いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第二十二話 俺達の本当の戦いはごごからだ!
昨日のアサキム戦から一夜明け。
押し入れのベッドの中で目が覚めた俺の鼻に柔らかくて甘い匂いがくすぐってきた。
顔を柔らかいものが包んでいる。俺の使っている枕ってこんなにさわり心地がよかったっけ…?
「…にゅう」
ふと、聞き覚えのある声がしたので重い瞼を開けて声の出どころを見ることで現状を把握。赤い花柄パジャマをつけたアリシアが俺の頭を抱え込むように眠っている。
俺が顔を押し付けているのは枕ではなく着くずれによって出たアリシアの腹。あまりにも柔らかく細い。
まあ、五歳にしたらこんなもんか。
問題はなんで俺の寝床である押し入れの中にアリシアが潜りこんできたかということ。
昨日、俺が眠るときにはプレシアに抱きついて寝ていたよな…。
「…むう」
…まあ、いいか。
昨日は激戦だったし…。マグナモードを使って疲れたからこれぐらいのことで叩き起こすのはかわいそうだ。
なんて、考えていた俺は馬鹿だった。
「…やだよ。逃げようよ」
アリシアの体は震えていた。
昨日のことを夢に見ていたのかもしれない。
死ぬかもしれない戦いにまだ五歳のアリシアを巻き込んだことを改めて認識するとかなりの大馬鹿を働いたものだ。
俺はアリシアの体を優しく抱きしめるとアリシアの体の震えは無くなり、安らかな寝息を立て始めた。
…俺ってば馬鹿だな。
こんなに小さい子を戦場に出していたんだから…。
「アリシア、タカを起こし…」
と、考えていたところにプレシアの声が。
なるほどアリシアはプレシアに言われて俺を起こそうとしたが寝ていたので起こそうとしたがアリシアも眠くなったから一緒に寝たと…。
で、こんな状況が出来た。と、
・
・・
・・・俺ってば本当に馬鹿だよな。
現状を再把握してみよう。
押し入れという狭い空間に俺とアリシア。
俺はアリシアの着くずれしたパジャマの隙間から覗くお腹に顔を押し付けるかのように抱きついている。
なんか、微妙にパジャマのズボンに右手が(わざとじゃないぞ!)…。
そして、それを見たアリコン(アリシア・コンプレックスの略)がこれを見たらどうなる?
答え。
プレシアのオーラがガンレオンの形となり、まるでジョ〇ョのス〇ンドのようになっていた。しかも、両腕にはチェインデカッターを装備している状態で…。
「お、落ち着け。プレシア。俺は今起きたばかりで…」
とりあえず、この守護天使アリシアを手放したら俺の何かが終わる。絶対にこの天使(アリシア)は離さんぞ。
俺は今日というこの日までアリシアを求めたことはないぞ。
「…アリシア。お風呂に入ってきなさい」
「…むにゃああ。…はーい」
((天使|アリシアァアアアアア))!
カァアアアアアムバァアアアアアアアアック!
するりと俺のホールドから抜け出したアリシアは脱衣所に向かって行った。
俺がいるところは未だに押し入れの中。袋の鼠状態。
「…ぷっ」
そんな状況で俺が冷や汗を流しながらプレシアに身構えていたらプレシアが急に吹き出した。
「ふふ、そんなに身構えなくていいわよ。別に貴方をどうこうしようなんて考えていないわ。ただ鹹かっただけよ」
「…え?」
そう言った俺の顔がおかしかったのかプレシアは笑みを崩さない。
「昨日遅くにあなたが帰ってきてからガンレオンを調べているからね。アリシアを守る為にダメージをあの子の分まで受けていたのもわかる。そんなあなたがアリシアにひどいことをするとは思えないから」
「そりゃ、そうだよ。どっちかというと俺は今のプレシアの方がいいし…」
こぉん。
と、俺が言葉を滑らせると少し顔を赤らめてプレシアは手に持っていたフライパンで俺の頭を小突いた。…地味に痛い。
「…一周回ってそれはアウトに近いわよ」
「((精神|なか))の状態なら普通だと思うんだけどなぁ」
俺がそんなことをぼやくとプレシアは険しい顔になって俺に言ってくる。
「…午後からの話し合いにあなたは自分が元々は死んだ人間です。なんて言わないこと。私とアリシアはあなたに助けられた。という線で話していくからそのつもりでね」
「なんでまたそんな面倒くさい事を?そもそもどうやって助けたって言うんだよ?」
「貴方のガンレオンはデバイスとは違う造りをしている。それにあのレンチとマグナモードの併用で私とアリシアが助かったということにする。未だにブラックボックスが多いスフィアとガンレオンを抜け道に使うわ。スフィア移植でアリシアが生き返ったなんて言っちゃ駄目よ。死者が生き返ったなんて知れば管理局が全力であなた達を確保。実験する可能性があるからよ」
「…管理局は公安じゃなかったっけ?」
「表向きはね。だけど、表だけではやってはいけない。むしろ裏で非道なことをやっている局員もいないわけでは無いから」
…私みたいにね。
と、プレシアは自分を貶すかのように言葉を繋いだ。
「まあ、その辺の説明はそっちに任せる。俺はアリシアとユニゾンしたままで翠屋に行って、いざという時はガンレオンを展開できるようにしていればいいんだよな?」
ちなみにユニゾンしても俺の見た目は何ら変わりません。
融合(ユニゾン)したというのなら超戦闘種族みたいに金髪になると思ったんだけどな…。
「ええ、マグナモードなら全員を相手にすることは出来なくてもその場から逃げることは出来るでしょうしね。ただ…ライアット・ジャレンチが無いのはよくないわね」
「…う」
昨日の戦闘でアリシアとスフィアの浸食を調べながらライアット・ジャレンチの自動修理をガンレオンのAIとプレシアに任せきりだ。
外観なら完璧に直っても中身はまだ三割程度にしか回復していない。
今の状態で何か殴ると確実に壊れる。
「特にマグナモード中にアレを使ってはダメよ。アリシアのスフィアも心配だったけどなんら問題が無いようにも見えたからいいとはいえ、戦闘中に武器を失うなんてもってのほかだからね」
「…はい」
これには言い返す言葉もありません。
と、打ち合わせの話はこの辺で切り上げる。
「それじゃ、アリシアがお風呂から上がったら…」
「お兄ちゃーん。頭洗ってよー」
風呂場からアリシアの声がした。
俺はその声を聴いてプレシアの方に「どうする?」という顔を向ける。
プレシアは困った顔をして風呂場に向かって言った。
「アリシア、自分で洗いなさい」
「えー、昨日お兄ちゃんと約束したもん。『頭どころか体中を洗ってやるぜ。ぐへへへ』てー」
その声を聴いて「どういうこと?」と、すげー良い笑顔でプレシアが俺に顔を向ける。
その背後に再びス〇ンド的なガンレオンが…。
違った。ガンレオンのようなス〇ンドが…。
「言ってねえよ!ぐへへへ。なんて言っていねえよ!頭は洗うとまでは言っていたけど。…はぁっ!?」
馬鹿な?!プレシアのスタ〇ドがマグナモードだと?!
「へえ、一緒にお風呂に入るというのは約束したのね…」
「お、おちつけプレシア。お前の帰りが遅いときはいつも俺がアリシアを風呂に入れているんだぞっ」
「…それは初耳ね」
え?
…アリシア。プレシアはその事を了承しているって、言っていたよね?
「ま、待て。おちつけプレシア。こんな朝っぱらから俺と言い争いをしても疲れるだけだろう?」
俺達の本当の戦いはごご(午後)からだ!
プレシアこんなところで全力を振るおうとしないで!ちなみに『戦い』と書いて『話し合い』と読んでくれ。
じりじりと俺と距離を詰めてくるプレシア。
その手に持ったフライパンを床に置いてくれ。まるでライアット・ジャレンチに見える。
「…やめろ。…やめるんだプレシア。それ以上近付くなら…」
「近づくなら?」
「遠ざかるぞ!」
「押し入れの中なのに?」
「…あ」
ゴインッ。
その日。
とあるマンションの一室からフライパンで何かが叩かれる音が響いた。
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