ハイスクールD×D〜最強の戦車と最強の兵士(予定)〜 |
第一章
第七話「友達を助けるのに理由はいらない」
side静雄
兵藤が神父に襲撃されて翌日、俺は学校を休んで街を歩いていた。
何故、こんな事をしているかというと、実は先ほどリアスから、
『実は、イッセーに学校を休むように言ったのよ。それで、気になって自宅に電話したら家を出ているって・・・あの子の怪我はまだ完治していないの。そんな所を昨日の『はぐれ悪魔祓い』に見つかったら・・・それで静雄、イッセーを探してきてくれないかしら?』
という事で俺は学校をサボり兵藤を探している(祐斗も手伝うと言っていたが、周りから不良で通っている俺は兎も角優等生で通っている祐斗がサボったら不味いだろという事で、俺が一人で捜索している)のだが、
(ていうか、自分でまいた種だろうが、あの((女|アマ))。それを人に押し付けるか?つーか、一体何処に居やがんだよ?)
「あれ、静雄じゃねぇか?」
「あ、トムさん」
何の手がかりもないまま当てもなく探している俺に声をかけてきたのは、『田中トム』。ドレッドヘヤーが特徴で俺と朱乃の中学時代の先輩。現在は取り立ての仕事をしている。そして、俺のお得意の契約者でもある。
「どうしたんだ?こんな時間に・・・。まだ、学校がある時間だろう?」
「いや、ちょっと、人を探していて・・・」
「人?」
「ええ、歳は俺と同じで髪は茶髪、背丈は俺より小さくなんかエロそうな感じの奴なンすけど・・・」
「ん〜・・・・ああ、エロそうならともかくそれに近い奴ならさっき見かけたぞ」
「ま、マジですか!どこで!?」
意外な所で目撃情報を得た俺はトムさんに問いかけた。
「ああ、さっきゲーセンで遊んでいるのを見かけてな。隣に金髪の外人さんシスターもいて、学校サボって彼女とデートか、って思っちまったけど―――」
「金髪のシスター・・・・(堕天使の連中か!?)。ありがとう、トムさん!このお礼はいつか必ず!」
「お、おう!気をつけろよー!!」
金髪のシスターという言葉を訊いて、俺は急いでゲーセンへと向かった。
静雄sideout
〜児童公園〜
sideイッセー
俺こと、兵藤一誠は昨日、神父に足を撃たれた時のダメージが思いのほか残り、部長に休むようにいわれた。
でも、家でじっとしていると余計に色々なことを考えてしまい、気分転換に散歩してみたのだが、全然効果なく、逆に余計に考え込んでしまったのだが、その時、偶然にもアーシアと出会った。
彼女とは学校から帰る際に偶然に出会い、彼女と知り合った。
そして二回目の出会いは昨日の家で、部長から彼女が堕天使側の人間とは聞いていたけど、実際に会い俺が悪魔だと聞いた時の彼女の表情が今でも忘れられない。何だか、彼女を騙した様な気がした。そして、逃げる際に見せた彼女の笑みはやけに色濃く残っている。
そして今日、さっき偶然出会ったアーシアとハンバーガーショップで食事したりゲーセンに行って遊んだりして楽しく過ごし、その時UFOキャッチャーでとったラッチューくんを彼女は大事そうに持っている。
そして、だいぶ時間もたちもう夕方になり、児童公園で彼女と一杯話をした。
そして、ある一人の少女の話を聞いた。
『聖女』祭られた少女の末路だ。
その話を聞いた俺は、内心怒りが抑えれなくなった。
そんで、この世界のどこかにいる神様をぶん殴ってやりたい気持ちになった。
だって、あんまりだろ!彼女は何も悪くない!ただ怪我をしている人をほっとけなかった、それが偶々悪魔だっただけなのに何でこんな扱いを受けなくちゃならねぇんだ!!
ああそうさ、だから・・・・
「アーシア、俺が友達になってやる。いや、俺たち、もう友達だ」
俺の言葉に、アーシアはキョトンとしてしまった。
「あ、悪魔だけど、大丈夫。アーシアの命なんて取らないし、対価もいらない!気軽に呼びたい時に呼べばいい!あー、ケータイの番号も教えてやるからさ」
ポケットに手を突っ込んでケータイを取り出す。
「・・・・どうしてですか?」
「どうしてもこうしてもあるもんか!今日一日俺とアーシアは遊んだだろ?話しただろう?笑いあっただろう?なら、俺とアーシアは友達だ!悪魔だとか人間だとか、神様だとかそんなの関係ない!俺とアーシアは友達だ!」
「・・・それは悪魔の契約としてですか?」
「違うさ!俺とアーシアは本当の友達になるんだ!わけのわからない事は抜き!そういうのはなしだ!話したい時に話して、遊びたい時に遊んで、そうだ、買い物も今度付き合うよ!本だろうが花だろうが何度でも買いに行こう!な?」
我ながら下手な会話だと思う。色気も雰囲気もあったもんじゃない。木場ならこんなとき洒落た事が言えるだろうな。
けれど、アーシアは口元を手で抑えながら、再び涙を溢れ出させていた。
「イッセーさん。私、世間知らずです」
「これから俺と一緒に町へ繰り出せばいい!いろんなものを見て回れば、んなもん問題ないさ」
「・・・日本語も喋れません。。文化もわかりませんよ」
「俺が教えてやるよ!ことわざまで話せるようにしてやらぁ!俺に任せろ!何なら日本の文化遺産でも見て回ろうぜ!サムライ!スシ、ゲイシャだぞ!」
「・・・・友達と何を話していいかもわかりません」
俺はアーシアの手を強く握ってやる。
「今日一日、普通に話せたじゃないか。それでいいんだよ。俺たちはもう友達として話していたんだ」
「・・・・私と友達になってくれますか?」
「ああ、これからもよろしくな、アーシア」
その言葉に彼女は泣きながら笑って頷いてくれた。
ああ、そうさ!俺はこれからもアーシアを守っていく。彼女の笑顔を曇らせないためにな!
「無理よ」
俺の心中を否定するかのように、第三者の声が耳に入った。
声がした方向を向いて俺は絶句した。
そこにはよく見知った顔があったからだ。
「ゆ、夕麻ちゃん・・・・?」
黒髪がツヤツヤしたスレンダーな彼女。天野夕麻ちゃんの姿がそこにあった。
俺の驚いた声に彼女はクスクスとおかしそうに笑いを漏らす。
「へぇ、生きていたの?しかも悪魔?嘘、最悪じゃない」
その声はかわいらしい夕麻ちゃんの声ではなく、大人っぽく妖艶さを感じさせるものだった。
「・・・レイナーレさま・・・・」
アーシアが夕麻ちゃんをそう呼んだ。
レイナーレ?ああ、そうか。忘れてたよ。
天野夕麻は堕天使だ。そうでした。一瞬、その事を頭から消し去ってたよ。
なるほど、堕天使レイナーレ。それが彼女の本当の名前か。
「堕天使さんが、何か用かい?」
俺が話しかけると彼女は嘲笑する。
「汚らしい下級悪魔が気軽に私に話しかけないでちょうだいな」
「その子、アーシアは私たちの所有物なの。返してもらえないかしら?アーシア、逃げても無駄なのよ?」
逃げる?どういう事だ?
「・・・・嫌です。私、あの教会に戻りたくありません。人を殺す様な所に戻りたくありません。・・・それにあなたたちは私を・・・・」
ハッキリとアーシアは嫌悪の言葉で返す。
何があった?教会でいったい何があったんだ?
「そんなこと言わないでちょうだい、アーシア。あなたの((神器|セイクリッド・ギア))は私たちの計画に必要なのよ。ね、私と一緒に帰りましょう?これでもかなり探したのよ?あの、リアス・グレモリーの狂犬に見つからないように細心の注意を払ってね。あまり迷惑をかけないでちょうだい」
部長の狂犬?その意味は分からないがレイナーレは近づいて来る。アーシアは俺の陰に隠れる。彼女は恐怖で体が震えていた。
俺も彼女を庇うように前へ出る。
「待てよ。嫌がっているだろう?ゆう、いや、レイナーレさんよ、あんた、この子を連れて帰ってどうするつもりだ?」
「下級悪魔、私の名前を呼ぶな。私の名前が汚れる。あなたには私たち間の事は関係ない。さっさと主の元へ帰らないと、死ぬわよ?」
レイナーレは手に光りを集め出す
槍か?それと、何故か彼女は焦っている様な気がするのは気の所為か?
って、今はそんな事を考えている場合じゃない!アレで一度殺されたんだ、その前になんとか先手!
「セ、セイクリッド・ギア!」
俺が天に向かって叫ぶと、左腕を光りが覆い、赤い籠手に変貌する。
よし、成功!
例の形を取らなくても((神器|セイクリッド・ギア))を発動するように陰ながら練習したかいがあったぜ!
俺の((神器|セイクリッド・ギア))を見てレイナーレは一瞬虚を衝かれるが、すぐに哄笑をあげる。
「上の方々にあなたの((神器|セイクリッド・ギア))が危険だからと以前命を受けたわけだけど、どうやら、上の方々の見当違いだった様ね!」
心底可笑しそうに堕天使は嘲笑う。
なんだ?何がおかしいんだ?
「あなたの神器(セイクリッド・ギア)はありふれた物の一つよ。『((龍の手|トウワイス・クリティカル))』と呼ばれるもの。所有者の力を一定時間、倍にする力を持っているけれど、あなたの力が倍になったところで全く怖くないわ。本当、下級悪魔にはお似合いのシロモノね」
所有者の力を倍にする能力?それが俺の((神器|セイクリッド・ギア))の力なのか?
しかもありふれてるって・・・・。
だが、今はそれで十分だ。なんとかレイナーレを退けて、アーシアを連れてどこかへ逃げる!
どこかってどこだ?学校?
ダメだ。部長達に迷惑がかかる。
俺の家?家族にどう説明すればいいんだ?
・・・・ちくしょう。俺、アーシアの友達なのに連れて行く所がわかんねぇぞ!
あー!そんな事は後で考える!まずは目の前の堕天使を倒す!
くそ!元カノと戦うなんて最悪じゃないか!
なんで俺はこういのばっかなんだ!
「((神器|セイクリッド・ギア))!動きやがれ!俺の力を倍にしてくれんだろ!?動いて見せろ!」
そのとき、甲部分にある宝玉が光り出す。
『Boost!!』
音声が発せられた。瞬間、俺の体に力が流れ込んでくる。
よっし!これで――――。
ズンッ!
鈍い音がする。俺の腹部に光の槍が突き刺さっていた。
また投げられた・・・・。
「ちからが倍になっても、こんなに弱めて撃った槍すら撥ね返せない。一の力が倍の二になったところで、私との差は埋められないわ。よくわかったかしら?下級悪魔くん」
倒れこむ俺。
光は悪魔にとって猛毒。しかも腹部、これは――――。
激痛と死を覚悟した俺だが、体に痛みが走る事はなかった。
代わりに緑色の光が俺の体を包みこんでいた。
見ればアーシアが俺を治療してくれていた。俺の腹部へと手をあてて、治癒してくれている。
光の槍は徐々に小さくなっていき、次第に消えていった。
痛みは一切感じない。むしろアーシアの温かさを感じるくらいだ。
「アーシア。その悪魔を殺されたくなかったら、私と共に戻りなさい。あなたの((神器|セイクリッド・ギア))は我々の計画に必要なのよ。その力『((聖母の微笑|トワイライト・ヒーリング))はそこの下級悪魔くんの((神器|セイクリッド・ギア))と違って希少な((神器|セイクリッド・ギア))なの。応じないなら、その悪魔を殺すしかないわ」
レイナーレは冷酷な提示をしてくる。
俺の命が人質かよ!そうはさせるか!
「う、うるせぇ!お、おまえなんか―――」
「わかりました」
俺の言葉を遮ってアーシアは堕天使の提示を受け入れる。
「アーシア!」
「イッセーさん。今日は一日ありがとうございました。本当に楽しかったです」
彼女が浮かべる満面の笑み。俺の腹部の傷は完全に塞がった。
それを確認すると、レイナーレの方へ進みだす。
「いい子ね、アーシア。それでいいのよ。問題ないわ。今日の儀式であなたの苦悩は取り除かれるのだから・・・・ッ!?」
レイナーレがいやらしい笑みを浮かべながらアーシアを抱え込むと何かを察知したのか右手を真横につきだす。
次の瞬間、
ヒューーーーードガァンッ!!
「くぅっ!!」
「キャアアッ!?」
自動販売機がアーシアとレイナーレの方に向かって勢いよく飛んできた!?
レイナーレはそれを何とか受け止めてたが、威力が強かったのか少し後退し、飛んでいった方を睨みつけた。
俺は突然の事で何が何だか分からず、呆然としていると、
「み〜〜〜〜〜〜つ〜〜〜〜〜〜〜〜け〜〜〜〜〜〜た〜〜〜〜〜〜〜ぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
聞き覚えのある声にそちらを向くとこの町最強の男が立っていた。
イッセーsideout
side静雄
トムさんに教えられたゲーセンに向かった俺だが、そこにはもう兵藤はおらず、まだ近くにいると思いあたりを探そうとしたらこの前潰した族に絡まれ、一掃するのに時間がかかり児童公園に妙な臭いを感じて向かうと、兵藤とシスター、それに堕天使の女を確認した俺は、近くの自販機を持ち上げ勢いよく堕天使に向かいん投げた。
残念ながら受け止められたが、仕方ない。
「真昼間から随分と派手にやってくれるじゃねぇの、え?堕天使さんよぉ〜!!」
「リアス・グレモリーの狂犬め・・・!」
堕天使は金髪のシスターを抱えこちらに向き直る。
「ん?」
サングラスを制服の内ポケットに入れながら、倒れている奴を注視するとそいつが兵藤である事に気付いた。
更によく見ると兵藤の腹部にかなりの血が付いていた。
(堕天使の光の槍にやられたのか?にしちゃあそんなダメージを負っている風に見えねぇが・・・・)
一瞬考えたが、直ぐに止めて目の前の堕天使に意識を集中する。
ガシッ!
「家の若いもんが随分と世話になったみてぇじゃねぇか。昨日の一件と合わせて、落し前つけさせて貰おうかぁ!!え〜!?堕天使さんよぉーーー!!」
メキメキ・・・ボゴォッ!
俺は近くにあった街灯を掴むと引っこ抜き、勢いよく振りかぶる。
「ウオラアアァァアア!!!!!」
「チィッ!」
街灯を振りかぶりながら堕天使に向け突進すると、堕天使は光の槍を創りだしこちらに向けて撃ってきた。
「しゃらくせぇぇぇ!!」
「なっ!?」
飛んできた光の槍を片手で弾き、片手で街灯を振りかぶり堕天使に向けて投げつけた。
「喰らえぇぇぇぇ!!」
ブォンッ!!
「くっ!?」
飛来してきた街灯を堕天使は翼を広げ空高く飛びだして、かわした。
「逃げんなぁ!!」
「フ、フフフッ!狂犬、あなたの相手をしてるほど私も暇じゃないの。これから大事な儀式がるしね。それと、そこの下級悪魔。次に邪魔したら、その時は本当に殺すわ。じゃあね、イッセーくん」
そう言って堕天使はその場から転移した。
「クソッ!逃がしたか―――」
「アーシア・・・・」
悪態をつく俺の脚元で兵藤が(おそらく)シスターの名前を呼んだ。
「アーシアァァァァァァッ!!」
彼女の名前を呼ぶ兵藤はまるで自分の非力さを呪っているようだった。
「・・・・・立てるか?」
「・・・・・・」
俺の言葉に兵藤は無言のまま地面にふいていた。
「・・・・ったく」
俺は仕方なく兵藤を担ぎリアスの待つ部室へと足を進めた。
〜同日・駒王学園旧校舎オカルト研究部部室〜
パン!
部室に乾いた音が響き渡る。
兵藤がリアスに叩かれたのだ。
リアスの顔は何時になく厳しい。
「何度言ったらわかるの?ダメなものはダメよ。あのシスターの救出は認められないわ」
あの後、兵藤を部室に担ぎこんだ後、なにを思ったのか今までの事の詳細をリアスに報告した。
しかも、あのシスターを救出する事提案してきた。
当然リアスはこの一件に一切関わらないと言ったのだが、兵藤は納得できないのかリアスに詰め寄ったが、案の定叩かれた。
「なら、俺一人でも行きます。やっぱり、儀式って言うのが気になります。堕天使が裏で何かするにきまってます。アーシアの身に危険が及ばない保証なんてどこにもありませんから」
「あなたは本当に馬鹿なの?行けば確実に殺されるわ。もう生き返る事は出来ないのよ?それがわかっているの?」
リアスの言うとおりだ。俺や祐斗だったらいざ知らず、まだ悪魔として未熟な兵藤が行ったら確実に殺される。
「あなたの行動が私や他の部員にも多大な影響を及ぼすのよ!あなたはグレモリー眷属の悪魔なの!それを自覚しなさい!」
「では、俺を眷属から外してください。俺個人であの教会へ乗り込みます」
「そんなことできるわけないでしょう!どうしてわかってくれないの!?」
激昂するリアスだが覚悟を決めた目をした兵藤はもう止まんねぇだろう。
「俺はアーシア・アルジェントと友達になりました。アーシアは大事な友達です。俺は友達を見捨てることはできません!」
(ククッ・・・)
俺はその言葉に笑いが漏れた。だがその笑いは嘲りのものではなく、歓喜、感嘆のものだ。
ただのエロガキで情けねぇ半人前な奴かと思ったら、中々どうして、いっぱしな((漢気|おとこぎ))を魅せやがる。
「・・・・それはご立派ね。そういう事を面と向かって言えるのはすごいと思うわ。それでもそれとこれとは別よ。あなたが考えている以上に悪魔と堕天使の関係は簡単じゃないの。何百年、何千年と睨みあって来たのよ。隙を見せれば殺されるわ。彼らは敵なのだから」
「敵を消し飛ばすのがグレモリー眷属じゃなかったんですか?」
「・・・・・」
(こりゃあ、一本取られたな、リアス?)
リアスと兵藤―――いや、イッセーは睨みあった。
お互いに視線は外さない。
「あの子は元々神側の者。私たちとは根底から相容れない存在なの。いくら堕天使のもとへ降ったとしても私たち悪魔と敵同士である事には変わらないわ」
「アーシアは敵じゃないです!」
「だとしても私にとっても関係のない存在だわ。イッセー、彼女の事は忘れなさい」
力強く否定するイッセーだが、リアスは冷たく切り捨てる。
そこへ朱乃がリアスに耳打ちすると、リアスの表情が険しくなる。耳打ちする朱乃も表情が険しい。
(どうやら、何かあったな・・・)
「大事な用事ができたわ。私と朱乃はこれから少し外に出るわね」
「ぶ、部長!まだ話は終わって―――――」
「イッセー、あなたにいくつか話しておくことがあるわ。まず、一つ。あなたは『((兵士|ポーン))』を弱い駒だと思っているわね?どうなの?」
イッセーはリアスの問いに静かに肯定した。
「それは大きな間違いよ。『兵士』には他の駒には無い特殊な力があるの。それが『プロモーション』よ」
リアスの言葉にイッセーは訳がわからず困惑している。
「実際のテェス同様、『兵士』は相手陣地の最深部へ赴いたとき、昇格する事ができるの。『((王|キング))』以外のすべての駒に変化することが可能なのよ。イッセー、あなたは私が『敵の陣地』と認めた場所の一番重要な所へ、足を踏み入れたとき、『((王|キング))』以外の駒に変ずることができるの」
リアスの言葉にイッセーは理解したのか驚愕している。
「あなたは悪魔になって日が浅いから、最強の駒である『女王』へのプロモーションは負担がかかって、現時点では無理でしょう。けれど、それ以外の駒になら変化できる。心の中で強く『プロモーション』を願えば、あなたの能力に変化が訪れるわ」
ホント、お人よしだよな。コイツは・・・・。
「それともうひとつ。((神器|セイクリッド・ギア))について。イッセー、神器(セイクリッド・ギア)を使う際、これだけは覚えておいて」
リアスはイッセーの頬を撫でながら、
「―――想いなさい。神器(セイクリッド・ギア)は想いの力で動き出すの。そして、その力も決定するわ。あなたが悪魔でも、想いの力は消えないの。その力が強ければ強いほど、神器(セイクリッド・ギア)は応えるわ」
「最後にイッセー。絶対にこれだけは忘れないこと。『兵士』でも『王』は取れるわ。これは、テェスの基本よ。それは悪魔でも変わらない事実なの。あなたは、強くなれるわ」
(静雄。彼の事、頼むわね?)
(シー君。あまり無茶しないでね?)
(へいへい。分かったよ、ご主人様。そっちこそ気ぃ付けろよ?)
それだけ言うとリアスは朱乃と一緒に魔法陣からどこかへジャンプした。
ジャンプする寸前、リアスと朱乃から俺にだけ聞えるように念話を飛ばしてきて、苦笑しながら返事をした。
二人が消えた後、部室に残っているのは俺と祐斗、小猫にイッセーだ。
イッセーは大きく息を吐いて、意を決してこの場から去ろうとするが、
「兵藤くん」
祐斗が呼び止めた。
「行くのかい?」
「ああ、行く。行かないといけない。アーシアは友達だからな。俺が助けなくちゃいけないんだ」
「・・・・殺されるよ?いくら((神器|セイクリッド・ギア))を持っていても、プロモーションを使っても、エクソシストの集団と堕天使を一人で相手にはできない」
祐斗の正論にイッセーは怯むことなく、いや、承知した上で、
「それでも行く。例え死んでもアーシアだけは逃がす」
「いい覚悟、といいたい所だけど、やっぱり無謀だ」
「だったら、どうすりゃあいいんだ!」
怒鳴り出すイッセーに祐斗はキッパリと、
「僕も行く」
「なっ・・・」
イッセーには予想外だったのか一瞬言葉を失った。
「僕はアーシアさんをよく知らないけど、キミは僕たちの仲間だ。部長はああおっしゃったけど、僕はキミの意思を尊重したいと思う部分もある。それに個人的に堕天使や神父は好きじゃないんだ。憎いほどにね」
「・・・・」
祐斗の話しを俺は煙草に火をつけながら黙って聞いていた。
「部長もおっしゃていただろう?『私が敵の陣地と認めた場所の一番重要な所へ踏み入れたとき、王以外の駒に変ずることができる』って。これって、遠まわしに『その教会をリアス・グレモリーの敵がいる陣地だと認めた』ってことだよね」
「あっ」
まぁ、アイツは身内にはとことん甘いからな。でもそれを正直に口に出来ないところがあるからな。
「・・・・私も行きます」
「なっ、小猫ちゃん?」
「・・・二人だけでは不安です」
小猫の言葉にイッセーは感動したのか、
「感動した!俺は猛烈に感動したよ、小猫ちゃん!!」
「あ、あれ?ぼ、僕も一緒に行くんだけど・・・?っと、それで静雄君。君はどうするんだい?」
「えっ?」
「・・・・・」
態度の違うイッセーに困りながらも祐斗は今まで黙って成り行きを見ていた俺に問いかけてきた。
イッセーは不思議そうに、小猫は期待するようにして釣られるようにしてこちらに振り返った。
「フゥ〜・・・そうだな・・・」
俺はドア側の壁に寄りかかり煙草を吸いながら天井を見上げる。
「普通に考えりゃあ、俺はお前達を止めるべきなんだが、生憎と俺は仲間が戦地へ行くのを黙って見送るほどおとなしい性格じゃないんでなぁ・・・・」
煙草を携帯灰皿にいれ、制服の内ポケットにしまい、代わりに黒い革製の手袋を取り出す。
「付き合ってやろうじゃねぇか。お姫様救出作戦によォ!」
「い、行ってくれるんですか!?」
「勘違いすんなよ。正直、俺はアーシアって奴がどうなろうが知ったこっちゃねぇが、((仲間|ダチ))が危険な目にあわねぇ為に行くんだ」
おい、祐斗なんだその笑みは?コラ、小猫なんだそのヤレヤレって顔はよ?
俺はリアスと朱乃の二人に頼まれただけだからな?おい、コラ!
「んじゃあ、四人でいっちょう救出作戦といきますか!待ってろ、アーシア!」
気合の入ったイッセーの言葉に俺達四人は教会へ向かった。
説明 | ||
平和島静雄の肉体に悪魔の駒の『戦車』の能力をプラスしたら?という妄想で書いた小説です。 |
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