

 

「それは申し訳ないわね。私も用事があるものだから」

 

「ん〜、そのお腹の膨らみ、ひょっとして妊婦さんかな〜?」

 

「ええ、そうよ。やっと重たい悪阻が終わってね。意識的に身体を動かすようにしているのよ」

 

「…姉さん! 暢気に話している場合じゃないわ! 早く移動しないとっ」

 

「官軍に追いつかれる、でしょう?」

 

「なっ・・・!」

 

「張梁、眼鏡がズレ落ちかけているわよ?」

 

「あれぇ、私達の名前、知ってる?」

 

「そうね、張角。よく、知っているわ」

 

「な、何者よ、あんた! 妊婦のくせに、しゃしゃり出てくるんじゃないわよ!

ちぃの妖術で吹き飛ばして──なっ、か、身体が動かないっ! なにこれっ!」

 

「張宝。金縛りの妖術よ、簡単な話よね?」

 

「一体、何者・・・なの、貴女は」

 

「しがない唯の新米の母親よ。ただ、兼任で陳留の太守も務めているけれど」

 

「なっ、貴女が、曹・・・孟徳!?

たった一人で袁術の勢力、領地、何もかもをを灰塵に変えたという!?」

 

「なんだか不快な話の膨らみ方ねえ。おまけに『を』が一つ多いわ。

まぁ、確かにあの頃の私は荒れていたから、似たようなものかしら。

さて、無駄話はこれまで。大人しくついてきてもらうわよ?」

 

「ちぃ、短い人生だったなぁ・・・うん、術者の格が違いすぎるよ」

 

これは、前回は凪たちが捕らえた張三姉妹を、華琳がリバビリがてら一人で拘束して帰ってきたという話である。

もちろん事前に桂花や稟は全力で止めたけど、華琳が色んな意味で黙らせた。

幸せそうに二人は痙攣していたけど、何をやったのかはあえて見ていないし、聞いてもいない。

俺はまだ首が繋がっていたいんだよ。

 

さて、地和は妖術が使える兼ね合いで、華琳の力を本能的に認めてしまったようだ。

さらに今の俺に会って、卒倒しかけたというおまけつき。

弟子入り志願されたんだけど、雛里を超えてからおいで、って伝えた。うん、無理ゲーだな。

とりあえず、雛里には肉体的にも精神的にも殺さないように、とは厳命したので多分大丈夫だろう。

 

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「旦那さま、お茶が入りました」

 

「ありがとう、朱羅。今日も地和は高く空を飛んでたね。ん、うまい」

 

「はうあぅ、ありがとうございます・・・」

 

「朱羅も味覚や食欲が戻ってきて良かったよ。俺も頑張って作りはするけど、胃の圧迫感には勝てないもん。

逆に、華琳は体調が悪くても、味覚はそのままだったし、食欲は増していたから、人によって全然違うよな」

 

などと、私室でこちらも安定期に入った朱羅と暢気な会話を交わしていると。

 

「緊急事態よっ!」

 

と、珍しく焦りを顔に出した桂花が飛び込んできた。

 

「袁紹から、反董卓連合を組もうと檄文が届いたのよっ!」

 

「あー」

 

「あー、って何よ、その気の無い返事はっ!」

 

「・・・旦那さまが慌てていないということは、既に手は打っているということですよ、桂花ちゃん」

 

朱羅もゆったりとした様子で返事をする。

黄巾の乱が収まり、特に手柄を総取りするようにも仕向けなかった時点で、そろそろ連合結成の打診が来るのは判っていた。

 

元より流れを知る華琳や風以外にも、

朱羅、星、雛里には、既になぞった経験から大まかな行動指針は伝えてある。

 

既におーっほっほっさんの所には風が向かっており、君主が身重のため参加不可、その代わりに物資を供給することで落ち着いている。

魔術を湯水のように使って開墾した土地の広さは伊達ではない。成長の促進にだって、魔力を惜しみなく使ったのだ。

 

おーっほっ(ry さんの所に負けない生産力が、とっくに華琳の支配地には出来上がっている。

 

「そ、そういえば、何日か前から風の姿が無かったわね。てっきり近隣への偵察と思っていたけど」

 

「ただ、おほほさんのことだ、補給部隊ぐらい出せってところが落とし所になる可能性が高いね。ま、その場合は俺が率い・・・」

 

「それが最善だけど、最悪なのよ!」

 

言葉を途中で遮って、桂花は悲痛そうに叫んだのだ。

 

「アンタが遠征軍を率いることになるだろうから、華琳さまはこっそり侍女役にでも化けてでもついていくって言うのよっ!」

 

「それって俺が出る意味がないじゃないか!」

 

「だから慌ててるのよ! 檄文自体に今更、華琳さまの国力で慌てるもんですかっ!」

 

「ジーザス・・・。出産までは心穏やかに過ごして欲しいが為の計画が」

 

「かといって、遠征軍を率いるのは、華琳さまの代理が務まるアンタぐらいじゃないと、袁家のあのバカや、他の諸将も納得しないでしょうし」

 

国父の二つ名は伊達ではない。大事な言葉だから二回目も使った。自重はしない。

自重はしないんだが、華琳はお産を控えた身体だ。無茶はさせられない。

 

「あの、旦那さま。考え込んでいるところ、申し訳ないのですが」

 

「ん? どうしたんだい、朱羅」

 

「私も同行しますので。桂花ちゃんや稟さん、夏侯姉妹が留守番ですね。元直、巨達が補佐におりますし、十分かと」

 

「なっ! 華琳さまが行くなら、私も行くわよ!」

 

「・・・じゃあ、頑張って雛里ちゃんや風さん、星さんの内、誰かを説得してくださいね〜」

 

うわぁ、いい笑顔だよ、朱羅。背後に阿修羅のスタンドが浮かんでるように見える、とてもいい笑顔だ───!

 

・・・だが。

 

「待ってくれ。朱羅や華琳は連れて行かない。契約にそって命ずることも辞さない」

 

あの戦場にどうして、生命を宿した二人を連れて行けるのか。

 

「でしたら、お帰りになる頃には、私も華琳さまも衰弱しきって、お産すら危うい状態になっているかと思います」

 

「んなっ」

 

「旦那さまに長らく会えない事自体、どれだけ私達の命が危うくなるか。隷呪の契約とは、そういうものです」

 

「そんなことは聞いていないよ!? それなら風なんか1週間経つからまずいんじゃ」

 

「もう戻ってきたのですよ〜。遠征には風もついていきますからね〜」

 

独特の間延びした声の方向を見れば、ちょこんと出窓に腰掛けている風。俺が振り向いた途端、風の術式を使って、一気に胸元へ飛び込んでくる。

 

「お兄さんの匂いなのです〜すりすりなのですよ〜」

 

「おかえり、風。無事で何より」

 

宝慧が少し自身を浮かせてくれたので、抱き止めたまま心置きなく風の頭を撫でる。

一瞬きょとんとしていたものの、すぐに羨ましそうな顔に変わった朱羅には『後でね』と目で合図を送りつつ、桂花に一つ依頼を投げかけた。

 

「桂花。玉座の間での風の報告を受ける前に、人を払って華琳と話す時間を持ちたい。朱羅も同席させる。頼む」

 

「憎たらしいあんたの願いなんか、って言いたい所だけど、このまま報告になったら決定事項になるものね。任せておきなさい」

 

駆け出していく桂花を見送りながら、契約の件も含め、華琳と交わすべき話の内容に俺は思いを馳せ・・・いてぇええええ!?

 

「風を抱きしめたまま考え事とはひどいのですよ、お兄さん」

 

宝慧に脳天への一撃を食らった俺は、考えを中断せざるを得ないのだった。

説明
閑話回。感覚をつかむのに時間がかかる。ぐむむ。
異聞も来週にはあげたいのう。
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コメント
妊娠中なのがハンデにすらならない華琳……「ホント、この人本気で怒らせたら三国滅ぶな…」と再確認。華琳にとっては反董卓連合よりも「一刀と離れている間に、これ以上恋敵増えてたまるか」なんでしょうね〜。(ノワール)
華琳さん妊婦でも凄い力持ち過ぎwww。(殴って退場)
「とある外史の妖術使い」の更新待ってましたよwwwwwwwwwwww!?(劉邦柾棟)
投稿おつかれさまです。 異聞もとある妖術も好きな作品なので頑張ってください。(道端の石)
タグ
朱羅(諸葛瑾)  真・恋姫†無双 元・童貞伝 とある外史の妖術使い 

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