境界線上のクロニクル9 |
「それで、何であんたはここにいるの?小狼」
と武蔵の甲板上で喜美の隣の椅子に座っている小狼に聞いた。
「ああ、ネシンバラに止められてな。「君はここで待機」と」
「ふ〜ん、ねえ同人作家、小狼をここに待機させた理由は何?」
と皆に指示しているネシンバラが
「簡単な事だよ、彼の左足を見てごらん」
皆が小狼の左足を見てみると大量の治療用の符が貼られていた。
「浅間君に見てもらったけど、骨が軽く折れてたそうだよ。おそらくだけど、ガリレオとの戦闘のせいだね。違うかい?」
とその回答に、
「Jud、だが無理をすれば戦闘にも支障はないよ。今は非常時なんだから一人でも多い方がいいと思うけどね」
と不満げに言うと
「駄目だよ、君は武蔵において本田君に次ぐ戦闘力を有してるんだ、これからの戦いには必須だからね。だから今は治療に専念してもらうよ。
それにこのことに関しては葵君や皆も了承済みだからね」
断言されてしまった。
「それにしてもあんた、まだそんな戦い方をしてんの?毎回あんたの怪我を治療する浅間が泣くわよ」
と喜美が茶化した。
「いやあの時、ガリレオと離されていたらおそらく本田君は間に合わなかっただろうし、それにある種、各国に強烈な印象を植え付けたと思っていいよ」
とネシンバラがフォローした。
「それにしても何だいその刀は?」
小狼が持っている刀に興味を示した。
「三河製の{緋炎}という名の刀だ。先ほど使用者登録の時に分かった。だがなぜかは知らないが鞘の部分がロックされてて、刀身が抜けないんだ」
と小狼は刀を引き抜くそぶりをした。
「うーん、三河製ということは元信公お手製という事だよね。予想としては蜻蛉切と同じように何かの大罪武装の試作品という感じかな」
「俺も同感なんだが、大罪武装自体各国の機密事項だからな。使用条件に関してはサッパリだ」
お手上げといった状態であった。
「武蔵様!−−トレス・エスパニア警護艦から高出力の流体反応が!」
浅草が、シンプルなサインフレームでの通神を行ってきた。それは、
「主砲である流体砲です!二十五センチ三十八口径長、術式操作があります。−−−−以上」
言葉と同時に、南西の空に光が炸裂した。
トレス・エスパニアの流体砲を武蔵が多くの重力障壁で防いで逸らした。
逸らした流体砲で舞い上がって煙となる土砂と、吹き飛ばされた木々に対し、武蔵は振り向かない。
無言で構える彼女に対し、サインフレーム内の浅草が、
「武蔵様!お見事です!ーーー以上」
「いえ、今のは、向こうの狙いが甘かっただけです。麓側からゆえ、
こちらが見えていないのでしょう。次は直撃だと判断できますがーーー」
南西から淡い光が見えた。二射目の準備だ。
「−−浅間様。宜しくお願いいたします。−−−以上」
「はい」
通信に答えたのは白と赤の衣装、左右の腰に赤のバインダースカートを纏っていた浅間が、こう乗った。
「−−浅間神社は、武蔵を守るために、その力を使用いたします」
小狼はそんな浅間を見ていると
「そういえば小狼君って、浅間君と結構仲がいいよね」
とネシンバラが聞いてきた。すると
「そうなのよ同人作家!浅間ったら小狼が武蔵に来てから何かと世話をしたりしてねえ。ああそういえばあの事件だったかしら?
浅間が小狼のことを気ーーーーー」
「喜美ーー!!それ以上は許しませんよーー!」
と大きな声で浅間が話を遮った。
そんな二人を尻目にネシンバラが、
「小狼君、いったいあの事件っていうのは何があったんだい?」
とサインフレーム越しに聞いてきた。
「いやすまない、実は俺もよく覚えていないんだ。起きてみたらもう病院の処置室で詳しいことを知っているのは浅間と喜美、
あとはトーリぐらいだったかな」
「へえ、小狼君の過去バナは聞かないからな。興味が出てきたよ、あとで聞いてもいいかな喜美君?」
「ええ、いいわよ。浅間と小狼のエピソードならいくらでもあるから教えてあげるわー!
そうねえじゃあ、ホライゾンを救ったあとの宴会にでも暴露するかしらね」
「Jud、皆聞いてたね、何が何でもアリアダスト君を助けるよ!」
「「Jud!!」」
とサインフレームから皆の声が聞こえた。
「そんなに面白い話でもないと思うけどなあ」
と浅間が騒いでいる横で、小狼は呟いた
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