恋姫の世界に行ってくる 第七幕
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結局、村の皆には被害は無かった。

俺が後ろに流してしまった賊が数人、村を襲ったが、

その頃には避難も完了しており、盗むものも無く、

公孫賛軍の到着の報せを受けて、逃げていったそうだ。

 

俺はあの後、部屋を返してしまったので寝る場所がなく、

仕方が無いので、村の端の方にある木の下に寝転び、一夜を過ごした。

 

次の日の早朝。まだ日も登っていない時間に目が覚め、

顔を洗い、出立の準備をし、黒兎に荷物を載せ、村の入り口まで行った。

 

するとそこには、

 

「もう行かれるのですか。些か寂しい出立ですな。」

 

「趙雲か・・・こんな心の無い人間に何かようか?」

 

そこには、少しの暗がりでも分かる、白を基準にした服を着た趙雲の姿があった。

 

「心のないか・・・そんな人間がその馬に乗れるとは思えませぬが。」

 

「黒兎の事か、そういや公孫賛のとこにも行ってたとは聞いたが。

 乗れなかったのか?」

 

趙雲程の武人を乗せないとは、なんて頑固なやつなんだこいつは。

 

そういうと、趙雲は肩をすくめ、

 

「かなり自信はあったんですが、見事に振られました。そんな人を選ぶ馬を乗りこなしているので  す。

 人を殺してもなんとも思わない冷徹な人間な訳がないと思いますが?」

 

「まあ、どう思おうがお前の勝手だ・・・それで、何か用か?

 こんなことを話すために早起きした訳ではないだろう。」

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劉備達を連れてこないという事は個人的に聞きたいことなんだろう。

 

「劉備達に聞かれたく無い話なんじゃないのか。そうなら早くしないと、

 誰かに見られるぞ。」

 

そいういと、趙雲は驚いた顔をして、

 

「・・・なぜそう思われた。」

 

「ただ普通に、別れを言うような間柄ではないし、俺は今日村を出るとは言ったが、

 今日のいつ頃出るかは言っていなかった。それなのに、こんな早朝にばったり会うのを、

 偶然とでも言う気か?」

 

「ふっ、どうやら武だけでなく、智も兼ね備えているようだ。」

 

「智なんかではない。考えれば簡単に分かることだ。」

 

某、見た目は子供、頭脳は大人な人に比べれば、別に凄いことでもない。

 

「ハハハッ、本当に面白い御仁だな。あれだけの武と、今の様な智を持っていながら、

 戦う理由を持っていないとは。」

 

はぁ、そろそろ出たいんだが・・・

 

「無駄話をするんだったら、今すぐ出立したいんだが。」

 

「おお、すみませぬ。なに、いくつか聞きたいことがあったまで。

 貴方は、本当に殺した人に対して何も思わないのか?」

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「そうだな、俺の殺した奴には何も思わないな・・・」

 

「殺した奴には、というと誰に対しては思われるので?」

 

「自分に対して・・・だな。」

 

「自分ですか・・・何故?」

 

「なんつうか、人を殺しても何も思わない自分が人間じゃ無いと思えてくんだよな・・・ 

 別に、人を殺したい訳じゃない。出来れば殺したくない、そう思っていた。

 けどいざ殺してみたら、何も感じない。殺した直後に自分の太刀の名前を考えられるほど、

 人の生死が気にならない、

 そんな自分が人間じゃないって思えた、そんな事を思ってたな・・・」

 

長々と喋ったわりには纏まってねぇな。

 

「昨日あの後考えたのだ。人が死んでもなんとも思わない人間が、いくら世話になったから

 といって、助けるような真似をするだろうかと。だから、聞きたくてな。

 貴方が本当に何も感じなかったのかを。

 自分が人間で無いと思えてくるか、ふっ、やはり私の勘違いだったようだ。

 

 貴方は自分が人間では無いのかもしれないと言った。

 しかしそれは違う、自分がおかしいと思える貴方は人間だ。

 この趙子龍の名に誓ってな。」

 

自分がおかしいと思える、か。そんな事は考えなかったな。

 

「礼を言うぞ趙雲。お前のおかげで何か見えた気がする。」

 

「いた、こちらは貴方に謝らねば。昨日は何も知らずにあのような事を言ってしまった。

 すまない。」

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「なに、気にするな。俺もお前の立場でもう少し心があれば、怒鳴っただろう。」

 

「ですから、貴方には心はありますぞ。優しい心が。」

 

優しい心か、あるといいがな。

 

「それで、なぜ劉備には聞かせたくなかったんだ?」

 

「ああ、いや。桃香殿は問題ないのだが、愛紗、関羽の方が少し。

 あの後かなりキレましてな。やれ「桃香様の理想を侮辱した!」「次に会ったらたたっ切る。」

 など手を付けられなくて。ですから、会ったと知ったらややこしくなるので・・・」

 

相変わらずの、桃香LOVEか。そういう所は夏侯惇と一緒だな。

 

「そうか、中々に大変だな。」

 

「それで、先ほどのお詫びの印に真名を受け取ってくださらないか?」

 

・・・毎度思うが、真名って神聖な物とか言ってるけど、かなり軽いよな。

 

「いいのか、俺みたいなのに預けて?」

 

「この趙子龍。人を見る目は人並み以上あると思ってますぞ。」

 

「分かった。」

 

「では、性は趙、名は雲、字は子龍。真名は星だ。」

 

こういう時は俺も預けるんだったな。

 

「海斗だ。よろしくな星。」

 

「こちらこそ。海斗殿。」

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かなり話し込んでしまったな。・・・少しだけ意趣返しといこうか。

 

「星、ちょっとこっちに来てくれ。」

 

そう言って、手招きをする。

 

「どうなされた?何か贈り物でもくださるのか。」

 

そう言いながらこっちに来た星に軽く抱きつく。

 

「な、本当にどうなされた。いきなり抱きつくなど。」

 

反応がイマイチだな。ああ、そうか。

 

「なあ、星。恥ずかしくないのか?」

 

「恥ずかしいも何も、女同士ですから問題無いでしょう。海斗殿がそっちの趣味が 

 あるなら別ですが。」

 

そう言いながらニヤニヤする星を見たあと、星を離し、黒兎に跨る。

 

「星、ついでに良いことを教えてやる。」

 

「ん、なんですかな?」

 

「俺は男だ。」

 

そう言った直後の星の顔は、多分一生忘れられないだろう。

 

「な、え。お、男?だがこんなに「じゃあな、星。」ま!待ってくだされ海斗殿!」

 

そう言ってる星の顔が真っ赤なのを確認した俺は、一目散に逃げた。

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<星サイド>

 

行ってしまわれた。

だが、自分でも顔が真っ赤になっているのがわかるぐらい顔が熱い。

 

「これは海斗殿に一本取られましたな・・・ですが、こんどは私が。」

 

覚えておいてくだされよ。この趙子龍が本気でやり返して見せましょう。

 

 

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あとがき

 

 

やっと海斗君を旅に出せたnontanです。

 

やっぱり、星はいいですね。あの女の魅力を出しつつも初心な一面もある感じが。

 

 

 

次から旅編です。

 

とりあえずは、大陸を右回りで旅していきます。

 

 

 

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