IS『に』転生ってふざけんな! 第12話
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『本当に愚かな人間だ』と、俺は心からそう思った。いや、今は人間ですらないから、これは間違いだな。『愚かなIS』とでも言ったものか。使用者の足を引っ張りまくった挙句、その命を危険に晒すようなISなど、愚かどころかとんでもない欠陥機だが。

 

そう思うに至った理由は、あの兎の妹たる篠ノ之箒を、戦意がないのにも拘らず殴打してしまったことに他ならない。

 

 

悪いのは箒ではない。だが、俺は【篠ノ之束の妹】という、ただそれだけの理由で八つ当たりしてしまった。この行為は許されるものではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――だが、俺はその行動を後悔したりはしない。

 

 

 

 

今の俺にとっての脅威は、白式の零落白夜と、紅椿の絢爛舞踏の2つが揃ったときだ。他のヤツらは福音の性能を持ってすればなんとかなる。

 

もし箒が鈴に叱咤されても戦場に姿を現わせなければ、例え白式が第2形態で姿を見せようとも、その性能はほとんど生かされない。

 

 

だから、俺がとった行動は正しかった。今はそう思う事にしている。

 

 

 

 

 

 

 

そうしなければ、何かに押し潰されてしまいそうだったから―――――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

箒は、目の前で気を失っている一夏を前に、自分の行いを悔やんでいた。

リボンを失ったことで垂れ下がった髪が、まるで彼女の今の気持ちを表しているかのようだった。

 

しかし、彼女の額や腕などにも白い包帯が巻かれている。そんなことは、全く気にしていないようだが。

 

 

 

また別の部屋では――――織斑千冬、山田麻耶をはじめとする教員数名が、福音に何かしらの変化が見られないかと、送られてくる情報を処理していた。しかし、特にこれと言った変化はない。

 

 

そんなもどかしい空気の中、千冬はある疑問を抱いていた。

 

 

 

 

それは、『福音の行動に、人間性が垣間見れたから』だ。

 

米軍からの情報によれば、福音の操縦者、ナターシャ・ファイルスは、意識不明の状態であると確認できたらしい。という事は福音はまさに、操縦者の意に反して行動している――――つまり、暴走しているのだ。

 

機械であるはずのISが、効率的ではないやり方で箒と紅椿を攻撃するだろうか。千冬が解らないのはそこだった。

 

 

ISには、確かに意識に似たようなものがある。しかしそれは、あくまで作られた意識であって、効率性を最優先する機械の特性を失っているわけではない。

 

 

 

そこで、千冬の頭にある仮説が浮かび上がる。

 

それは、『福音にある深層意識が進化し、人のそれに近くなった』というものであった。

だがその仮説通りだと、福音は箒に対して強い恨みのようなものがあるという事に繋がる。今まで一度も接触がなかったのに、恨みを持つなど考えられない。

 

 

 

――――と、なれば。

 

 

 

「……また、お前は何かしたのか」

 

 

ボソッと呟いた彼女の不機嫌そうな声は、誰の耳にも性格には伝わらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1度目の戦闘から何時間が経っただろうか。

 

俺は命令された地点で、何もせず、ただじっと次の攻撃が来るのを待っていた。

 

 

 

 

ドォォォンッ!!

 

 

 

 

だが、どうやらそれもここまでらしい。

 

 

俺の頭部に高速で飛来してきた弾丸が、大爆発を巻き起こした。これは、開戦の狼煙だ。

 

 

 

 

 

始まったのだ。暴走した欠陥機であるこの俺と、代表候補生4人・第4世代機1機による、1人の天災によって引き起こされた、ナターシャさんの命が賭けられた戦争が。

 

 

 

 

 

 

 

俺は、弾丸が飛んできた方向へ―――――飛び出した。

説明
これは、米国の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』に憑依転生してしまった少年と、その操縦者であるナターシャ・ファイルスの噺である。
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