いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第二十八話 これで私の勝ちです!
砂漠の中で黒い鎧と機械人形の間で激しい金属音が鳴り響く
「どうした『傷だらけの獅子』!」
「くうっ!」
ギャキィンッ。
チェインデカッターでアサキムの振るう剣を何とか受け止めていた。
高速回転しているノコギリの刃を弾かれることなく高速の斬撃を繰り出すアサキムに防戦を強いられる。
(ガンレオンの反応速度を最大値にしないと)
(もうやっているよ!だけど、あっちが早すぎるんだよ!)
ブンブンスパナだと連結部分のワイヤーを切られ、ライアット・ジャレンチはシグナムへの攻撃の妨害時にまた亀裂が入るのを確認した。
この二つは使えないし、修理前だったとはいえライアット・ジャレンチに亀裂が入ったのでデッカースパナも無理。
スパナ系統は俺の魔力がある限りいくらでも出せるがさすがに限りはある。と、なると残った武装はチェインデカッターのみになる。
「君に合わせて地上戦にしたんだ。さあ、もう一度獅子の力を解き放て」
「お断りする、ぜっ!」
こいつは獅子の力。俺にマグナモードを頻繁に使わせて『傷だらけの獅子』の因子を高めさせようとしているのは明白だ。
横殴りに一撃を加えようとするとアサキムは軽く身を逸らしてかわす。そして、今度は体制の崩れた俺に向かってその手に持つ剣でガンレオンの装甲を切り裂いた。
「なら、嫌でも引き出してもらう。ラスターエッジ!」
ズドンッ。
アサキムはシュロウガの瞳の部分から光を放つ。その光を浴びた直後、俺とアサキムはそこに生じた爆風でお互いに弾き飛ばされる。
「舞え、トラジック・ジェノサイダー!」
俺と距離が離れた瞬間にアサキムの周りに烏に似た黒い炎五つが現れ、それぞれが意志を持ったかのように俺に襲い掛かる。
「ぐ、こんの!」
ザンッ。
真正面から飛来してきた烏をチェインデカッターで両断する。
よしっ、これなら!
ガアンッ!
「がっ」
(にゃあっ)
ガガガガッ。
背中に鋭い痛みを感じながら後ろを振り向こうとすると今度は右足、左腕と体のいたるところから衝撃が奔る。
「その烏は一つだけじゃない」
そうだった。少なくてもあと四匹はいる。
気を引き締め直そうとしたその時、
「それにいくらでも呼び出せる」
アサキムの周りに十数個の炎の塊が、あれってまさか全部…。
「さあ、その身を貪られろ『傷だらけの獅子』!」
俺の予想した映像はすぐに現実のものになった。
モニター越しに見えるのはただの虐殺劇。
「な、何なんですかあの黒い鎧は!明らかにAAAクラスの魔力弾、しかもあれだけの数を自在に操るなんて…」
「…くっ。なのはさんとクロウ君は!」
「は、はいっ。先程戦闘が終了しましたが騎士の少女には逃げられた模様。さらにあの仮面の男も撤退しましたっ。追跡はしてみますが…」
「それは後でいいわ!今すぐになのはさん達を援護に向かわせて!」
管理局員が慌てている中、冷静を装うプレシアもまた内心焦っていた。
「…本当に化物ね」
高志がマグナモードを使わない理由は三つ。
一つはマグナモードが強すぎてまた武器を破壊してしまうかもしれないという恐れ。チェインデカッターまで失うと彼の残った武装ではアサキムには通用しない。
一つはマグナモードを使っても勝てなかった場合。使用後の疲労と激痛で動けなくなった後に控えているシグナムに蒐集されてスフィア関係のトラブルが起きるかもしれないというリスク。
最後の一つ。マグナモードでスフィアがアリシアに何らかの影響が出るかもしれないと恐れている。
(…マグナモードと言えばライアット・ジャレンチ以外にもう一つ攻撃手段はある。だけど、あれは失敗したら本当にガンレオンがバラバラになる。下手したらタカとアリシアも…)
高志からガンレオンの武装の事は聞いている。
ぺイン・シャウター。
ガンレオンが唯一放てる純魔力攻撃かつ遠距離攻撃だ。
おそらく、今の状態でアサキムに決定打を与えるにはそれしかないだろう。
だけど、あの頑丈なライアット・ジャレンチが耐え切れないように、ガンレオン自体がバラバラになる可能性もある。それに、それを操る高志とアリシアにまで被害が及ぶかもしれない。その為、一度も使ったことが無い。
だからといってこのままという訳にもいかない。
正直アサキムの速度はフェイトに迫るかどうかといった感じだ。そのアサキムもただただ高志が烏を両断していくたびに同じ数だけの烏を出現させては襲わせている。高みの見物といったところだ。
フェイトも今はシグナムと戦いあっている。が、アサキムが登場したことにより先日の強さを目の当たりにしたのだろう。動きがぎこちない。シグナムに押され気味だった。
アルフもまた褐色の肌と白い髪をした男性と戦いあっている。援護に行けそうにはない。
形勢は逆転…。どう仕掛けたらいい?
そんなことを考えているとフェイトが砂漠の中にうずもれた連結刃に気づかずにシグナムに向かって突貫して行こうとしていた映像が見えた。
「っ。フェイトッ、下がりなさい!」
「っ。フェイトッ、下がりなさい!」
私は急に聞こえた母さんの声に驚いて足を止めた。すると、すぐ下にある砂漠の中からシグナムの連結刃がそこにあった砂を撒き散らせながら私に襲い掛かる。
[ディフェンサー]
ガキィンッ。
バルディッシュが自動展開してくれた障壁が連結刃を弾いてくれたお蔭で助かった。いや、これは…。
「何をしているの!次が来るわよ!」
私は考えるのをやめてその空域から急いで移動する。
首筋に風が通る感触を感じながらもその襲ってきた物からの脅威から逃れることが出来た。
「…く、やはり早いな。テスタロッサ」
違う。これは私が早いんじゃなくて、母さんが言ってくれなかったら二度も回避することなんてできなかった。
「フェイト、聞きなさい。あなたは彼女にスピード以外では全てにおいて劣っているわ。だから、わかるわね?」
母さんの声は上空に映し出されたエイミィのモニターから響く。
…劣っている。それは薄々感じ取れていた。
「はあっ!」
「くぅっ」
ガギィンッ。
と、バルディッシュの穂先から伸びた魔力刃とレヴァンティンがぶつかり合う。
そう、気落ちしている私に母さんは言葉を投げかけた。
「だからこそやるべきことはわかっているわね、フェイト」
「はあああああ!」
シグナムとの鍔迫り合いで徐々に押されていく。そんな中でも私は母さんの声に耳を傾けた。そして、次の言葉で私はあの黒い鎧の人の恐怖を払拭した。
「貴女が私を母だというのであればそれが解っているでしょう!フェイトッ!」
「…っ、ぁ、あああああああああああああああ!」
[カートリッジロード!]
私の叫びにバルディッシュも答えてくれた。
バルディッシュから魔力の詰まった薬莢が吐き出されると同時に私はシグナムを弾き飛ばしながらバルディッシュで彼女の胴体をなぎはらう。
鎌から大剣へと変化したバルディッシュ。変化はそれだけじゃない。
ソニックフォーム。
バリアジャケットの防御力を薄くするかわりに速度を上昇させるバリアジャケットに展開し直した私とバルディッシュは弾き飛ばされたシグナムに向かって剣を突きつける。
「…先に謝っておきます。すいません。あなたを傷つけてしまうかもしれない」
「それは、私を舐めていたということか?しかもその状態だと一撃で仕留められるぞテスタロッサ」
シグナムが私の言葉に反応して怒りの色をあらわにする。
「いいえ、違います。あなたが強すぎるから私も形振り構っていられないということです。それが例え防御力を落してでも…。いくら非殺傷設定でも急所に当たればさすがに何らかの後遺症がでるかもしれない。ですが、あなたは強い。非殺傷設定とはいえ今からあなたを怪我させてもいいと思って戦わせてもらいます」
「なるほど倒せなくてもいいが同時に怪我させないための全力。怪我させてもいいから倒そうとする全力。…か。私も似たようなものか」
後半部分は風の音に遮られて聞こえなかった。
だけど、シグナムの表情からは何か納得したかのような感情が取れた。
「ならば、私もそれに答えよう。ここで足止めを食らうわけにはいかないのだ!レヴァンティン!」
[カートリッジロード]
シグナムも私同様に自分自身とレヴァンティンを強化してくる。
「殺しても恨むなよテスタロッサ!バルディッシュ!お前達は強すぎるからな!」
「構いません。…勝つのは私達ですから」
シグナムと私は互いに自分の愛機を構える。
そこからはお互いに少しも動かなかった。相手から少しでも注意を怠ればやられる。
そして、一陣の風が吹くと同時私達は動いた。
ガアンッ。と、正面からぶつかり合おうとした寸前に私は更なる加速を行う。
「…なっ?!」
シグナムからしてみれば突如消えたかのように見えただろう。
そんなふうに驚いている彼女の背後に回った私は大剣と化したバルディッシュを振り下した。
「これで私の勝ちです!」
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