二度目の転生はネギまの世界 第十六話
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第十六話「一番目のアーウェルンクス」

 

 現在((我|オレ))はマクギル元老院議員の下に来ている。理由としては執政官の((完全なる世界|コズモエンテレケイア))関与容疑について。

 まあ、それはいい。((我|オレ))にすれば、アリカのみを守ることが任務。ならば((内通者|インサイダー))には速やかに消えてもらうのが得策。が、何故リュミスまで此処にいるのか。アリカの護衛はどうした。

 

「アリカはどうした?」

「現在、ヘラス帝国第三皇女、テオドラ・バシレイア・ヘラス・デ・ヴェスペリスジミアとの会談中よ。『リュビが近くにいると話がややこしくなりかねん、アランのところに行け』なんて言っていたわよ」

 

 頭痛がしそうだ。あれは護衛のなんたるかを理解しているのか? そういった危険な時に身を守ってもらう為に護衛を雇っているのだろうが!

 まあ、((我|オレ))は雇われ人だ。勝手に自爆されたら、どうしようもない。別にアリカに忠誠を誓っているでもなし、共に地獄に落ちる気はそうそうない。

 

「なら仕方ないな。依頼者の意向に逆らうのは禁忌だ」

 

 今はアリカを見捨てる。生きて会えたら、その際には再び付いてやるがな。

 しかし、一体どういうことだ? 今日この時間に来ることは既に通達済みなのに、マクギルも法務官も一向に姿を現さん。此処にいる((紅き翼|アラルブラ))メンバーのガトウ・ラカン・ナギで、難しい話をできるのは……ガトウだけだな。悪く言えば、ラカンは脳筋で、ナギは勘だけで生きているようなものだ。

 

「それにしても、マクギル元老院議員は遅いな。どう思う、ガトウ?」

「う〜む。昨日から準備をしているのならば、ここまで待たせるような事態にはならないはずだが……」

 

 ガトウも同じことを疑問に思っているようだ。そしてやはり、ナギやラカンはそこまで頭は回っていないようだな。

 なんて、噂をすれば影。足音が聞こえてきた。おそらくはマクギ――ん、魔力が違う? ならば法務官……いや、ならば足音が一人分である理由が分からない。

 

「お、遅かったな、マクギル元老院議員」

 

 ラカンが反応する。しかし、マクギルだと? いったいどこがだ? 見た目こそまったく同じであるが、魔力も気も違う。よくよく思い返せば、足音も違った。おそらく、何者か幻術を用いて変化した姿だろうな。

 

「法務官はまだいらっしゃいませんか」

 

 当然の反応だ。だがこの付近に、他者はもういない。魔法転位でもしてこない限り、此処に人が来ることはない。

 

「法務官は……来られぬことになった」

「は……?」

「……あれから少し考えたのだがね、せっかくの勝ち戦だ。ここにきて……慌てて水を差すのもやはりどうかと思ってね」

 

 それは、一理ある。ここで下手な刺激をすれば、最悪は粛清の嵐が吹き荒れ、戦争以上の被害が出かねん。

 

「む、それもそうかもしれんな。が、それは個人判断か?」

「私の意見ではない。そう考える者も多いということだ。時期が悪い。時を待つのだ。今回は手を引いてだな……」

 

 が、この魔力が誰であるか、((我|オレ))には判断が付いた。((完全なる世界|コズモエンテレケイア))の幹部……の誰か。ガストが会ったことがなければ、分からなかったかもしれんな。

 なるほど。であるならば確かに、そう考えるものが多くて当然であるな。『((完全なる世界|コズモエンテレケイア))』内部ならば、ここで止まることは良しとせんだろう。

 

「待ちな。あんた、マクギル議員じゃねぇな。何もんだ?」

「しかたあるまい……失せよ」

 

 ナギの疑念の声にかぶってしまったが、((我|オレ))は攻撃態勢に移る。化学練成系咒式第四階位<((曝轟蹂躪舞|アミ・イー))>――否、同系第五階位<((曝轟収斂錐波|アミ・イール))>を展開。トリメチレントリニトロアミン、通称RDXやヘキソーゲンと呼ばれる爆薬を生成し、その爆風を((擂鉢|すりばち))状の力場に沿って収束させ、偽マクギルの胴体を打ち抜く。

 同時にナギの魔法により、頭が燃えていく。まあ、この程度でくたばるようであれば、その程度だったということだ。

 

「お、おい! 何攻撃してるんだよ、二人とも!」

「……ち、無傷か。これが貫通せんか」

「……危うく破られかけたけどね、『((沈黙者|サイレンサー))』」

 

 煙が晴れたとき、そこにいたのは既にマクギル元老院議員ではなくなっていた。白髪の青年、『地のアーウェルンクス』。確か、『((一番目|プリームム))』だったか?

 しかし、先程の問答でもあったが、これで貫通しないとなると、奴は想像以上に固い防御を誇ることになる。なにせ、咒式に対魔・魔法障壁は通用しない。そもそも対魔障壁や魔法無効化能力とは、精霊との交信や精霊そのものを遮断することで、副次的に魔法を止め、かき消す。すなわち、精霊の関与しない咒式は、対物・魔法障壁でないと止められないことになる。

 そして<((曝轟収斂錐波|アミ・イール))>は、第五階位に達する岩盤掘削用の咒式である。これを止められるとなると、虎の子である第六階位や第七階位――準戦略級から戦略級の咒式を使うしかなくなる。

 なお、咒式専門の守りである咒式干渉結界ですら、第五階位を完全無効化すれば驚愕に値する。

 現状から推測――光学干渉が弱いため、電磁光学系咒式ならば貫通は容易か。

 

「だけど……よくわかったね。((千の呪文の男|サウザンドマスター))、((沈黙者|サイレンサー))。こんな簡単に見破られるとは思ってなかったよ」

「((本物|オリジナル))のマクギルはどうした? 殺したか?」

「ああ、今頃はメガロ湾の底だよ」

 

 ま、そんなところか。偽物となり替わられた本物の末路など。

 

「ごちゃごちゃと、うるせえ!」

 

 ((馬鹿|ナギ))一人が突撃するが、当然のように止められる。追撃でラカンも参戦するが、そこまで変化はない。奴の守りが想像以上に固すぎる。

 ((我|オレ))も、乱戦では奴のみに有効打を与える咒式が存在しない。真祖の力で思い切り右ストレートを打てば、障壁も何もかも無視して攻撃できなくもないが……説明が面倒だ。

 ガトウは論外。攻撃力が低すぎる。リュビは……どうするか。別に行けなくはないが……

 

「わしだ! マクギル議員だ! スプリングフィールド、ラカン、ヴァンデンバーグ、アラン、リュビ! 奴らは帝国のスパイだった! 奴らの仲間もだ! 今も狙われている。軍に連絡を……」

「「げ!」」

「しまった……!」

「あらら」

「む、タイムオーバーか」

 

 軍と喧嘩しようと、別に勝てないことはない。((我|オレ))の全力をもってすれば、魔法世界壊滅も夢ではない。

 が、そこに意味はない。逃げるか。手に炎を宿す。これは転移用のゲートとなる炎だが、普段のとは使用方法を違え……

 

「飛べ」

 

 他者めがけ放射する。傍目には火炎放射に見えるが、実際は単なる転移魔法。それなりの観察眼なくして見破るのは、不可能に近い。

 

「さて、((我|オレ))は別に指名手配されようと逃げ切る自信はあるが、此処は捨て台詞を吐き捨てて逃げさせてもらおう。『たとえ((我|オレ))を倒そうと、人の心に闇がある限り、第二・第三の((我|オレ))が現れるだろう』」

「……こういう場合は、『覚えてやがれ』とかじゃないのかい?」

「それはありきたりでつまらん。ではさらばだ」

 

 置き土産に電磁光学系咒式第四階位<((光条灼弩顕|レラージェ))>を発動し、眉間を貫いておく。近赤外線レーザーであるため、通常方法では目視不可能。咒印組成式で光学咒式であると理解できなくば、撃たれないかぎり知ることのできない残酷なものだ。

 が、穿った奴が水に変わるとは……くくく、既に逃げた後だったか。強かな奴だ。

 さて、((我|オレ))もそろそろ逃げるか。ナギとガトウとリュミスは((紅き翼|アラルブラ))の隠れ家に飛ばしたが……と、その前にタカミチらを回収するか。

 

「回収完了」

「え、何するんですか!?」

「ちょ、どうしたんですか!?」

 

 タカミチとクルトの背後に転移し、問答無用で二人を抱えあげたら、何故か怒鳴られた。

 しかたあるまい。簡潔かつ分かりやすく説明するか。

 

「((紅き翼|アラルブラ))が指名手配された。故に魔法世界の大半が敵だ」

「「!?」」

 

 納得したか、驚愕しすぎたか、動きが停止する。さて、隠れ家に飛ぶか。

 

 

 

 

 

「で、アリカは捕まったと。ナギ、回収して来い」

「はぁ!?」

 

 ものすごく意外そうな返答が来たが、惚れた弱みがあるだろ。逝ってこい。

説明
完全なる世界に与するものがいた。その罪を裁かんがため、マクギル議員に法務官を要請したが……
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大戦期 紅き翼 クロスオーバー 魔法先生ネギま! 

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