たとえ、世界を滅ぼしても 〜第4次聖杯戦争物語〜 幕間編 〜Two followers〜
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その繋がりは、主のみに非ず

従者へ流れ込むはその記憶、その祈り

呪われているその血筋、幸福等は望めない

それでも尚、その胸の内に宿しているのが【光】ならば

 

――――――――――――――貴方は、■われてもいいのです。

 

 

*************************************************

 

 

「おじさんっ!雁夜おじさんっ!」

 

悲痛な声が部屋に響く。

ドラグーンは、その声を聞きながら眉をしかめた。

……バーサーカーが暴走してから、数十分後、雁夜を連れたドラグーンは、間桐邸に撤退して来ていた。

血の気が完全に引いて、白くなった顔の雁夜を部屋に連れ込んだ時、桜がその場にいたのは予想外だった。

涙は流してなくとも、ベッドに寝かされた雁夜に縋り付き、離れようとしない桜。

泣きたくても泣き方が分からなくなった少女は、行かないでと声を上げてその体に縋り付いていた。

 

「サクラ…」

「っ…」

 

ドラグーンがかけた声に、桜は引き離されると感じたのか、感情の光が揺らぐ眼で見返す。

嫌だと、離れたくないというその眼に、穹色の眼が静かに見返して。

 

「ほら、とりあえずそのままあがれ。」

「え…」

「離れたくないんだろう?だから一緒に寝ていろ、大丈夫だちゃんと此処にいるから。

 引っ付いて寝てれば、何かあってもすぐにお前は分かるだろう?」

「…っあ、ありがとう…」

 

ひょい、と雁夜に引っ付けるようにベッドに押し込まれ、そのままシーツをかけられて、桜は戸惑いながらもお礼を口にした。

ドラグーンは、その様子に肩を竦めると、フッとその場から掻き消えた。

 

「………ありがとう。」

 

桜はもう一度だけお礼を言うと、雁夜に擦り寄って眼を閉じる。

 

(きっと、守ってくれる。)

 

胸の内にそう呟いて、桜は眠りへと意識を飛ばした。

次に眼を開けた時は、雁夜おじさんが、自分の頭を撫でてくれる…そう信じて、眠りに落ちていった…

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<SIDE/ドラグーン>

 

 

………泣いている少年がいて

 

……………自由を夢見た青年がいて

 

………………その代償を支払う男がいて

 

……………………未来の無い、男が、いた

 

 

 

 

 

     (とても――――――――――――――哀しい夢を、視た気がした。)

 

 

 

 

 

ふと眼を開けると、温かい其処に、ドラグーンはいた。

 

其処は、ありきたりな場所、休日の公園だった。

そこで何をするという訳でもなく、自分はただ、ぼんやりとベンチに座っていた。

 

 

少し状況が分からなくて戸惑ったドラグーンの視線は、少しして公園の一か所に行きつく。

 

 

穏やかな日差し、優しい光景、遠くにいるのは親子の姿。

幸せそうな笑顔、微笑む女性、仲良く遊ぶ2人の少女。

その少女の1人には見覚えがあった、髪の色も目の色も違うのに、あの少女だとすぐに分かった。

家族と笑う幸せそうな笑顔、今はまったく見る影もないと、主が叫んだ理由が分かる。

 

 

『………ああ、此処は綺麗で、本当にとても、落ち着くな………』

 

 

ぽつり、と呟いたその表情は、ただ眩しいモノを見ているような様子で、【笑って】はいない。

それでもそれ以上は何も言わないで、彼女達を見つめていた。

 

 

……ガシャン

 

 

ふと、近くに、何かが落ちたような音が響いた。

 

 

『――――――――――――』

『…何だ、お前も来たのか。』

 

視線だけを音の方に向けたドラグーンの眼は、この穏やかな場に相応しくない来訪者を映し出した。

黒いフルプレート、瘴気の様な魔力を纏ったサーヴァント、自分と同じ((主|マスター))に呼ばれた存在。

バーサーカーのサーヴァントが、何処から出てきたのか、ベンチから少し離れた処に立っていた。

 

『バーサーカー……【彼女達】はカリヤの特別だから、手を出したら此処から追い出されるぞ。』

『……■■…■…』

 

何故現れたのかこちらは全く分からないが、バーサーカーの方が戸惑っているのだろう。

呼び掛けたはいいが、明らかに警戒と困惑を漂わせてドラグーンの方へ歩み寄ろうとはしない。

だが、親子に手を出すつもりはないのだろう、その場から動くことはなくただ立っているだけだ。

その様子をドラグーンは興味が無いのか、親子に向ける視線をそのままに、独り言のように呟いていく。

 

 

『…ここは((カリヤの夢|一番大事な想い出))だ。

アイツが一番大切に感じ、一番愛しく思い、一番失くしたくないと感じているモノだけが入っていい場所だろうな。』

 

ドラグーンの言葉に、バーサーカーは赤い光を放つ目元を周囲に向ける。

 

―――――――――ソレは、【当たり前の光景】だ。

太陽の日差しは平等に降り注ぎ、親子の周りは小さい野草の花が咲いている。

嬉しそうに笑いあう姉妹、それを見つめて穏やかな笑みを浮かべる母親、幸せそうな雰囲気。

普通の家族、普通に生きて、普通に共に在る。

当たり前の、日常の一コマに過ぎない、その光景が其処には広がっていた。

 

『カリヤの願い、カリヤの欲しいモノ、カリヤが望んでいるモノ…それがあるのが此処だ。

桜を救いたいと言った言葉を疑うつもりは無かったが、他にも聖杯への祈りはないのかと思って覗いて見れば………コレが、((これだけ|・・・・))がカリヤの【幸せ】らしい……随分と、欲の無い事だ。』

 

聞いているのかいないのか、バーサーカーの視線は、親子へと注がれている。

最も、その先にいるのは幼い少女、ドラグーンも見つめている……【桜】、を。

花のように笑う少女、二つ括りの髪で同じぐらいの少女と一緒に、笑っている姿を見ていた。

 

『ああ……そうだな、私も驚いた。

あんな風に笑っていたんだな、と思った…カリヤの怒る理由が分かる気もするな。

親に切り捨てられ、蟲の集積所に叩き込まれないといけなかった、【いらない子】なんて思えない。』

 

2人のサーヴァントが見つめる中、親子のその穏やかな表情は陰る事無く、続いている。

間桐邸の中で、1人で佇んでいた死んでしまいかけていた心の少女は、その視線の先で笑っている。

蟲に犯される事も無く、大切な人と笑っていられるその日常を、その【夢】は何よりも尊いのだと告げていた。

 

 

       『………でも、この((光景|ユメ))は、本当に【幸せ】なんだろうか?』

 

 

 

ふと、そう思い立ったように紡がれた声に、バーサーカーの視線がドラグーンへ向けられる。

明らかに、【言葉の意味】を理解している行動は、バーサーカーのクラスが取る行動ではない。

その様子をやはり見る事無く、ドラグーンは淡々と言い続ける。

 

『大事な人達の幸福を祈り、その為に戦うのを望み、私達を召喚して、聖杯戦争へ挑む。

それはいい、その理由を否定なんてしないし、戦う理由が個人で違うのは当たり前だ。

確かに、トキオミとやらに対して思う事はあるんだろう。

でも、その気持ちはとても【人間らしい】………誰かに嫉妬するなんて生きてれば当たり前だ、誰かを愛するのが間違いな訳が無い。

ましてや【人助け】という理由なら、褒められこそすれ問題なんてないと思う…………………だが、【その先はどうなる】?

カリヤは、【カリヤの未来】は、どうなる?

聖杯を手にした蟲爺に、用済みだと殺されてお終いが、アイツの幸せなのか?

この景色にカリヤがいないのは、アイツが自分の未来を望んでいないからなんだろう。

どうしようもないと、目を伏せているから、この【未来】にカリヤはいない…………どうして?』

 

いつもの笑顔を消したドラグーンは、己がマスターの願いを否定する訳でも無く、ただ自分の考えを言っているだけ。

 

『何で、何故此処に【カリヤがいない】?

どうして((言ってくれない|・・・・・・・))?どうして((望んでくれない|・・・・・・・))? カリヤはこの親子と一緒に居たらいけないのか?それはそんなにいけない事なのか?

魔術師である家系に生まれて責任はあったかもしれないが、【絶対】に受け入れる必要はなかった筈だ。

カリヤは確かにあの蟲爺の血縁なんだろうが、確かにこの戦争を始めた家系の者なんだろうが、カリヤは好きであの家に生まれた訳ではない。

ただ………アイツは運が無かっただけだろう?その家に、誰の子供に生まれるかどうかなんて、【生まれる命は選べない】のに。』

 

それでも、その無表情な横顔は、その瞳は、自らのマスターの不遇へ対して――――――ほんの僅かな苛立ちを、漂わせていた。

 

 

『でも…きっと、この未来にカリヤを連れて行く事は、出来る。

こうして、この暖かい場所に私達が入れてるのは、カリヤが少しでも許してくれてるからだ。

【無意識】でも、拒絶出来た筈の【((他人|サーヴァント))】に、自分の【願い】を視せてくれたんだから…………だから、私はお前に頼みたい事がある。』

 

 

そう言い切ると、ドラグーンはベンチから立ち上がり、バーサーカーへと向き直る。

真正面から見詰めるその眼には、マスターを傷付けた相手に対する怒りも無く、ただ―――――――――

 

 

『【私】は、この身は貴公を信じ、この背を預け、主の為に命を懸けよう。

貴公に聖杯にかける祈りが無い等思わないし、その願いを犠牲にしろとは言わない。

……ただ((マスター|マトウカリヤ))の為に、貴公の力を貸してくれ、バーサーカー。』

 

 

―――――――――――その瞳に、ただひたすらに強い意志を込めて、【彼】はその言葉を告げていた。

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ますたーがつれてかえられてから、じぶんとどらぐーんはますたーのへやでたいきしていたはずだった。

それなのにきづいたときにはこの【ゆめ】におとずれていた。

あたたかいばしょ、このばしょはくるしみもかなしみもゆるしてくれるばしょだった。

そこにはすでにどらぐーんがいた、なぜかはわからない、わからないからだまってみていた。

そしてここがますたーの【ゆめ】だとしった。

あたたかいこの【ゆめ】がますたーのねがいだとしった。

とてもきれいで、とてもやさしくて、とてもとてもとてもとても…………

 

 

 

     『………でも、この((光景|ユメ))は、本当に【幸せ】なんだろうか?』

 

 

 

………………?なにをいっているのだろうますたーはこれでしあわせなのだとおもっているからこの【ゆめ】がここにあるのだろう。

しょうじょはわらっているじょせいはわらってるしまいはしあわせでははおやもしあわせでならそのさきにはもんだいなどなくてだから

 

 

         『この【未来】にカリヤはいない…………どうして?』

 

 

…ますたー、ますたーが、いない?なぜだなぜ、ますたーのねがいにますたーがいない?せいはいはねがいをかなえるものなんだろう「わたし」のねがいはせいはいがなくてもかなうかもしれないそうだ■とこんどこそはなせればそうすればこの「ねがい」はかなうのだなのにどうして……どうして………………………マスター、貴方は何故、【此処にいない】のですか?

 

 

         『カリヤは好きで、あの家に生まれた訳ではない。

   その家に、誰の子供に生まれるかどうかなんて、【生まれる命は選べない】のに。』

 

 

どらぐーんはますたーがなにもいわないといっているわたしはそれをちがうとわからないそうだそれでもますたーはどうしていわないいってない

そのねがいしかますたーはますたーどうしてですか?しょうじょはすくえてもあなたはどうしてますたーおしえてめいれいをねがってねがわない

なぜですかどうしてですかいってくださいおねがいですからめいれいをください―――――――――どうして、【独り】で歩いているのですか

 

 

 

        『…………だから、私はお前に頼みたい事がある。』

 

 

その【こえ】が、きこえた。

 

 

   『【私】は、この身は貴公を信じ、この背を預け、主の為に命を懸けよう。

   貴公に聖杯にかける祈りが無い等思わないし、その願いを犠牲にしろとは言わない。

   ……ただ((マスター|マトウカリヤ))の為に、貴公の力を貸してくれ、バーサーカー。』

 

 

 

 

―――――――――――いきたこえ、いきたかんじょうで、初めてドラグーンが自らに向き合っていた。

 

 

まっすぐなめで、まっすぐなこえで、そらいろのめがいしをもってみている。

くるうおのれとちがうつよいこえがひびく、だからこそとまどうのだ。

なぜ…このみにそれをいうのだ、このくるったおのれよりも、みずからのてでますたーをまもれるはず。

あのこうげきがそうつげている、おのれをこうげきしたあのちからがあればたたかえるのに、なぜだと。

そのいしをつたえる、そらのめがゆれる、わらう、わらえてない、あれはさげすみ、だれにたいしての?

 

 

『……【私】じゃ、駄目なんだ、どうやっても、ソレをしたら、私はカリヤを((滅ぼしてしまう|・・・・・・・))。』

 

 

ほろぼす?ますたーを?なぜ、なぜ、あんなにますたーを、まもろうとしているのに?わからないなぜそんなことをいうのだ。

 

 

『この身の■■が許さない、私は誰も■えない、このままではカリヤが私と【同じ】になってしまう、それだけは嫌なんだ。』

 

 

なぜ、そんな、ことを、わたしに、いうのだろうわたしは、わたしはできないくるしめてしまう、ますたーをきずつけた。

 

 

『そんなの私だって同じだろう、マスターを守れなかった、苦しませて傷付けた、その罪は、お前だけのモノじゃないだろう。』

 

 

それでも、ますたーはわたしのせいで、わたしがきずつけて、わたしがころそうとした、ころそうとしてしまった。

 

 

『ソレは違う、お前はカリヤを殺そうとしたんじゃない、あのセイバーに襲い掛かっただけだ。

結果としてはカリヤを苦しめたが、それでも、お前はカリヤを傷付ける気も殺す気もなかったのは、分かってる…………【つもりがなかった】なんて、言い訳でしかないだろうが、それでも((私|ドラグーン))は((お前|バーサーカー))を信じたいと思う。』

 

なぜだなぜ、そんなことをいうのだろう、なにをしんじたいというのかこのみはますたーをきずつけるものでしか、ないというのに、なぜ…?

 

 

 

 

(………バーサーカーには分からない、言っている意味が、何を言いたいのかが分からない……………そう、【バーサーカー】には、分からない。)

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『だから頼む、((お前|バーサーカー))が、((カリヤ|マスター))を守って、支えてくれ……((【私】|ドラグーン))じゃ駄目なんだ。

 なぁ、お前は【違う】だろう?そうやって自分の過ちに気付いて迷う事が出来るなら、【ソレ】はきっと意味がある。

 気付いてくれ、まだお前は【引き返せる】んだ、死した後でもその先の地獄に足を踏み出すかは選べるんだ。

 この身は【お前以上】に多くの者を裏切り、貶め、謀り、否定し、憎悪し、恨み、破滅させた。

 苦しめて、悲しませて、怒らせて、恨ませて、妬ませて、憎悪させて、殺意すら抱かせてしまった。

他者の想いの価値なんて私には分からなかった、誰かの祈りの意味なんて私には分かりもしなかった、傷付けたその先の事なんて………【考えようともしなかった】。

だから、こんな【モノ】が、主の幸福を祈るだけでも愚かしいのに、守るなんて思い上がりでしかない。

余りにも多くの裏切りと背徳を背負ったこの身では、この手でその命を壊してしまう。

大切にしたくても、この掌はその大事にしたいモノだけが零れ落ちる。

((ソレ|・・))を、この身に宿る■■が、赦さない。

そう、【滅ぼす為の存在である】私では―――――――((マスター|カリヤ))を、((守れない|■えない))から。』

 

 

静かにそう告げて、微笑んだその表情。

この場で初めて、ドラグーンとバーサーカーの視線が交わる。

……笑っているのに、まるで、笑っていないその【瞳】。

悲しみでもなく、痛みでもなく、自嘲でもないその感情の名は………

 

 

 

『頼む、私はカリヤを苦しめる全てを…………【滅ぼす事】しか、((ソレ|・・))しか、出来ないから。』

 

 

      (―――――――ああ――――――――――そういう事か)

 

 

 

 

―――――――そうして、【彼】は気付いた。

 

何故自身が、【完全】に狂えなかったのかを。

何故中途半端に、【理性】を残してしまっていたのかを。

何故召喚された時、【敵意】を青年に向けてしまったのかを。

 

……簡単な事だ、■■たる【己】には、その瞳に見覚えがあったのだ。

 

真っ当では無いから、そんな眼をしていた。

正常ではないから、そんな顔で笑ってた。

呼ばれた時から、そんな■で壊れてた。

 

思えば、何故か((狂戦士|バーサーカー))として呼ばれた筈の【己】は、何故か【当たり前】のように【マスター】を優先していた。

拙くとも案ずる事が出来た、おかしくとも守ろうと思えた、傷付けてそれを悔いる事も出来て、その事実に困惑すらしている。

 

 

まるで【戦場】で―――――――――((自分以上|・・・・))に、【壊れている者】がいれば、嫌でも冷静にならざるを得ないように。

 

 

だから、バーサーカーはドラグーンが、((マスター|カリヤ))から拒絶された時、((安心したのだ|・・・・・・))。

それは当然だろう、例え狂っていたとしても、【彼】はその生前は周りに認められた■■だったのだ。

その【彼】が、自らを僅かとはいえ【正気に引き戻せる異常な存在サーヴァント】を、受け入れ容認する等、出来る筈が無かった。

自分の((マスター|主君))を害するかもしれない危険な存在を、((サーヴァント|■■))であるならば拒絶するのは至極当たり前の事だから。

 

 

……………………その内が■■なら、どんなモノさえも受け入れられる。

詰め込んでも押し込んでも、いっぱいにならない底の抜けた壺のようなモノ。

或いは、詰め込みすぎて内側で腐ってしまったのか、腐敗したその中身は既に破綻している。

まるで毒のようなソレ、誰の為にもならない蠱毒の壺、ありとあらゆる負の感情を受け入れた器。

そんなモノに、今更『他者の狂気』を足したところで、一体【何が変わる】というのだろうか……?

その結果が((己|バーサーカー))への異常と、((マスター|カリヤ))の正気の維持に繋がっていたのは、皮肉としかいいようが無かった。

それでも、【彼】は守りたいと思ったのだ、狂気に囚われている己に語り掛け、マスターを頼むと声を上げる程に。

 

 

 

――――――――――だから、その声に、動かされてしまったのは、ある意味【必然】だったのかもしれない。

 

 

 

『…………カッタ』

『…っ?』

 

喉を震わせ声を上げる、その事実へ目の前のドラグーンの表情が一瞬だけ、戸惑いに揺れる。

その様子に聞こえなかったのかと、もう一度、【彼】は声を上げた。

 

『ワタシ、ハ……マスター……ヲ……マモル……』

 

上手く話せないし、分からない事が多いそんな状態で、それでも声を上げる。

 

『…マスター……ヲ………マモル…』

 

同じ言葉を繰り返すしかない、難しい事が分からない、それでも。

 

『ああ、頼む、バーサーカー。』

 

確かに、伝わっていた。

その瞳は、先程までの戸惑いが消えて、少しだけ…輝いていた。

 

 

 

………((狂戦士|バーサーカー))は【言葉】を使う道を選んだ、狂気に囚われながらも、【己】はマスターを守りたいと願った。

その行動が間違っているかは分からない、それでも、もう戻る事は出来ない。

選んだのは、自分自身なのだから。

 

 

 

 

*************************************************

 

 

――――――――優しい【夢】で、2人の従者は向き合った。

祈りと願いの結晶を見つめ、その先の【未来】を望むゆえに。

全部分かりあえた訳ではない、そのしがらみは未だあり、受け入れれた訳でも無い。

 

それでも――――――――守りたいのは同じだから。

 

だから

 

諦めないで、泣かないで、ただ優しい((人|マスター))よ

 

どうか望んでほしい、どうか命じてほしい

私達は貴方の為に、その願いを叶えます

 

だからどうか告げてください、たった1つの【その言葉】を―――――――貴方は、叫ぶ権利があるのだから。

 

 

 

  【夢】の先―――――――――その場所に、貴方を連れて行けるように。

-5ページ-

【あとがき】

 

バーサーカーとドラグーンの歩み寄り話でした。

サーヴァントとして、マスターを思うなら協力しようよ!というドラグーンの要請に、バーサーカーが答えてくれました!

これで少しは頑張れるでしょう!主におじさんとバサカの会話が!!(えっ?)

次回は他陣営の動きを少し届けます。

最後の咆哮に関する意見と検討する皆様、困惑と疑心と慢心と警戒と(笑)が騒ぐ次回を、どうぞお楽しみに……

それでは、閲覧ありがとうございました。

今回のBGMは、【絆(アニメ"Fate/Stay Night")】でした。

※感想・批評お待ちしております。

説明
※注意
こちらの小説にはオリジナルサーヴァントが原作に介入するご都合主義成分や、微妙な腐向け要素が見られますので、
受け付けないという方は事前に回れ右をしていただければ幸いでございます。
それでも見てやろう!という心優しい方のみ、どうぞ閲覧してくださいませ。

今回は【夢】話の幕間編です。
何故バーサーカーが会話を妥協するようになったのか?
それはおじさんが眠っている間の事でした……ドラグーンの歪みも少し出てきます。
ここまで読んで見たい!と言ってくださる方だけスクロールをお願いいたします。
前書き閲覧、ありがとうございました。
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