IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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「・・・・・どういうことだ」

 

「ん?」

 

昼休み、俺達は屋上で昼飯を食うことにした。屋上はガーデニングが施されていて、それぞれ円テーブルには椅子が用意され、晴れた日の昼休みとなれば女子たちで賑わう。

 

「天気がいいから屋上で食おうって話になったろ?」

 

「そうではなくてだな・・・・・!」

 

ちら、と箒は俺、鈴、セシリア、そしてシャルルを横目で見てきた。

 

「どうせなら大勢で食べたほうがいいだろ?」

 

「そうそう。それにシャルルは転校してきたばかりで右も左も分からないしな」

 

こういったことで親睦を深めるのも悪くない。って俺は思ってる。

 

「そ、それはそうだが・・・・・」

 

なにやら箒はぐぬぬ・・・とか言いながら弁当が入っているであろう包みを持っている。そういや、この学園って、弁当持参したい生徒のために早朝のキッチンを開けてるんだったな。一夏が調理器具の数と質に驚いたって言ってたしな。

 

「はい一夏。アンタの分」

 

鈴が一夏にタッパー放った。おいおい、食べ物投げちゃダメだろ。

 

「おお!酢豚だ!」

 

一夏はタッパーの蓋を開けて中身を確認した。

 

「そ。アンタ食べたいって言ってたわよね。作って来てやったわ」

 

そう言って鈴は自分の分の弁当を広げている。しかし、何故一夏にはご飯を渡さないのに自分はご飯をもっているんだ?

 

「コホンコホン。―――――一夏さん、今朝わたくしも偶然何かの因果か早く目が覚めまして、こんなものを作ってまいりましたわ」

 

そう言うとセシリアはバスケットを開く。そこにはきれいにサンドイッチが並べられていた。・・・のはいいんだが。

 

「お、おう。あとでもらうよ」

 

一夏は苦笑いで対応している。それもそのはず。セシリアは料理がからっきしダメなのだ。まあ、お嬢さまってこともあるからだろうが、それにしてもなのだ。以前もティアーズのビットで鍋を焦がしてたところをたまたま通りかかって止めに行ったら、

 

『どうしたセシリア!気でもふれたか!?』

 

『り、料理をしていたんですの!』

 

『・・・・・』

 

あの時は絶句した。いや、マジで。

 

「ええと、本当に僕が参加して良かったのかな?」

 

シャルルが遠慮気味にそんなことを言う。

 

「もちろん。なあ?一夏」

 

「ああ。折角、また一人男の知り合いができたんだ。仲良くしない手はないだろ」

 

「そ・・・・・そう、なんだ」

 

「わからないことがあったら何でも聞いてくれ。ISのことでもIS以外のことでもな」

 

「IS以外のことは瑛斗より俺のほうが詳しいけどな」

 

「うぐっ・・・」

 

ちなみにシャルルを連れてきたのは俺。屋上で食べるって聞いて、俺が購買にパンを買いに行った時に偶然発見して連れてきた。それよりも凄かったのはシャルルが三年の先輩に対して言っていた断り文句だ。

 

『僕のようなものの為に咲き誇る花の一時を奪うことはできません。こうして甘い芳香に包まれてるだけでもう僕は酔ってしまいそうだから』

 

である。いやシャルルは凄い。今の言葉を言うときに全然嫌味がないのだ。心の底からそう思っているっていうのがしっかり伝わってくる。その威力は絶大で、手を握られた三年の先輩、気絶してた位だ。

 

「さ、早く食べようぜ。昼休みもそんなに長くないからな」

 

話を終わらせて、俺達は昼食を食べ始めた。一夏が箒に唐揚げを食べさせた後、鈴とセシリアがこぞって一夏に『あーん』を迫っていたのが印象に残った。

 

「あー、食った食った」

 

結局皆それぞれの弁当を広げて全員で食べることにしたので結構な量になった。落ち着いて考えてみたら俺達男組以外の箒達は分け合えるように作られたな。

 

「・・・・・やっぱり男同士はいいな」

 

「ぶふっ!?」

 

俺は口に含んだペットボトルのお茶を吹きそうになった。ど、どうしたんだよいきなり・・・。

 

「そ、そう?一夏がそう言うんならいいんじゃないかな?」

 

「・・・・・おいおい・・・・・」

 

「・・・・・男同士がいいってなによ・・・・・」

 

「・・・・・不健全ですわ・・・・・」

 

「・・・・・灯台下暗しに気づかぬ愚か者め・・・・・」

 

五人中、四人が一夏に冷ややかな視線を送った。あ、一人残ってるのはシャルルな。

 

 

 

「やー、悪いな。日本茶入れてもらって」

 

「別に気にしなくていいぞ。ツクヨミが会議の会場になったときはよくこういうのもやったしな」

 

夜、夕食を食べた後、俺、一夏、シャルルの三人は俺とシャルルの部屋で日本茶を飲んでいた。夕飯の前に山田先生に呼ばれて部屋割りについての話になったとき、事前に決めていたことを話すと、

 

『手際が良くて助かります〜!』

 

と手を叩いて喜んでいた。そしてそのままヒューっとどこかへ行ってしまったが、そんなに仕事が立て込んでるんだろうか?

 

「ふーん、宇宙にもお茶ってあるんだな」

 

「まあな。ほら、シャルルの分」

 

「あ、ありがとう」

 

ずずー・・・。ああ、食後のお茶は最高だ。落ち着く。

 

「お、うまい。瑛斗お茶入れるの上手いな」

 

「紅茶とはずいぶん違うね。不思議な感じ。でもおいしいよ」

 

「それはなにより」

 

シャルルにも日本茶は好評だった。

 

「そうだ!今度機会があったら抹茶飲みに行こうぜ」

 

「抹茶かぁ、そういや俺飲んだことないな」

 

流石に抹茶は宇宙ステーションにはないしな。

 

「抹茶って畳の上で飲むやつだよね?特別な技術がいるって聞いたけど一夏はいれるの?」

 

「抹茶は『たてる』っていうんだぜ。いや、俺も略式のしか飲んだことないんだけどな。抹茶カフェっていうのが駅前にあってな。コーヒー感覚で飲めるんだ」

 

「駅前か、俺あんまり行ってないな。最近はエレクリットとかにしか行ってないし」

 

「おう。駅前にはいろいろあるんだぜ。今度の日曜日にでも三人で行こうぜ」

 

「本当?うれしいな。楽しみにしてるよ」

 

日曜日に駅前に遊びに行く約束をし、しばらく談笑してから一夏は自室に戻っていった。部屋は俺とシャルルの二人きりだ。

 

「じゃあ、改めてよろしくね。瑛斗」

 

「おう。よろしく」

 

俺は残ったお茶を飲みながら答えた。やっぱり二人部屋になると大分空気が変わる。

 

「シャワーも浴びたことだし、あとは歯磨いて寝るだけだな」

 

「うん。ねえ、瑛斗」

 

「ん?」

 

「瑛斗のそのISってさ」

 

「G−soulのことか?」

 

俺は左腕をあげて待機状態のG−soulに目をやる。

 

「うん、そのISって瑛斗が作ったんだよね?すごいなぁ、自分でIS作れるなんて」

 

おお、これが尊敬の眼差しってやつか。なんか照れくさいな。

 

「そんなことないさ。研究所の皆と作ったんだ。俺がこのG−soulを使えるのも成り行きだし。それに―――」

 

「それに?」

 

「こいつは皆の形見だからな。こいつが助けてくれなかったら俺はここにはいない。感謝してるよ」

 

「そうなんだ・・・。ごめんね、辛いこと思い出させちゃったかな?」

 

シャルルが申し訳なさそうにそう言った。

 

「そんなことないそんなことない。気にしなくていいから。あ、そうだ!一夏が放課後よくISの特訓してるんだけどさ、シャルルも一緒に教えてやってくれないか?」

 

「え、僕?」

 

「ああ。今月は学年別トーナメントがあるからあいつが優勝できるくらいに強くしてやろうぜ!ま、優勝するのは俺だけどな」

 

「自信満々だね。いいよ、わかった」

 

「よし、そうと決まれば明日からはガンガン一夏を鍛えないとな!って俺今箒みたいなこと言わなかったか?」

 

「ふふっ、一夏も瑛斗も面白いね」

 

「そうか?まあ一夏よりはユーモアのセンスはあると自負してるけどな」

 

ユーモアに関して言うとあいつにだけは絶対に負けたくない。

 

「ふふ、そうかもね」

 

この日は俺はいつもの二割増しでぐっすり眠れた。

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