紅い嵐と蒼い雷
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ーーー≪緊急事態|アラート≫

 

ーーー某国、某都市において死都発生

 

ーーー生存者ゼロを確認

 

ーーー死都内において、成り立てと思われる死徒を複数確認、徒党を組んでいると判断

 

ーーー死徒達は|食人鬼(グール)の制御を放棄している模様

 

ーーー死都は現在も拡大中

 

ーーー至急埋葬機関の応援を求む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー回答

 

ーーー現状において救援の人員を送ることは困難

 

ーーー急行できる代行者に該当者なし

 

ーーーしかし、一刻の猶予も無いと判断

 

ーーー外部協力者”二名”の派遣を決定

 

ーーー処理を一任する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・ご・・・」

「あぁあぁぁ・・・」

 

 

 

 

 

 

死せる者の都、生きる者の存在しない町。

 

町を満たすは人に非ず。

 

其は死者、呪いによりて地に縛られ、天の門を叩く事の出来ない哀れな亡者。

 

蠢き・・・嘆き・・・喘ぎ・・・貪り・・・貪りながら彼の者達は望む。

 

一人でも多くの同胞をと・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「雄雄雄雄雄雄雄雄雄!!!」

 

 

 

 

 

 

 

闇を駆けるは解き放たれた蒼の獣。

 

風を追い越し、音と共に疾走する。

 

その紅の穂先に慈悲は無く。

 

放たれるそれは朱の閃光・・・全てを穿ちえぐる魔弾。

 

薙ぎ払われるそれは・・・哀れな犠牲者達の鎖を刈り取る赤き死神の鎌。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ、めんどくせー成りたての|吸血鬼(ぺーぺー)のくせに数ばっかそろえやがって!」

「不満か、ランサー?君の求めていた闘争だぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

降り注ぐ色は鋼鉄。

 

鋭利な姿は剣。

 

無数の切っ先に慈悲はなく。

 

射抜き・・・切り裂き・・・全ての幻想を打ち砕くとばかりに・・・破壊する。

 

 

 

 

 

 

 

「は!手前も気分が乗っているようには見えねえな!まあお前の場合は俺と違って心底不愉快なんだろうがよ!!」

「否定はせんよ、私もそろそろガキと呼ばれたくはないのでね」

「け、言ってろ」

 

 

 

 

 

掲げる双剣は翼の如く。

 

流れる動きは流水の如く。

 

敵を見据える瞳は鷹の如く。

 

純白と漆黒の刃が円を描く・・・風を巻き・・・全てを飲み込む吹き荒れ狂う赤き嵐。

 

 

 

 

 

 

「キリがねえな」

「へばったのかね?」

「ぬかせ」

 

 

 

 

 

 

 

月光の白・・・大地に落ちる闇・・・モノクロの世界の中・・・鮮烈に自己を主張する蒼と紅・・・背中を合わせる騎士二人・・・。

 

彼らを見る瞳はガラス・・・人の形を残しただけの空虚な抜け殻・・・幾百を超え、幾千に届く数の死者の群れ・・・喜びを忘却し・・・怒るための心さえ踏みにじられ・・・哀するための涙を無くし・・・楽しき日々を奪われ・・・生者に向かってゆくだけの壊れた人形・・・。

 

周囲の全てを埋め尽くす・・・死・・・死・・・死・・・。

 

そこに色はなく、熱はなく、思いはない。

 

ただこの世界の|法則(ルール)のままに染まり、貪ることしかできない冷たい迷子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔したらその背中ごとぶち抜くぜ?」

「何を今更・・・君はそんなことはしないだろう?むしろ私の方が君の背中に流れ弾がいかないか気を使っているのだがね?」

「そりゃ吾郷丁寧にどうも・・・っとぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

浅ましく群がり、混沌の如く這い寄る死人を前にして・・・紅の騎士は口の端にかすかな自嘲の笑みを浮かべる。

 

 

 

 

「しかしいつの間にそんな信頼を持たれるようになった?お友達になった覚えはづいぞねえんだけど?」

 

「信頼か・・・確かに信頼しているよ。君のその誇りの高さと戦いの美学に関してはな」

「……あ?」

「君は不意打ちなどせんよ。何故なら後ろから狙うより、真正面からやりあったほうが”面白い”だろう?

 

 

 

 

 

 

 

蒼き獣の笑いは貪欲に・・・。

 

 

 

 

 

 

「くくっ、手前に誇り云々を言われるとはな?その通りだぜくそ野郎!!」

 

 

 

 

 

 

 

笑みのまま・・・狂気に酔う。

 

喜悦のままに・・・空を翔るかのごとく速く・・・早く・・・疾く・・・。

 

突き出される赤き呪いの槍・・・その鋭き事、稲妻の如く・・・偽りの命を刺し穿ち、腐肉に囚われた哀れな魂を死の安息を・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「は、気にくわねえが、確かに真正面からやりあったほうが面白そうだ。手前の泣き顔も見てえからな!」

「私まで戦闘狂にしないで貰おうか、迷惑だ」

 

 

 

 

 

 

 

白と黒の刃が鳥の羽の如く乱舞する。

 

あまりに美しく・・・心撃つ空の舞踏。

 

舞い散る白と黒の翼に、亡者達は求めるかのように手を伸ばし・・・救われてゆく。

 

 

 

 

 

 

「つれねえな?この皮肉屋。あの少年がどんな育ちかたしたらこんなになるんだか?」

「喧嘩を売ってるのか?」

「へっ、買うのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

朱の瞳は闘争の予感に熱く・・・。

 

鉛色の瞳は冷えた鉄のように冷たく・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・下らん」

「フン、まあいいさ、とっととけり付けちまおうぜいい加減ウゼェ」

「ふむ、望むところだが・・・付いてこれるか?」

「は、こきやがったな・・・|最速(オレ)を追い抜けるもんならやってみろってんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死者の町を駆け抜ける影二つ・・・特別なことは何もいらない。

その生き様・・・その願い・・・その行動の全てにおいて見る者に伝説を語らせる者・・・彼らの名は英雄。

 

 

 

今宵この場限り・・・繰り返される鉄の響きは・・・誰も知らない蒼の槍兵と紅の弓兵の奏でるレクイエム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー状況終了

 

ーーー隠蔽工作開始

 

ーーー・・・了解

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
某国において吸血鬼による死都が発生した。
しかし間の悪いことに対応できる執行者は出払っていたため…彼らは外部に協力を求めたが・・・彼らが協力を求めた相手とは・・・
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