IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第十六話 〜解放〜 |
「ぐうううううう!!!」
「ク、クロウ!?」
間に合わないと判断したクロウは、バンカーでそのビーム攻撃を受け止めていた。
「クッ、クロウさん!!」
「何がどうなってんの!?」
鈴とセシリアも状況がつかめず、行動を起こせない。数秒後、攻撃が止むとクロウは((EAGLE|イーグル))の弾倉を通常弾に変更し、戦闘態勢をとった。
「くっそ、これは本気でマズイな・・・」
上空を見上げると、先ほどの敵ISと同型と思われるものが三機、アリーナ内に降下してくる所だった。
「ま、まだいたのかよ!!」
「・・・お前ら、((S・E|シールド・エネルギー))はどれほど残っている?」
クロウが三人に問いかける。敵はゆっくりと降下していて、あと一分もすればアリーナに到着するだろう距離に達していた。
「アタシはもうほとんど残ってないわ。戦闘はあと少ししかできそうにないわね」
「俺はもう限界に近い。白式を展開するだけで精一杯だ」
「わ、私はまだ戦えますわ!!」
三人の返答を聞いて、クロウは決断した。そして次の言葉を聞いた瞬間、三人の顔が驚愕に染まる。
「そうか・・・。じゃあ俺が時間を稼ぐ。お前らは今すぐに離脱しろ」
「そ、そんな!クロウだけを置いて行くなんて!!」
「そうですわ!私も戦います!!」
一夏とセシリアは抗議の声を上げるが、鈴は黙ったままだった。
「いいから言うことを聞け。鳳、二人を護衛しつつ離脱しろ」
「・・・あんたはどうするの?」
「さっきも言っただろ?なるべく時間を稼ぐだけだ」
「・・・分かったわ。一夏、セシリア、行きましょう」
「ふざけんな!クロウ、俺は嫌だぜ。残って戦う!!」
「私もお供しますわ!!」
鈴に急かされても、二人は動こうとはしなかった。クロウは静かに言い放つ。
「いい加減にしろ、二人とも。セシリアはともかく、客観的にみて、一夏はもう戦える状態じゃない。理解してくれ」
「「・・・」」
「俺だって死ぬつもりはないさ。適当なとこで切り上げて教師部隊に任せる」
その言葉を聞いて、ようやく理解したのか、嫌々ながらも従う二人。
「・・・くそっ、分かった」
「必ず、必ず無事でお戻りください!!」
そう言い残すと三人はクロウがVXブレイザーで開けた、ピットの出口へと撤退していった。
「さて、この場を乗り切るには・・・やるしかないか」
その時クロウの元に通信が入る。
≪ブルースト、何をするつもりだ!?≫
「織斑、生徒の避難状況は?」
≪そんなものどうでもいい!お前も早く退避しろ!!≫
教師として、生徒などどうでもいいと発言する事はどう考えてもおかしな物だったが今はそれに構っている時ではなかった。
「もう一度聞く。生徒の避難状況は?」
≪・・・もう完了している。後はお前と私だけだ≫
その間にも、三機の敵ISは降下し続けている。
「そうか、じゃあお前も脱出しろ」
≪馬鹿を言うな!お前一人残して行けるはず 「はっきり言う。邪魔だ」・・・≫
「このままだとお前も傷つけるかもしれねえ。早く退避しろ」
≪分かった。必ず帰ってこい≫
「了解だ。依頼を果たさないまま、死ぬつもりはない」
「必ずだぞ・・・」
しばらくすると、千冬の声が聞こえなくなっていった。目の前には先程と同型のISが三機。
「よう、お前ら。まだやるのか?」
「・・・」
敵は先程と同型機が三機、クロウをその頭部に付いているセンサーで捉えながら、仁王立ちしていた。
「お前らの後ろに誰がいようと知ったこっちゃねえ。だがな、これ以上俺の仲間をやらせる訳にはいかねえんだよ・・・」
クロウが静かにつぶやき、戦闘態勢に入る。
「この世界で使うのは初めてだからな。バラバラになっても恨むなよ!」
次の瞬間、ブラスタの胸のクリスタルから、緑色の光が濁流となって溢れ出す。
「VX、俺の意思に応えろ!!」
その言葉と共に、ブラスタの全身から、余剰エネルギーが吹き出す。クロウの瞳が金色に輝き、バイザーには“揺れる天秤のスフィア 起動”と表示されていた。それと共に、四基のSPIGOTがクロウの周囲に展開する。
「があああああ!!!」
クロウが咆哮したと思うと、次の瞬間。
「!?!?!?」
一体の敵ISがSPIGOTにより、バラバラにされていた。その光景を見て、他の敵も慌てて戦闘態勢に入り、ビームを発射するが
「邪魔だ!!!」
クロウはすべての攻撃をバンカーで防御、あるいは驚異的な機動力で回避する。十分な距離をとったクロウは攻撃に転ずる。
「消えろ!!!VXブレイザー!!!」
胸のクリスタルからレーザーが発射される。しかし先程アリーナのシールドを破壊した時とは違う点が一つあった。それは敵とクロウの間に四基のSPIGOTが列になって配置してあった。驚く事に、SPIGOTの中心部分をレーザーが通過するたび、レーザーがその直径を縮め、収束されていくのだった。シールドを簡単に消滅させる程の威力を誇るVXブレイザーが収束されたらどうなるか、その答えは敵が身をもって知ることとなった。
「!?!?!?」
収束されたVXブレイザーが敵ISの下から上へ両断するように直撃すると、その筋に沿う様に、敵がきれいに真っ二つになっていた。
「あと一機!」
クロウが最後の敵をさがすと、撤退していく敵の後ろ姿が見えた。
「逃がすかよ!!」
クロウはブラスタのスラスターを目一杯吹かす。次の瞬間
「!!!」
クロウは敵ISの真正面にいた。敵が驚き、腕での打撃を放つがクロウは軽々と避け、一旦距離をとる
「終わりだ!スパイカー、セット!!」
その掛け声と共に、EAGLEからエネルギーで形成された銃剣が現れる。
「VX、EAGLEに直結!!」
スパイカーの刀身に、一基のSPIGOTが通される。するとスパイカーの長さが何倍にも大きくなった。
「レディ・ゴーッ!」
クロウがスパイカーを敵に突き立て、そのまま地上へと加速する。敵ISは離脱しようと体を捻るが、しっかり刺さっているのか、全く取れない。
「これで終わりだ!スパイカー、バーストアップ!!」
EAGLEから出ているスパイカーの周りに、残りの三基のSPIGOTが集まる。次の瞬間、三基のSPIGOTの円の中心から、スパイカーと同じ刀身が形成され、計四本のスパイカーが敵を貫いた。
「!?!?!?」
ドゴオォォン!!!
クロウと敵ISは、共に地面に激突していった。舞い上がった粉塵が晴れた時、立ち上がったのは、
「・・・」
クロウが足元にある、先程までISだった鉄くずを冷ややかな目で見つめる。
「終わったか・・・」
その言葉が終わらないうちにクロウは地面に倒れ込んでしまった。いつの間にか、クロウの瞳は元の色に戻り、ブラスタの胸のクリスタルからの光も消えていた。
「(ああ、やっぱきついなこれ。周りに誰もいなくて本当によかったぜ・・・)」
段々とクロウの意識は沈んでいった。
「(まあいいか、とりあえず敵は倒したからな)」
その時、アリーナの出入口の方から声が聞こえた。
「クロウ!!」
「(あれ、あいつ何で・・・退避したはず・・・)」
クロウが最後に見たものは、自分の方に駆けてくる織斑千冬の姿だった。
説明 | ||
第十六話です。 |
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