IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
「うーん・・・・・」
目を覚ますと、見知らぬ天井が見えた。どこだここは?あ・・・・・思い出した。IS学園の生徒が生活をする、寮だ。えーっと、なんでこうなったんだっけ?回想に入ろう。ホワンホワンホワワ〜ン。
「よし、ではお前ももう帰っていいぞ」
・・・・・どうすりゃいいんだ。俺はその一言には応じられそうになく、G−soulを待機状態にして、その場に立ち尽くしている。
「ん?どうした?もう帰って良いぞ?」
「あの・・・帰るって、どこに?」
残念だが、俺の住居は数時間前に宇宙の塵となってしまっている。今更どこへ帰れと言うんだ?すると山田先生が言った。
「あ、桐野君は帰るところがないんですよね・・・・・。織斑先生、どうします?」
「そんなの、お前が泊めてやればいいだろう」
「「ええっ!?」」
織斑先生がそんなこと言うから俺と山田先生は驚いてしまった。いや、まあ、俺は寝させてもらえば他に要求とか、そんな図々しいことは言わないからいいんだけど、隣の山田先生が問題だった。
「そ、そんな・・・、わ、わたっ、私の家、アパートですし、その、えっと、あのですね、ち、ちらかってるので・・・・・」
もう、しどろもどろである。顔を真っ赤にして、両手の人差し指をチョンチョンとつけたり離したりを繰り返して、俯いてしまっている。
「フッ、冗談だよ。桐野には今日からここの寮で生活してもらう」
「な、なんだぁ〜。もう、ビックリさせないでくださいよぅ・・・」
まったくだ。まあでも、寮に入れてもらえるんならありがたい。
「悪い悪い。じゃあ、桐野に部屋の鍵を渡しといておいてくれ。私は別の用がある。政府の人間たちに今回の事を報告しなきゃならないからな」
そう言って織斑先生は校舎の中に入っていった。それにしてもあの顔・・・・・。
「ああっ!」
俺の声に山田先生がビクッと反応した。驚かせてしまったようだ。すいません。
「ど、どうしました?」
「思い出した。あの人って、第一回モンド・グロッソの優勝者の織斑千冬さんだったんだな・・・」
「あ、そのことですか。そうですよ、織斑先生はブリュンヒルデなんて呼ばれて、凄く人気だったんですから!」
山田先生はまるで自分の事のように誇らしげに言った。所長に見せてもらった資料に載ってたな。道理で見覚えがあるわけだ。納得。
「さ、桐野君の部屋に行きましょうか?」
「わかりました」
そして俺は山田先生に部屋の鍵をもらい、使用上の注意を聞いてから入室し、早速ベッドにダイブした。それはそれはふかふかだった。あの時の墜落の時も、着地地点がこれぐらいふかふかだったらよかったのに。
「やべ、ねむ・・・」
そうして俺は深い眠りに堕ちて行った。
ホワンホワンホワワ〜ン。回想終了。よし、まあ要するに、俺は昨日の夕方から今まで爆睡していた、ってわけだな。そして俺はベッドから這い出ながらテレビの電源をつけた。テレビではニュース番組をやっていた。
『いや、驚きましたね。まさかISを操縦できる男が現れるなんて、しかも二人!』
お、ISを操縦できる男だってさ、すっげー。ってそれ俺なんだけどね。あと一夏。
『では次のニュースです。昨日お昼過ぎに宇宙ステーション〈ツクヨミ〉が突如爆発、崩壊しました。この事件を政府は何者かによる攻撃であると判断し、対策本部を設立する方針です。なお、残された記録から、一つだけ脱出ポッドが地球に向けて降下したことが判明し、現在その中に生存者がいるとし、捜索が行われています』
うん。俺だな。100%俺のこと言ってる。俺はむくりと起き上り、部屋を見渡す。すると、クローゼットが開いていてその中に服が入っていた。どうやら制服のようだ。俺はそれを手に取り、着替えることにした。
「おお、宇宙服とも作業着とも違う着心地だ」
流石はIS学園。いい素材つかってるな。軽いが、しっかりしている。ん?ポケットに何か入ってるみたいだ。これは・・・手紙か?俺は封筒を開け、中の手紙を確認する。
『桐野君、おはようございます。起きたら、この制服に着替えて食堂まで来てください。
山田真耶 』
ふむ、山田ってことは山田先生だな。着替えはこの手紙を読む前にすんでるから、食堂に行ってみるか。俺は部屋の扉を開けて廊下に出た。
「あ、桐野君。こっちでーす!」
手をブンブン振りながら山田先生が俺の事を呼んだ。俺が山田先生のところに向かうと、その席のテーブルには大きな段ボールが一つ置いてあった。
「なんですかこれ?」
「昨日、エレクリット・カンパニーから届いたんですよ。夜に届いたみたいで、私も今朝気づいたんです」
「エレクリットから?」
エレクリット・カンパニーと言えば、誰もが知っている電化製品の大手企業だ。ISの武装まで造っていると所長が言ってたな。確か社訓は『電子レンジからISまで』だったか?
「そんな大手企業にパイプがあるなんてすごいですね〜」
山田先生が感心したように言った。開けてみるとそこには日用品やIS資料、それなりにお金の入った財布や携帯電話まで入っていた。そして一番下にはまた封筒が入っていた。
『瑛斗へ
あなたがこの手紙読んでるってことは生きてるってことよね。突然〈ツクヨミ〉の信号がロストしたときは流石に焦ったわ。所長の事は残念だったわね。辛いでしょうけど、前を向いて歩きましょ。・・・なんてそんな無粋なこと言わないわ。辛かったら思いっきり泣きなさい。それと、あなたが乗ったポッドの落下コースは予め所長が設定したみたいね。入学することになるだろうから日用品なんかも一緒に送ったわ。それじゃ、今度ちゃんと連絡寄越すのよ
エリナ スワン 』
「エリナさんからだったのか。元気そうだな」
俺が感慨にふけっていると山田先生が声をかけてきた。
「あの、このスワンさんって?」
「あ、ああ。エレクリットの技術開発者で、よくツクヨミにも顔出してたんですよ。長い付き合いになるから俺の姉貴みたいなもんですね」
「へ〜、なんだかすごい人なんですね」
「どうでしょうね。結構ずぼらな人でしたよ。前にツクヨミに来たときなんか所長と大酒飲んで酔っ払って、介抱するのが大変だったんですよ」
ほんとあの時は大変だった。男性クルーに片っ端から絡んで、研究所中に酒のにおいが充満したんだよな。
「懐かしいな・・・・・」
そんなことを思い出しているとふと織斑先生がいないことに気づいた。
「そう言えば織斑先生は?」
「織斑先生なら、一夏君の手助けに行きましたよ」
「手助け?」
「なんでも、一夏君の家にいろんなIS関係者がやってきて、対応に困ってるとか」
「ああ、そういうことですか」
ここに留まっておいてよかった。
「じゃあ、用はこれで済みました。朝ご飯はまだでしたね?」
「あ、はい」
そう言えば昨日地球に降りてから何も食べていない。結構腹減ったな。
「ここは食堂だから、ご飯食べれますよ」
「じゃあ、何か食べようかな」
券売機の前に立って、焼き魚定食を選んで、券売機に金を入れて出てき食券を隣の機械に入れると、すぐにトレーにのった焼き魚定食が出てきた。席に戻って箸を手に取る。
「いただきます」
一口焼き魚を食べた。ああ、やっぱ地球の飯は上手いな。8年ぶりか。地球を離れる前になに食ったかは覚えてないな。それから俺はペロリと定食を食べ終え、水を一杯飲んで一息ついた。
「ふぅ、ごちそうさまでした」
「見事な食いっぷりでしたね」
山田先生が微笑みながら言った。
「口にご飯粒がついてますよ?」
「あ」
俺は慌ててそれを取った。俺を見ている山田先生はどこか所長に似ていた。
「このあとはどうする予定ですか?」
俺が聞くと山田先生は肩を落とした。
「まだ終わっていないプリント整理が山ほど残ってるんですよ〜・・・。はぁ」
「じゃあ俺、手伝いますよ」
「え!?」
「所長の手伝いもしてたんで、それなりに仕事はできますよ」
入学式は数日後だし、一日中部屋でゴロゴロしていてもつまらない。なにもしないよりはマシだろう。
「ありがとうございます!じゃあ早速取り掛かりましょう!」
「はい。わかりました」
俺と山田先生はプリント整理の為、職員室に向かった。
プリント整理が終わったのは、完全に辺りが暗くなる頃だった。
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