いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した
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 第二十三話 シャンプーが目に染みるぜ

 

 

 「お兄ちゃん。どうしてそんなにボロボロなの?」

 

 お風呂から上がったアリシアの質問に俺は答えた。

 答えはたった一つ。シンプルだ。

 

 「アリシア。…お前はプレシアを怒らせた」

 

 沢高志という人間は一日に一回。

 何かを起こさないと生きていけない星の下に生まれたんだろうか?

 怒りに駆られたガンレオンなスタ○ド(プレシアのオーラ)に襲われた恐怖を思い知った。

 プレシアの折檻を受けたフェイト。

 ((俺|ガンレオン))と戦ったヴィータ。

 二人の少女の気持ちが少しだけわかったような気がする。

 

 「バカやっていないであなたも早くお風呂に入って支度しなさい」

 

 「…あい」

 

 フライパンに殴られたお蔭で首が曲がった状態で脱衣所に向かう。

 こんなんでも一応、この親子の命の恩人なんだぜ?

 

 「…ちくしょう。髪はまだ泡立っていないのにシャンプーが目に染みるぜ」

 

 

 

 午前十一時五十五分。

 待ち合わせの時間まであと五分まで迫っていた。

 

 「リンディさん。どうしかしましたか?」

 

 「いえ、待ち合わせている人がもうすぐ来るので少しそわそわしてしまって…」

 

 「そうなんですか?それにしては顔が少し怖くなっていましたよ?こーんな感じにね」

 

 むぎゅーっと眉根を寄せて桃子さんはおどけてみせる。

 プレシアテスタロッサ事件をきっかけになのはさんのご両親が経営している翠屋で今からあの機械人形の人?と話し合うことを考えると申し訳なく思う。

 下手したらこの喫茶店で戦闘をするかもしれないのだから…。

 

 (ごめんなさいね、なのはさん)

 

 (あう。謝らないでくださいリンディさん。それに私もフェイトちゃんもあのロボット君に会ってお話がしたいから…)

 

 今は私の右隣。ショーウィンドウ側にフェイトさん。

 私の向かい側になのはさん。その隣、フェイトさんの向かい側にクロウ君の四人で翠屋のテーブル席に座っていた。

 

 (…私も。助けてもらったお礼も言いたいですし…)

 

 (…一応俺は念のために護衛をします。…あのロボットが俺達を味方だと思ってくれるのならいいですけど、万が一ということもありますし…)

 

 フェイトさんはあの黄色いロボットにお礼が言いたくて今回の話し合いに参加した。

 彼女には最悪、戦闘になった際には結界を張ってもらうことになっている。

 クロウ君には私達の護衛。

 とはいっても彼は一度、あのロボットに負けている。そのリベンジもしたいのかもしれない。

 

 (…クロウ君)

 

 (…なのは。信じたい気持ちはわかる。だけど、常に最悪の状況を想定しておいた方がいい。もし、あのロボットがいきなり牙を剥いたりでもしたら俺達は一瞬で殺されるぞ?それに…。あいつはアリシアという言葉も何回も使っていた)

 

 クロウ君の言葉になのはさんだけではなく、私やフェイトさんも表情をこわばらせる。

 そう、なのはさん達を助けたとはいえ、一度はクロウ君と戦っているあのロボット。目的もわからないまま彼と接触するのはあまりに危険だ。

 しかも、彼女達のデバイス。デバイスレイジングハートさんとバルディッシュさんが手に入れた情報。

 あのロボットは明らかにオーバーSクラスの魔力を放ってあの黒い鎧と対峙していた。結果的にはロボットが持っていた武器が自壊して負けはしたものの多大な戦力を有している。

 

 (…っ。そう、だね)

 

 (・・・)

 

 クロウ君の言葉を聞いて少しばかり声のトーンを落とす二人。特にフェイトさんにはそれは顕著な反応だ。

 アリシアはここにいる魔法関係者にとっては忘れられない単語。

 どうしてその単語をあのロボットが使っていたか分からない。

 加えて、あの晩。

 あのロボットが言っていた部隊を調べてはみたものの。あのロボットが言うような部隊など、この世界には存在していなかった。

 地球の科学力を遥かに凌ぐ私達の技術力を使っても見つからないということは…。

 

 あのロボットが嘘をついている。

 クロウ君と同じように私達の世界と似たような世界からの流出物。この場合はデバイスでこの世界の住人がそれを使っている。

 時空漂流者がこの世界。地球に何らかの理由で滞在している。

 

 考えられる点は主にこの三つ。

 

 敵に回ると厄介な存在。

 だけど、戦闘員であるクロノと戦闘補助のユーノ君がダウンした今、あの力を持つロボットを味方にすることが出来れば…。

 闇の書事件も解決に向かうかもしれない。

 それにあの黒い鎧の人の情報も得られるかもしれない。

 

 クロウ君はその方向性について最初は反対だったが、私の話を聞き、今ではしぶしぶながら従っているように見えた。

 なのはさんはクロウ君に追従する形だったが、協力できるならしたいという意見。

 フェイトさんは純粋にお礼が言いたい。とのこと。

 

 カランカラン♪

 

 「いらっしゃいませー。何名様ですか?」

 

 と、難しいことを考えていると翠屋のカウベルが鳴った。

 約束の時間までもうすぐ。

 エイミィにこの翠屋の周辺をマンションから監視してもらっているし、アルフも子犬モードを巡回している。

 そんな中、翠屋に新しいお客さんがやって来た。

 普段なら決して見向きもしない。しかもお昼時なので人の出入りは結構激しい。それなのに私達はその声に我を疑った。

 

 「三め、いや、ニ名よ。待ち合わせをしているんだけど、いいかしら?」

 

 その声に私達四人はその声の主を見やると…。

 

 「…か、母さん」

 

 フェイトさんの目が信じられないものを見たかのように大きく見開く。私達も同様の反応だった。

 約半年前にこの町でジュエルシードによって引き起こされた事件の張本人。

 

 プレシア・テスタロッサがそこにいた。

 

 

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第二十三話 シャンプーが目に染みるぜ
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魔法少女リリカルなのは 傷だらけの獅子 スパロボZコメディー 

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