いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第二十六話 今まで黙っていてごめんなさい!
風切音はなぜ〜、遠くまでひびくの〜♪
あの雲はなぜ〜。あな〜が開いてるの♪
教〜えて、お兄ちゃん♪教〜えて、お兄ちゃん♪
曲名 アルフの上のタカシ
作詞・作曲 アリシア・テスタロッサ。
「…負けた」
(勝った!)
「「なにに?」」
俺の突然の一言に驚いたフェイトとアルフ。二人の意識が俺に向く。
只今俺はアルフ(狼モード)の背中の上に座って、日照りの厳しい砂漠だらけの世界の空の上を高速飛行。雲も突き抜けながらだったので真後ろにあった雲には穴が開いていた。
アルフの張ってくれた障壁のおかげで体に吹き付ける強風も当ることなく過ごせている。動物の背中なので乗りにくいと思ってたら意外と快適でした。
いつもの口上を考えようとしたらユニゾンしているアリシアの声が意識の中で響いた。
アリシア。五歳でこの才能を開花させるとは末が恐ろしいかぎりである。
さて、なんでこんな状況かというと。
リンディさんの指示でアースラに運ばれた俺達。
宇宙戦艦を思わせる指令室に案内されると二つのモニターが映し出される。そのモニターにはそれぞれヴィータとピンクの女騎士が映し出されていた。
なのははヴィータとお話もしたいから。ということでとある無人世界の((上空|・・))が映し出された画面を指さした。
フェイトは因縁めいたものがあるのかシグナムを指示。
リンディさんは俺をどこに向かわかせるかを検討していた。クロウは俺の動向をじっと見ている。…正直ウザったい。
「では、高志君は一度戦ったことがあるヴィータとかいうこの方に…」
「いえ、シグナムという女性の方にタカも向かわせるわ。ガンレオンは近距離が主体なの。この女性も同じ近距離主体の戦い方。あの紅い女の子はオールレンジで攻めることが出来る。長距離(ロングレンジ)からちまちま攻められたらきりがないわ」
助かった。
ガンレオンは普段飛べない。
マグナモードを使えば空も飛べるが如何せん、使った回数もかなり少ないから空を飛ぶのにはなれない。その事をアースラの皆さんにばれたら交渉に支障をきたす。
シグナムといったピンク色の髪をした女性は剣を鞭のように変形させて攻撃したりもするが、その身に着けた騎士甲冑にあった剣を主体にした戦い。
スピードと技のキレには明らかに分があるがパワーと防御力はこちらに分がある。
ライアット・ジャレンチも先程確認したら五割ほど修理は終わっている。
叩き付け。爆発のコンボも一回は耐えきれるだろう。…マグナモードを使わなければだが。
「…。それじゃあ、俺はヴィータ。なのはと一緒に彼女を抑えます」
(…今回は様子見にしておくか。あっちもさすがに俺を疑い始めた。リンディをしかり、なのはにも俺に戸惑いの色が見えたから、ここで信頼を塗りなおすべき、か)
クロウの目には何か打算的なものが見えたが気のせいだろうか?
そして、アースラから転送される寸前に俺はフェイトとアルフに空を飛べないことを周りの人に聞こえないように二人に伝える。
最初は何かの冗談かと思われたが、転送された瞬間に空高い所に転送された俺。
フェイトとアルフが空の上で浮いているのに対して落下していく俺。
俺は思わずガンレオンを展開したが着地に失敗。漫画のように上半身が砂漠の中に突き刺さった。その光景を見て二人は本当に俺が飛べないことを知った。
で、今に至る。
「あの時は飛んでいたくせに何で今は飛べないのさ」
プレシアと仲良く?しているところを見たアルフは俺に対して敵対心が隠しきれていない。
「マグナモードは時間制限があるからほいほい使えないんだよ。地上を走っていってもいいけど基本的にガンレオンはパワーはあるけどスピードがないんだ」
「それなのに強気に言っていたのかい」
「マグナモードを使えば勝てなくても逃げる自信はあったから」
「とんだ食わせ物だよ。あんたもプレシアも」
(…あう、やっぱり私達嫌われているね)
アルフは怒りながら呆れた声を出しながら再び空を飛ぶことに集中する。
アリシアもその態度に覚えがあるのでアサキムやクロウを相手にした時のような態度はとらずに凹んでいた。
多少なりにも俺も気持ちが沈んでいる。フェイトの境遇をテレビ(次元?)越しに見ていたので気持ちは痛いほどわかる。
てか、痛いよ。胃が…。と考えていたら。
(っ。お兄ちゃん。こっちに何か近づいてくる)
ユニゾンしているアリシアから何かがこちらに近付いてくるとの情報を得てから数瞬後フェイトとアルフも感じ取ったらしい。
「っ!フェイト。あいつは私が相手する。悪いけどこいつをお願い空中戦が出来ないのについて来たんだ。せめて使える陸でこき使ってやって」
「…アルフ」
(俺泣いていいよね?胃も、心も痛いんだけど…)
(家に帰ったら私が抱きしめてあげるから、それまで堪えようね)
うん、俺泣かない。
てか、((五歳|アリシア))に抱きしめられる俺って…。
アリシア五歳。九歳の俺。ただし、中身が二十一歳。犯罪じゃね?
「それじゃ、フェイト。気をつけるんだよ。タカシとかいったね。フェイトに変なことをしたらがぶっといくからね」
狼モードで凄まれるとすごく怖く感じるアルフ。だが、同時にフェイトの事をどれだけ大事に思っているかを感じ取ることも出来た。
「…わかった」
アルフの言葉に一言返すので胸がいっぱいだった。
「それじゃあ、しっかり掴まっててね」
フェイトが俺を後ろから抱きしめるかのように抱きかかえると、アルフとは違う浮遊感に包まれた。
そして、アルフと別れてすぐに加速するフェイト。
しばらくお互いに無言のまま空を飛んでいた。何とも言えない空気だった。
フェイトはアルフに運ばれている間も俺の方をちらちらと見ていた。かくいう俺もフェイトに言うことがあった。といか、言わなければならない言葉があった。
「助けてくれてありがとう」
「今まで黙っていてごめんなさい!」
意を決してその言葉を伝えるとフェイトも喋りかけてきた。
…え?なんでお礼を言われるの?
と、感じ取っていたらフェイトの方も目を丸くして俺の方を見ていた。
「あ、あの時、黒い人に襲われているところを助けてくれた時に言えなかったから…。なんで謝るの?」
「いや、そんなことより。俺の事を怒っていないの?だって俺はお前に黙っていたんだぞ。プレシアが生きていることに。今までのフェイトの事も知っていたのに。俺の事は嫌いになっただろ?」
「そんなことじゃない!…正直に言うと、嫌い。なのかもしれない」
…ぐぶはっ!
分かっちゃいたけど言葉にされると来るものがある。
(げはぁっ!)
アリシアも同様だったらしい。
「だけど…。私の事を助けてくれた。母さんも助けてくれた。まだ逢えていないけどアリシアも助けてくれた」
(イタイ!心にダイレクトに痛いよ!)
本当は逢えているが、それはアリシアだけでフェイトは逢えていない状況。
出るに出れなくなったアリシアは俺の中でのたうちまわっていた。
「それに。…あの失敗したお弁当も残さず食べてくれた。考えてみると私に会うのも辛そうな顔をしていたのは母さんのことがあったからなんだよね」
そうだけど…。ごめん、お弁当は昨日ゲロッた。
(なんで愛妹弁当をもどすの!)
(お前も食ってみろ!すげー辛(から)いんだぞ、ていうか痛い!しかも辛(から)いだけじゃなくて、状況的には辛(つら)いし、その後も胃が未だに辛(つら)くて痛い!)
「だから、君のことをすぐには嫌いになれないんだ。…出来たら母さんの事を教えてくれないかな?あの後、母さんがどう過ごしたのか、アリシアはどんな女の子なのかを」
この子は本当にいい子だった。だからこそ、幸せになってもらいたい。
プレシアと和解して、アリシアとも笑いあってほしい。
その為にも…。
「それぐらいだったらいくらでも答えてやるぞ。だけどそれは…」
俺とフェイトが話している間にも待機状態のガンレオンがシグナムという女性を捉えた。
「これが終わってからだ。じゃあ、やるか、フェイト」
(アリシア。気合を入れろよっ)
(あったりまえだよ!お姉ちゃんだもん!)
アリシアは気合十分。というか、やる気満々だった。
「うん!」
俺を抱き上げているフェイトの腕を軽くたたくと、フェイトも俺を離す。真下にいるシグナムに向かって俺はガンレオンを展開した。
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第二十六話 今まで黙っていてごめんなさい! | ||
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コメント | ||
誤字の報告ありがとうございます。やや、文章の方を訂正させていただきました。(たかB) いえ、フェイト。いえ、シグナムという女性の方に→シグナムの前に書かれている「いえ、」って要らなくないですか?(神薙) |
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