IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
「「「「「「ワァァァァ!」」」」」
翌日、いよいよクラス対抗戦が始まった。第一回戦は一夏対鈴である。会場の第三アリーナは溢れんばかりの観客が詰めかけている。俺はピットで箒、セシリアと一緒にこの戦いを観る事にした。
「ふぅん。あれが鈴のIS、〈甲龍(シェンロン)〉か・・・」
リアルタイムモニターの向こうでは、鈴と一夏が静かに試合開始の合図を待っている。鈴のISの〈甲龍〉はセシリアのブルー・ティアーズ同様、非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)が特徴だ。肩のスパイクアーマーがより一層攻撃的な印象を際立たせている。あれでどつかれたら痛いよな・・・。
「! 始まりましたわ」
ビィーッ!というブザーの音が鳴り終えた瞬間、一夏が瞬時に雪片弐型を展開させて先制攻撃をする。しかし、鈴の手持ち武器の巨大な青竜刀でできた薙刀のような武器で物理的に弾き返されてしまう。すると一夏は三次元躍動旋回(クロス・グリッドターン)で鈴を正面に捉えていた。
「お、三次元躍動旋回か。一夏の奴、急に腕上げたな」
「当然ですわ!何を隠そうこのわたくしが教えて差し上げたのだから!」
横でセシリアが腕を組んで胸を張った。そういや、セシリアが教えてたよーな気がしないでもない。すると、突然一夏が殴り飛ばされたように吹っ飛んだ。
「なんだあれは・・・?」
「衝撃砲ですわね」
「衝撃砲?」
「空間自体に圧力をかけて砲身を生成、そんで、その余剰で生じる衝撃をそのまま敵にぶつける。ま、見えない砲弾、ってところだな」
「瑛斗さん!それはわたくしが説明するところですわ!」
「お、おう・・・。悪ぃ悪ぃ。」
セシリアが俺に食ってかかってきたが、箒はそんなこと気にするそぶりもなく心配そうにモニターを見ている。
「一夏・・・」
正しくはモニターの向こうの一夏か。
「さあ、相当の強敵だ。どうする?一夏」
俺はモニターの向こうで苦戦している一夏に問いかけた。
その数分後だった。
「瞬時加速(イグニッション。ブースト)!あれもできるようになってたか!」
一夏が起死回生を狙って一週間前から練習していた瞬時加速を使い、鈴に肉薄して刃先が鈴に届きそうになった瞬間、
ズッドォォォォォォン!!
このピットまで揺れるほどの衝撃が第三アリーナに走った。
「な、なんだ?」
「凰さんの攻撃、でわないですわね・・・?」
二人が首を捻る中、俺はステージ中央からもうもうと上がる土煙の中にいる何かに目を凝らした。
「あれは・・・IS!?」
それは、以前起きたバスジャック事件の時に俺たちの行く手を阻んだ作業用ロボットの改造版とは比べ物にならないほどの威圧感を出していた。どうやらさっきの衝撃は、あのISらしき『何か』がアリーナの遮断シールドを貫通して入ってきた時に起きた衝撃だろう。
「! 一夏さん!」
見ると、一夏と鈴がそのISから攻撃を受けていた。その何かは左腕のビーム砲を使い、激しい攻撃で
一夏と鈴を圧倒している。
「こうしてはいられませんわ!」
セシリアがピットの少し奥、織斑先生と山田先生がいるところに走りだした。
「・・・・・」
すると箒がピットの出口に向かって歩き出していた。
「おい箒、どこ行くんだよ?」
俺も箒を追うようにピットを出た。ここを出る前にチラリと見えたが、なぜ山田先生は織斑先生から
涙目でコーヒーを受け取っていたんだろう?
箒の後を追うようについていくと、中継室に着いた。何をする気だ?すると箒は勢いよくドアを開け、中に入ろうとした。バン!と何かがぶつかる音がした。覗いてみると、中継室から出て行こうとした、審判とナレーターか?が、のびていた。
「これ、ドアとぶつかったんだよな・・・」
ペチペチと審判の頬を叩いてみるが反応がない。ああ、こりゃしばらく起きないな・・・。ん?
「そうだ!一夏っ!鈴!」
俺は本来やるべきことを思い出し、中継室の窓を開けて飛び出した。
「来いっ!G−soul!」
俺は空中でG−soulを展開し、一夏のところへ向かう。
正体不明のIS、こちらをロックしています。
ウインドウに表示が出ると同時にぐりん!とこちらを向いたISは俺にビームを撃ってきた。
「くっ、BRF!」
バチィィッ!とBRFに当たったビームが爆ぜる。そして俺はビームガンで牽制しながら、一夏と鈴に近づいた。ウインドウの表示を見ると、一夏のシールドエネルギーは六十。大分マズイな。
「一夏!鈴!大丈夫か!?」
「瑛斗!ああ、なんとか無事だ!」
一夏がこちらを向いて答える。無事じゃねえだろ、あんまり。
「瑛斗、なんなんだあれ!全身装甲(フルスキン)なんて、見たこと無いぞ!」
「俺が知るか!まあ、唯一わかるのは―――」
俺はビームソードを引き抜きながら答える。
「敵だってことぐらいだ」
照合、確認、コアは所属不明です。
ウインドウに出ている表示もそれを裏付けている。
「行くぞっ!」
俺はビームソードで攻撃を仕掛ける。しかしそれは簡単に躱されて俺は蹴り飛ばされる。
「うっ・・・!」
俺は地面に左腕を突きたてて何とか止まる。
「瑛斗!」
一夏がこっちに近づいてくる。
「馬鹿!そんな不用意に一つの場所に固まったら―――――」
ビームが来る、ことはなかった。
「? どういうことだ?絶好の攻撃のタイミングのはずだったんだが・・・・?」
俺が首を捻っていると、一夏は隣にいた鈴に話しかけた。
「なあ、鈴」
「何よ?」
「あのIS、無人機、ってことは無いか?」
「「は?」」
俺と鈴は声をそろえて言った。いきなり何を言い出すんだこいつは?
「だって、今もさっきも俺たちが話してる間は攻撃してこなかっただろ?まるで興味がないみたいだ」
そう言えば確かに。あのまま攻撃を続けなかったのはなぜだ?
「ううん。無人機なんてありえない。ISは人が乗らないと動かない。そういうものだもの」
鈴は真剣な表情で考え込んでいる。
「・・・ちょっと待ってろ」
百聞は一見にしかず。俺は一夏と鈴から離れ、ビームガンを構えて一発謎のISに撃った。すると向こうはそれをはるかに凌ぐビームで俺の攻撃を飲み込みながら反撃してきた。それを躱して俺は一夏たちのところに戻る。するとヤツはまた動かなくなった。
「なるほど、あながち間違ってないかもな」
俺には攻撃してきたが、一夏と鈴には攻撃しない。ふむ、無人機。十分あり得る可能性だ。興味があるぞ。
「んで、あれが無人機だと、何か勝算があるのか?」
「ああ。無人機なら遠慮なく全力の一撃を叩き込める」
雪片弐型を構えながら一夏は答える。ああ、分かったぞ。
「ははっ、そういうことか。いいぜ、行って来い。俺が隙を作る」
「一夏」
今度は鈴が一夏に話しかけた。
「アタシはどうすればいい?」
「最大出力であいつに向かって衝撃砲を撃ってくれ」
「いいけど、当たんないわよ?」
「いいんだよ。当たんなくて」
一体何を考えてるん―――――
「一夏ぁっ!」
キーン、とハウリングが尾を引くその声は箒のものだった。
「な、なにやってんだ?お前・・・」
「男なら・・・・・男ならその程度の相手に勝てなくてなんとする!」
キーン、とまたハウリング。やることが大胆だ。すると、突然あの無人機が動き、箒にビーム砲の銃口を向けた。
「箒!?」
「危ないっ!」
「Gメモリー!セレクトモード!」
無人機に急接近しながら俺はGメモリーを起動させる。
「セレクト!アトラス!」
俺はアトラスのダガーを奴の左腕に投げた。飛び道具としても使えるダガーは奴の左腕に深々と刺さった。一瞬無人機の動きが止まる。
「やれっ!一夏!」
「うおぉぉぉぉぉ!」
瞬時加速を使い、突進する一夏。雪片弐型は刀身をスライドさせ、一回り大きなビームの刃を出す。『零落白夜』、それがあの雪片の真の姿だ。そして無人機は右腕を切り落とされた。しかし、一夏を残った左腕で殴り、そのまま動きを止める。
「零距離から撃とうって魂胆か!」
俺は急旋回して一夏のもとに向かう。
「・・・・・狙いは?」
「完璧ですわ」
一夏がポツリと呟いた。すると俺の頬をかすめながら見覚えのあるビームが無人機を撃ちぬいた。
「はぁぁっ!」
俺はそのまま大型実体剣〈アトラス〉で無人機を上半身と下半身に両断した。ついに無人機は沈黙した。
「セシリアだったか」
俺はG−soulをノーマルモードに戻してセシリアがいるアリーナの天井付近を見た。
「そ。俺の考えはセシリアが来るってことを信じてたんだ」
一夏は二ッっと笑いながら答えた。
「スゲーな。未来予知でもしたのか?」
「まさか。直感だよ。直感」
「さて、あとはアレをどうす―――――」
敵IS、再起動を確認!ロックされています!
「「!?」」
振り返ると、無人機の上半身が俺たちに銃口を向けていた。さっきとは砲身の形状が違う。最大出力形態(バーストモード)か!
「やらせるかぁっ!」
巨大な光の束が俺と一夏を飲み込まんと押し寄せてくる。俺はBRFを最大出力で発生させる。
バリバリバリバリ!
ビームがBRFとぶつかり合い、激しい音をたてる。なんつー威力だ。BRFで減殺できない。威力は落とせるが、消滅させれない・・・!
「鈴っ!」
BRFで減殺できず、四方八方に飛び散ったビームの一部が鈴に向かって飛来した。
「一夏!?」
BRF発生装置、機動限界域に到達。排熱を開始します。
俺が気を失う前に見たのは、その表示と、鈴を庇う一夏の姿だった。
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クラス対抗戦、開幕! | ||
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