英雄伝説〜光と闇の軌跡〜 59 |
その後ハーブティーとアップルパイをご馳走になったエステルとヨシュアはしばらくの間、テレサやクロ―ゼと世間話をした後宿酒場で待たせているリフィア達の事を思い出し、テレサに別れをつげてクロ―ゼと共に孤児院を出た。
〜マーシア孤児院・入口〜
「うーん、テレサ院長ってあったかい感じのする人よね」
「そうだね……お母さんって感じの人かな」
「ふふ、子供たちにとっては本当のお母さんと同じですから。」
3人がテレサの事について話していた時、白ハヤブサのジークが来てクロ―ゼの肩に止まった。
「ジーク。待っていてくれたの?」
「ピュイ」
「うん、そうなの。悪い人たちじゃなかったの。エステルさんとヨシュアさんっていってね。あなたも覚えていてくれる?」
「ピューイ!」
「ふふ、いい子ね。」
「す、すごい。その子と喋れるの?」
ジークと会話している風に見えるクロ―ゼを見てエステルは驚いた。
「さすがに喋れませんけど、何が言いたいのかは判ります。お互いの気持ちが通じ合ってるっていうか……」
「ほえ〜……」
クロ―ゼの言葉にエステルは感心した。
「相思相愛ってわけだね。」
「はい。」
ヨシュアの言葉をクロ―ゼは否定せず頷いた。
「こんにちは、ジーク。あたしエステル、よろしくね♪」
「ピュイ?……ピュイ―――――ッ」
ジークに話しかけたエステルだったがジークは飛び立って行った。
「ああっ……。しくしく、フラれちゃった。」
「はは、残念だったね。」
「いいもん。あたしにはパズモ達がいるんだから、悔しくなんてないもん!」
ヨシュアの言葉にエステルはすねながら答えた。
「あの……そのパズモという方はエステルさんのお知り合いか何かですか?」
エステルの言葉が気になったクロ―ゼは尋ねた。
「あ、そうだね。見て貰えばわかるわ。……パズモ、サエラブ、テトリ!みんな、出ておいで!」
エステルは自分に同化している精霊達や幻獣を呼んだ。呼ばれたパズモ達はエステル達の前に姿を現した。
「え!?これは一体……!」
初めて見る召喚されたパズモ達の姿の現れ方を見てクロ―ゼは驚いた。
「えへへ……この子があたしが小さい時からずっといっしょにいてくれている友達のパズモよ!」
(よろしくね。)
「えっと……もしかして、妖精……なんですか?」
クロ―ゼはパズモを見て驚いた表情で尋ねた。
「うん。と言ってもこの世界の精霊じゃないよ。パズモもそうだけど、こっちのサエラブやテトリもみんな異世界に住む幻獣や精霊なんだ!」
「まあ……!そうだったんですか!異世界に住む種族と言えば”闇夜の眷属”しか知りませんでしたが、そのようなお伽噺でしか出てこない存在もいたんですね……!」
「あはは……そんな風に言われると照れちゃいます。」
(フン、くだらん。)
自分達の存在を感動しているクロ―ゼを見てテトリは照れ、サエラブは興味なさげに鼻をならした。
「えっ……今の声は……!?」
クロ―ゼは頭に響く初めてのサエラブによる念話に驚いて辺りを見回した。
「あ、そうか。クロ―ゼさんは念話の事を知らないんだったわね。」
念話に驚いているクロ―ゼにエステルが説明した。
「……そうなんですか。口にすることもなく、お互いの気持ちを伝えあうなんで素敵ですね……!私もエステルさんのようにジークと直に話してみたいです。」
「えへへ、ちょっと照れちゃうな。」
念話の事を理解したクロ―ゼはエステルを尊敬の眼差しで見て、見られたエステルは照れた。
「エステル……自慢する気持ちはわからないでもないけど、プリネ達の事を忘れていない?」
「あ……いっけない!みんな、出て来て早々で悪いんだけど一端戻って!」
(はいはい。)
(……用もなく我を呼ぶでないぞ。)
「わかりました。」
パズモ達はそれぞれまた、光の玉となってエステルの身体に入った。
「じゃ、プリネ達を迎えに行きますか。」
「そうだね。クロ―ゼさんもよかったら途中まで送るよ。」
「ありがとうございます。あの……ルーアンのギルドでしたら私、何回か行った事があります。よかったら案内しましょうか?」
「わ、いいの?すごく助かっちゃうけど。」
「君の方は大丈夫?すぐに学園に戻らなくて。」
クロ―ゼの申し出にエステルは喜び、ヨシュアは確認した。
「はい。今日一日は外出許可を貰っていますから。夜までに戻れば大丈夫です。」
「それじゃ決まりね♪じゃあ、まずはプリネ達と合流しましょうか!」
「?さっきから気になっていたんですが、エステルさんとヨシュアさんのお二人で旅をしていたのではいないのですか?」
エステルの言葉に疑問を持ったクロ―ゼは尋ねた。
「うん。ちょっと事情があってね。メンフィルの貴族の人達と旅をしているんだ!」
「メン……フィル……の……貴族の方……ですか。どうしてエステルさん達と?」
エステル達の同行者の身分を知ったクロ―ゼは一瞬固まった後、気を取り直して尋ねた。
「それは歩きながら話すわ。」
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。プリネ達は”闇夜の眷属”で貴族だけど僕達と比べて見た目も変わりない人達だし、3人共気さくな人達だからクロ―ゼさんも彼女達とすぐ打解けれるよ。」
緊張しているように見えるクロ―ゼにヨシュアは微笑しながら答えた。そしてクロ―ゼを加えたエステル達は途中でその場からいなくなったクラムから謝罪を受けた後、マノリア村の宿酒場に向かった。
〜マノリア村宿酒場・白の木蓮亭〜
「おまたせ、3人共。結構待たせちゃったかしら?」
「いいえ、大丈夫ですよ。今、食後の休憩をしていたところでしたから。」
「ん……人が増えてるね。誰?」
エヴリーヌはクロ―ゼを見て尋ねた。
「ジェニス王立学園に通うクロ―ゼ・リンツと申します。エステルさん達とは縁あってルーアンの案内をする事にしました。」
「プリネ・ルーハンスです。将来就く仕事のためにエステルさん達といっしょに旅をしています。よろしくお願いしますね。」
「……私、エヴリーヌ。」
「プリネの姉のリフィアだ。……………ん?クロ―ゼといったな。お前とはどこかで会ったような気がするんだが……」
クロ―ゼの顔をよく見たリフィアは首を傾げて呟いた。
「(え……!?どうしてリフィア殿下がここに……!?じゃあもしかして、こちらの方はリウイ皇帝陛下とペテレーネ様のご息女……!?)えっと……人違いだと思います。私の知り合いの方にメンフィル出身の方はいらっしゃいませんから……」
幼い頃、ある場所で祖母に促されてリフィアと会って挨拶をして、リフィアの正体を知っているクロ―ゼは表情には出さず心の中でリフィアが目の前にいる事に驚き、プリネの名を聞いた後メンフィル皇族の直系――マーシルン家の中で唯一自分と同じぐらいの年の皇女の存在がいた事を思い出し、察しがついて驚いた。そして隠している自分の正体が悟られないために誤魔化した。
「ふむ、そうか。まあいい、それよりルーアンとやらに向かうぞ。今度はどんな街か今から楽しみだ。」
「了解、じゃあ行こうか。みんな。」
リフィアの言葉に頷いたヨシュアは全員にルーアンに向かうよう促した。そしてクロ―ゼを加えたエステル達はルーアンに向かい始めた………
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第59話 | ||
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