化物になっちまったようです act7
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〜side獅貴〜

 

 

 

 

 

 

 

「魔」とは、孤独なものだ。

 

自然の法則の流れの中にありながらも必要とされず、そして正当な者からは邪に見える者達。

 

それ故に「魔」の名を冠した。

「魔」も、「魔」を身体に宿す人間も、闇の中で生きていかねばならぬ事となったのは当然の事だったろう。

 

自らの思いのまま生き、そして死ぬ「魔」。

これはまだ仕方がない、と納得は出来るかもしれない。許されるかどうかはさておいて、彼等はそうする事が存在意義であり、その為に殺されたとしても、しょうがないのだから。

 

問題は、「魔」と人間との狭間で生きる者、混血の者達だ。

 

「血」が薄ければ幸運だ。その者は、何ら人間と変わらずに生き、その生を終える事が出来る。

 

しかし、その「血」が濃ければ、それに見合う力が与えられる。

大抵は、その力を忌む。

自らを正当とは外れた者たらしめ、自らを化物に近付けかねない、その力を。

 

何とも割に合わないものだ。

そんな大して望まぬ力を与えられておいて、その上反転してしまう可能性も押し付けられる。

あろうことか、それは一生付きまとう。

自らの人生を賭けた博打を、強制的にいつも行わさせられるようなものだ。

 

だから、ヤケになって暴れてしまうような奴の気持ちも、解らなくはない。

 

 

 

だが。

 

 

 

何も知らず、日なたで生きる一般人に手を出すのはどうにもムカつく。

 

混血には混血なりのルール、というものが有るべきだろう。

 

ここら一帯は、生憎久我峰家も関係する土地だ。

 

 

 

 

 

通すべきスジは、通して貰おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまあ、堅苦しい話はここまで。

 

やあ、久我峰獅貴だ。

 

……相変わらずの、いないはずの誰かに話す癖が発生中だが、許して欲しい。

 

つい先日、月村邸にお邪魔して、お茶会に参加してきた。

つまり、なのはとフェイトの初対面シーンだった訳だが。

 

生憎、僕等は忍さん、すずかのお姉さんに呼び出されて見に行けなかった。残念。

 

で、そこで言われたのが。

 

 

 

「最近の殺人事件は、どうやら化物の仕業らしい」、という噂だった。

 

ここ数日で、死体が合計4人分発見されたが、その全てに「何かに食いちぎられたような」痕が有るらしい。

 

確かに、これは僕等の様な立場から見れば、同じ世界の住人がやっていると考えるだろう。

 

そういう訳で、僕等はその調査を依頼された。

忍さんは来ないが、高町なのはの兄、共也さんにも手伝ってもらえるらしい。これはありがたい。

 

という訳で、どっちにしろ原作介入なんざ出来る余裕は無いのでした。無念。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。

 

「……ふう」

 

僕はコーラを飲みながら、人気の無い道を歩いていた。

共也さんとは別行動で、それぞれ調査に当たっている。

 

「『良いね良いね、久々に暴れられそうじゃねぇか!』」

 

危ない、もうすぐでコーラを口に含んだまま喋って、こぼす所だった。

 

いつもはそれ位の空気ならロキは読んでくれるんだけど……今は相当興奮してるらしい。

 

「落ち着きなよ、まだ僕等の同類の仕業と決まった訳じゃないでしょ?」

 

もしかしたら、ジュエルシードで凶暴化した狼かもしれないし……そんなの原作にあったっけ?

 

「『いーや、違う。これは俺等の同類だよ……感覚で解るのさ』」

 

げえ……そうなんだ。

じゃあもう、反転しちゃってるみたいだね。

 

「僕には全然解らないけど……」

 

 

 

 

「【貴様には我等、魔の要素が入っていない。それも仕方のない事だろう】」

 

 

 

 

「うわっ……って、ルシファーか、脅かさないでよ」

 

ルシファー。

「光を掲げる者」、天使ルシフェルとして神にもっとも近き身分でありながら、神に刃向かい、堕天使となった者。

それと同名の、僕の化物人格その2である。

とりあえず無口だし、ロキみたいに隙あらば身体を乗っ取ろうとはしない。

それは嬉しいんだけど、問題はこっちから話しかけても大抵返事してくれない事だ。

向こうが話したいと思った時だけ話す、ある意味でこいつも思い思いに生きる「魔」らしい奴、という事か。

 

 

 

 

「【それより、近付いてきているぞ。身構えろ】」

 

「『来た来た、ああ腕が鳴るぜぇ!』」

 

 

 

 

……えっ?

 

「それって」

 

 

 

 

 

「けりけりけりけりけりけりけりけりけりけりけりけりけりけり」

 

 

 

 

 

突然聞こえてきた、奇怪な声。

 

声が聞こえてきた方を向く。

 

ズシン。

 

足音と共に、それは姿を現した。

 

まるで狼のような顔。

何故か胴体は裸の女。

足は四つ足、虫っぽい。

 

これだけでもう化物。

ていうかアンバランスだな。

 

「反転しちゃってるね、っと!」

 

相手の突進をギリギリで回避し、状況を確認する。

周りに人の気配、無し。

 

「『さーて、そんじゃ行きますか!』」

 

ホント嬉しそうだな……。

まあ、良いけど。

 

「はいはい……」

 

意識を自分の中に集中。

ロキのイメージを、自分に重ね合わせる。

 

 

 

 

 

「『よっしゃああぁぁ!』」

 

 

 

 

 

気が付けば、僕の身体は人間のそれではなく化物のものとなり、その口から発せられる声も変わっていた。

とはいえ、人型であるのはまだ救いかな。ただ、皮膚は青黒くなってるけど。

 

 

 

「けりけりけりけりけりけりけりけりけりけり!」

 

 

 

敵が突進してくる。

 

だが、ロキは動じない。

 

右手を前に突き出し、ぐっと握り拳を作る。

 

キィィィン!

 

甲高い音と共に氷塊が目の前に生まれ、相手はそれにぶつかって停止。

 

「『はっ、あんまり頭は良くねぇみたいだな。それ飾りじゃねぇんだろ、ちゃんと使いな!』」

 

パチンと指を鳴らす。

空中に、数本の氷の槍が形成され、相手目掛けて降り注いだ。

 

当然相手は回避しようとするが。

 

「『させるかバーカ』」

 

ロキは先手を打っていた。

左手を振り、敵の周りを氷の柱で囲う。

 

「ギャアアアアアアア!」

 

脱出不可能な氷の檻の中に、氷の槍が容赦なく降り注ぐ。

 

「『おいおい、この程度のもんもぶち破れないのかよ……期待外れじゃねぇか』」

 

……あのー、ロキ?

 

(遊んでないで、とっととケリつけてくれない?あんまり長い間見ていたいものでもないし)

 

「『けっ、つまんね……んじゃ、トドメっと』」

 

ロキが両手を広げ、何かを呟いた。

 

巨大な氷の塊が、さっきの氷の檻ごと、敵を閉じ込める。

 

「『永遠に眠ってな』」

 

パン、と手を打ち鳴らす。

 

巨大な氷塊が、粉砕された。

中にいる化物ごと、容赦なく。

 

 

 

 

「『はあ……大して強くなかったな、こいつ』」

 

(いや、そんな事愚痴られてもね……身体、戻すよ?いつ一般人に見られるかと思うと怖いし)

 

「『えー』」

 

(も・ど・す・よ)

 

意識を人間である自分の身体に集中する。

……よし戻った。

 

手足は……ちゃんと思い通りに動くね、良かった。

 

これにて任務完了……共也さんに連絡を取る。

 

……疲れた……いつもは人間の身体でいるのに、たまにこうやって短時間とはいえ「魔」の力を全開にするから、身体への負担が凄い。

 

……早く帰って寝よう……。

 

説明
さて、裏舞台のお仕事だby獅貴
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コメント
はい、そうですよ。こいつの人格全てがペルソナ由来です。(アルテマニア)
そういえばロキってペルソナのロキの姿なの?(神薙)
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