IS『に』転生ってふざけんな! 第13話 |
この狙撃は――――ラウラだったか。AICは色々と面倒そうだが、抜穴はある。
それは、圧倒的な機動力。AICが発動する前に殴ればいい。そんな至極単純な事で、リーダー格である彼女を一瞬で戦線から退かせることができる。
ラウラのレールカノンによる狙撃を躱しながら、超高速で距離を詰める。そして、俺の冷たい手がその小さな頭を握りつぶすために迫った。
が、その手が彼女に触れることはなかった。上空から高速で強襲してきた青い機体に蹴り飛ばされたのだ。
そして、姿勢制御をして飛んでくるBTレーザーを躱す。だが背後からショットガンの狙撃を浴び、反撃をさせてはくれなかった。
動き方が上手すぎる。それぞれの役割が予め決められていて、それをノルマ以上にこなしてくれている。流石は代表候補生と言ったところか。
(だが、それでも――――――ッ!!)
俺はシャルロットのショットガンに撃たれ続けながら、その実弾から逃げつつエネルギー弾を連射する。だが、それは緑色のエネルギーシールドに阻まれる。
ショットガンによる牽制が一時的に止むと、今度はセシリアとラウラ、低高度にいたらしい鈴が俺を狙い撃つ。
しかし、ビットの無いブルー・ティアーズ。可視化した衝撃砲。AICを使えない距離。決定力の無い第2世代。条件は、俺にとって決して悪くなかった。
まずは誰から潰そうか。俺が狙いを絞り始めた瞬間だった。
「はああああ!!!」
唯一の第4世代機・紅椿を駆る、篠ノ之箒が両手に刀を携えて斬りかかってきた。
(あの女、まだ闘えたのか………!!?)
俺は迎撃しようと構えたが、それは囮。見当違いの方向へ飛んで行ったと思ったら、その後方にいた鈴の熱殻衝撃砲が飛来する。俺はそれを直撃してしまった。
痛い。神経が焼かれるようだ。だが、それでも怯むわけにはいかない!
(全員これで、くたばりやがれェェェッ!!!!!)
身体を捻り、《銀の鐘(シルバー・ベル)》を発動。最大火力で放ったそれは、直撃すればたとえ1つでも大ダメージが期待できる。
「もらったあああっ!!!」
鈴がエネルギー弾を身体中に浴びながら接近し、双天牙月で攻撃しながら至近距離で熱殻衝撃砲を乱射。《銀の鐘》のモーション中は回避ができないので、俺はそれを耐える事しかできない。
(ぐあぁぁぁぁぁっ!!?)
今まで味わったことの無い激痛に、俺は叫ぶ事しかできない。なぜなら、頭から生えていた翼のような多方向推進翼が破壊されたからだ。
そして、その直後に紅椿が両手に刀を携えて特攻してくる。
迎撃は間に合わない。そんなギリギリのタイミングで強襲された俺は、その斬撃を手で受け止める。
このままでは、原作の二の舞だ。だが、そうなってはならない。そうさせるわけには……いかない!!
紅椿の攻撃を押し返し、上に乗りかかるような姿勢になる。そしてそのまま最高速度で加速し、空から地に、斜めに押し進んでいく。
ズガガガガガガガ!!!!
点在していた島の1つに紅椿の背中が激突し、岩肌を削りながら進んでいく。
刀を手放し上空に舞い上がった俺は、倒れたままの箒に対して残った翼からエネルギー弾を可能な限り撃ちまくる。
(これで、本当に終りだ………!)
「箒っ!!」
「箒さん!!」
「貴様、よくも仲間をッ!!」
まず飛んできたのは、ラウラの砲撃。そこからさらにBTレーザー、アサルトライフルによる狙撃。一気に2人の戦力……決定打となり得る紅椿と、攻撃型の甲龍を失った事で、その攻撃による空間制圧力は下がっていた。
勝てる。そう俺が確信し始めた時だった。
「まだ、私は終ってないぞ―――――ッ!!!」
まだ絶ち消えない砂埃の中から、紅い機体が飛び出してきた!
ガギィィィン!!
そして、俺の背後から接近したそれは―――――残った最後の翼も、俺から奪っていった。
(篠ノ之……箒ィィィィィィィィ!!!!!)
落下しながら、俺を見下すあの女の名を、俺は叫ぶ事しかできなかった。
『キァァァァァァ!!!!』
福音が初めて、声を上げた。俺の誰にも聞こえない叫びを、代弁するかのように。
ザバァン………!
海面に叩きつけられ、斬り捨てられた翼が視界に入ってきた。
シールドエネルギーは、まだ僅かに残っている。まだナターシャさんは死んでいない。
だが、もうこれだけでは戦闘を継続するのは無理だ。翼が、無いのだから。
(……欲しい、翼が………圧倒的な力が―――――!)
海の底に沈んでいく中、俺は光る海面へと手を伸ばす。
すると、海面の光が強くなっていった。
そして、俺はあの教会のような空間に1人で立っていた。
―――欲しいか? 力が―――
目の前にそびえる十字架から、何者かの声が聞こえた。
それに対し、俺は一片の不信感も持たずに即答した。
「ああ! 力が必要なんだ! 今すぐに!!」
その後、僅かな沈黙が流れる。それは5秒にも満たなかったのかもしれないが、俺にとっては何時間にも感じた。
―――……よかろう―――
――私はお前。お前は私。一心同体の存在だ――
―――――この力、お前に託そう―――――
一方、空では福音が海に沈んだのを見届けた4人が、静かに海面を見守っていた。だが、福音は姿を見せない。これで終ったのだ、と彼女らは皆、思っていた。
――――だが、それは一時の休息でしかなかったのだとすぐに思い知らされた。
海水が光り出し、押し上げられるように盛り上がる。そして、その押し上げられた海水が爆ぜた。
そこから現れたのは……ビリ、ビリと弾けるような白雷を纏った、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)。
頭からエネルギーでできた翼が生え、その存在感を圧倒的な物にしている。
さらに右手には、強い威圧感を与える武器が握られている。
それは、2メートル近い長さを誇る大剣。
銘は―――――《ガラティーン》―――――!
説明 | ||
これは、米国の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』に憑依転生してしまった少年と、その操縦者であるナターシャ・ファイルスの噺である。 | ||
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