IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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「・・・・・そうね」

 

ゴゴゴゴゴ・・・・・。エレクリット・カンパニーの技術開発者エリナ・スワンは神妙な面持ちで携帯端末を操作している。

 

「・・・・・・・・・・ど、どうですか?」

 

六月の頭の日曜日、俺は今エレクリット・カンパニーの本社に居る。正確にはエレクリットの技術開発部のラボにいる。何故ここにいるかって?前回の無人機との戦闘でBRFの稼働時間を疑問視した俺はエレクリットに改造を依頼したからだ。エリナさんとのコネもあって、すんなりと承諾を受けてここに呼ばれたわけだ。

 

「ふーむ、そうねぇ・・・」

 

無人展開したG−soulと携帯端末を交互に見て、エリナさんは顔を俺に向けた。

 

「いっそ、取っちゃいましょ」

 

「・・・・・・・はい?」

 

「BRFの稼働時間が短いって言ってたけれど、今の技術でそれは伸ばすことは可能よ。まあ、もって一分ってところかしら?」

 

「一分かぁ・・・微妙だなぁ」

 

正直もう少し長くして欲しい。

 

「そこで!左腕のビームバリアを取っちゃいましょう!そしてそっちもBRF発生装置にしちゃうのよ!」

 

どーん!と胸を張って俺に言うエリナさん。

 

「でも、それじゃ実弾防御はどうするんですか?」

 

「うぐっ・・・」

 

あ、この人もしかして・・・。

 

「エリナさん、今、思い付きで言いましたよね?」

 

「・・・・・うん」

 

この人は・・・。

 

「あの〜・・・スワン先輩?」

 

後ろから声が聞こえた。振り返ると作業服を着た一人の女性が立っていた。

 

「エリス?どうしたのよ?」

 

エリナさんにエリスと呼ばれた人は、カートに灰色のシールドのようなものを乗せてやって来た。

 

「これ、もう使わないんで渡してもいいんじゃないっすか?」

 

「あっ!それって!」

 

「そうっす。セフィロトのBRF搭載型シールドのプロトタイプっす」

 

「・・・・・セフィロト?」

 

俺が首を捻ると、エリナさんが説明してくれた。

 

「えっとね、エレクリットが最近ロールアウトしたある人の専用のISの事よ。その内部構成には内部フレーム全部にサイコフレームを搭載してるのよ!」

 

「サイコフレーム!?」

 

サイコレームと言えば、エレクリットが全力で開発、研究している人の精神に感応してその能力を発揮する未知の素材である。それを内部フレームにするとは。

 

「これはそのシールド、のプロトタイプでサイコフレームは内蔵してないけれどBRF発生装置はバッチリ搭載してるわ。シールドは実体だから実弾の防御も完璧!」

 

「なるほど、で、稼働時間は?」

 

俺が一番気にするところだ。

 

「ほぼ無限と言ってもいいわ!」

 

「へ?」

 

するとエリスさんが説明を始めた。

 

「説明は自分がするっす。このシールドのBRF発生装置はBRF発生と同時に冷却を開始するっす。よっぽど高出力のビームを長時間受けない限り、その防御は完全無欠っす」

 

「そ、そんな凄い装備をもらっちゃっていいんですか?」

 

なんか裏がありそうな気がする。怪しい・・・・・。

 

「ふっふっふ・・・。流石にただでとはいかないわ!こっちも商売だから」

 

あ、やっぱり。

 

「瑛斗、あなたにエレクリットが新しく開発した武器を試験的に運用してもらいたいの」

 

「あ、そんなことですか。全然良いですよ」

 

「よし!話はまとまったわ!瑛斗、あなたも手伝って!」

 

「あ、は、はい」

 

すると急にラボ全体が慌ただしくなってきた。なんだなんだ?

 

「さあ皆!改造の時間よぉー!!」

 

「「「「「ウォォォォォォォ!」」」」」」

 

さっきまで別々の仕事をしていたほかの職員たちが、手にレンチやドライバー、果ては鋸を取り出して叫び声を上げた。

 

「あ、あの・・・エリナさん?一体、俺にどんな装備を?」

 

「ふふふふ・・・・。あなた、盾とBRF発生装置が一緒になった装備をつけたら、片腕が余るわよね?」

 

「ま、まあ、設計上は」

 

「そこで!」

 

ガラガラガラ!とカートに乗って腕のようなものが運ばれてきた。鈴の甲龍の腕のようにスマートだが手の部分に小手のようなものが取り付けられている。

 

「あなたにこの〈ボルケーノクラッシャー〉を使ってもらいたいの!」

 

「ボルケーノクラッシャー?」

 

また大きく出た名前だな。

 

「このボルケーノクラッシャーは相手のシールドエネルギーを吸い取るの!」

 

「吸い取る?」

 

「そう!このボルケーノクラッシャーで触れられたISのシールドエネルギーは吸い取られた後そのままこの武器の放熱エネルギーに変換されるわ!攻撃と吸収を同時に受ける敵は急速にシールドエネルギーを削られ、そしてボルケーノクラッシャーがその輝きを終えたとき!」

 

なぜか溜めるエリナさん。

 

「それは相手のシールドエネルギーが0になったときよ」

 

「な、なんか知りませんが、凄い武器ですね・・・・・」

 

「でも!」

 

ずいっと顔を近づけてくるエリナさん。近いって・・・。

 

「上層部の連中が『こんな対象に接近しなければ効果を発揮しない武器など意味があるのか?』とか言ってきやがってさっ!ちゃんと武器も持てるのに!それなら凄い武器だって分からせてやるっ!って売り言葉に買い言葉でこいつの性能を証明させることになったのよ!」

 

「わ、わかりましたから、顔離してください」

 

俺はエリナさんを優しく押し返す。

 

「そういうわけだから、よろしくね」

 

「は、はぁ・・・」

 

「じゃ、早速取り掛かるわよー!」

 

そんなわけでG−soulに新装備を装着するために作業が始まった。

 

 

 

「ほらそこ!腕のセッティングはもう少し後だって言ってるでしょ!」

 

作業場を仕切るはエリナさん。俺はその後ろでパソコンを操作しエネルギー分配システムを再調整する。

 

「あ、エリナさん。ボルケーノクラッシャーを使用するときどうしてもこっちの排熱が追いつかないみたいです。何か別の排熱装置が必要です」

 

「オッケー分かった!そんなこともあろうかと新しい排熱装置は完成済みよ!」

 

なんて手際の良さだ。パソコンに排熱装置の画像とデータが送られてくる。なるほどなるほど、排熱するときウイングが展開するようになってるのか。

 

「あなたの拡張領域(バススロット)はこの前ロウディで見たとき確認したわ。あり得ないくらい容量があるわね!これなら通常に背中に着けても問題ないわ!」

 

「そ、そうですね」

 

この人のISにかける情熱は半端じゃない。イキイキとした顔をする。俺もこの日だけはツクヨミにいたころを思い出して、IS改造にのめり込んだ。

 

学園に戻ったのはこの日の真夜中だったが、エリナさんが一緒に事情を話してくれたから何とか反省文と織斑先生の指導は免れた。いやあ、よかったよかった。

 

 

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じがしない?」

 

「そのデザインが良いの!」

 

「私は性能的に見てミューレイかな。特にスマートモデル」

 

「あー、あれねー。モノは良いけど、高いじゃん?」

 

翌日の月曜日、朝の教室ではそんな会話が繰り広げられている。

 

「ねえねえ!織斑くんと桐野くんのISスーツってどこのなの?見たことがないタイプだけど?」

 

俺と一夏にも話が振られる。そういや、一夏も一人部屋になってたな。流石に女子と、と言うか箒と相部屋だとマズイと先生方も思ったんだろうか?

 

「あー、特注品だって。男のスーツが無いからどっかのラボが作ったらしいよ。えーと、もとはイングリッド社のストレートアームモデルだったっけ?」

 

「へぇ〜、特注品かぁ〜!」

 

「桐野くんは?」

 

「んー、ツクヨミがエレクリットと結構パイプ持ってたからさ、エレクリット仕様の奴の改造品だって言ってたな」

 

「やっぱり二人とも特注なんだね〜。いいなぁ〜!」

 

「まあ、でも特注品っつっても他のスーツと何にも変わんないぞ」

 

俺が付け加えるとガラと教室のドアが開いた。

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性に優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。あ、衝撃は消えませんからあしからず」

 

ISスーツの説明をすらすらしながら現れたのは山田先生だった。

 

「さっすが山ちゃん!詳し〜!」

 

「一応先生ですから。・・・・・山ちゃん?」

 

「山ぴー見直した!」

 

「今日が皆さんのISスーツの申し込み開始日ですからね。予習してきました。・・・・・って、や、山ぴー?」

 

入学から二ヶ月、山田先生には8つ位愛称ができた。慕われてるんだなぁ。

 

「あ、あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと・・・」

 

「えー、いいじゃんいいじゃん」

 

「まーやんは真面目だなぁ」

 

「ま、まーやんって・・・」

 

「あれ?マヤマヤのほうが良かった?マヤマヤ」

 

「そ、それもちょっと・・・・・」

 

「じゃ、ヤマヤは?」

 

「あ、それはやめてください!」

 

ん?急に語勢が強くなったな。嫌な思い出でもあるんだろうか?

 

「とにかくっ、ちゃんと先生とつけてください。わかりましたか?わかりましたね?」

 

女子たちは、はーいと返事をするが、あの感じは絶対分かってないな。山田先生、今後もあなたのあだ名は増えることでしょう。

 

「諸君、おはよう」

 

「あ!おはようございます」

 

一同は担任の織斑先生の登場にビシッと身を引き締めた。なんなんだろう、この差は?

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使った授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは学校指定の水着を着てもらう。ま、別に下着でも構わんがな」

 

いや、良くないだろ!クラスの皆もそう思っているだろう、相手があの織斑先生だから誰も言わないんだけどな。ちなみに、専用機持ちの特権、『パーソナライズ』を行うと、IS展開時にスーツも同時に展開される。要するに着替える手間が省けてスゲー楽。来ていた服は一度素粒子にまで分解されてISのデータ領域に収納される。・・・から、あの時エリナさん渡された鞄に服を詰めなくても良かったのだが、今でもそれは謎である。

 

「それでは山田先生。ホームルームを」

 

「あ、はい。分かりました。」

 

織斑先生に言われ、山田先生が教壇に上がり、俺たちの方を向く。

 

「えー、今日はなんと転校生を紹介します!しかも二名です!」

 

シン、と一瞬教室が静まり返る。

 

「「え・・・・・」」

 

「「「「「えええええええっ!?」」」」」

 

いきなり転校生紹介にクラスがざわつく。転校生が二人?ふつう分割しないか?まあ、仲良くやれりゃあそれに越したことは無いんだがな。

 

「それでは、入ってくださーい」

 

「失礼します」

 

「・・・・・」

 

山田先生に呼ばれて入ってきたのは銀髪眼帯の美少女と・・・・・、

 

「な・・・・・・」

 

「シャルル・デュノアです。よろしくお願いします」

 

金髪の男子だった。

説明
転校生は金髪男子と銀髪眼帯の少女
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